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成功事例集

建設ソフトやハードウェアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。

デバイス変更がきっかけとなり、業界に先駆けてクラウド活用をいち早く決定

株式会社鴻池組

SPIDERPLUS

 
波多野 純 氏
株式会社鴻池組
所在地:大阪市中央区
設立:1871年
従業員数:1,907名
主な事業内容:建設工事の企画、測量、設計、監理、請負およびコンサルティングに関する事業
https://www.konoike.co.jp/
 

建築事業総轄本部 工務管理本部
技術統括部ICT推進課長
波多野 純 氏

 

1986年に鴻池組に入社後、入社2年目からスーダンで建築事業に携わり、その後国内建築現場の施工管理を約20年にわたり経験。
技術部を経て技術統括部ICT推進課から現場のICT活用を支える役目を担っている。
建築工事現場向けのICT導入推進、運用サポート、技術開発をけん引してきた経験を生かし、また、率先して新しいものを導入し試行錯誤を重ねた歴史を振り返って「デジタル活用の価値」について、現場の声も含めて語っていただいた。
 
 

DX必須の背景は人手不足

私は30年以上建設業に携わっています。
国内外での経験を元に、現場向けのICT導入の推進や運用のサポートなどに従事してきました。
 
長く仕事を続ける中で実感していることは、現場で働く人手が慢性的に不足していることと、発注者やエンドユーザーなどからの品質に対する要求が年を追うごとに高まっている、という2つです。
人手には限りがあり、仕事の品質は可 能な限り高くなくてはならない、となると少ない人数で効率的に現場を管理していく必要があります。
 
鴻池組には、30年以上にわたるデジタル活用の歴史がありますが、振り返ってみればデバイスの切り替えが大体10年のサイクルで発生しています。
 
デバイスを新しくすると、そこで動く工事管理システムを新たに開発・運用することがまた10年続きます。
こうした繰り返しが歴史になっていると言えます。
 
デバイスは進化を続けますが、新しいものが登場することは、これまで使ってきたものが陳腐化することでもあります。
また、操作性もデバイスの性能に依存する傾向があります。
そして何よりもデバイスの生産が終了してしまうと、突然の刷新を余儀なくされてしまいます。
 
スパイダープラスとの関係もこうした背景の下で始まりました。
 
 

2013年に導入決定の背景

鴻池組では2013年9月にはスパイダープラスの建設DXサービス「SPIDERPLUS」を土台に、従来からPDA端末などで活用していた仕上検査・配筋検査機能を加えた施工管理アプリの「KOCoチェック」を共同開発しています。
「KOCo」はKONOIKE Constructionの頭文字に由来します。
現在のSPIDERPLUSで建築分野の検査に特化した機能もKOCoチェックに由来しています。
 
当時、建設業界ではクラウド活用があまり広がっていませんでした。
理由は現場の情報をいわば会社の外に置くことへの不安からです。
 
業界内での前例はあまり多くはなかったのですが、SPIDERPLUSが備えているセキュリティと、iPad端末で使われるのであれば、懸念することもないのではないかと判断して、活用を決めました。
 
「KOCoチェック」を活用することのメリットは大きく、「現場管理業務がラクになること」「現場の膨大な事務作業を減らすこと」「作業・検査のミス・漏れをなくすこと」「現場のコミュニケーションを礎にできること」の4つです。
 
現場では大人数が出入りし、規模が大きくなるほど情報の更新とその周知も容易ではなくなります。
 
記録を明確に残し、関係者がクラウド上に保管された同じ情報を見ることができることによって、先程挙げた4つのメリットが成り立ちます。

 
 

SPIDERPLUSの主な機能と共同開発

KOCoチェックでは図面データが情報の土台です。
現場を巡回して撮影する写真は図面上をタップすることによって、「どこで」「何を」撮影したかを明確にできます。
 
また、現場で撮影をする際、黒板を持ちますが、KOCoチェックでは電子黒板を編集しておく機能があり、撮影前に編集することはもちろん、撮影後に黒板内容だけを修正することも可能です。
 
