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成功事例集

建設ソフトやハードウェアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。

土木・建設をデジタルツインで効率化 安価・高速・簡単がそろったMatterport

東急建設株式会社

Matterport「デジタルツイン&3Dスキャナー」ソリューション

東急建設株式会社
所在地:東京都渋谷区
創立:1959年11月
資本金:163億5,444万円(2024年3月31日現在)
従業員:2,471名(2024年3月31日現在)
主な事業内容:総合建設業
https://www.tokyu-cnst.co.jp

池田 仲裕 氏   岡本 哲 氏   名和 美琴 氏
都市開発支店 鉄道土木部   都市開発支店 鉄道建築部    都市開発支店 鉄道土木部
デジタルテクノロジー     神奈川新町駅         デジタルテクノロジー
統合推進事務所 所長     長期整備計画JV作業所 所長  統合推進事務所 技術員
池田 仲裕 氏          岡本 哲 氏          名和 美琴 氏

 

東急建設株式会社は、鉄道・道路・トンネル・橋梁などのインフラ建設を基軸事業とする総合建設会社。先進的なデジタル活用企業でもあり、東京メトロ銀座線渋谷駅移設プロジェクトでは国土交通省の「i-Construction大賞」優秀賞や日建連の土木賞などを受賞。特にBIM/CIMの積極的な導入と実践は高く評価されている。
土木・建設事業の現場ではMatterportを取り入れており、現況調査や出来形管理業務で活用中だ。東急建設ではMatterportのデジタルツインを「過去と現在をつなぎ、現在から未来を見通すソリューション」と位置付けている。
 

渋谷駅周辺再開発はBIM/CIMで進行中

東京・渋谷駅周辺で進行中の「100年に一度の規模」と言われる複合再開発。
既存ビルの解体と土木・建設工事が同時並行で進むこのプロジェクトの施工管理を従来の2D図面で行うことは困難だ。
東急建設を中心とする本プロジェクトでは、BIMとCIMを融合・一体化した運用を行い、効率的かつ確実な施工に努めている。
その成果が評価されて「東京メトロ銀座線渋谷駅移設プロジェクト」はBIM/CIMの国土交通省の「i-Construction大賞」優秀賞を受賞した(図-1)。
 
図-1 銀座線渋谷駅移設プロジェクトでは3D統合モデルを現場事務所で内製化して作成
図-1 銀座線渋谷駅移設プロジェクトでは3D統合モデルを現場事務所で内製化して作成
 

デジタルツインで業務を効率化―渋谷駅周辺工事

渋谷駅東口の地下には、2020 年に完成した巨大な雨水貯留施設がある。
この施設は以後、人が立ち入ることができないため内部の記録を写真ではなく、デジタルツインで残したいと東急建設では考えた。
その時に出会ったのがMatterportのデジタルツイン・ソリューションだ。
実機を操作してみたところ、その操作は非常に簡単であり、担当者が感心するほどだった。
 
それまで東急建設では、測量作業のために複数の地上型レーザースキャナーを利用していた。
だがこれらの機器は高価である。
現場に3Dスキャンのニーズがあっても、何台も購入することはできない。
また、スキャン後の点群データの処理はICT部門に依頼せざるを得ず、リードタイム短縮が課題となっていた。
 
一方、Matterportの3DスキャンカメラとAI搭載の撮影アプリは、点群データと4K画像を全自動で位置合わせ(レジストレーション)する。
東急建設ではMatterportで得られた点群データと計画3Dモデルを統合させることで、2D図面を単に3D化しただけでは気付きにくい課題の早期発見・早期解決に応用している。
 
Matterportのデジタルツインを特に活用している分野は、現況調査、出来形管理、工事関係者とのコミュニケーション、報告業務などだ。
鉄道関連施設(駅など)の内部から街区までをデジタルツイン化し、現況調査に利用している。
出来形管理の業務もリモートで進められるため、調整作業の工数も減った。
デジタルツイン内部にタグ付けを行って情報を付加・共有すれば、PCやタブレット端末で現場の状況の多くの事柄を確認できる。
発注者側と施工側、本部と現場をつなぐ情報のプラットフォームとして、Matterportは業務効率の向上に貢献している(図-2)。

