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成功事例集

建設ソフトやハードウェアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。

電子納品の検査を助ける工事現場専用デジタルカメラ

μ1030SW工一郎(こういちろう)

牧村真司氏
自治体でCALS/EC担当を勤める牧村 真司 氏

 土木・建築現場における工事記録写真の撮影に欠かせない工事用デジタルカメラ。その市場に、いま新たなトレンドが生まれている。 それは、これまで頑丈でタフなイメージが浸透していたデザインが小型化・スマート化の傾向を強めている点と、電子納品に対応した画像改ざんの有無を判定する機能の搭載である。そうしたトレンドをいずれも満たし注目されているのが、オリンパスの「μ1030SW工一郎(こういちろう)」。工事現場特有の環境条件に対応する機能性はもちろんだが、工事用デジタルカメラの新たな潮流を体現したそのコンセプトは、果たして現場からどう映っているのだろうか。 建設会社から電子納品される工事完成図書の検査経験が豊富で、現在は自治体のCALS/EC担当として、CALS/EC他建設業のIT化全般に関わっている牧村真司氏に、土木技師としての豊富な経験を踏まえたデジタルカメラの利便性から画像判定機能に対するご意見まで幅広く訊いた。

これまでの概念を払拭するデザイン

μ1030SW工一郎(こういちろう)正面  胸ポケットに収納できるμ1030SW工一郎(こういちろう)

μ1030SW工一郎(こういちろう)正面               胸ポケットに収納できるμ1030SW工一郎(こういちろう)

シリコンジャケット

シリコンジャケット


 私にとっての工事用デジタルカメラは、現場でどんなに乱暴に扱われようと壊れることのない、ごつく頑丈なイメージがありましたが、このカメラはそうした概念をくつがえしました。
一見、市販のデジカメと変わらないスマートなデザインからは、とても耐衝撃性の高さ(2.0mの落下テストをクリア)は想像できません。しかもこれほど小型に設計したのは、恐らく冒険だったのではないでしょうか。このルックスには、周囲も賛否両論でした。それでも市場で支持されているということは、ポケットに収まる小型サイズが受け入れられたということでしょうね。確かに、ただでさえ荷物が多いのに、重たいデジカメを持って現場で撮影するのは苦痛ですから。また、見た目は滑りやすそうですが、付属のシリコンカメラジャケットを装着すれば、現場での持ちやすさも向上しそうです。

土木現場で重宝するパノラマ合成機能

パノラマ合成

パノラマ合成

 電子納品との関連で言えば「パノラマ合成」機能は現場の需要が高いと思います。土木現場は道路など細長く一枚の写真では収まらない場合も多く、電子納品を検査していると、画像を5枚貼り付けるケースもよく見られます。通常、このようなパノラマ合成は非常に面倒なのですが、(ターゲット)マークを目印にファインダーを覗いているだけで自動的にシャッターが切られて、(3枚まで)カメラ内で自動的に合成してくれる、この機能は重宝すると思いますね。 (光学3.6倍)ズームも現場での用途が広い機能です。工事用デジタルカメラのこうした機能は、極論すればいくら高性能でもよいと思います。中途半端なコンセプトの機種が一番困りますね。土木の現場では、川をまたいで撮影するような状況もクリアしなければなりませんし、撮影できない場合は撮影できるデジカメに代えてでも撮影しなければなりません。ですから、現場の条件を想定した機能はどんどん取り入れてほしいです。

電子納品における理解不足

 電子納品が導入されて既に7年が経過しましたが、さまざまな啓蒙活動を行っているにも関わらず現場の理解度はなかなか進んでいないのが実情です。
これまでの経験から、CALS/ECへの意識・完成度の高さは、土木工事の品質とある程度比例しているとも感じています。写真の電子納品では、常に納品された写真の原本性が問われるのですが、この工事用デジタルカメラに搭載のオリジナル画像判定機能などは、受注者側としては利用価値のある機能だと思います。しかし、県下で同じ仕様のデジカメを備えている建設会社はわずか数社に過ぎません。PR不足もあるかもしれませんが、それだけCALS/ECへの関心や理解が低いことの証明かもしれません。これはあくまでも私見ですが、将来的にはオリジナル画像判定機能付きのデジカメを使用することにより、工事成績評点が加点される…といったこともありえるかもしれませんね。


CALSモード

特別な操作なしで電子納品に最適な画像サイズに設定するCALSモード


また、この工事用デジタルカメラは、電子納品を前提に「CALSモード」をデフォルトで強制的に設定しているので、現場の理解度に関係なくCALSに準拠した撮影ができる点では実用性が高いですね。従来型の機種では、モードダイヤルの切り替えを忘れるとCALSモードも解除されてしまうため、CALSの規定から外れた写真を撮ってしまうことも多いのです。そうなると何のためのCALSモードかわからない。極端なことを言えば、700万画素や1000万画素といったものはまったく必要なくて、土木現場で使うデジカメならCALSモードだけでいいと言っても過言でないくらいです。

電子納品された写真の信頼性

画像加工の有無をWEB上で確認する

画像加工の有無をWEB上で確認する

WEB上の判定サイト  画像判定結果

WEB上の判定サイト「ガゾハン」                 画像判定結果が表示される


 電子納品は、枝葉末節に過敏になり過ぎている点も見受けられます。常に問題視されるのが日付なのですが、ある土木現場の電子納品で、撮影日が工事日程と違っていたので理由を質問したところ、受注者側が日付を修正して再納品してきたという経験があります。そうした日付の違いは現場ではあり得ることで、修正するのは本末転倒なのですが、似たような意識は多くの建設会社にあるように感じています。


一方で「Exif(イグジフ)」の改ざんの危険性が排除できない現在、オリジナル画像判定機能で写真原本性の信頼性が高められた点は評価できますね(『μ1030SW工一郎』は信頼性の高いRSA暗号システム採用)。WEB上の判定サイト(http://gazohan.jp)に対象の画像をアップロードすることで加工・編集された画像か判定できるため、誰でも簡単に判定できる面は悪くないですね。もっとも、現在は20枚ずつの判定なので、検査の実用にはまだ厳しいかもしれません。将来的にもっと大量の工事写真をスピーディに判定できるようになれば、発注者としても有効なシステムになるでしょうね。
 公共工事を管轄する立場で申し上げれば、最も重要なのは土木工事そのものの品質で、これが万全に行われることがもちろん第一です。しかし、付随する工事完成図書の不正や改ざんは工事品質とも密接に関わる問題です。
したがって今後も電子納品の審査の徹底と理解促進に努めるのは当然ですが、オリジナル画像判定機能のチェック速度の向上や、撮影機能の改善など、現場をサポートするさらなる高性能の工事用デジタルカメラに期待しています。








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