建築設備専用CAD「Rebro」
東洋熱工業株式会社
東京本店 工務技術部
渡邉 秀夫 氏(左)
技術統轄本部 技術研究所 研究員
三浦 貴広 氏(右)
所在地:東京都中央区
設立:1937年8月
資本金:10億1,000万円
従業員数:809名(2016年3月末現在)
主な事業内容
:空気調和設備、換気設備、排煙設備、給排水衛生
設備等の設計・施工・販売・保守
URL:http://www.tonets.co.jp/
わが国を代表する設備工事会社の1社である東洋熱工業株式会社は、高度な施工品質とともに先進技術への果敢な挑戦で知られている。その中でも、近年特に注目を集める取り組みの1つが、改修工事における生産性向上の切り札と言われる3Dレーザースキャナーの活用だ。2016年1月、同社はこのチャレンジのカギとなる点群処理×設備CAD連携を実現する「レブロリンク」を共同開発した。
点群処理ソフトと設備CADを連携!「レブロリンク」の共同開発
東洋熱工業東京本店工務技術部の渡邉秀夫氏と同社技術統轄本部技術研究所研究員の三浦貴広氏らが構想した、3Dレーザースキャナー×InfiPoints×レブロによるデータ連携の仕組みは、2014年春、東洋熱工業とNYKシステムズ、エリジオンの3社により、「レブロリンク」の共同開発という形でスタートした。目的は、現況図がない建物のリニューアル事前調査の生産性を向上させることである。レブロリンクは、フロー図( 図- 1参照)の流れで点群データの連携を図ろうというものだ。
ちなみに、3Dレーザースキャナーとは、計測対象に触れることなく、地形や構造物の3次元データを取得可能な計測機器のことで、3Dレーザースキャナーで計測した情報を、多数の点の3次元座標としてデータファイルに出力したものが点群データである。「両社に多くの要望を出しましたが、1番のそれはできる限りの自動化です」(渡邉氏)。すなわち図の③④はモニタを見ながら操作するやり方では時間がかかり過ぎ、ヒューマンエラーのリスクも避けられないことから、できる限りの自動化が最大の課題とされた。「業界での点群データ活用の発表で、同業各社の反応が悪かったのも、その難しさが予想できたからでしょう。私も半信半疑でしたが、挑戦する価値はあると思ったのです」。渡邉氏らの提示した方針に基づき、3社で打ち合わせて仕様が決まると、いよいよ開発が始まる。作業は着々と進められ、東洋熱工業に対しては段階ごとにテストプログラムが提供された。渡邉氏らはこれを使って実案件で課題を抽出。フィードバックしていったのである。「特に問題が多かったのはデータ取り込みに関わる部分です。例えば水平垂直や連続性、角度等に関わる誤差、管サイズが途中で変化するなど、スキャン段階の誤差をいかに補正するかが重要な課題となりました」(渡邉氏)。まさに現場の声をダイレクトに反映させながら開発は急ピッチで進み、レブロリンクのβ版は約1年後に完成した。
最新版「Rebro2016」のアドインとしてリリース
「早かったね、本当に思っていたよりずっと早く完成した。NYKシステムズのこういう所が好きなのですよ」と渡邉氏は話す。一方、三浦氏はそのβ版の仕上がりに大いに驚かされたという。「実際に見るまでは、InfiPointsの3Dモデルから“配管だけでもレブロで認識できれば”と思っていましたが、β版はずっと先を行っていました。エルボまで捕捉でき、2Dオルソ画像に圧縮して使えるなど、期待以上に良いものが完成していたのです」(三浦氏)。渡邉氏らはすぐこの新ソリューションをリニューアル案件の実現場へ投入し、実運用を開始した。レーザースキャナーで計測し点群データを採取。InfiPointsからレブロへとデータを受け渡し、レブロで建築設備モデル=BIMモデルへ仕上げていったのである。BIMモデルは改修工事用の新設部分作図や拾い集計機能で物量把握など、多様な2次活用へ応用され、その過程で発見された問題点や課題は、ただちにNYKシステムズにフィードバックされた。こうしてさらに数カ月のブラッシュアップを経て完成したレブロリンクは、最新版レブロのアドインとして搭載。「Rebro2016」としてリリースされた。東洋熱工業ではその発売を待たずにレブロ連携ソリューションを現場へ投入。ひと足早く、これを本格的に稼働させている。
現場の計測から現況図作成までトータル75%もの省力化を実現
「稼働し始めて8 ~ 9カ月になりますが、すでに8物件で使用しました。どの現場でも期待以上の効果を発揮しましたよ」と渡邉氏は語る。同氏によれば、導入効果は、すでに東洋熱工業社内で噂となっており、運用を担当する渡邉氏のチームへは全国の現場から引き合いがあり、渡邉氏自身毎週出張している状態だという。レブロ連携の導入効果は、それほど圧倒的だったのである。「スケールを使って手作業で測る手法に比べると、現況図を作る所までの作業でトータル75%も省力化できている、という結果が出ています」(渡邉氏)。つまり、作業日数は以前の4分の1まで激減したのである。いうまでもなく、これは机上の計算値などではなく、実物件で実運用した結果を比較した結論なのだ。「他社では、3Dレーザースキャナーで計測してもデータを設備CADへ連携できないため、点群データを見ながら作図している所もあるようです。実は私たちも、当初このやり方を試したのですが、かなり面倒ですぐに断念しました。レブロ連携で扱いやすくしない限り、点群データの活用は難しいでしょう」(三浦氏)。もちろん導入効果は作業効率化だけではない。例えばレブロによるBIMモデルを2次利用して、ウォークスルーやリアルな3DCGを駆使した顧客へのプレゼンや打合せ。あるいは干渉チェック等を用いた精度の高い施工計画の立案など、施工BIMとしての幅広い活用がすでに始まっている。
レブロで編集した現況平面図
レブロで編集したモデル1
レブロで編集したモデル2
レブロで編集したモデル3
東洋熱工業としては、リニューアル工事分野の受注拡大へ向けた切り札の1つとして利用を拡げていくとともに、さらに機能強化を推進していく計画だ。「欲しい新機能は多々ありますが、まずダクト。このオーダーメイド部材を上手く取り込む機能を何とかして持たせたいのです。NYKシステムズとエリジオンの開発力に期待したいですね」(渡邉氏)。
<リニューアルにおける検討例>
撤去前
撤去後
改修後
最終更新日:2019-05-14
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