情報共有ASPサービス「basepage」
北海道 池田町
建設課管理係 係長 小島 理成 氏(左)
建設課 課長 青山 斉 氏(中)
建設課 主幹 林 祐信 氏(右)
北海道は、十勝平野の中央やや東寄りに位置する池田町は、人口7,200人程。
ワインの町として知られ、昭和38年に自治体として初めて果実酒類の製造免許を取得、ワイン製造・販売事業の運営に着手したことで、その後の一村一品運動の先駆けとも言われる。
2015年、本格的な降雪シーズンを前に池田町は、GISによる位置情報管理・共有のASPサービス「basepage」の導入を決めた。
その経緯や運用について、建設課課長 青山氏、主幹 林氏、管理係係長 小島氏に話を伺った。
道路管理への課題
池田町が管理する道路延長は 418kmあるが、財政的な理由等により、整備済みの道路はまだ5割に満たない現状であった。
また、整備済みの道路であっても、整備後相当の年数が経過し、舗装路面の劣化や老朽化が著しい路線も多い。
これにより、整備や補修に対する意見や要望は年々増えてきている一方、管理者として十分に対応しきれないといった実態を抱えていた。
「職員が減少し、日々の道路パトロールも定期的に回れなくなっていました。補修が必要な箇所や危険箇所等の把握は、住民や地域からの連絡や通報に頼っていることが多く、電話で聞き取りしたり、その都度役場に足を運んでもらったりしているのですが、その情報を元に現地に赴いても、それがどこだか分からない…といったこともありました」
このように、池田町建設課では、整備の進捗以前に、現状の把握が困難である点が大きな課題となっていた。
限られたリソースで効率的かつ正確に情報を共有するには、どうすればよいか?しかも、こうした “現場との情報共有”や“住民との情報共有”のみならず、“役場内での情報共有”にも課題があると認識していた。
「維持管理を担当する係と工事等を実施する係が別で、それぞれ書類やデータを管理していることから、過去の補修や工事履歴等が課内で情報共有できていません。役場のサーバーで各データの一元管理はしていますが、大規模災害時での紛失や喪失が懸念されますので、BCP対策が求められていました」
除雪作業時の課題
こうした、日常的な道路管理上の課題に加え、北海道という地域柄、「除雪作業」に当たっての課題も問題視されていた。
除雪作業を丸ごと外部委託してしまう自治体も多いが、池田町では、町が所有する18台の他、業者からの借り上げ等を含めて24台の除雪車により対応している。
職員が、除雪車と連絡を取り合いながらその24台をコントロールせねばならず、ここでも情報連携に当たっての課題が浮かび上がる。
【現場や住民との情報共有】
①各車両運転手との連絡は無線や携帯電話のため、作業の進捗状況が把握しにくい
②住民から、いつ除雪に来るのかの問い合わせが多く、その都度無線や電話で車両に確認後、再度住民へ電話で連絡するなど、迅速な対応ができない
③各車両の作業終了時間の差は 3時間前後あり、早い車両は一度戻ってから、遅れている路線へ応援に入るなど、効率が悪い
「こうした状況は、豪雨や地震等の災害発生時も同様です。緊急で建設機械を現場へ向かわせる際、被災現場がいくつも重なったりすると、重機の位置を把握するために各車両へ無線や電話での聞き取りを行った上で直近の車両を向かわせますが、その車両位置の確認に時間を要しています」
【役場内での情報共有】
①作業終了後、各車両が戻ってきた後報告書(日報) を整理してもらうのに時間を要している
②担当ごとにとりまとめたデータの一元管理ができていない
「一回(一巡)の作業は平均8時間程度、長い時は10時間以上もかかる場合も少なくありません。また、雪の降り方によっては1.5〜2巡するケースもあります。その上長時間作業で疲れているところに、事務所に戻ってからの事務処理があり、住民サービスや作業員の健康管理からも時間短縮が過去からの大きな課題となっています。車両増強したいところですが財政的になかなか厳しく、また運転手の確保もままならないので、どうにか効率を上げていくしかないんです」
これらの山積する課題にどう取り組むか
このように、課題は山積みだったが、とある市で“スマートフォンの位置情報を利用した道路管理”を実施している事例を知り、解決へのヒントとなった。
「町長がIT導入によるシステム化に理解があり、推進力となりました。さっそく位置情報や走行軌跡の把握、道路パトロールシステムにも活用できるシステムの導入の検討に入り、何社か比較してみましたが、そこに立ちはだかったのが費用の壁でした」
高機能・多機能で、あらゆる課題に対応できそうなものばかりだったが、利用規模や期間を考えるとどうしても費用がかさんでしまう。
そんな折、川田テクノシステムの「basepage(ベースページ)」を知った。
GISとスマート端末を活用した情報共有サービスで、かねてよりの課題であった、「道路維持管理」と「除雪
車運行管理」の両面が可能であり、導入費用も安価な提案であった。
「もちろん、安ければいいというものではありません。ただ、自治体として、住民の税金からなる限られた予算を有意義に使わなければなりませんので、新たな試みを取り入れるとなると、それがきちんと機能するかのリスクも考えます。慎重になりますし、価格も重要なファクターとなります」
こうした経緯で、より着実に効果が実感できるよう、最初から全て解決しようとせず、当年度は除雪業務管理を試行的に実施することとし、管理する車両も、4〜5台から始めることとした。
「機能や操作性がシンプルなので、機能拡張性に優れており、ミニマムスタートが可能でした。実際に使っていく中でシステムに対する要望をあげながら、順次装備していった方が、よりわれわれの業態にフィットしたシステムに育てられると考えました。先日、実際の除雪ルートを走行し、電波の圏外地域を検証する実証実験を行いましたが、さっそく手応えを感じました」
今後の機能拡張性
「basepage」は、災害情報共有や資機材管理、維持点検管理等で多くの運用実績があるが、目的に応じて必要な機能を自由に組み合わせることができるため、あらゆる用途に対応できる。
池田町でも、今後、除雪管理での運用が定着すれば、道路や河川、橋梁、都市公園、公共建築物等、建設課で担当する業務全般に運用を拡大し、情報の一元管理も可能となる。
「情報の共有により、作業の効率化、省力化が図れるだけでなく、担当の人事異動などがあっても、過去の書類やデータをすぐ検索できれば引継ぎがかなりスムーズになると思います。また、いずれは住民との情報共有にま
で発展させ、互いに積極的な情報発信ができる“場”にしていきたいと考えています」
情報共有ASPサービス「basepage」を使った除雪管理システム <北海道池田町>
【システム概要とメリット】
●除雪車にスマート端末(タブレットPC)を搭載し、位置情報を発信しながら走行すると、電子MAPに走行軌跡がプロットされる
●スマート端末から、位置情報つきの写真を送信することで、電子MAPに写真やテキストがプロットされるため、何らかのトラブルが発生した際も、正確な情報を伝達することができる
●収集した情報はデータベース化され、後日の検索・確認も容易に行える
●電子MAPの利用により、事務所では進捗状況を視覚的に把握できるため、指示が迅速に行える
※除雪車に搭載するタブレットPCは池田町で準備した
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