建設ソフトやハードウエアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。
STRAXcubeで進化する3D道路設計とトンネル設計検討機能 ― DXで設計思想を可視化。効率・品質・教育を同時に実現 —
パシフィックコンサルタンツ株式会社
STRAXcube
パシフィックコンサルタンツ株式会社
所在地:東京都千代田区
創立:1951年9月(1954年に日本法人として設立)
資本金:8億2,000万円
従業員数:2,371人(2024年10月1日現在)
主な事業内容:社会インフラサービスのプロジェクト企画・立案、調査、計画、設計、運営・管理
https://www.pacific.co.jp/

交通基盤事業本部トンネル部
兼 先端技術センター
屋代 瑞希 氏
パシフィックコンサルタンツ株式会社は、1951年の創立以来、70年以上にわたり建設コンサルタントのリーディングカンパニーとして、国内外の都市・建築・鉄道・道路・空港・港湾・河川・上下水などの社会インフラ整備やまちづくりの計画・設計・運用などに深く関わってきた社会インフラサービス企業である。
ビジョンに「未来をプロデュースする」を掲げ、誰もが安心して暮らせる持続可能な社会の実現に向けて、新しい価値を社会に提供している。
はじめに
高精度な3D道路設計を支えるSTRAXcube
パシフィックコンサルタンツ株式会社では、道路設計で「STRAXcube」(株式会社三英技研)を活用しています。
STRAXcubeは、地形データと道路線形から三次元地形モデル・路線設計・計算書・図面まで一貫して作成できる高精度な3D道路設計ソフトです。
地形の凹凸や法面形状を立体的に把握しながら設計できるため、設計精度の向上や完成イメージの共有に効果があります。
この利点を支えるのが、設計工程をカバーする専用アプリを統合したオールインワン環境という特長です。
地形編集の「Map-3D」、線形入力・調整の「Alignment」、平面設計・路線選定の「Planner」、縦断設計の「Judan」、横断設計の「Oudan」、そして走行シミュレーションの「Drive」など、全工程がシームレスに連携し、設計フロー全体を効率化します。
また、BIM/CIMやJ-Land XMLとの高い親和性を持ち、設計データをそのまま3Dモデルとして活用でき、切盛計算・法面生成、交差点・構造物の3D 化、数量計算の自動更新など、従来のCADを大きく上回る生産性を発揮します。
トンネル分野への親和性と開発のきっかけ
都市トンネルや山岳トンネルの設計では、道路線形との整合、断面形状の変化、坑口位置など、多くの要素を立体的に扱う必要があります。
しかし、これまでの実務では、道路の二次元成果を基にCADで断面を手作業で作成し、変更の度に再作図する非効率な作業が課題でした。
一方STRAXcubeは、道路・交差点・構造物の3Dモデリングに強く、平面・縦断・横断をパラメトリックに制御できるため、トンネル設計との親和性がありました。
この柔軟なデータ構造を生かせば、断面検討や坑口計画を三次元で直感的に進められると考え、三英技研に「STRAXcubeにトンネル設計検討機能の拡張」を提案しました。
この提案は、土工部だけでなく構造物などへも設計領域を広げたいという同社の目標とも一致し、ユーザーと開発者が一体となってプロジェクトが始動しました。
このように私自身がSTRAXcubeを道路設計で活用する中で「地形と道路線形を三次元的に管理できる環境をトンネル設計にも応用できるのでは」と感じたことが、今回の開発の出発点でした。
現場の課題を共有しながら議論・試作・検証を繰り返し誕生したのが、次に紹介する3つの新機能――「建築限界根拠図作成機能」「シールドトンネル内空断面検討機能」「山岳トンネル坑口位置検討機能」です。
トンネル設計検討機能の開発内容
建築限界根拠図作成機能
―現場の考え方を尊重しつつ、若手の学びも支援
トンネル設計で起点となる「建築限界」の設定は、「道路構造令の解説と運用」に準拠しつつも、各地方整備局の運用や設計者の思想によって微妙に解釈が異なるため、設計者の経験や判断に大きく左右される部分でもありました。
そこでSTRAXcubeでは「設計者の裁量を尊重しつつ、若手にも迷わず扱える仕組み」をコンセプトに、本機能を開発しました。
基本設定は「道路構造令の解説と運用」に準拠しながら、解釈や思想に合わせて選択できる方式を採用し、ベテラン技術者が細部を調整できる柔軟性を確保しました。
一方で、若手技術者が初めて設定する際にも理解しやすいよう、デフォルトの設定やヘルプ図、補足説明を組み込みました。
これにより、設定作業を通して建築限界の思想や根拠を理解でき、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)にも活用できる教育的な機能に仕上げています。
設定した建築限界は、各数値根拠の「旗上げ情報」と正確な二次元座標を DWG出力でき、報告書などへの活用もスムーズです。
従来は手作業で線を引き、根拠を別資料で補足していた工程が、STRAXcubeで一貫化し、品質と効率を向上させました。

