Tekla Structures
九州第一工業株式会社
所在地:福岡市西区
設立:1994年2月21日
資本金:1,000万円
従業員数:12名
主な事業内容:鋼構造物工事業
https://ksdi.jp

エンジニアリングアドバイザー
岩永 将信 氏
九州第一工業株式会社では2000年から3DCAD業務を展開、その後BIMなどを積極的に導入してきた。
2017年にTekla Structuresを導入、以降大小さまざまな案件に携わり、100を超える物件でモデリング、設計を行った。
その中でモデリング業務の効率化を図るため、Tekla Model Sharing、Trimble ConnectやRhinoceros 7Grasshopperプラグインなどを活用し、新たな設計システム
の構築と改革を推し進めている。
はじめに
九州第一工業株式会社は、鉄骨屋根における母屋を主力とした、鉄の製作施工会社である。
近年、建物の屋根形状は複雑化の一途をたどっており、弊社でも納期の遅れや形状の不一致などの問題が出ていた。
そこで他では製作できない形状に対応すべくBIMの導入に踏み切った。
現在では屋根以外にも鉄骨階段やルーバー他、さまざまな物件をモデリングから施工まで取り扱っている。
2Dで作る形状の限界
弊社ではTekla Structures(テクラ)を導入しており、テクラを軸としてモデリングはもちろん図面管理や製作展開、数量計算や工程管理などを一貫して行っている。
BIMを導入した結果、従来であれば作成が困難であった複雑な屋根の納まりも解決し、成功に導くことができた(図-1)。

図-1 ねじれた鉄骨階段モデル
発注者との意識のズレ
BIMを扱う上で弊社が最も苦戦した問題が、発注者と意識共有がスムーズに行えないことでモデリング作業が停滞し、工期に影響が生じることであった。
発注者側は主に2D図面を元に設計や修正を加えていくのだが、弊社は3Dでモデリング設計を行っていくのでどうしてもデータの情報量の差や管理不足、データ変換のタイムロスなどにより工程感のズレが生じていた。
そもそも弊社で取り扱う物件は2Dで納めるにはあまりに困難な形状などがほとんどであり、2Dでやり取りするというのは現実的ではない。
自社だけでなく他社ともBIMモデルを共有して活用するために、弊社はTekla Model Sharing(モデルシェアリング)とTrimble Connect(トリンブルコネクト)を使い、発注者とのコミュニケーションの改善を図った。
Tekla Model Sharing
BIMで物件を取り扱う中、モデリングを他の会社と同時並行で行う物件もあった。
このとき、別々の3Dソフトを使用してデータ変換を行いやり取りすることや、同じソフトでもデータは別々で工区分けなども2D図面上で行うことがほとんどであった。
しかしこのようにモデリングを進めていくと別モデルでのやり取りの数だけコミュニケーションエラーの可能性は高まり、工区分けも平面図だけで行うので入り組んだところが曖昧になってしまう問題があった。
そこで、モデルシェアリングを使い問題解決に挑戦した。
モデルシェアリングとは参加するユーザーが同じバージョンのテクラを使用し、共有モデルを立ち上げれば、同一モデル上で同時にモデリング作業が行える機能のことである。
ユーザーが共有モデルの変更を取り込むと、変更や追加、削除された箇所が色分けされて表示されるため、視覚的に確認することができる。
細かい工区分けやモデリングの細部まで分担作業が可能になり、モデリングや、設計作業が飛躍的に効率化された。
モデルシェアリングによって、いつ誰が何をモデリングし、図面を作り、修正しているのかをログで追いかけ管理することができるため、ヒューマンエラーも限りなく減り、現場で部材が合わないということも防げるようになった(図-2、3)。

図-2 モデルシェアリングのログ

図-3 モデルシェアリングの管理画面
Trimble Connectとは
Trimble Connectは、リアルタイムなBIM情報の共有が可能なクラウドベースのコラボレーションプラットフォームで、Trimbleより無償版が提供されている。
無償版があることによって物件に携わる全ての業者に対して気軽に利用を勧められる。
ソフトの使い方も直感的で一度覚えればすぐに使えるので、BIMと連携できるコミュニケーションツールとしてこれ以上のものはないと断言できる。
また、トリンブルコネクトにはテクラと簡単にモデル共有ができる機能があることも大きなメリットだ。
弊社がモデリングを行う間、トリンブルコネクトにアクセスすればリアルタイムで変更箇所がアップロードされていくため、設計者や発注者との意識のズレも起きにくくなる。
結果として円滑なコミュニケーションが各セクションで可能となりモデリングがスムーズになった。
モデリング作業にかかる負担
レンダリングによる提案力の強化
最後にレンダリング機能とGrasshopper(グラスホッパー)プラグインを紹介する。
テクラにはレンダリングした後のビュー機能が備わっており、より視覚的にモデルの情報を読み取ることができる。
一般的にレンダリングは専用のソフトで光源や太陽、オブジェクトのシェードやマテリアルの光沢感など、時間をかけて決めなくてはならないが、テクラでは全て自動的に行われる。
これにより素早い簡易的なパースの作成や提案に成功している(図-4、5)。

図-4 テクラによるレンダリング画像1

図-5 テクラによるレンダリング画像2
グラスホッパーの可能性
ここまでBIMによる効率化を話してきたが、BIMはモデルを正確に入力することが非常に重要になる。
そこで従業員のモデリングのへ負担を軽減するための手段の一つとして、将来的にはグラスホッパープラグインによる管理を検討している。
グラスホッパーとはRhinoceros7に搭載されているプラグインであり、現在テクラとグラスホッパーはソフト間でコラボレーションできるようになっている。
Rhinoceros上で入れたラインカーブや平面に沿って部材を入出力でき、この値は数値を入れるだけで座標などを握る必要もない。
つまりスケッチ段階から半自動でモデリングが可能になり、手入力の部分が圧倒的に減るのである。
現在弊社では実験段階にありグラスホッパーを使った物件は10件に届くところまで増えてきているが、将来的には全ての物件で使用できることを最終目標に置いている(図-6)。

図-6 グラスホッパープラグインの作業画像
最終更新日:2025-05-28
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