GLOOBE Architect
株木建設株式会社
所在地:東京都新宿区
設立:1921年4月
資本金:27億円
従業員数:357人
主な事業内容:総合建設業、エンジニアリング、
都市開発、環境整備、不動産など
https://www.kabuki.co.jp/

建築設計の世界では、時代とともに大きな変革が起こってきた。
手描きの設計図から、コンピューターを活用した2次元CAD、そしてBIMの登場など、設計プロセスは大きな変化を遂げてきた。BIMの登場による3次元モデルを中心とした設計アプローチで、設計の可視化と検証が容易になり、設計変更への対応も迅速化された。株木建設株式会社でもBIMを取り入れているが、BIMを導入したきっかけやBIMを用いてどのような取り組みを行っているのかをまとめていただいた。
BIMを始めたきっかけ
BIMという技術の存在はだいぶ前から知っていて、とても気になっていた。
設計者としての技術的な興味はもちろん、国のBIM推進の動きも強まる一方であり、われわれも早く始めなければという焦りもあった。
当時、弊社ではすでにGLOOBEArchitectを導入してBIM研究に着手していたが、実務への導入は進まず半ば停滞していた。
GLOOBEをいち早く導入したにもかかわらず、さまざまな事情で設計者への普及が遅れ、その使用機会は急速に減っていた。
それではまずいと考え、ボトムアップの形でBIM導入リスタートの道を探り始めた。
とはいえ長年のJw_cadユーザーだったものが即座にGLOOBEに乗り換えられるわけがなかった。
まずは操作のトレーニングから始めた。
もちろんテキストを見ながらの独学だった。
具体的には竣工済みの自社物件を素材に、その図面等々を見ながら一から入力し直していくやり方で、自社物件の3Dモデルをコツコツと作っていった。
不明な所はマニュアルを参考にしたり、電話サポートなどを利用した。
特に福井コンピュータアーキテクトの電話サポートはとことん使い倒した。
実際GLOOBE自体、コマンドを分かりやすく上に示してくれるなど取っつきやすい操作性だったことにも非常に助けられている。
GLOOBEの操作画面では、入力していくとすぐ横にその3Dモデルがリアルタイムで現れ、自分の設計を目で見て確かめられる。
つまり仕上がりを容易にイメージできる。
作っている本人がイメージしやすいということは、ご覧になるお客さんにとってはさらに見やすく、伝わりやすい。
GLOOBEの場合、国産BIMで法規チェック機能の素晴らしさを聞いていたが、プレゼンにおいても大きな力を発揮するに違いないと直感した。

ボリューム解析による検討
BIMプロジェクト新東京本社建設
通常業務と並行しながらGLOOBEの操作を学び始めて数カ月が過ぎた頃、BIMのチャレンジはさらに大きな転機を迎えた。
新規大型案件、グループ会社の新社屋建設プロジェクトの設計作業後半をBIMを用いて実施することになったのだ。
株木建設は2021年に創立100周年を迎えたが、新社屋建設はこれを機に動き始めた。
全社的なプロジェクトだった。
東京・目白通り沿いの敷地にSRC+鉄骨造の7階建てで総面積約3,000平方メートル弱の新社屋を建設し移転する計画である。
この新社屋はオフィス棟と倉庫棟を備え、高断熱化や高効率空調、太陽光発電など最新のZEB技術を結集した建築となる。
今回は同プロジェクトの基本プランとデザインが仕上がったところで、BIMを用い始めた。

