〜IPDセンター設立でさらなる飛躍を目指す〜
AutoCAD Revit Architecture Suite
会社概要 美保テクノス株式会社
所在地:鳥取県米子市
創業:昭和33年
資本金:1億円
主な事業内容:土木・建築に関する工事の施工および測量・企画・調査・設計・監理並びにコンサルタント業務

鳥取県米子市を拠点とする美保テクノス(株)は、設計・施工・その後の管理まで一貫したサービスを提供する山陰地方最大手のゼネコン。地元での清掃ボランティアやNPO団体への参加など積極的な地域活動を行う地域密着企業でありながら、2005年にはいち早く実践的なBIMの導入に踏み切り、すでに約95%ものプロジェクトにBIMを導入している革新的な企業でもある。
設計室 新田係長
トップダウンの企業戦略でBIM導入を推進
BIMを導入したきっかけは、企業戦略のひとつだった。民間からの受注を強化するために、クライアントに"いかに、わかりやすく伝えるか"、"どれだけ説得力のあるプレゼンテーションを行えるか"が最優先事項という考えだった。
どんなにハイセンスな設計であっても、2次元の図面で建物の魅力をクライアントに伝えることは難しい。よって建物をビジュアル化した"CG"を見せる、つまり「3次元による見える化」という手段を得るためBIMの導入に踏み切ったのだという。
基本設計の段階で建築物をビジュアル化することで、建物の細部のデザインまでも早期に承認されるようになり、実施設計の段階では、法規チェックのための情報を書き加える程度で、ほぼ実施図面を書く必要もなくなった。設計室に在籍し積極的にBIM化を推進している新田氏は、BIMの導入メリットを、次のように語る。
「BIMの導入によって作業効率が格段と進歩し、ひとつのプロジェクトにかかる作業量は、従来の半分程度になりました。一人につき、概ねこれまでの1.5倍から2.0倍の作業量をこなすことが可能になったと思います。そうしたことが、結果的に総合的なコストダウンを実現させたのです」
BIM導入効果、デザインレビューの徹底で設計者の英知を結集させる
同社では、必ず全プロジェクトにおいてデザインレビューが成されている。これは基本設計から実施設計に入る前に行われる会議。設計の質を向上させるために、設計者が集まり、モデルを見ながら設計の質を確認するというもの。意見が出ればその場で反映し、品質の向上に努める。一人の設計者の感覚に頼るのではなく、"設計室全体の意思を反映させて建物を作り上げる"という考え方に基づいて実施されている。
そうした作業を積み重ねることによって、施主の反応、設計者の信頼度、プロジェクトのクオリティともに格段に向上。設計者と施主の双方にとってよりスピーディで、しかも精度の高いデザイン確認が可能になったという。
「Autodesk Revit ArchitectureによるCGパースは、実際に完成した物件のイメージをかなり忠実に再現しているので、BIMによる進行を経験した施主は、1回目のプロジェクトで得た信頼感から、2回目以降のプロジェクトの意思決定が格段と早くなる傾向にあります。早くなるということは時間の短縮につながり、つまりはコストの削減に繋がります」(新田氏)
IPDセンターの設立とBIMの推進
さらにBIMによる業務改善を加速すべくIPD(インテグレーテッド プロジェクト デリバリー)センターなる部門を設け、各プロジェクトにおける諸問題の解決に努めている。
同社におけるIPDの定義とは、Autodesk Revitという道具を使い、BIMという手法をとって、プラットフォームであるIPDに各スペシャリストの技術を落としこんでいくというもの。これにより、各部門の意思や動向が不透明だった従来のあり方から、全面的な"見える化"を推し進めて、整合性の高い共同体を目指すものとしている。
「将来的には、IPDセンターに営業部門、土木部門、リフォーム部門、維持部門などのスペシャリストを参加させ、最終的には下請け、サブコン、施主までを加えて、プロジェクト全域に及ぶ問題解決に努めていこうと考えています」(新田氏)


断面表示したもの。 実際の竣工写真
2次元の図面と比較すると格段にイメージが伝わりやすい

Autodesk Revit Architectureで作成された外観イメージ
BIMを商品化し、差別化を図る
同社は、設計施工に関連するBIMのソリューション機能を、今までにない新規事業、つまり「BIM」、「Autodesk RevitArchitecture」、「IPD」を企業に貢献し得る新しい武器として、市場戦略の中のひとつに置いているのだという。
「ゼネコンというのは本来、一般的な小売業のように販売する商品を在庫として持ち合わせたビジネスではありません。つまり、建設業界でいう商品とは、あくまでも受注生産品という形のない商品であり、それを販売する営業マンは、そこの部分に苦心してきました。しかし、BIMを商品として販売すべく営業マンにBIMの特性を完結にまとめた営業ツールを与えることによって、競合他社との間に優位性が生まれると考えています」(新田氏)
今後の展望
同社ではすでにBIMが施主に対して充分なメリットを与えられるシステムであるということが実証されている状態。今後は施工部門や現場に携わる人間に対して、どのようなアプローチで貢献できるかが今後の新たな課題とのこと。
「現在はIPDセンターとして現場に乗り込んでプレゼンテーションの支援をしたり、設計担当者と現場に携わる人たちとのイメージの違いをすり合わせるため、図面をビジュアル化して提示したり、後方支援的な活動を実践しています。将来的には施工部のサポートや、設計的に鉄筋が集中するような収まりにくい個所を3次元化して検証するなどのサポートも視野に入れていこうと考えています。これまでの施工経験から施主に対するBIMの優位性は充分に検証できたと思うので、今後は施工に関する理論問題解決や、環境解析に取り組んでいきたいと考えています」(新田氏)
技術担当者への普及は当然のこととしながらも、これからは、クライアントサイドがBIMを要求する市場になることを期待するという新田氏。そのためには、大手ゼネコンや大手設計事務所が積極的にBIMを使用して、そのメリットを市場に訴求してゆく必要性がある。
「BIMを導入している企業と導入していない企業とでは、今後、業界における地位に歴然とした差が生まれるでしょう」(新田氏)


提案用CG 実際の竣工写真
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