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成功事例集

建設ソフトやハードウェアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。

3次元配筋モデルを活用して鉄道高架橋の配筋工事を効率化

株式会社 奥村組

Autodesk Revit Structure &Autodesk Naviswork

会社概要 
株式会社 奥村組
所在地:大阪市阿倍野区
創業:1907年2月22日
従業員数:2,104名(2009年4月1日現在)
主な事業内容:総合建設業およびこれに関連する業務

管理本部 情報システム部長 五十嵐 善一氏
左から 管理本部 情報システム部長 五十嵐 善一氏
管理本部 情報システム部生産技術課 主任 平井 祟氏

 大阪市に本社を置く(株)奥村組は、日本全国で実績を残している総合建設会社。特に道路や鉄道、上・下水道工事などの施工に豊富な実績を持っている。そんな同社では、昨年より大手建設コンサルタンツ会社とともに鉄道工事における3次元モデルの活用研究を推進している。この10月からはオートデスクの構造設計用BIMシステ厶「Autodesk Revit Structure」を導入し、実現場での3次元配筋モデルのテスト運用を開始した。3次元化を核に品質向上とコスト縮減を進める同社の3D戦略について、情報システム部の五十嵐善一氏と平井崇氏に話を伺った。


なぜ?
 公共事業削減の流れが強まる中、建設業界は厳しい状況が続いており、業界全体にとって、業務効率化によるコスト縮減や工期短縮、品質向上などが重要な課題となっています。そして、当社の得意分野の一つである鉄道工事で近年大きな問題となっているのが、高架橋構造物における配筋の問題です。こうした構造物では近年、耐震性を高めるためにより多くの鉄筋が使われるようになり、同時に景観への配慮から構造物自体のデザインも凝って複雑なものが増えています。そのため配筋工事の難度が高くなり、設計図面通りの配筋が難しく手間と時間がかかるのです。時には図面通りに配筋できなくて施工途中で組み直しになるケースさえ発生しています。こうした手戻りをなくし品質向上を図るため、3次元で何かできないかと考えたのが出発点。鉄道工事で3次元モデルによる設計の可能性を検討していたジェイアール東日本コンサルタンツと八千代エンジニヤリングの共同研究に当社が加わる形で、3次元配筋支援システムの開発を行うこととなりました。実は当社と八千代エンジニヤリングはともに「AutoCAD Civil 3D」ユーザ会幹事を務める旧知の仲で、3社とも非常にスムーズに、密に協力することができました。(五十嵐氏)


共同研究はどのような形で進行しましたか?

 ベースは「Autodesk Revit Structure」(以下Revit Structure)と、施工シミュレーション「Autodesk Navisworks」 (以下Navisworks)を組み合わせたシステ厶です。3社が定期的に集まって会合を開き、このシステムを念頭に、3次元モデルで配筋設計を行う上でどのような機能が必要か議論のうえ、要望を取りまとめてオートデスクに提案していきました。議論の場では前述した問題点に加え、「施工現場の問題」として、図面確認や施工確認のための写真撮影、頻繁な設計変更への対応にも膨大な時間と手間がかかっている点が挙げられました。そしてこれらを解決するには、配筋の干渉状況を全数チェックできる3次元配筋支援システムが必要だということになったわけです。これがあれば配筋を事前チェックでき現場のクレームを減らせますし、発注者に対して設計変更の内容をビジュアルにわかりやすく説明できる。設計変更に伴う鉄筋の必要量も事前にわかるので加工余りを減らせることに加え、検査位置等を事前に検討しておけば検査自体もスムーズになります。こうしてオートデスクへ要望を出していった結果、もちろんすべてではありませんが、Revit Structureのバージョンアップで配筋の干渉チェックなどの新機能を含め、かなりのところまで製品に反映されたのです。(五十嵐氏)


