施工計画書作成支援パッケージ「E-HELIOS」
会社概要 株式会社村上工業
所在地:宮城県気仙沼市
代表取締役社長:村上幸光
資本金:2,000万円
従業員数:30名
総合評価方式による入札案件が増加している。案件だけでなく、同方式を採用する地方自治体も増えてきた。入札金額をいたずらに下げることなく、総合評価で高得点を維持することが今や建設業者の必須要件ともなった。今こそ、建設業者としての総合力が問われている。総合評価方式における簡易な施工計画書作成支援パッケージを活用する、(株)村上工業・廣島取締役に話を聞いた。
(株)村上工業 取締役 廣島氏
これからからの建設業は社会的責任を果たすこと
「どうすれば誰からも喜ばれる施工ができるのかを考え抜け。何とかなる、は無責任の極みだ---厳しい言葉で若い頃から現場においてたたき込まれてきた。しかし、今のこの業界は、この言葉がかすんでしまったと思うときがある」
村上工業で実質的に現場を仕切る廣島文武取締役は危機感を募らせる。村上工業は、三陸海岸の南にあたる気仙沼市にある、いわゆる典型的な地方中小建設業者だ。公共工事の発注減の影響をまともに受けるクラスともいえる。
社内のIT化も積極的に進める一方、環境ISO取得や地域でのボランティア活動にも力を入れており、小規模ながら堅実な経営をしている。
廣島取締役は「地方中小業者には地域を守り、地域に貢献するという責任と誇りがある。若手を自分の手で育て、自分もさらに成長を目指すことの手応えもつかめる。社会的責任をどのように果たすのか、何をするべきなのかを自分で考え抜くことができるのだ。これが中小の強みだ」と語り、着実な成長を果たしてきた。
技術の棚卸しで総合評価の技術点をアップさせる

総合評価方式の発注が増えてきた。従来のように「価格で勝負」が通用しないことが今や当たり前のようになって、価格以外の加算点をどのように確保するかが重要だが、そう簡単な話ではない。卑近な言い方だが、しょせん無い袖は振れない。
しかし、「実は、そうではないと思った。技術力の棚卸しをしていないだけ」と廣島取締役は言う。さらに、「どんな会社にも、他社にはない優れた技術力は必ずある。それを掘り起こしていないだけ。それに気づけたのは、施工計画書作成支援パッケージE-HELIOS(コンピュータシステム研究所)の導入からだ」と言う。
総合評価方式で、応札金額を下げずに落札するためには技術加算点を上げることが重要なことはわかりきっているが、どうしたらいいのかわかないのが中小業者の苦しいところだ。一番苦慮するのが、総合評価方式で要求される技術点対象となる簡易な施工計画書(技術提案書)をどのように書けば得点ができるか。導入したシステムは、現場の施工内容に基づいたチェックリストが抽出でき、発注者の共通仕様書や土木学会のコンクリート標準示方書などが搭載されているため、施工計画書を書くための課題検討項目を抽出しやすかったという。さらに、法令データや施工計画書の事例が盛り込まれていることも参考になり、これらに自社の持つ経験知や技術力を加味することにより、発注者が本来求める施工計画書を書くことができたという。
廣島取締役は、「ここで当社社員の技術力の棚卸しが必要になったのだ」と語る。何ができて、何が苦手なのか。そして、ベテランの持つ豊富な経験を誰にでもわかる形にして継承する。同システム導入が、この最大の契機となったという。

豊富な技術・法令データを搭載
内容が濃いWEB教育プログラムとオプション
同システムは、単なるアプリケーションではなく、インターネット教育コンテンツを同時に受講することも可能となっている。内容は多岐にわたっており、総合評価方式の概論や動向から、施工計画書の書き方など、充実した内容となっている。さらに、オプションとして簡易な施工計画書の添削サービスや、集合教育による施工管理・安全環境管理講習も用意されている。
廣島取締役は、「コンピュータの可能性を存分に使った、よくできた構成だ」と評価する。また、「これらは、学者や現場経験の少ないものが作った内容ではない。よほどの現場経験がなければ作れない講習内容ばかりだ。ベテランが少なくなって、学ぶ機会が少なくなった最近の若手技術者にはありがたいことだ」とも言う。
同社の現場担当者は、全員がCPDユニット獲得に前向きで、社内でのコミュニケーションも高いレベルだという。
WEB教育やCPDセミナーでノウハウを提供
逆転落札で工事を受注
E-HELIOSを導入した効果は、県発注事の逆転落札という形で出た。入札金額だけを見れば、落札には及ばなかったはずだったが、技術評価点で高得点を取ることができ、金額差を埋めることができた。
「このシステムだけで高得点が取れたのではない。このシステムを通じて当社の技術の棚卸しができたからこその結果だ。現場を知り尽くした人間が作ったがゆえの引き出しの多さが、このシステムの特長だろう。意気込みだけでは、本当に喜ばれ、評価される施工はできない。考え抜くこと。工夫を尽くすこと。それを引き出してくれたシステムだ」と廣島取締役は振り返る。
情報があふれる時代だからこそ、業務システムには、表面だけではなく中身のある機能が要求される。そのシステムを探し当てた廣島取締役の経営感覚や地域貢献意欲こそが、これからの建設業経営には肝要なのかもしれない。同社のような意欲と底力のある企業こそが、今後の地域には必要なのではないか。

土木部長 小野氏 取締役 廣島氏
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