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AutoCAD Civil 3D、AutoCAD Revit Structure、AutoCAD Map 3D、Autodesk Navisworks Manage
会社概要 ジェイアール東日本コンサルタンツ株式会社
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ジェイアール東日本コンサルタンツ株式会社 ICT事業本部 部長 小林 三昭 氏 株式会社 エムティシー 専務取締役 堀井 裕信 氏 営業部 加藤 隆士 氏 鉄道の路線構造物の情報をAutoCAD Civil 3D上に集約 ジェイアール東日本コンサルタンツ(以下、JR東日本コンサル)が開発した「3次元モデル設計支援システム」は、線路情報や地形情報、構造物の設計情報を3次元プラットフォーム上で一体化し、鉄道の計画から設計、施工、維持管理の各業務で情報共有するものだ。 開発の目的は、これまで2次元図面で行われてきたJR東日本の鉄道建設や改良プロジェクトの設計や施工、維持管理の業務を効率化するためだった。 鉄道線形の計画を担うのは、同社がエムティシーと共同開発した総合鉄道線形計画支援システム「APS-Railway」だ。線路の平面線形や縦断線形、建築限界を3次元で検討し、座標計算書や図面、3次元モデルを出力できる。 APS-Railwayで作成した線路の線形を、地形や衛星写真などとともに3次元情報としてとりまとめるプラットフォームとしては、オートデスクの土木用3次元CAD「AutoCAD Civil 3D」(以下、Civil 3D)を使用している。JR東日本コンサルICT事業本部の小林三昭部長は「Civil 3Dは線形や地形のほか、GISや衛星写真、そして3Dレーザースキャナーで計測した点群データなど、多種多様なデータを読み込めるので、プラットフォームに適している」と語る。 また、橋梁下部工等の鉄筋コンクリート構造物の配筋モデル作成には「Revit Structure」、3Dデータの統合や干渉チェック、CGやアニメーションの作成には「NavisworksManage」(以下Navisworks)を使用している。
![]() Civil 3Dをプラットフォームとして活用する「3次元モデル設計支援システム」。地形や構造物、建築限界などの計画データや3Dレーザースキャナーで計測した点群データなど、他種類のデータを統合できる
鉄道用GISシステムとの連携で相乗効果を発揮 「3次元モデル設計支援システム」による鉄道計画業務をバックアップするのが、JR東日本コンサルが開発した「鉄道GIS」や「グーグルアース&レールウェイ」との連携だ。 同社では、20年前から約200万枚もあった紙図面を電子化し、新規図面についてはAutoCADを標準化して電子納品に切り替え、データベースの作成に取り組んだ。 「なかにはA0判で長さ10mという図面もあった。巻物のような図面が、JR東日本エリアだけで4500本もあった」と小林部長。 そこで2004年に鉄道の地図や図面、写真などを地理情報システム(GIS)上で一元管理する「鉄道GIS」を開発した。このシステムにはCivil 3Dの他「AutoCAD Map 3D」や「Autodesk MapGuideEnterprise」が、プラットフォームとして使われている。 また2007年にはGoogle Earthに国内の高解像度衛星写真や3次元地形データ、そして線路平面図などを重ね合わせた「グーグルアース&レールウェイ」を開発した。 線路や地形、鉄道構造物などのCAD図面は、現在シームレスなデータベースとして管理されており、必要な区間の図面を自由自在に切り出して活用できる。これらのデータを、3次元モデル設計支援システムで利用することで、初期のデータ入力作業は大幅に省力化され、鉄道の新線・改修計画作成の時間を大幅に短縮できるのだ。
カントや建築限界も3次元で検討 3次元モデル設計支援システムで、新線計画を作成する場合の一般的な手順を見てみる。まず、Civil 3D上に10mメッシュの地盤標高データや衛星写真を読み込むことから始まる。地盤の標高データをつないで面を張り、衛星写真を張り付けて新線計画の基になる3次元地盤モデルを作るためだ。そしてCivil 3D上で概略の平面線形を検討する。 このデータを3次元のDXF形式で書き出し、APS-Railwayに読み込む。緩和曲線や縦断勾配などの線形をJRの基準に従い、3次元でより精密な線路線形データを作成するためだ。 「このデータには、曲線区間で外側のレールを高くする『カント』、建築限界、プラットホーム形状、盛土・切土の勾配なども盛り込まれている」と、エムティシー専務取締役の堀井裕信氏は説明する。 APS-Railwayで作成した3次元の線路線形データは再度、DXF形式でCivil 3Dに読み込み、地盤データと統合する。ここからはAPS-RailwayのCivil 3Dアドオン機能とCivil 3Dが得意とする作図機能を駆使して新線計画の平面図、縦断図、断面図などの図面を作成する。さらにそのデータをNavisworksに受け渡すことで、建築限界と構造物の干渉チェックや、現地説明用のCGパースやアニメーションなどの作成も行える。 3次元モデルデータをさまざまなソフト間で交換することで、平面、立面、断面の整合性を自動的に取りながら、図面の作成や干渉チェックなどの作業を効率化できる。そのため、鉄道計画・設計でも、従来の紙図面ベースによる作業に比べて大幅な生産性の向上と、品質の向上の両立が可能になるのだ。 ![]() APS-Railwayにより作成した断面図 東日本大震災の復興計画でも活用 2011年3月11日に発生した東日本大震災では、巨大津波によって東北地方の沿岸部は壊滅的な被害を受けた。沿岸部を走る鉄道も線路や橋梁、駅舎などが破壊され、地域の交通インフラとして早期の復旧が求められている。 JR東日本コンサルは、約20kmの復旧計画や概算工費の検討に3次元モデル設計支援システムを使用した結果、わずか2週間で作業を完了できた。 「こんな短期間でできるとは思わなかった。震災復旧・復興を迅速に行うために、3次元モデルによる設計は有効なことが実証できた」と、小林三昭部長は振り返る。 今回の経験も踏まえて、鉄道の計画から設計、施工、維持管理までを3次元でシームレスに行えるシステムの整備を、今後、さらに進めていく方針だ。 2012年本システムは“総合鉄道線形計画支援システム”として、土木情報学システム開発賞を受賞した。 土木学会論文集F3(土木情報学)Vol.67(2011) No. 2に掲載)http://committees.jsce.or.jp/cceips/node/181 ![]() 写真:家入龍太 |
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