本社ビルの断面
GLOOBEを触り始めてわりとすぐのことだったが、社内へのBIM普及のためにもと、思い切って引き受けることにした。
ただし、そんな状態で引き継いだので、以降の進行はステップごとにマニュアルなどを見て一つずつ確認しながら進めざるをえなかった。
具体的には、基本デザインをベースにモデルを作り、建築基準法の審査に必要なデータも入力。
さらにGLOOBEの法規チェック機能を利用して確認審査に提出した。
いわば実案件を通じてBIM設計の流れをトレースしながらGLOOBEの機能を一つ一つ試し、“BIMでどこまでやれるのか”手探りで確かめていったのだ。
最終的には、実施図面まで全てをほぼ1人でGLOOBEで仕上げることができた。
このような進め方だったので、作業速度は思うほど上がらなかったが、それでもGLOOBEの威力は十分以上に体感できた。
まず例に挙げると、法規チェック機能だ。
確認申請を行う以上、法規関連のチェックは不可欠の作業だが、以前使っていたJw_cadでやるには、自ら電卓を打って計算し表を作って行うしかなかった。
ところが、GLOOBEなら入力したモデルをそのまま判定してくれる。
後はそれを図面化するだけだ。
実際、この関連の作図時間はかなり短縮できた。
一方、難しく感じることが多かったのは、実施図の作成であった。
自分が入れたモデル精度がそのまま図面に反映されるのは同じだが、実施図レベルになるとそれが大きな問題になる。
どうしてもうまく表現できない箇所が目に付き、気になってしまった。
結局モデルに戻って直し、また図面に行って再作成を繰り返すなどしてかなりの時間がかかってしまった。
時には2Dの方が楽だと思ったこともあったほどで、そこからJw_cadに移して2Dで進めるなどの選択もあったが、GLOOBEによる実施図作成にこだわった。
なぜならBIMが生み出すメリットと可能性の大きさを強く意識するようになっていたからである。

確認申請に必要な面積の自動計算
BIM運用の多彩な副産物というメリット
GLOOBEのBIM設計に慣れてくるとどんどん可能性が広がり、いろいろ試したくなっていった。
例えば、1人でやると随分時間を取られる面積表作成なども簡単にできて速いし、モデルさえ入れてしまえば、その副産物でさまざまなメリットが生まれると実感した。
また、一番苦労した実施図もGLOOBEはモデルさえ直せば関連する他の図面も連動して即座に全部直るわけで、修正にも強いと感じている。
正確にモデル入力しようとすれば、BIMは確かに時間がかかるが、最終的な成果物までの期間で考えれば、やはり相当に効率化できたのは間違いない。
実際、2Dであの物件を確認申請や実施図までやったら、2人がかりでも3カ月では到底終わらなかっただろう。
新東京本社の建設は以降順調に進み、2022年7月に着工。
2024年3月に竣工した。
もちろん設計部門では既に5件目となるBIM設計の新規設計施工案件に取り組んでいる。

設備の干渉チェック
先述のとおりGLOOBEは入力した内容がすぐ3Dの形で出るのですごく分かりやすくイメージしやすい。
それにモデル入力では部材の大きさなど具体的な数値を入れるので、“現場ではこういう所に使うのだ”と実感できるから、建築の勉強にもなる。
このGLOOBEの「イメージしやすさ」については、お客さまもイメージしやすい。
実際、GLOOBEを使ったプレゼンはお客さまの食いつきが全然違った。
先日も設計のディティールを3Dでお見せしたら“こうなってるのか”と社長自ら前に出て来られ、要望に応えて即座に修正したら“時代が進んだなあ!”なんて言葉までいただいた。

打合せにもGLOOBEモデルを使用
そして、施工BIMへ
現在、意匠設計担当の9割がGLOOBEユーザーとなり、計画レベルでの活用を含めると自社設計施工案件の全てでBIM設計を用いるようになっている。
そして新たなステップ──施工BIMへの取り組みも始めている。
弊社の今後の展開について、基本的には自社の設計施工案件は設計・施工ともにBIM100%を目標に実現していく。
つまり設計側は計画から基本設計、実施設計までやってBIMで施工に渡す。
そして施工もBIMで進めBIMでまとめ、竣工図までBIMで作ってデータを残す。
これを3年で実現したいと考えている。

施工モデルへの活用
最終更新日:2025-05-28
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