一貫構造計算プログラム「ASCAL」/木造一貫構造計算ソフト「ASTIM」/躯体数量計算プログラム「ASQUAN」 代表
佐久間 譲 氏 構造設計の分野においては、今や構造解析プログラムは必須ツールと言える。京都市の一級建築士事務所bananaLabでは、数多く存在する構造解析プログラムの中でも(株)アークデータ研究所が提供する製品群を活用し、クライアントに対してより速く、より質の高い成果を納めている。代表の佐久間譲氏が「右腕」と表現する、これらの製品群について、構造設計の独特の難しさとともに語っていただいた。 任せてください!のために
意匠設計は基本計画段階ではチャレンジングなプランを提案します。構造設計がそこで「任せてください!」を発言するためには、構造力学の知識、構造システム・ディテールの引き出しの多さ、技術者としての鋭い感覚、そして、計算手法・解析プログラムの適切な選択と計算・解析結果を工学的に判断する能力が必要になります。つまり、建築を構造設計するためには空間の要求性能にシンクロする構造を提案できる能力と、それを構造設計図書(構造計算書、構造図)に表現する能力、大別して2つの能力が必要となります。後者の能力は解析プログラムの能力にリンクすることになり、その背景にはハードウエアの秒進分歩な発展によりパソコンで増分解析法や極限解析法による立体解析が容易にできるようになり、疑似的な立体や略算法での崩壊形では許されない現状があるからです。これは構造設計の工期が短縮されることにもつながっています。 アークデータという武器
弊社は複数の一貫構造計算プログラム、有限要素法が扱える汎用解析プログラム、断面計算用のプログラムを導入しています。プログラムによりモデル化の概念、計算手法が異なるため、工学的で適切な判断をするには複数のプログラムにて検証が必要になることがあります。その中でアークデータの強みを紹介します。 任意系解析プログラムの特徴と開発サイドへ
架構形状の構築はもちろん、仮定条件、材料の諸定数、部材耐力・部材剛性を詳細にモデル化できるので実状に即した解析が可能である一方、簡易な設定ではないのでモデル化には一定の構造リテラシーと労力が必要になるのは任意系の特徴かと思われます。構造形式、架構形状によっては不安定が生じやすくなるので材端の固定度や剛性に関わる設定には気を配る必要があります。また、解析モデルの3D表現には満足していますが、建物が持つキャラクターやウイークポイントは応力と変形を立体的に確認することで把握できるので、3Dで挙動を確認できるよう解析結果の表現を強化してほしいですし、設計工期が短縮化しているため質疑に対するサポートのレスポンスをリアルタイムで対応してもらえると助かります。Q&Aの検索体制を改善できればユーザー側で解決できる内容が多くなるためサポートの負担も減ると思われます。 実りは成熟した果実を
ボラティリティの変動が大きな時代で、クライアントの舌が肥えニーズは既視感のない、質の高い建築を求めるようになってきています。多様化、複雑化する形態、要求性能に応えていくにはより強力な武器が必要になります。向上するクライアントの要求性能に対して、的確に速度感を持って構造システムを提案し、短縮化する工程内に構造設計を完了させるためには、解析プログラムは構造設計者の身体の一部として切り離せない存在になっています。右腕として機能してくれる解析プログラムの能力はコンピューターの処理能力と同時性を持ち向上し続けてくれて、構造設計が把握できる性状、実現できる構造システム、表現できることの可能性を拡げてくれました。ソフトウエアの技術はパソコンの処理能力より常に先行しているのでソフトウエアはハードウエアの進化に追随して向上することは明確で、近未来の設計手法には夢が膨らむと同時に、構造設計者の存在意義が問われるフェーズになることを認識する必要があります。 最終更新日:2022-04-21 |