Smart Construction
今井産業株式会社
所在地:島根県江津市
設立:1949年(創業1928年)
資本金:2億円
従業員数:260名
主な事業内容:総合建設業
https://www.imai-corp.co.jp/

土木部 次長 土木部 工務課 課長
大島 清司 氏 佐々木 哲也 氏
創業100 周年に向けICT施工の取り組みを開始
今井産業が2028年の創業100周年に向けて業務改革に動き出す中、土木部では2015年に本格的なICT施工の取り組みをスタートした。
折しも翌2016年に国土交通省が建設現場の生産性向上を目指す情報化施工の取り組み「i-Construction」を提唱した。
大島次長は「本当に時代の流れと当社の改革のタイミングが合致した感じでした。その一方で、2015年から土木部に新入社員が一人も入社しない状況に危機感を感じてもいました。社員が辞めない“居心地のいい職場”にいかに変えたらよいか。そこで土木部は『面白いことはやめない、面白いことをやり続けよう』とシフトチェンジしたのです。私も新しいものが好きな気質ですが、ICT施工の取り組みは職場環境の改善とも重なりました」と語る。
その後「楽しくワクワクすることを、自分で見つける、主体性をもって行動する」を活動方針に「技術推進室」を設置し、ICT施工、BIM/CIM関連業務の内製化などを進めた。
そこにはデジタルスキルを習得した若手が現場に出て、ベテラン社員との間に相乗効果を生む狙いがある。
さらに設置した「工務支援課」では、現場事務所のバックオフィス業務を担い、ICT施工の支援も視野に入れた建設ディレクターの養成を目指した。
採用実績もここ数年は2桁と好調だ。

図-1 ICT施工への取り組み
課題解消に向けてパートナーシップを締結
新たな取り組みがスタートしたものの、土木部内にはスペシャリスト不足とITリテラシーの格差が生じていた。
そこで社外のリソースの活用を考えて接点を持ったのがEARTHBRAIN社だった。
共創して課題解決に取り組む同社の「DXスマートコンストラクションパートナープログラム」に魅力を感じた。
「単にアプリを勧めるのではなく、当時抱えていた課題の解決に向けて一緒に改善していける感触が持てました。国土交通省が新たに掲げた『ICT施工StageⅡ』のノウハウもかなり蓄積していて、方向性を提示されたのも大きかったです。目先の改善だけでなく10年後、20年後も考えてパートナーシップを結べる会社を探していたので、他社を上回る信頼感がありました」と大島次長は振り返る。
こうして、大きく次の3点で共同歩調をとっていった。
- 「ICT施工StageⅡ」に向けて実際の現場を選定してデジタルツインの活用に挑戦する
- 生産性向上に向けて新技術に積極的にチャレンジする
- DXの基礎と「Smart Construction」の各ソリューションについて演習形式で紹介し習得を目指す
これらを核に両社のチャレンジが始まった。
ICT施工StageⅡを実際の工事現場で遂行
ICT施工の課題解決に向けて、現場での陣頭指揮に当たる佐々木課長は、次のように語る。
「無駄な作業を効率化できるなら、新技術は使いたかったです。そこで改善点を明らかにして、バージョンアップにつながればと思いました。EARTHBRAINの『SmartConstruction』の機能は、私たちの目標と一致していて、他社をしのいでいましたね」
最初に選んだ現場は、島根県大田市と江津市を結ぶ自動車専用の「福光・浅利道路福光地区第4改良工事」で、対象とする作業内容は掘削10m3、盛土9万m3、場外搬出1万m3であった。
「ICT施工StageⅡ」の実施に向け、まず最適な施工計画をAIで算出可能な「Smart Construction Simulation」で当初の施工計画の妥当性を検証。
これまで頭の中にあったデータを可視化した上で施工会社と打合せを行い、ルートを並行させることで運搬作業期間を短縮した。
次に「Smart Construction Fleet」でダンプトラック1台ずつのデータを取得、見える化し、周回数・積み込み時間などの運搬実績データを「Smart Construction Simulation」に反映することで計画との差分を検証した。
「そこで出た計画と実績との差を再計算し、施工会社・発注者を交えた確認を1カ月に1回行い施工計画を精緻化していきました。また『Smart Construction Drone』で1週間に1回、現場状況を把握し『Smart Construction Dashboard』に施工の進捗状況を反映することで、ダンプ1台の積載量なども算出しています。これらの情報を搬出先の他現場の現場監督と共有し、ダンプ台数を含めた再計画のすり合わせを行いました」と佐々木課長は緻密な手順を語る。

図-2 ICT施工StageII実施フロー

図-3 工事の課題
工事の進行につれて推移するダンプトラックの運搬実績を「Smart Construction Fleet」で取得し、随時「Smart Construction Simulation」で計画との差分を検証。
併せて改善案を検討するPDCAを繰り返し行っていった。
「Smart Construction Fleet」を使うことで、積み込み作業を行う現場側でもダンプトラックの到着時間が分かるため、台数が少ない時に別の作業を行うなど効率化が図られた。
現在は、より精緻化された施工計画の下で他工区との土配工程調整を行い、大幅な省人化と工事費削減を実現させている。

図-4 (左)Smart Construction Simulationで精緻化した最適な施工計画 (右)Smart Construction Fleetで取得した運搬実績データ
計画通りダンプトラック25周回で他現場への搬出作業が行われたことが分かる
互いに高め合いながら次のICT 施工の次元へ
本工事は、2025年3月末日の竣工に向けて、高精度の施工計画の下で進行中だ。
画期的な成果を上げている「Smart Construction」だが、一方で課題もある。
大島次長は「もっと直観的に使える、より簡単に操作できるシステムになれば、もっと良くなるし、もっと身近になって現場も担当者も変わると思う」と要望を述べた。
佐々木課長も「施工中の現場で操作するにはやや難しいのですが、活用してみて大きな可能性を感じました。これまで改善要望を反映してもらっているので、今後も期待しています」「Smart Construction」も常に急ピッチで改良が進む。
対して土木部では差別化された“Small・DX”の推進なども視野に入る。
「楽しくワクワクすること」を常に基点に置きつつ、両社のパートナーシップは今後も互いに高め合いながら続いていく。
最終更新日:2025-05-28
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