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成功事例集

建設ソフトやハードウェアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。

“割り切りBIM”を活用した拾い出し作業の省力化

須賀工業株式会社

PLANEST+BIM

須賀工業株式会社
須賀工業株式会社
所在地:東京都江東区(本社)
創立:1901年
資本金:19億5,000万円
従業員数:524名(2022年3月現在)
https://www.suga-kogyo.co.jp/


本社 業務本部設計・エンジニアリング統括部長 岸山 道善 氏(左)
東京支社 設計部積算2課長 山崎 千夏 氏(中央)
東京支社 原価管理部主管 小池 亮一 氏(右)

須賀工業株式会社は、1901年の創業以来、空気調和・衛生設備事業のパイオニアとして、社会環境・生活環境の変化に伴う新しい技術にも積極的に取り組んでいる企業である。
2019年にPLANESTefを導入し、旧システムより35%の作業の効率化を実現した。
そして2022年、積算でのBIMの活用はまだ過渡期の中、積算業務の効率化のために「割り切りBIM」とPLANEST+BIMを組み合わせるという選択をしたこと、検証を通しての現状と課題について話を伺った。
 
 

完璧を求めない簡易モデル「割り切りBIM」を活用する

昨今の積算件数の増加に伴い、積算人員の不足からさらなる積算業務の効率化が求められている。
しかし現在の2次元の図面からの拾い作業においては、人による作業負担の低減にも限界があるため、BIMデータを積算システムへ活用できないかと考えていた。
 
 
BIM(BuildingInformationModeling)の名の通り、全ての属性情報が含まれている図面データであれば、積算作業への有効利用が可能であることは容易に想像できる。
しかし、設計段階では、付与できる属性情報は過渡期であり、不確定であることがほとんどである。
そこでBIMが完成するのを待つのではなく、流体名・サイズ程度の情報しか持たない不完全なモデルからでも、「平面図上の拾い数量と軌跡を取得できないか」という発想からPLANEST+BIMの検証作業を開始した。
 
 

実感した効果

検証に使用したBIMは、後に修正することを前提とし、正確な高さ情報などは含めないなど、属性情報を一定ルールの下で簡易にしたモデルを利用した。
 
このモデルを社内では「割り切りBIM」と呼んでいる。
このBIMは全ての属性情報を持っているわけではなく、積算時には不足している情報を補完する必要がある。
しかしそれでも、ゼロから手作業で行うよりも圧倒的に拾い・集計スピードが速いことをすぐに実感できた。
 
 
特に機械室詳細図など、属性情報が詳細に設定されているものは、ほぼ修正の手をかけることなく拾いが完了した(図-1、2)。
変換したデータのうち約80%程度を拾いデータとして活用することができ、1案件にかかる拾い時間は、一般的な画面拾いと比較して30%以上削減できたのではないかと感じる。
 
図-1 PLANEST+BIMのBIM拾い機能で開いたIFCモデル
図-1 PLANEST+BIMのBIM拾い機能で開いたIFCモデル

図-2 PLANEST+BIMのBIM拾い機能で取得したIFCデータ一覧
図-2 PLANEST+BIMのBIM拾い機能で取得したIFCデータ一覧

 
 

従来のCADデータの活用との違い

資材集計機能を有するCADソフトを利用する場合、集計数値データを出力し、それを積算ソフトに転記していた。
これでは図面と拾い軌跡のデータが切り離されるため、両者の関係性を確認することができず、実用には向いていない。
しかしPLANEST+BIMを利用した数量拾い作業では、PLANESTefのマスターとIFCデータの関連付けがスムーズに行われ、拾いの数値データと軌跡が一元化される(図-3)。
その結果、変換後のデータは画面拾いをした状態と同じになり、通常の手順で案件をまとめることができ
た。
この点が、従来のCADデータを活用した拾い手法との最大の違いであり、大きな優位点であるといえる(図-4)。
 
図-3 図面(DXFファイル)にIFCから取得した軌跡情報を重ねたマウス拾い画面
図-3 図面(DXFファイル)にIFCから取得した軌跡情報を重ねたマウス拾い画面

図-4 PLANEST efマウス拾いデータリスト
図-4 PLANEST efマウス拾いデータリスト

 
 

IFCデータを活用する利点

IFCデータを変換する際は、拾いデータを3次元で確認できるので、配管やダクトのルートが追いやすく、設備のシステムを理解しやすいというメリットがある。
また、積算部門において3次元で図面を見ることは、部門をまたいで多角的に作図のチェックができる利点があり、組織間連携の強化にもつながる。
そして2次元に変換後のデータは、ある程度の精度で拾いが完了している状態であるため、初見でもルートの理解がしやすく、拾いのチェックが容易である(図-3)。
特に立ち上げ立下げ部分の拾いが適正に行われているという点については、経験に頼ることができない若い人財の育成にも大きな効果があると感じる。
これにより、拾いに精通していないメンバーでも、作業を担当することが可能となり業務効率化の要因のひとつとなった。
 
 
※PLANEST+BIMでは、buildingSMARTJapan(bSJ)で策定されている「設備IFCデータ利用標準」に準拠したIFCデータを対象としている
 
 

見えてきた課題

運用環境
・設備図面(DXFデータ)が重いため、1案件の容量が大きくなる。
クラウドサーバー容量の確保、稼働させるPCのスペックなど利用環境を整えることが必要。
・属性情報の付与の仕方について、CAD側とお互いに無理のない範囲の作図ルール決めが必要。
 
ソフトのシステム、操作面
・修正を前提としたデータ利用なので、データを修正する機能の充実が必要。
・配管拾いを複数管拾いに変換したい。
・データに設備情報を持たせて、各設備に振り分けたい。
特に空調ダクト・換気ダクトなど。
 
 

これからの展望

簡易モデルとした「割り切りBIM」は、「作図側の負荷を増やさない」「拾い作業の効率をあげる」「拾い精度を確保する」という複数の要素を同時に実現できるソリューションであり、積算作業だけでなく、設計図から施工図へ移行するフェーズにおいても、作業精度の向上と時間短縮に寄与する可能性を十分に持っている。
今回の検証において「割り切りBIM」から、PLANEST+BIMを利用した拾いデータを作成することで、作業時間を短縮できる可能性は十分に見込めた。
今後はBIMに含める属性情報などのCADの作図ルールや積算の活用方法などの社内調整を進める。
そして、PLANEST+BIMの2023年夏のバージョンアップにより業務効率のさらなる改善と向上が見込めると期待している。
 


最終更新日:2023-06-21




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