Vectorworks Architect
株式会社 シンケン
所在地:鹿児島県鹿児島市(本社)
設立:1977年11月
事業内容:住宅設計・施工・ 不動産・リノベーション
https://sinkenstyle.co.jp/
鹿児島、福岡で自然素材の木造住宅を手がける株式会社シンケン。
太陽、土、風、木々、全ての自然環境、地域の人々までもが互いに調和し、共に生かしあう、そんな理想の家づくりを目指している同社は、20年以上も前からMiniCad(現Vectorworks)を活用している。
今回は同社設計室にVectorworksを活用したBIM導入への経緯を伺った。
MiniCadとアニメーションとの出会い
20年以上前、東京の設計事務所がCADを使って、ユニットを組み合わせることで図面を作成し、数量の拾い出しまで行うシステムを活用していた。当時まだ手描き図面だった当社の担当者が、そのシステムに感銘を受け、その効率的な手法を自社内にも構築できないかとリサーチしたところ、当時MiniCADという名称だったVectorworksに出会った。当時から2Dも3Dも可能で、レコードという仕組みを使うことで数量算出ができる画期的なソフトであった。
まずはMiniCADを2D図面作成用として導入し、手描き図面の置き換えから始めることとした。
いきなり3D、いきなりアニメーション
当社では20年前から、クライアントから依頼があった段階から3Dでプレゼンテーションを行っている。しかもウォークスルーアニメーションの導入で、模型では確認できない空間を、分かりやすく伝えることを実現した。
Vectorworksは3Dモデリングが容易で、アニメーション作成機能も標準で搭載していたため、当社の設計ポリシーにマッチしていた。
さらに、各種部材を組み合わせたシンボルを登録していくことで、設計者のノウハウをできるだけ均一化するとともに、それぞれの持つ知識や財産を共有することができてきた。
それでも2Dだった
ほぼ全ての物件を3Dでモデリングし、アニメーションまで作成していたが、図面は2Dで一から作図していた。
モデリングデータが手元にあるので、それを参考にしながら作図していたが、3Dモデルとは完全に切り離されるため、図面作成の負荷が大きくかかってしまっていた。多くのCADユーザーがそうであるように、基本的にVectorworksの多くの機能は2次元図面を作成するものである。
それでも、これまでのノウハウがあったため、大きくワークフローを変えることなく業務を続けてきた。しかしながら、3Dモデルを活用できていない状況に、ある種のもどかしさを感じていた。
BIM導入への経緯
消費税増税や住宅需要の変動を見据えた場合、これまでのワークフローに依存するのではなく、大きく効率化を図り、業務を改善しつつ物件をスムーズに設計すると同時に、他者との一線を画すプレゼンテーションツールが必要であると感じた。
ちょうどその頃、建築業界においてBIMという単語をよく聞くようになってきた。調べてみると、3Dモデリングを行い、各種図面はモデルから取り出すというワークフローで、当社の今までのワークフローを少し変えることで取り組むことができるのではないかと気付いた。
つまり、アニメーションのための3Dモデルを、もう少し改善することで図面作成まで活用できるのではないかということだ。そして、使っているツール「Vectorworks」もBIMに対応したパッケージ「Vectorworks Architect」があることを知った。
Vectorworksの販売元エーアンドエーでは、木造BIMに特化したプラグインを2014 年から提供し始め、そのツールを使った体験セミナー「BIM CAMP」を開催していたため、早速参加した。結果、Vectorworksと木造ツールを使うことで、当社の住宅設計にBIMを取り入れ、設計業務の効率化を実現できる可能性を感じた。
完成写真
イメージパース
完成写真
効率の先にある「共通化」と活用に向けて
現在、Vectorworks Architect 2018を利用し、BIMを社内に定着させる活動をしている。具体的にはBIM担当を養成し、当社の設計手法とVectorworksのBIM機能を擦り合わせていくようにしている。
さらに、エーアンドエーの協力を得ながら、当社のデザインに合わせた壁スタイルやスラブスタイル、各種シンボルを共通化することも始めている。こういった下地をきちんと作ることで、設計業務を効率化し、各自が同じレベルでの設計を進めることができる。BIMで重要なのは共通化で、ここをおろそかにすると上手く導入できなくなることがある。
これからテンプレートファイルを完成させることで、本格的なBIM設計をスタートさせることができる。まずはスタート地点に立ったというところである。
Vectorworksにはさまざなま機能が搭載されている。有用な機能をうまく活用することで、今後のBIM活用をうまく回していくことができると考えている。
当社は複数人で同じ物件を設計することが多いため、プロジェクト共有なども重要な機能となる。オブジェクトごとに排他処理で作業ができるので、複数ファイルを作ることなく設計を進めることができ、この機能に期待している。さらにワークグループ機能を使うことで、シンボルやスタイルを一元管理できるため、社内の誰しもが同じリソースを活用できる。これまでは使えなかった機能を業務に反映することで、さらにVectorworksの持つBIM機能や多くの便利な機能を知るにつれて、当社の中での活用に対する夢も大きく膨らんでくるが、Vectorworks Architect 2019の新機能もうまく活用しながら、着実にBIMを定着させる年にしたい。
BIMの未来への取り組み
BIMによって設計業務が効率化されることで、これまではできなかった業務を視野に入れることができると考えている。例えば、施主のアフターフォローとしてのリフォーム設計などである。さらに今では外注となっている確認申請業務やプレカット作図など、内製化することで幅を広げる可能性を考えている。ツールの進化とともに、当社の業務効率を図っていきたい。
クリップキューブで切断した3Dモデル
3Dモデルと平面図
3Dモデルから生成した立面図
最終更新日:2021-04-15
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