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成功事例集

建設ソフトやハードウェアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。

施工BIMへの取り組み~創意工夫でBIMに挑戦~

三和建設株式会社

GLOOBE


三和建設株式会社
所在地:大阪府大阪市
設立:1947年5月
資本金:1億円
従業員数:178名
主な事業内容:創業76年の総合建設会社。
食品工場建設「FACTAS」、倉庫建設の「RiSOKO」、社員寮建設の「HuePLUS」という3ブランドで、これらを主柱とするブランド戦略を展開している。

三和建設では「建設DX」「働き方改革」「完全週休二日制」を目指し2019年夏頃よりBIM導入の検討に入る。
さまざまなBIM活用部署を見学し検討を重ね2020年9月J-BIM施工図CADを導入。
2021年4月に追加導入し、本格的な施工BIMに取り組み始める。
月2回のBIM勉強会「灼熱・BIM塾」を通して施工BIMを定着させGLOOBEに移行後も着実な深化を計っている。
 
 

はじめに

BIMへの取り組みはここから始まった。
 
「建設DXってよく聞くけどなんやろう?BIMって関係あるのかな?働き方改革って何?どうすればいいんやろう」
「デジタル技術を使った業務改革のことで、BIMもその一つで、うまく活用することで今まで以上に効率が上がるらしいですよ」
「デジタル化って想像つくけどBIMって想像つかんよね、でも何とか効率を上げるためにBIMを使いたいなぁ」
その答えを知るため、ある大手ゼネコンにお願いし、見学させていただいた。
そこは施工図作成を一手に引き受けている部署で、海外2社のBIM製品を使い大勢のスタッフで取り組んでいた。
 
「海外製品?大勢のスタッフ?うちでそんなことできるんやろうか、どんなBIMソフトを選べば…」
「お金もかかりそうですし、うちの人数で取り組むには難しそうな気がします」
もっと扱いやすい他のBIM製品を探すことになった。
 
 

出会い

ある大手有名代理店に相談し、国産BIMを開発している会社を紹介してもらった。
福井コンピュータアーキテクト株式会社である(以下、FCA)。
 
早速商品の説明に来社してもらった。
そこで出会ったものが、施工図作成BIMのJ-BIM施工図CADであった。
躯体モデルからの躯体図作成、足場図作成のための仮設計画ツールなど施工図作成に特化していた。
しかし、話を聞くだけでは決めきるまでには至らなかった。
 
「思ったような施工図を作成できるかどうか不安があるなぁ」
「操作関係にも不安が残ります」
ある日その不安を一蹴することとなる。
東京よりJ-BIM施工図CAD開発技術者が来社し、操作説明を行った。
あっという間に3Dモデルを作り、施工図を描き上げた。
 
「これはすごい!まるでマジックのようだ!」
「僕でも使えそうですね!」(図-1)こうしてJ-BIM施工図CADの導入が決まった。
しかし、これは単にデモに幻惑されたからではない。
明確な理由がそこにはあったのである。
他のBIMは多くのスタッフが必要で、その製品は操作が広範囲にわたるため技術者一人で扱うのは難しく、専任のオペレーターが必要であった。
しかし、J-BIM施工図CADなら技術者一人である程度のモデルを作成でき、図面を仕上げることが可能だった。
こうしてJ-BIM施工図CADの導入を決めたが問題はその先にあった。

図-1 J-BIM施工図CAD
図-1 J-BIM施工図CAD

 
 

学びの継続と工夫

導入したのはよいが、聞きなれない単語が多く馴染みにくい。
 
「買うのは簡単。お金が解決するけど使うのは困難やなぁ」
「どうしましょう?このままでいけば宝の持ち腐れになるかもしれません」
「相談する相手もいませんし、一人で問題解決は無理…」
「なら詳しい人に教えてもらおうか」そこからはBIMのWebセミナーを次々受講し、多くのBIM専門家の話を聞いた。
 
そんなあるとき「この人こそ!!」という講師にめぐり逢う。
早速連絡を取り、協力を依頼した。
学ぶ機会の定着と機能を習得するため、月2回じっくり半日かけてBIMについて楽しく学ぶ「灼熱・BIM塾」が誕生。
  
まずは60回を通して施工図モデルの作成、操作の習得、3Dモデルを用いた納まりの確認ができることを目指した。
この「灼熱・BIM塾」の学びの秘訣は若手の能力とベテランの経験値の融合による内容の充実である(図-2)。

図-2 灼熱・BIM塾
図-2 灼熱・BIM塾

 
2022年2月よりJ-BIM施工図CADからGLOOBE Construction(以下、GLC)に移行した。
参加メンバーは20代から60代の幅広い年齢層でスタート。
もし若手だけであれば、マニュアル操作のみ熟練されて実務に反映されにくい成果品となる懸念がある。
もしベテランだけであれば、従来どおりの2次元CADの方が扱いやすいため、新しい取り組みに抵抗を感じるという懸念がある。
 