図-2 (上)Matterportカメラで現場をスキャン作業している様子   
図-2(下)現場職員によって撮影されたデジタルツイン
図-2(上)Matterportカメラで現場をスキャン作業している様子
  (下)現場職員によって撮影されたデジタルツイン

 

図面のない施設もデータ化―京急東神奈川駅など

京浜急行電鉄の京急東神奈川駅と神奈川新町駅の改修工事を東急建設が手がけた際、駅舎の図面は保存されていたが、法面や擁壁など周辺構造物のデータはなかった。
足場を組むために必要な情報をまとめるためにMatterportで点群データを取得し、傾斜地にある植栽や柱などの構造物を可視化した。
点群と3Dモデルの統合によって、詳細な足場計画の立案を効率的に行うことができた。
作成した3Dモデルは検討段階での使用はもちろん、発注者や諸官庁との協議にも使用できる。
 
Matterportで特に利便性を感じているのは、従来ならば高所作業車を必要とする高い場所の測量も容易に行える点や、Matterportカメラのスキャンの速さだ。
従来の巻き尺を使う作業では1日掛かりの測量も、Matterportならば2時間で完了できた。
一般的なレーザースキャナーは1地点のスキャンに2~3分を要するが、Matterportは18秒程度。
マーカー設置も不要だ。
 
価格面でもハイエンドのレーザースキャナー1台分の費用でMatterportカメラを6台も購入できる。
Matterportのデータはクラウド上に格納され、Webブラウザで再生できる。
データ処理のための高性能PCや専用ソフトも不要だ。
使いやすさに加え、こうした現場配備のしやすさも魅力だ(図-3)。

図-3計測データを点群データに変換後、法面の3Dモデルを作成して足場計画モデルと統合 (左)点群データに変換   
図-3計測データを点群データに変換後、法面の3Dモデルを作成して足場計画モデルと統合 (右)点群から3Dモデル化
図-3 計測データを点群データに変換後、法面の3Dモデルを作成して足場計画モデルと統合
   (上)点群データに変換
   (下)点群から3Dモデル化

 

新規プレゼンや施工立案、課題検証にも使う

デジタルツインは関係者の合意形成をスムーズにする。
施工フェーズだけでなく、新規案件の入札時のプレゼンでもMatterportは効果を発揮している。
発注前には周辺データを入手できないことが多いが、Matterportで撮影し、点群データも取得しておけば3Dモデルをあらかじめ準備できる。
 
プレゼンで使えるほか、施工計画の立案でもクレーンなどの重機の動線や可動域の確認に効力を発揮する。
東急建設では、時間軸での変化をデジタルツインに取り入れて表現する「4D-CIM」による施工シミュレーションを行っている。
3Dモデルを回転させながら確認することで、施工における課題や難所の検証がスピーディーになった(図-4)。

図-4 Matterportの計測データを基に現場で作成した重機作業のシミュレーション
図-4 Matterportの計測データを基に現場で作成した重機作業のシミュレーション
 

業務変革こそが重要―東急建設のDXの考え方

東急建設のデジタルテクノロジー統合推進事務所では、建設DXは単なるデジタル技術の利用ではないと考えている。
目標を明確化し、問題解決に必要なソリューションを導入して、業務そのものを変革させる。
発注者とともに新たなデジタル技術を活用し、多角的な視点でさまざまな問題点を顕在化させ、解決へと導く。
そうすることで付加価値が生まれる。
だからこそ内製化が重要だ。
 
Matterportで作成するデジタルツインは、いうなれば「過去と現在をつなぐツール」だ。
デジタルツイン内部で、既存構造物の撤去や新規設置といったシミュレーションも格段に容易になった。
Matterportがあれば「未来について話し合える」。
使い手の創意工夫で、さまざまな場面の業務効率に活用できるだろう。


最終更新日:2025-05-26




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