建築企画BIM「TP-PLANNER」
株式会社入江三宅設計事務所(IMA)
所在地:東京都港区設立:1947年
計画設計部 副部長 清水 紀克 氏
総務部(情報管理)担当部長 日高 康次 氏
創業から75年の入江三宅設計事務所は、個人宅、超高層ビル、複合施設と多種多様なタイプの建築物を設計する。
現在は、オフィスビルを主軸に置き、アークヒルズ、御殿山ヒルズ、城山ヒルズ、六本木ヒルズなどヒルズシリーズの設計監理にも携わっている。
TP-PLANNERの利用も四半世紀にわたる。
実践的利用法を伺った。
価値のある空間の創造
入江三宅設計事務所(IMA)は1947年の創業以来、建築の専門家集団として日本の成長とともに、時代が要請する建物、都市の設計・監理・コンサルティングを行ってきた。
多くのクライアントの信頼を得て、茶室から超高層建物、個人住宅から複合都市開発までと幅広い。
創業以来あらゆる分野・用途・規模の新築建物を数多く設計・監理を行ってきた。
それら長年培った実績・経験を礎に企画構想から竣工そして維持管理の相談まで、設計監理体制を整える。
六本木ヒルズ
創業者:入江雄太郎・三宅晋
現在の事務所名「入江三宅設計事務所」は、1947年事務所創設時の所長である入江雄太郎と、約15年後の1963年に所長となり事務所を引き継いだ三宅晋の二人の名字を重ねたもの。
両者は、東京大学建築学科の先輩後輩に当たる。
入江は東京帝国大学建築学科在学時、辰野賞を受賞。
同期には丹下健三、浜口隆一、大江宏がいる。
三宅は東京大学を1945年に卒業後、ゼネコン勤務を経て入江事務所設立に参加し、入江雄太郎の片腕として活動した。
主に構造設計を担当し、鉄骨造無柱大スパンの工場建築や鉄筋コンクリート耐震構造の法隆寺収蔵庫などの文化財保護施設を手掛けた。
1957年、入江事務所東京事務所長に就任。
当時設立されたばかりの森不動産
(現森ビル)森泰吉郎、稔親子と親交を結ぶ。
新橋・虎ノ門地区に合理的な構造計画を生かした有効率の高い賃貸オフィスビル(いわゆるナンバービル)を多数設計した。
また同時期に設立された日本住宅公団(現都市再生機構)の市街地住宅と呼ばれる都市型集合住宅や団地計画を手掛けた。
1960年には鎌倉大仏の補修および免震化設計も行った。
超高層建築そして都市再開発へ挑戦
70年代の容積制移行、絶対高さ制限撤廃を受け、超高層建築にも積極的に取り組んだ。
80年代以降主要な施主である森ビル、住宅・都市整備公団(現都市再生機構)が再開発に軸足を移すと、事務所も多くの超高層建物を核とした複合再開発に参画するようになった。
1986年、民間初の大規模再開発事業
「アークヒルズ」を皮切りに「御殿山ヒルズ」「城山ヒルズ」などの初期ヒルズシリーズなどを手掛けた。
三宅晋が築いた「合目的性の追求」と設計思想は、事務所に脈々と引き継がれている。
虎の門ビジネスセンタービル
設計専用ソフト利用環境
設計用ソフトの利用環境はAutoCADによる作図が基本。
BIM系ソフトではその延長上にあるRevit。
ただし現状の利用レベルは、3Dモデラー的利用で十分ではないと率直に語る。
一方、設計初期段階のボリューム確定ソフトはTP-PLANNERを使用する。
TP-PLANNERの利用は代表取締役兼藤真一が「デベさんで面白い計画ソフトを利用していたので検討してほしい」との要請を受け導入したのが25年前。
折しも大手証券会社の破綻などバブル崩壊直後の混沌とした時代。
IMAの計画事案の多くは、事業用地が比較的大きく複数用途地域、敷地内外高低差など複雑に形態制限条件が絡み合う。
そのため、それらの条件に対応可能な日影規制:天空率ソフトの利用が必須となる。
TP-PLANNERはこれら難解な用地条件を形態制限の限界までスピーディーに見極める。
現在、特に天空率の利用頻度が高く、クライアントとの打合せを行う前にチェックすることが決まり事になっている。
TP-PLANNER実践利用例
1.日影規制とリゾートホテル
日影規制が5/3北側道路境界線が入隅状になっている4000m²超の事例。
逆日影チャートの8時と16時の方位線をラフスケッチ建物両端に設定し、逆日影計算実行。
逆日影結果ブロック図から建物変換し、日影図で最大可能空間を検証確認。
逆日影等高線をガイドに建物設定し日影チェックを行う。
規制ラインに等時間日影線が近接していることを確認。
2.複数用途地域にまたがる共同住宅
都心に計画する共同住宅。
西側第一種中高層住居専用地域で17m第2種高度地区、日影規制3/2、東側近隣商業地域
で35m高度で日影規制なし。
東側が最大幅員12.6m、北側6.3mの2方向道路。
西側が高度斜線および日影規制が厳しく商業地域側に高層部を設定したい。
逆日影チャートで高層位置を設定、計算実行。
高層幅を確認。
等高線をガイドに建物設定を行い日影計算実行。
規制ラインに近接した等時間線で日影規制クリアを確認。
次に断面図で道路斜線を確認するとNGを確認。
天空率解析を行うこととなる。
本事例は2方向道路で令第132条区域区分。
幅員12m以上道路で法第56条3、4項が適用される。
さらに勾配区分は適用距離差により令第130条の11が特例適用される。
TP-PLANNERはこれら複合的な法規制を自動判断し「自動発生」ボタンを押下することで全区域および算定位置が自動作成される。
天空率計算を行いクリアを確認。
この事例の特徴的な区域は1.5勾配が適用される区域。
第一種中高層住居専用地域に適用された最大幅員12.6mは法第56条3、4項で勾配区分され、さらに適用距離は令第130条の11で接する区域ごとに適用される。
3.オフィスビル隣地天空率
商業地域:容積率1,000%:階高55.3mのオフィスビルの計画。
この事例では隣地天空率の解析例を紹介したい。
隣地天空率の解析法は「敷地区分方式」「一隣地方式」がある。
敷地区分方式
屈曲した隣地境界線を面する方向ごとに区分する方式で、面する境界線が屈曲する場合でも同一区間ごとに天空率を算出する。
一隣地方式
道路以外の連続した隣地境界線を同一区間として解析する。
4.教育
難解な用地条件の増加に伴い法解釈力のみならず形態制限ソフトの適正な運用スキルが要求される。
その為、TP-PLANNER開発元(株)コミュニケーションシステムの研修制度およびサポートセンターを活用し、さらなるスキルアップと効率化を図っている。
最終更新日:2023-06-22
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