「仮設足場の納まりってどうでしたっけ」
「出隅、入隅の結合が大事やぞ、GLOOBEでどう入力するんや?」
「結合コマンドで簡単にできますよ。そういえば、この場合、庇の段差はどう納めるんですか?開口の抱きの納まりはどうでしたっけ?」
「じゃあそこのモデルを作ってみようや」(図-3)

図-3 躯体抱き形状
図-3 躯体抱き形状

 
若手はベテランから学び、ベテランは若手から学ぶ。
お互いに支え励ましあう環境が整った。
さらに講師自身が操作上の問題点に気付くことができる。
また、施工者側として必要な機能と運用方法についての理解が深まり、他の講習会をするときに役立っているようだ。
お互いに学んでいくことで新たなテーマに気付くようになった。
国産施工BIMの良さと課題である。
 
 

国産施工BIMの良さと課題

J-BIM施工図CAD導入後、J-BIM研究会主催の「J-BIM施工図分科会」への参画によって社外コミュニティーが形成できた。
J-BIM施工図CADのユーザー間で活用方法や成功事例について、実務者同士で生きた情報を共有し、企業間の枠を超えてユーザー同士が意見交換をすることで、業務改革や人材育成につなげられた。
中でも早急に回答が必要な問題が見受けられたときはその場で開発技術者に連絡を入れ、即時解決できたこともある。
また、ユーザーが主体の「J-BIM施工図分科会」は福井コンピュータアーキテクト主催の「Japan-BIM Connect」へと進化している(図-4)。

図-4 GLOOBE社外コミュニティ
図-4 GLOOBE社外コミュニティ

今や開発技術者と意見交換会を開催できる環境も整ってきた。
 
GLCを活用することで施工図の立体化による問題点の見える化で意思疎通が円滑になった。
コマンド一つで現場員の知りたい断面形状(断面図)が即座に作成でき、いち早く躯体の形状理解ができるようになった。
また、点群アシスト機能の活用により、足場と隣接建物などの周辺環境との取り合いが可視化し、現地に適した仮設計画が可能になった。
図面が作成できるにとどまらず、仮設部材の数量や土量の算出がボタン一つでできることも大きい(図-5)。

図-5 仮設計画
図-5 仮設計画

 
「そろそろ次の段階へいくころちゃうか」
「平面詳細図をGLCで作られへん?」
「残念ながらGLCでは平面詳細図が作成できないんですよ」
「じゃあ意匠系のGLOOBE Architectをうまく活用できへんのかな」
「じゃあやってみるか」
早速GLOOBE Architect(以下、GLA)を導入、「灼熱・BIM塾」で培った技術を生かし、なんとか平面詳細図を作成することができた。
しかし、思うような成果品にはならなかった。
 
GLCを運用する上でも課題が見受けられる。
例えば土工事計画の掘削法面が土留め壁を貫通し不可解なモデルが作成される(図-6)。
また、仮設計画では布材の細かなレベル調整や副資材の調整が困難である(図-7)。

図-6 土工事計画
図-6 土工事計画
図-7 仮設取り合いの確認
図-7 仮設取り合いの確認

 
屋上などの勾配に関するモデル作成には思った以上に時間がかかる。
 
同じGLOOBEであってもGLAからGLCへのデータ移行は円滑に行えるが、なぜかその逆はダイレクトにいかず、いったんIFC形式ファイルに変換しなければならない。
現在BIMのシェア率は国産BIMよりも海外製BIMの方が圧倒的に高いため、他社との連携が難しいのも課題の一つと考えられる。
 
 

施工図の深化と展望

「施工では工区割りとか工程計画って大切よなぁ、それをGLCで表現できないんかなぁ」
「一応はあるのですが、土工事の工区割りと工区ごとの数量算出ができないんです」
「正確な躯体図を作成するためには配筋納まりって大切よなぁ、それをGLCで表現できないんかなぁ」
「他社製品で配筋検討編集ソフトがあるようなのですが」
「それ使ってGLCにデータ統合して納まりを確認してみようか」
「他社製品で躯体断面などの配筋編集はできるのですが、今のところGLCでは読み込めないんです」
「そうか、今後に大いに期待したいな」(図-8)

図-8 躯体3D配筋納まり
図-8 躯体3D配筋納まり

 
近い将来、工事に携わる各協力会社と3Dモデルデータを共有し、問題点の早期発見に努め、工期短縮と品質向上を目指したいと言う。
さらに建設DXや働き方改革、完全週休二日制の実現のため、これからも福井コンピュータアーキテクトとともにGLOOBEの機能の充実と発展に尽力していきたいとのことだ。

最終更新日:2024-05-08




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