一度使ったことのある黒板をテンプレートとして活用していくこともでき、黒板作成にまつわる手間を省くことが可能です。
 
撮影した写真を帳票にまとめる際、帳票作成ボタンを押すと、ExcelやPDFのファイル形式で帳票が生成されます。
 
従来であれば、現場の巡回を一通り終えてから事務所に戻り、カメラの中から画像データを取り出し、ファイル名を一つずつ変更して、Excelファイルに手でサイズを変更させながら貼っていましたが、そうした手間はもはや不要です。
 
図面上に写真を紐付けることが検査に特化した機能においても基本的な構想です。
 
先述のように、仕上検査機能と配筋検査機能はクラウドより前から使っていたものを引き継いでいます。
仕上検査で最も大変なことは、チェックを終えてから業者ごとに指示内容を仕分けしていくことです。
 
手作業での仕分けにはとにかく時間がかかります。
 
図面上に紐付けていった写真をベースに、指示内容や写真を含んだExcelファイルをボタン一つで生成すると、そこからはExcelファイル上でソートをかければ仕分けすることができます。
 
配筋検査を元に新たに開発したのが「杭検査機能」です。
 
実はこの機能を開発した背景には、過去にマンション建設時の杭打ち不備が発覚したという事件があります。
 
この事件を受けて、鴻池組では杭施工の工程に沿った確認項目を図面データとともにチェックし、写真を撮影して紐付け、記録漏れを防止することを目的として開発しました(写真-1)。


写真-1 検査の進捗が一目で分かる配筋検査機能

 
 

現場の活用浸透を支えるには

「KOCoチェック」を開発して、現場での活用が始まり、もう10年が経過しました。
 
現場でのデジタル活用では、何が重要かというと、社内で普及させていくことだと思います。
 
特に、長らく紙図面をベースに仕事をし、成功体験を積み重ねると、デジタル化に対する受け止め方は人それぞれ異なります。
 
慣れた仕事の仕方を変えるには、一時的に操作方法を覚えるための時間を割くことが必要です。
 
そうした時間を理由として、中にはいわゆる「引き出しの肥やし」にしてしまう人もいるかもしれません。
 
現在、「KOCo」チェックは社内全体で、建築現場で働くおよそ9割に行き渡っています。
 
導入したからには使って効果を感じてもらうために、本支店や現場の双方で「KOCoチェック」の操作説明会を実施します。
 
また、使い方のノウハウを分かりやすくまとめたマニュアルも用意しています。
 
その他に現場での活用状況をヒアリングしに行くことや、困っている点についてのアンケートなども定期的に実施しています。
 
 

デジタル活用の価値とは

デジタル活用で変わることは「楽」になることです。
昔のように、大量の紙図面を持ち歩く必要がなくなりますし、写真管理も簡単です。
 
私が入社したばかりの頃はデジタルカメラもなかったので、現場での写真撮影はフィルムカメラで行っていました。
 
街の写真屋さんでプリントしてもらうまではどんな風に撮ったかを確認することもできなかったので、現像されたものを見て、正確に撮影できていなかったものを発見することもありました。
 
こうした時代に比べて、デジタル化の進んだ現場は仕事のしやすさが全く違います。
 
一方で課題に感じていることがあります。
それは、作業が便利なったことに、本質が隠れてしまいがちなことです。
 
工事写真の撮影をひとつとっても、そこには趣旨があります。
デジタル活用で便利になった分の時間やエネルギーを、本質を常に考え、追求する時間に充てることが重要だと考えています。
 
また、われわれは設計図に基づいて施工し、お客さまに提供する高品質の建物には必ず検査の記録や各種報告書というエビデンスを大量に残します。
 
「残す」という点にこそデジタル活用の価値があります。
 
現場業務のルールは今やデジタル活用があることを前提とするようにさえなりました。
 
人手不足の問題もあり、デジタルツールがなければ仕事はなかなか進みません。
以前は、協力会社の作業員名簿を紙の提出で受け付けていました。
今はこの点も完全にデジタルデータをお願いしています。
 
建設の仕事では関係者間のコミュニケーションが欠かせません。
 
デジタル活用はそうした現場でのコミュニケーションの明確さや便利さを大きく助けてくれます。
 
鴻池組ではこれからも、現場での働きやすさ向上を目指したさまざまなデジタル活用が進みますが、施工管理では
「KOCoチェック」が今後もその中心にあると考えています。
※KOCoチェックはSPIDERPLUSを土台に鴻池組向けに開発されたもの


最終更新日:2024-05-07




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