建設ITガイド

トップ >> 成功事例集 >> 建築特化型画像生成AIを用いた建築パース作成業務の効率化
成功事例集

建設ソフトやハードウェアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。

建築特化型画像生成AIを用いた建築パース作成業務の効率化

東急不動産株式会社

建築特化型画像生成AI「Rendery」

東急不動産株式会社
所在地:東京都渋谷区
設立:1953年12月
資本金:575億5,169万9,228円
従業員数:1,239名
主な事業内容:住宅事業、都市事業、不動産鑑定業など
https://www.tokyu-land.co.jp/
 

高橋氏、高田氏
DX推進部 係長         DX推進部 上席主幹
高橋 孝太朗 氏         高田 昌史 氏

 

東急不動産は、既存の外観デザインやパース作成にかかる業務の効率化を推進するべく、最新テクノロジーである画像生成AIを用いたアプローチを検討し、株式会社SAMURAI ARCHITECTSが提供する建築特化型画像生成AI「Rendery」を導入するに至った。
3カ月のトライアルを経て実務での具体的な活用方法の方針が明確化し、各部署で本格的な活用が進んでいるという。
画像生成AIという最新の技術を既存業務にてどのように活用し、業務効率化を実現しているのかに関して同社DX推進部の高田氏、高橋氏に話を伺った。
 

画像生成AIを用いた業務改善の背景

現在、多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する中、業務効率化を目指した生成AIの導入が注目されている。
そのような中、東急不動産では、建築業務における長年の課題を解決し、既存業務の大幅な効率化を目標に生成AIの導入を検討。
2023年度より調査を進め、2024年度からは株式会社SAMURAI ARCHITECTSの建築特化型画像生成AI「Rendery」のトライアルを実施、現在は各部署内での本格的な導入が実施されている。
 
「東急不動産にはマンションやオフィスビル、商業施設、リゾートホテルのほか、最近では再生可能エネルギーや物流施設の開発も手掛けるなど、多様な事業領域があります。各部門の開発担当の業務課題の一つに、外観デザインやパースの作成に膨大な時間を要し、それが他の業務の進行に影響を及ぼしていた点が挙げられました」と語るのはDX推進部の高橋氏。
 
従来マンションなどのパースデザイン案を作成する際には専門的な技術を持つデザイナーの方に依存しがちであり、外注先とのやり取りに多くのリソースを割かなければならなかったが、画像生成AIを用いたデザイン手法を導入し、0→1のデザインを作成する段階でデザイン会社とのやり取りを短縮することができるのではないかと考え、既存業務への画像生成AI導入を検討し始めたという。
 
多くの画像生成AIが選択肢として検討される中で、Renderyのトライアルを決定するに至った理由について、同社の高田氏は「Renderyを選んだ最大の理由は、日本語対応とセキュリティーの信頼性、そして建築分野に特化した高精度な生成能力です。海外製品も調査しましたが、英語のみの対応であったり、セキュリティー上の懸念があったりしました。その点、国内企業が開発し、日本語でのプロンプト入力が可能なRenderyは当社の要件にぴったり合致していました」と語る。
また高橋氏は「さまざまな画像生成AIサービスを比較検討する中で圧倒的なクオリティーをたたき出すRenderyを選択しました」と追加した。
 
Renderyが建築特化型サービスであることは、導入決定において非常に重要だったと語るのは高田氏。
「建築分野におけるAI活用の専門性が感じられる点も信頼性を高めた要因でした」と付け加える。
Renderyは、単なる汎用型AIではなく、建築業界のニーズを深く理解したツールになっており、部分編集や学習機能といった細かな機能面において他の画像生成AIサービスであるDALL-EやMid Journeyと比較した上で優れていると感じたため現状の業務における課題解決に寄与するのではないかと思い、導入に至ったと語る。
 

導入の現状

現在、Renderyは主に東急不動産の住宅事業ユニット(マンション開発など)と都市事業ユニット(オフィスビルや商業施設の開発・運営など)で使用されており、住宅事業ユニットでは、新築マンションの外観デザインや素材変更の試作に活用されている。
また、都市事業ユニットでは、既存のオフィスビルのリニューアルや緑化計画において、そのイメージを具体化するために利用されている。
 
特に既存のオフィスビルの緑化計画に関してはRenderyの部分編集を活用した非常に効果的なパース作成が実施されており、部門内ユーザーの活発な活用が見受けられるとのこと。
 
