建築企画BIM「TP-PLANNER」
株式会社 長谷工コーポレーション
BIM推進室室長 新屋 宏政 氏(左)
企画設計室 渋谷 核 氏(右)
所在地:東京都港区
創業:1937年2月
資本金:575億円
従業員数:2,253名
主な事業内容:建設事業、不動産事業、エンジニアリング事業
http://www.haseko.co.jp/hc/
従来より他社に先駆け建築設計施工システムの情報化を進めてきた長谷工コーポレーションは、独自のBIM「長谷工版BIM」を開発し、実施設計から竣工までのデータをワンストップで運用することが可能になった。BIM推進室室長の新屋宏政氏と企画設計の現場で「長谷工版BIM」を使用する企画設計室の渋谷核氏に、その特長およびTP-PLANNERと連携した企画設計時における利用法を解説していただいた。
規格型マンションからBIM導入まで
長谷工コーポレーションでは1973年のマンション標準生産システム「コンバス」の開発により、「生産性の向上」と「品質・性能の安定化」を両立させた。
機能的で住みやすく永く使える規格型マンションはその後の日本のマンションのあり方を決定付けた。
一方、高度に規格化された同社のマンションの場合、設計の自動化が可能だと考えられた。このことが今日のBIM導入における基本的な考え方として継承されていく。
BIM導入に向けた検討がスタートしたのは、2009年の頃だ。ハード・ソフト両面のスペック向上を受け、BIM検討ワーキングを立ち上げて検討を開始。導入の決断は、BIM推進室という専門組織の立ち上げへとつながった。並行してBIMソフトウェアの選定が進められ、最終的に『Autodesk Revit』を含むBIM対応建築設計ソリューション『AutodeskBuilding DesignSuitePremium』の採用が決定された。その理由を、エンジニアリング事業部BIM推進室室長の新屋 宏政氏はこう説明する。
「意匠設計、構造設計、設備設計の各部門が同一プラットフォーム上で作業できる点を最も高く評価しました。2次元CADの時代から各部門の統一プラットフォームにこだわってきた当社にとり、ぜひとも実現したい項目の一つでした。また、販売パンフレット用の図面出力などにも3次元モデルを活用することを考えると、部門ごとに別システムを採用し、必要に応じて設計データを重ねるような運用は、どうしても無理があると判断したのです」またBIM 導入は、現時点で大きく2つのメリットがあったと新屋氏は指摘する。
「一つは意匠、構造、設備の各部門のスタッフ教育が一つのプログラムで対応できたこと。もう一つはAPI 連携による各種ツールの開発が今までの開発思想と同じように行えたことです」
「長谷工版BIM」とは
1)設計図書、販売図面、施工図データの一元化
フルBIMモデルから整合のとれた設計図書(意匠・構造・設備・外構など)販売用図面データまでフルBIMを実現した(図-1)。
図1
2)マンション建設最大手ならではのBIM部品を整備
部材ファミリーの作成は、部材メーカーに頼らず、基本的に社内で行われた。これは部材の規格化が進んでいたからこそ可能なことだ。ツール開発についても、同社ならではの発想が生かされている。
3)オリジナルツールの開発
マス自動配置、地盤地形作成、概算コスト連携、改正省エネ対応、積算数量出力、仮設積算などのオリジナルツールを開発付加することでフェーズ間の連動をスムーズにした(図-2)。
図-2
ツール開発の一例として、「Excel」マクロとRevitを連携し、マンションの外形や住戸配置のマスモデルを自動作成する「MATOM」や、マスモデルに階段や窓などの要素を自動的に配置できる「ATOM」という独自開発のツールにより、基本設計BIMモデルの原型を自動モデリングするシステムを開発した。一方、構造計算、施工図など専用ソフトとの連携部も充実している。TP-PLANNERの連携利用も「長谷工版BIM」の一翼を担い重要な位置を占める。企画設計における利用法を企画設計室渋谷核氏に解説していただく。
TP-PLANNER利用の経緯
TP-PLANNERの利用を開始したのが1990年、四半世紀を超える。当時UNIXを使用したTP-PLANNERは日影、逆日影計算でそれまで利用してきたシステムの処理速度、内容を超えていた。
天空率が施行される頃も、JCBA天空率分科会で活動を続けてきたコミュニケーションシステム社とは意見交換会、勉強会を通じて交流を続けてきた。
IFC検定2015「建築確認分野」出力でも唯一合格しており「長谷工版BIM」の形態制限部はTP-PLANNER利用を前提として考えた。
「長谷工版BIM」と形態制限
TP-PLANNER連携における機能要望として主に3項目をBIM推進室から要求させていただきTP-Rlinkで実現した。
①RevitのアドインソフトとしてRevit内でシームレスに利用できること。
②アドインソフトがTP-PLANNERオリジナル版と同等のレベルで利用できること。
③解析結果は、RevitデータとともにTP-PLANNERデータとして保持されCSサポートセンターへ
の質疑を可能にすること。
企画設計利用手順概要
1)TP-RlinkでRevitとTP-PLANNERの連携設定を行う
Revit、TP-PLANNER 両システムのデータが共有化され、TP-PLANNERの土地情報がRevitで利用可能となる。
2)MATOMでマスモデルを自動作生しながら逐次面積チェックを行う
Excelスプレッドシートによる面積チェックを行いながらマスモデルを作成する。外構作成ツールも充実している。
3)逆斜線、逆日影可能空間とマスモデルの干渉チェックを行う
赤が斜線規制、青が日影可能空間を示し斜線NGの際は天空率で解決する。
4)日影計算処理
発散規制ライン、指定点日影、等時間日影計算を行いNGの際は日影チャートでNG部を確認し対処。
マスモデルは単線で作成されるが壁厚を付加する機能、外形包絡する機能がある。実施モデルなどの場合形状をそのまま読み込み解析することも可能となる。
5)天空率計算は、Revit内解析ボタンで自動処理を行う
入力された道路幅員情報から適合建築物、算定位置が自動生成され天空率計算が自動処理される。屈曲道路、始点終点の幅の異なりも考慮される。
隣地天空率も「敷地区分」「一隣地」が自動解析される。
逆天空率、申請図など詳細な処理はアドイン機能からTP-PLANNERを起動し解析することも可能だ。
これらのツールを適宜使用し土地の有効活用を効率的に図る。
最終更新日:2019-05-14
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