建設ソフトやハードウエアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。
堤防・樋管設計で平均57%の省力化を実現 ― 3D設計システムが変えた業務プロセス—
日本工営株式会社
V-nasClairシリーズ 河川設計システム「RIVER_Kit」「RIVSTR_Kit」
日本工営株式会社
所在地:東京都千代田区
設立:1946年6月
資本金:5億円
従業員数:2,046名(2025年6月30日現在)
主な事業内容:国内外のインフラ(河川・道路・都市・環境など)の調査、設計、工事監理、マネジメントなどのコンサルティング事業

(左から)
中央研究所 デジタル基盤推進センター
梅木 康太朗 氏
流域水管理事業本部 河川水工部 課長
松下 朋哉 氏
流域水管理事業本部 河川水工部 部長
大瀧 諭 氏
河川水資源事業部河川水工部
鈴木 智子 氏
日本工営株式会社は、1946年創業の建設コンサルタントである。
国内外でインフラの整備・維持などに関わる調査、計画、評価、設計、工事監理などのコンサルティング事業に携わり、豊富な実績を有している。
160以上の国と地域での実績があり、インフラ整備を通じた国際協力にも貢献してきた。
近年はBIM/CIMやDXを活用した設計効率の向上や、カーボンニュートラルに向けた技術開発にも力を入れている。
確かな技術力と人材で、持続可能な社会づくりに挑戦し続けている。
BIM/CIMの先進的な取り組みで業務効率化を推進
河川構造物の設計において、日本工営株式会社 河川水工部(以下、日本工営)は早くからBIM/CIMの活用に取り組んできた。
日本工営は、荒川第二・第三調節池など大規模案件をはじめ、関東地方整備局や北陸地方整備局など全国規模のプロジェクトにまで展開されており、先進的なBIM/CIMの活用に強みを有している。
特に、作成した3次元モデルをリアルに可視化し表現する技術に定評があり、ゲームエンジンを用いてモデルを作成することで、デザインやビジュアルの細部まで配慮している。
また、このようなリアルなモデルを作成することで、従来の2次元図面では把握しにくかった設計意図や課題を直感的に理解できるため、関係機関からも高い評価を得ている。
これらの取り組みに加え、近年では、堤防や樋門といった構造物設計において、簡単に図面作成や数量の算出ができないか、自動設計を視野に入れた検証も進められていたという。
設計者の知見を反映し、実務に即した機能拡張を実現
当初、日本工営はかねてよりRFA 研究会※でやり取りのあった川田テクノシステム株式会社(以下、KTS)に声をかけた。
KTSは、河川設計システム「RIVER_Kit」「RIVSTR_Kit」の開発・販売を手がけており、今回の協力により機能拡張・改良が実現した。
開発に当たっては、横断図への付帯構造物反映機能や、護岸の配置計画を自動で検討できる仕組みなど、設計担当者の“実務感覚”に沿った改善が行われている。
日本工営は、モデル事業や過去の実物件を活用し、これらの新機能が設計業務プロセスの効率化や省力化にどの程度寄与するかを検証した。
特に法線検討や図面作成の自動化、構造計算、数量計算など、日常の設計作業への具体的な効果を評価することに重点を置き、現場での実務感覚と技術的検証を両立させた取り組みを進めたのである。
また、日本工営の設計チームとKTSの開発チームは、それぞれの担当領域を分担しながら検討を進めたことで、課題整理から改善までを効率的に行い、短期間で高精度な成果を生み出すことに成功した。
日本工営担当者からは、「設計者の視点に立ってスピーディーに対応してもらえた」「一つの画面でモデル作成から計算まで完結できたのが驚きだった」との声もあり、現場目線の連携が成果につながっていることがうかがえる。
※RFA研究会…川田テクノシステムが河川に精通した建設コンサルタント7社と設立
設計業務プロセスの効率化と成果品の精度向上
機能拡張の結果、河川の設計業務プロセスの中でシステム利用の効果が大きかったのは、堤防設計における「法線検討」「図面作成」「数量計算」「BIM/CIMモデル作成」である。
従来は堤防線形を変更するたびに数量計算や図面修正が必要となり、一番手間がかかるところだったが、システムを利用することで平面・縦断・横断が自動で連動し、土工数量まで全て変わるので、自動化されることで比較検討が容易になったと担当者は語る。
また、3次元モデルから直接図面を切り出せるようになり、外注依存度の高かった図面作成工程を社内で完結できるようになりそうとのこと。
検証の結果、堤防設計・樋門設計ともに、予備・概略設計段階での省力化の効果が顕著であり、従来法では約3.5カ月かかっていた図表にある設計プロセスが、ソフト活用により約1.4カ月に短縮された。
平均57%の作業時間短縮ができたことが実証された。


デジタル技術で現場課題を解決へ
日本工営では、既設構造物の補修・改築設計において、手書き図面や紙資料からデータを再構築する業務も増えている。
そのため、KTSが現在研究開発に力を入れている、AIを活用した画像や動画から点群・モデル生成、点群のゴミ取りや欠落部分の補完などのデータ処理機能にも期待している。
「写真からのモデル化や点群補完、ノイズ除去など、手間のかかる部分を自動化できれば、現場の生産性はさらに高まる」と担当者は語る。
機能改良を通じて見えた次の展開
今回の実証を経て、日本工営ではV-nasClairシリーズを業務の高度化・効率化につながる設計計算システムとして活用し、他案件への展開も進めている。
システムにおいては築堤や樋門といった多様な河川構造物を対象に、予備設計から詳細設計まで対応していく仕組みの構築が目標であり、KTSとしては今後、AIや自動設計機能との連携を強化し、より実務に即した省力化を実現していく考えである。
両社は2カ月に一度の定例協議を重ねながら、現場の声を製品開発へフィードバックする関係が確立しており、設計現場の課題解決に貢献し続ける姿勢がうかがえる。

この記事は「建設ITガイド」2026に掲載されたものです
公開日:2026-05-26
ソフト詳細
RIVER_Kit

RIVSTR_Kit














