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成功事例集

建設ソフトやハードウェアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。

情報共有で無理・無駄のない、活用されるCALS/ECを目指す

建築JV 大林・五洋特定建設工事共同企業体

 「経済産業省総合庁舎別館耐震改修(05)建築工事」は、既存の庁舎ビルの基礎部分に免震ゴムを挿入する耐震工事である。本工事は、情報共有の建設CALS/EC実証フィールド実験として工事情報共有サーバ環境(インターネット経由のASPサーバ)の整備および、現場事務所・監督職員事務所間のインターネット接続環境の整備を実施している。大林・五洋特定建設工事共同企業体にて行っている途中経過をレポートする。

工事名称/経済産業省総合庁舎別館耐震改修(05)建築工事
発注者/国土交通省 大臣官房官庁営繕部
設計・監理/国土交通省、山下設計
工事場所/東京都千代田区霞が関1丁目3番1号
施工業者/建築JV 大林・五洋特定建設工事共同企業体
      電気設備 株式会社きんでん
      機械設備 高砂熱工業株式会社
全体工期/2006年2月1日〜2008年8月29日


大林・五洋特定建設工事共同企業体経産省耐震建築JV工事事務所 所長 谷口 英武 氏

 大林・五洋特定建設工事共同企業体
 経産省耐震建築JV工事事務所 所長
 谷口 英武 氏


システム構成図


無理なく、無駄なく、活用されるCALS/ECを目標に

 まず、実証フィールド実施にあたり業務実態に即した情報共有システムの利用を心掛け、職員のシステム利用への敬遠傾向を払拭する目的から以下の三点を目標として掲げた。

1.実施可能な無理のないCALSとする。
2.実証実験にあたって、無駄な二度手間を行わないようにする。
3.エンドユーザーを意識して、より良い物を造るためのツールとして活用する。

 今回の実証実験では、受発注者間で情報共有サーバを利用した工事情報の共有を行うことにより、

情報の一元管理による品質の向上
情報伝達の迅速化と円滑化
打ち合わせなどの移動時間の短縮
文書管理の効率化

などの効果をあげるというCALS/ECの目的を改めて共通認識とした上で、工事情報共有サーバシステムとしてASPサービスを使用し、受発注者間での通常連絡のやり取り、承諾を必要とする書類のやり取りなどを行うこととなった。


情報共有ツールの導入にあたって
表-1 basepageで共有する対象文書

 情報共有ツールは、「basepage(ベースページ)」(川田テクノシステム)を採用した。「basepage」は、多数の利用実績があり、basepageで管理している他の現場のスケジュールを横断的に確認することができるため、複数の現場を同時期に担当する者にとって特に便利である。
 basepageはいくつかの機能(アイテム)の中から必要な機能を選択して利用する。この現場では、掲示板、ファイル管理、スケジュール、PDFタスク(打ち合わせ簿)といったアイテムを利用して(1)事前に担当者による打ち合わせが完了した決定事項を電子決裁フローで行う。
(2)利用する項目は工事工程など
(3)全員が共有すべき情報は、スケジュール・掲示板を利用する。
 という全体のルールを決め、約30名、200MBのサーバ容量でスタートさせた。
共有する文書は、業務の効率化が見込まれる書類に絞り、電子化することを義務付けた(表-1)。


ファイルキャビネットで、書類を安全に管理
ファイルキャビネット
 現在、最も活用している機能は、「ファイルキャビネット」(図-2)である。いわゆる文書ファイルの保管庫だが、メンバーの誰が、いつ読んだかが自動記録されるため、打ち合わせ前の資料配布や議事録の回覧などの代わりに使うと非常に便利である。実際、打ち合わせは資料を読んだ前提で進められるため、時間短縮が図れた。
 また、万が一パソコンのデータが消失してしまった場合でも、セキュリティの高いIDCで保管されている安心感がある。
書類を蓄積し、また蓄積した履歴を残すといった点で、ASPである強みが生かされる。
 一方、当初の思惑とは異なり、あまり使用していない機能が「PDFタスク」である。PDFタスクは、承認・決裁の必要な文書をPDFファイル化し、basepage上でファイルを直接更新することによりワークフローに活用しようというもの。PDFファイルの内容がWeb上で一覧表示でき、Web(ブラウザ)上で入力した内容がPDFファイルに反映されるといった機能が特徴的であるが、「工事打ち合わせ簿」において活用を取りやめたのは、決裁の性質上、システムによるワークフローが馴染まなかったのが要因である。
 たとえば、今回のようなケースは経済産業省、国土交通省と工事進捗管理の上でプロジェクトの承認者が複数存在し、電子決裁書類の申請、差し戻しが多いため、フローが非常に複雑になってしまう。また、紙面では1つの書類で複数の項目に対して決裁可否をとることもできるが、電子化した場合は決裁ごとにファイルを小分けにする必要があったり、過去にさかのぼって修正できなかったり、と融通の利かない点もあった。

情報共有で、効率化できること、できないこと


 こうした点を踏まえ、「情報共有」の効果をまとめてみると、
●情報の掲示・蓄積の面においては、すぐさま効果を発揮する。
●一方、コミュニケーションツールとしての活用には課題が残る。
と言えるだろう。
 安全大会実施の呼びかけや意見募集といった、一方向の情報発信・収集には威力を発揮するのに対し、たとえば「図面」に対して修正指示を行う場合など、パソコン画面の制約(一覧性に欠けるなど)もあって、結局紙を用いて直接あるいはFAXで指示する方が、スピーディに意図が伝わりやすい。
 ただし、今回は施工現場と発注者勤務地が近く、直接のコミュニケーションが取りやすかったためこうした結果となったが、遠隔地での施工監理が必要になる場合は、ASPでの情報共有は不可欠であり、システムの機能に合わせて運用ルールを変えた方が効率化につながる。トータルで省力化を図ろうとする姿勢が肝要だ。


情報共有 普及への課題〜将来性


 情報共有の普及は、やはり蓄積したデータの利活用にかかっている。今後期待
される点としては、「電子納品」をはじめとする、他の用途、各種ツールとの完全連
携だ。
現状、社内には検査記録などを保管するイントラのシステムがあり、社外(受発注者間、業者間)との情報共有ツールとは分けて管理せざるを得ない。それらが、データの同期を取って統合あるいは連携し、閲覧制限のある情報については属性でマスクするなどの処理で社内外の区別ができれば、情報入力の二度手間が解消され、大幅な効率化が望める。こうして一元管理したデータの中から必要な情報を抽出して電子納品や竣工検査に生かせれば、真に無理・無駄のないCALS/ECが実現できるものと思われる。そのためには、情報共有データ仕様のオープン化、運用を含めた標準化が期
待される。







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