実現場でRevit Structureを運用した経緯をご紹介ください

 共同研究は一定の成果をあげましたが、この配筋モデルが実際の現場でどれだけ効果を発揮するかは、実際に使ってみなければわかりません。Revit Structureをより進化させるためにも、実現場でのテスト運用が必要でした。そこで、すでに進行中だったある鉄道高架橋の建設工事で、RevitStructureによる3次元配筋支援システムを適用してみようと考えたわけです。まず2009年の春頃、施工現場から平面図・断面図・配筋図等の図面をもらい、RevitStructureで3次元配筋モデルを作成しました。そして、この配筋モデルを使いNavisworksで干渉チェックおよび鉄筋間隔の寸法チェックをしていったのです。その後、Revit Structureに配筋干渉チェック機能が付加されたので、現在、これを利用しています。Revit Structureの3次元配筋モデルは、当然ですが「実際の配筋のでき上がり」を見たそのままというか、図面と写真が一体化した感じで非常にわかりやすかったですね。干渉チェックもスムーズで、テスト運用ではあるものの実際に効果があったとの報告を受けています。現場では、平面図や配筋図そして3次元配筋モデルを元に現場の担当者を含め活発な意見交換を行い、その結果をオートデスクにフィードバックしていきました。いわば当社の現場のナレッジが、Revit Structureに埋め込まれていったといえるでしょう。(五十嵐氏)



現場でのテスト運用で見えてきたものは?

 現場担当者や鉄筋作業員でも、施工前にこれほど明確に配筋の様子をイメージできたことはなかったはずです。誰もが、「こんな3次元モデルで、工事着手時から配筋を検討したかった。」と驚いていました。また、作成した3次元モデルを見て、改めて鉄筋の過密さを痛感しました。こうして3次元で見て初めて気付くものがたくさんあったそうです。たとえば、従来の2次元配筋図(断面図)では、平面的にしかチェックできなかった鉄筋間隔を、3次元配筋モデルで確認したところ、ある部位の間隔が狭すぎて、設計通りのコンクリート配合では品質の良いコンクリートが打設できないことが確認できました。そこで、発注者と協議のうえ、コンクリートの流動性を上げる設計変更を、スムーズに実施できました。このように、施工会社にとっては、コンクリート構造物の品質確保の面からも、有効だと思います。そのまま、施工を進めていれば手直しにもなりかねず、時間も手間も大きな無駄が出たかもしれません。紙の図面(2次元配筋図)は鉄筋をただの1本の線で表現するので、こうした問題を見つけにくいのですが、3次元配筋モデルでは鉄筋の太さを考慮して表現できているので、一目瞭然です。他にも梁と柱と杭頭部等の配筋の交差部で鉄筋の挿入が難しい個所がわかるなど、干渉チェックは大いに威力を発揮しました。以前は施工が始まってから問題が発覚し、現場での迅速な対応が大きな課題となっていましたが、事前にわかれば十分対策も立てられます。これからは事前に問題点を把握して、少しでも現場の手間を減らせるように3次元配筋モデルを活用していきたいですね。(平井氏)

今後の活用方法は?

 前述したもののほか、作業前の打ち合せで配筋手順や注意すべき個所の説明、あるいは新人教育などにも非常に便利に活用できますね。何しろ紙の図面より格段にわかりやすいですし、いろいろ角度を変えて見せることもできますから。同じように設計者や発注者、あるいは近隣住民の方への説明などにもとても有効です。発注者や近隣住民の方の場合、図面では複雑すぎて理解してもらうことが難しいですが、3次元配筋モデルなら容易に意図を伝えられます。現場担当者にとって、非常に役に立つツールになると思いますよ。(平井氏)
 今後はこうした事例を積み重ね、さらに活用ノウハウとして蓄積していく必要があります。そこで2010年には新しい現場で、工事開始時から導入して、その効果を確認する計画があります。また3次元配筋モデルを社内で迅速に作成できる体制を整えたいですね。つまり、Revit Structureを使いこなすスタッフ教育。これもオートデスクの協力を得ながら進めて行きます。..BIMと言うとちょっと大げさですが、土木の世界でも3D化のメリットは既に確実に見えています。厳しい時代だからこそ、積極的に活用したいですね。(五十嵐氏)








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