建築専用鉄骨CAD「KAPシステム」
ファブ・トーカイ株式会社
設計部 係長設計部部長 設計部 課長 設計部次長
西尾吉雅氏 佐野修二氏 高野眞一氏 山本真一氏
所在地:静岡県静岡市
設立:2003年10月
従業員数:15名、協力会社20名
事業内容:鋼構造物工事業
Hグレード認定工場
ファブ・トーカイ株式会社は、静岡市に拠点を置く鉄骨ファブリケーターである。同社は日本ファブテックの「KAPシステム」の初期からのユーザーであり、業務全体を通じて、このKAPシステムで一元管理を行っている。近く到来するより高度なBIM時代を視野に入れつつ進歩を続ける同社より、現在のKAPシステムについて、同社設計部の佐野部長(2018年11月取材時)に詳しい利用状況を伺った。
開発当初から現在のBIMを先取り
KAPシステムは仮想空間で3次元モデルを構築し、バッチ処理されたデータベースから施工図や現寸各帳票類を出力するという、一元管理のマルチユースの発想で、開発当初から現在のBIMそのものであったといえます。EWS時代には処理に数日かかることも珍しくないため、エラーで落ちないかぎり再処理を行うことはせず、処理されたモノを汎用CADでひたすら修正対応していた印象が残っています。時は流れてハードが格段に向上し処理スピードが速くなったことで、やっと時代がKAPシステムに追い付いたなと、語り合ったことを覚えています。
KAPシステムによる3次元モデル KAPシステムによる3次元モデル KAPシステムによる3次元モデル
(オールめっき寄棟) (キャットウォーク) (ショッピングモール)
具体的な運用
当社でのKAPシステムの具体的な運用についてですが、一般図関係・全単品詳細図・形鋼各種一次加工指示書・二次部材関係・発送リストまで一連を処理して利用しております。Google Earth3Dや鳥瞰図はお客さまからも好評です。WEBアプリは他部署の一般PCからもKAPシステム工事内の各種情報を見ることができるため、工程計画や資材調達等にも役立っており、外出先からスマホ等で閲覧可能なため、使い勝手の良いツールの一つとなっております。唯一納得いく形で有効活用ができていないものが型板関係。保留・追加変更が多発する中、モデル化は何度も行うことになるので、その度にピースマークが書き変わります。前回処理で決定した製品マークや型板ピースマークを引き継ぐという比較処理が用意されていますが、この機能のクオリティUPを望みたいところです。加工能力のあるファブの場合はモデルがほぼ最終形になるまでは二次元処理を温存できるのかもしれません。当社の場合は早期段階で加工を開始することが多く、その時点のモデルと最新モデルとの間に再処理を相当数していることになります。型板ピースマークが変わってしまっている可能性が多々ある中で、自動出力した型をそのまま利用することはできず、現段階では現寸担当者が利用できる型を選別するいわばアナログ的な手段を取らざるを得ない状況となっております。今後型板の運用方法については開発元と相談をしながら早急に詰めたいところです。
最終的にわれわれファブは工場で製作する際に、紙ベースの二次元図面を使用して組み立てを行うので、詳細図の正確さが生命線となります。最終形の現寸情報を盛り込んだ二次元図をまとめ上げるには膨大な時間と労力を要します。よってこの前段階である3Dモデル構築のクオリティが後工程に直結することとなります。可能なかぎり細部の決定まで引っ張ってモデル反映し二次元へ移ることを一つの目標として進めております。
現実問題として不完全なモデル状態でやむを得ず二次元へ移行する必要が出てきます。こうなると、この詳細図はどの時点のデータベースから出力したのか?を常に管理しつづける必要があり、以後の現寸処理との不整合がないよう最善の注意が必要となります。一括システムでありながらアナログ的な管理が必須になっているこの運用の仕方が一番悩みどころであります。またできるだけ二次元への移行を後送りすることで、大きなメリットがある一方、決まりの悪さから二次元汎用CADの時間が明らかに圧迫されております。この場合は積極的に信頼できる施工図会社へ応援を依頼しながら、工程に乗せるべく努力を進めているのが現状です。
KAPシステムによる3次元モデル KAPシステムによる3次元モデル KAPシステムによる3次元モデル
(すり鉢床) (スロープ付車ディーラー) (ホテル)
BIMについて
IFCデータを先行で求められることがありますが、3Dモデルだけではそれが正しいか否かの判断はできません。二次元に図面化しチェックして初めて担保されるわけなので、IFCデータを提供する際には同データベースから出力した二次元図は常にセットであるべきと考えます。BIMについては、今のところ当社で有効活用できていると実感しているのは、スリーブだけといっていいでしょう。
工事原点を合わせることで設備系CADからのデータをKAPシステムへ読み込むことが可能です。既製リングはCSVデータを提供することによりリングメーカーの計算書が早期に発行されます。最速はEGリングで、計算書までKAPシステムで出力可能なためNGをファブ側が把握でき、是正案をセットで提示することで大幅な時間短縮となっております。
階段も3Dモデルの重ね合わせで確認はできますが、自身のデータになるわけではないので、BIMの視点からいえば少し毛色が異なります。現段階ではIFCデータを提供するだけの一方通行なのでファブ側のメリットは少ないといえます。場合によっては二次元対応してしまえば早いところを、あえて時間をかけて3Dにしても恩恵は得られません。今後、異なるシステム間で属性を含めた3Dモデルの両側通行が可能になれば、また違った展開が見えてくるのかもしれません。近い将来BIM運用は、全業種の整合が取られた上で3Dモデルが承認され、そのデータで各業者が自動処理で進行することが予想されます。そういう時代が来ればファブ内で図面をまとめる業務が不要となり、業界が大きく変わることになると思われます。当社社長は常々、「事業は下りのエスカレーターを登るがごとし」と言います。1歩前進で現状維持。エスカレーターのスピードが年々増している中、レスポンスを上げ時代に取り残されないようにしていきたいと思います。
KAPシステムによる3次元モデル KAPシステムによる3次元モデル KAPシステムによる3次元モデル
(商業施設変形屋根) (倉庫全面胴縁棟) (アンボンドブレース)
今後KAPシステムに望むこと
バッチ処理形態のため、都度モデルは新しく生まれ変わっていきます。前述のようにその都度その時点のモデルで何かしら2次元に移行して進んでいるものがあります。それを踏まえた上での最適な運用方法の確立が望まれます。当社は最初から最後までKAPシステムだけで完結している希少ユーザーですので、システム内汎用CADキャメルについても積極的な開発を希望します。また個人的にKAPシステムの好きなところは、基本的に何でもできるようにするところです。できない取り合いは少し時間をもらえれば作ります、というチャレンジャー的な精神があり常にユーザー側に寄り添った即効対応の保守システムになっているところです。ひと物件データを入力すれば、幾つかは取り合いができない所や初めて見る変則的なディテールがあったりするものです。できるだけ100%近い3Dモデルを構築してから二次元へ移行したいという流れの中で、ピンチの時の保守は大きいものがあります。これからもそのスタンスを変えず、KAPシステムの保守品質の高さや運用品質、開発品質をより高めて展開していくことを熱望します。
最終更新日:2019-05-14
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