図-1 建築限界根拠図作成機能
シールドトンネル内空断面検討機能
―3D道路設計との融合で“断面検討の常識”を変える
建築限界根拠図作成機能をさらに発展させ、トンネル設計の中核となる本機能を開発しました。
この機能では、建築限界の検討結果をもとに、ジェットファン・標識・排水工・避難施設など必要な諸設備を選択配置でき、シールドトンネルの計画条件に応じて、避難施設の形式(独立避難路/床版下避難路)を切り替えながら断面のトライアル検討を行えるのが特長です。
特にSTRAXcubeの強みは、道路線形に基づく片勾配、曲線部拡幅、視距拡幅を反映し、三次元的に変化する建築限界を自動作図できる点です。
断面が最もクリティカルとなる測点を抽出し、建築限界と諸設備を包含する最小円を自動計算し、路線全体で最適なシールド内空断面を導き出すことができます。
従来は、多数の横断図に対して手作業で断面のトライアル検討をしており、時間と労力を要し、ミスの要因にもなっていました。
STRAXcubeでは、道路線形とトンネル断面データが一体化しているため、道路計画の変更に追従して断面検討を自動更新できます。
結果として、精度向上だけでなく、これまで数時間を要した断面検討が数分程度で完了し、検討スピードも飛躍的に向上しました。

図-3 シールドトンネル内空断面検討機能
山岳トンネル坑口位置検討機能
―道路線形と地形条件を考慮した、最適な坑口位置を可視化
山岳トンネルでは、道路線形と地形条件を踏まえて坑口位置・形状を決定する必要がありますが、従来は縦断勾配や土被りを確認し、CAD上で平面・縦断・横断図を手作業で描きながら切土段数や法面を作図し、どこまで坑口を追い込めるかをトライアル検討した上で、坑門工の比較案を作成していました。
こうした課題を解決するために開発したのが本機能です。
STRAXcubeの高精度な三次元サーフェス交差計算を活用し、三次元地形と道路線形を同時に可視化しつつ坑口位置を設定できる点が特長です。
断面形状、土工幅員、坑口付け形状、背面切土、面壁形状などをパラメトリックに設定し、地形を考慮した坑門工比較案を自動生成できるため設計案ごとの比較が容易になりました。
さらに、三次元地形に対する面計算により切盛法面や土量も把握でき、地形条件を踏まえた最適化が効率的に行えます。
従来数週間を要していた複数案の作図・比較作業が数時間で完了するようになり、3D道路設計で培われた地形処理技術とトンネル設計特有の坑口位置検討を融合することで、実業務に即した検討が可能となりました。

図-2 山岳トンネル坑口位置検討機能
成果と今後の展望
今回開発した3機能により、建築限界、シールド断面、坑口位置といったトンネル計画の根幹となる検討を、道路設計から一貫して実施でき、設計プロセスの最適化と品質の安定化を図ることができました。
従来は個人の経験に頼っていた検討作業を、誰もが一定の精度で再現できるようになりました。
パラメトリック設計に設計者の暗黙知を形式知へ置き換える機能を組み込むことで、知識を体系化でき、教育・技術伝承・業務効率化・ミス防止に寄与します。
さらに、道路とトンネルの設計データを一体的に扱えることで、分野横断の情報共有と協働設計が容易になり、作業時間の短縮とBIM/CIMやDX推進に直結します。
設計条件変更や比較案の検討も柔軟に行える三次元設計環境基盤が整い、若手技術者が実際の設計操作を通じて学べるOJT環境も強化されつつあります。
今後もユーザーと開発者が協働し、現場実務に寄り添った改良を重ねることで、道路・トンネル双方の分野にとって有用な三次元設計ツールへと発展していくことが期待されます。
この記事は「建設ITガイド」2026に掲載されたものです
公開日:2026-05-26
ソフト詳細
STRAXcube














