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成功事例集

建設ソフトやハードウェアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。

BIM-FMの実現を目指してデジタル活用による省力化・生産性向上の実践

鹿島建設株式会社 高砂熱学工業株式会社

BIM対応建築設備CADレブロ

鹿島建設株式会社
所在地:東京都港区 設立:1930年
資本金:814億円余
 
高砂熱学工業株式会社
所在地:東京都新宿区 設立:1923年
資本金:13,134百万円
 

鹿島建設株式会社 横浜支店  高砂熱学工業株式会社 横浜支店
小林 圭祐 氏         技術部 技術一課
                作業所長 亀山 雄二郎 氏

2022年春、「横濱ゲートタワー」がオープンする。
延床面積約84,000㎡の大型複合ビルには高層棟オフィスの他、クリニックや飲食物販テナントなどが併設され、横浜の新たなランドマークとして期待されている。
本プロジェクトは「鹿島スマート生産ビジョン」のモデル現場としても注目され、「管理の半分は遠隔で」「作業の半分はロボットと」「全てのプロセスをデジタルに」の3つのキーワードを軸に、建設業の新たな仕組み作りを行っている。
今回は現場でのデジタル活用を中心に鹿島建設の小林氏、高砂熱学工業の亀山氏に話を伺った。

 
 

スマート生産の最新現場における設備の取り組み

 
“鹿島の中で最もスマート生産・省力化の取り組みを踏襲した現場に”という目標のもと始まったという横濱ゲートタワープロジェクト。
本プロジェクトでは施工から維持管理まで、BIMを用いたトータルマネジメントを目指した取り組みが実施されている。
 
「今回注力した取り組みの一つがフロア面積の大半に配置される天井内空調設備の『プレファブ・ユニット化』です」と説明するのは、当現場で指揮を執った小林氏だ。
 
「まず、プレファブ・ユニット化に当たり、当現場ではモジュール設計をオフィス基準階となる5~21階に対象を絞って計画しました。これは、同一設計での繰り返し作業が多く、計17フロアとボリュームがありましたので、施工合理化の効果が大きく見込めたことがポイントになりました。また、テナント対応による分割を事前に考慮し、空調設備のレイアウトをフロア当たり計5種類のモジュールに統一したことで、製作はオフサイトの工場に移し、現場ではパターン化された組み立て作業のみとなり、全体的な省力化が図れました」(小林氏)
 
また、こうしてモジュール化された資機材には、出荷時にICタグ(RFID)が付与されたという。
「ICタグを付与した最大の狙いは、現場への納品から取り付け・試運転までを管理できるトレーサビリティの観点だけではなく、ファシリティマネジメント(FM)での活用を見据えた運用を想定したものでした」(小林氏)

モジュール設計
モジュール設計


BIM-FM連携によるさらなる情報活用

 
では、FMでの運用を見据えた仕組みとはどのようなものだったのか。
具体的な取り組みについて小林氏に伺った。
 
「BIMモデルを建物のデータベースとしてFMシステムと連携させることで、さまざまなFM業務の一元管理が可能になると考えました。これまでは、情報ごとの管理が必要になっていたため、確認作業にも時間を要していましたが、当現場ではFMまでの運用を見据えたモデル作りに取り組んだ結果、竣工図や取扱説明書などの作成に付帯する書類の削減による省力化を実現しました」(小林氏)
 
また、本プロジェクトにおけるBIMのFM活用においては、早期にグループ会社である鹿島建物総合管理が参画したことで、管理側の視点がデータにも反映され、より現実的かつ実践的な運用に成功したという。

CGパース
CGパース
プレファブ・ユニット化
プレファブ・ユニット化


施工プロセスのデジタル化
施工プロセスのデジタル化


BIM-FM連携とレブロの採用

 
目標に掲げていたBIM-FM連携を実現させるために、そのプラットフォームのベースとなるCAD選定の経緯について、小林氏は当時を振り返ってこう語る。
 
「現場が着工した際に、当社で取り組んだBIM案件『オービック御堂筋ビル』の事例について調べてみると、設備CADはレブロを使っていたことが分かりました。当時の担当者へレブロを採用した理由を確認すると、そもそも他のCADだとBIMモデルの作成も然り、FMの管理上必要不可欠となる属性情報の入力が不十分になる懸念があったため、“レブロを使わないとFM連携ができない”という現実的な課題があると言われました。当現場でBIM-FMの実現を目指すことは決まっていましたので、とても説得力がありましたね」(小林氏)

 
 

レブロの操作性

 
「他の現場を含めてレブロを使うのは初めての経験でしたが、うわさでは“BIM対応にはレブロが優れている”と聞いていたので、いつかは使うべきときが来るのだろう、とは思っていました。また、本プロジェクトではBIM-FM連携が取り組みの中核にもなっていたこともありましたので、使うのならこのタイミングだと直感したのはありましたね」(亀山氏)
 
初めて現場で使用することになったレブロに対し、期待と不安の両方があったと亀山氏は語るが、運用が進むにつれて実感されたメリットがあったという。
 
「今回のプロジェクトでは、2年で3現場ほどのレブロ経験があるオペレーター1名、レブロだけでなく他の設備CADも使った経験がほとんどないオペレーター2名の体制でスタートしました。今回は経験の浅いオペレーターも1カ月くらいでレブロを習得して、キャリアのあるオペレーターとほぼ同じスピードとレベルで作図できるようになっていました。懸念していたCAD習得がこれだけ早かったのは予想外でした。個人差はあると思いますが、レブロの直観的な操作性や機能性があってこそだと感じましたし、これなら今後も使い続けたほうがよいと実感しました」(亀山氏)

QRコード運用の流れ
QRコード運用の流れ



 

BIM-FM連携の見据える先

 
最後に、FMのために行っていたデジタル活用を施工段階でも生かすことの重要性について小林氏は語った。
 
「BIM-FMの取り組みは鹿島グループとしては重要なミッションですが、現場はFMのためだけに図面を描いているわけではないので、もっと施工にも役立つようにレブロをはじめとした各ツールを使いこなせるようにしたいですね。私たち現場の手間が2倍3倍に増えるだけで成果がいつもどおりだったらもったいないですし、当現場での取り組みを今後の現場に展開することで、業界にもよい影響が与えられるのだろうと思っています」(小林氏)

 
 

最終更新日:2022-04-18




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