現在改修予定の施設エントランスのデザイン検討やオフィス周辺施設の緑化、デザインパターン検討など幅広い活用を実施しており、既存業務の効率化に大きく貢献している。
 
住宅事業ユニットにおいても、「デザイン作成の素養のない担当者でも簡単にパース作成やイメージ案の作成ができている」との声が上がっているとのことで、まさに空間デザインの民主化が実現されようとしていると言っても過言ではない状況になっている。
 
また、高橋氏は「2024年10月末でトライアルが終了し、11月以降正式導入することとなりました。現在Renderyの利用者数は28人ですが、来月にはさらに増加する予定です」と述べ、導入が急速に進んでいることを明らかにした。
「Renderyを使用することで、これまで時間がかかっていたデザイン案の作成や調整が、格段にスピードアップしました」と述べており、効果を実感している様子がうかがえる。

言葉(日本語)やスケッチなどから生成できる
言葉(日本語)やスケッチなどから生成できる

画像生成AIツール「Rendery」
画像生成AIツール「Rendery」

 

使用状況

具体的な使用状況

具体的にRenderyを業務のどの場面において活用しているかトライアル参加者に対してアンケートを実施したところ、45%と最も多くのユーザーが外観デザインにRenderyを活用していることのこと。
 
また機能面については特に部分編集機能が高く評価されていることが分かったという。
この結果から、主なユースケースは、現行の業務で多くの割合を占める既存外観デザインの検討時に特定部分のデザインを変更することであると分かったとのこと。
高橋氏は「外観デザインの微調整や細部の編集がこれまで以上に簡単になり、より高精度なデザインが実現できるようになりました」と話していた。
 

導入によって生まれた効果

Renderyを導入することによってもたらされた効果に関して高田氏は、「例えば、マンションのタイル素材を変更する際、以前は何度もデザイン会社とのやり取りが必要でしたが、現在ではRenderyを使って試作を短時間で行えます」と述べている。
このように、Renderyの導入により、社員自らが主体的にデザインを試行錯誤できる環境が整ったことが大きな変化をもたらした。
 
さらに、Renderyの導入は単なる業務効率化にとどまらず、社員が生成AIという最新の技術トレンドに触れる機会も提供しているという。
高田氏は、「新しい技術に触れることで、社員の視野が広がり、より高度なデザインを追求できるようになりました」と述べており、AI技術がもたらすポジティブな影響が社内に波及していることが分かる。
 

今後の展望

今後のRenderyの活用方針について、高橋氏は「現時点での成果をさらに発展させ、図面作成や平面図からのパース生成など、より高度な建築業務に対応させたい」と語る。
また、高田氏は「BIMデータとの連携など、設計・施工につなげることも視野に入れています」と述べ、建築・不動産分野での生成AIの可能性をさらに広げたいとの意向を示した。
 
さらに、生成AIの導入に伴う課題として、著作権や肖像権といった法的リスクへの対応が挙げられる。
この点に関して高橋氏は、「現在、画像生成AIの利用に関するガイドラインを策定中です。
これにより、安全かつ適切にAI技術を活用できる環境を整備したい」と語る。
同社は、AI技術の利便性を最大限に引き出しつつ、リスクを最小限に抑えるための取り組みを積極的に進めており、このような取り組みは最新技術を取り入れ、最先端のスキームを追求する姿勢として非常に理想的であると言える。
 
将来的には、Renderyを社内利用だけでなく、クライアント向けの提案資料や外部プレゼンテーションにも活用することができれば理想的だとのこと。
「これまで手間がかかっていた提案資料の作成が、Renderyを活用することで迅速かつ的確に行えるようになれば、クライアントとのコミュニケーションがさらに円滑になると期待しています」と高橋氏は語った。
 


最終更新日:2025-05-26




新製品ニュース

木造建築物構造計算システム「KIZUKURI Ver9.0」をリリース木造建築物構造計算システム「KIZUKURI Ver9.0」をリリース


建設ITガイド 電子書籍 2025版
建設ITガイド2025のご購入はこちら

サイト内検索

掲載メーカー様ログインページ



  掲載をご希望の方へ


  土木・建築資材・工法カタログ請求サイト

  けんせつPlaza

  積算資料ポケット版WEB

  BookけんせつPlaza

  建設マネジメント技術

  一般財団法人 経済調査会