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成功事例集

建設ソフトやハードウェアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。

渋谷駅駅周辺再開発の施工に威力を発揮-BIMとCIMを統合した東急建設の「UiM」-

東急建設株式会社

Autodesk Infrastructure Design Suite/Autodesk Building Design Suite

東急建設株式会社

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(左から) 建築本部建築部 BIM推進グループグループリーダー
越前 昌和 氏
建築本部建築部 BIM推進グループチームリーダー
吉村 知郎 氏
土木本部土木技術設計部 技術企画グループ CIMチームリーダー
小島 文寛 氏

所在地:東京都渋谷区
創業:1946年3月
資本金:163億5,444万円
事業内容:総合建設業











渋谷駅とその周辺で今、大規模な再開発事業が行われている。
その中でも多くの工事を担当する東急建設はそれらプロジェクトの施工管理などに、同社独自の「UiM(アーバン・インフォメーション・モデリング)」というコンセプト/ワークフローを活用している。
それをソフトウェアの面で支えるのは、オートデスクのBIM/CIMソリューションだ。


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写真-1  渋谷駅東口で進む大規模な再開発事業


渋谷駅東口から南口にかけて、タワークレーンや移動式クレーン、バックホーなどの重機や仮設の工事用ステージなどが視界の多くを占めるようになってきた。
覆工版で覆われた下では、大規模な掘削が行われ、渋谷川を付け替えながら4,000トンの雨水貯留槽や地下広場などの建設が進んでいる。
既存駅舎や百貨店ビルの解体と並行して、渋谷ヒカリエよりも高い地上47階建ての高層ビル、駅街区東棟も建設中だ。
渋谷駅全体を作り変える大規模の複合再開発が、東口を皮切りに、まさに佳境に入ろうとしているのだ。

BIMとCIMを統合した東急建設独自の「UiM」

渋谷駅東口から南口にかけて、既存のビルなどを解体しながら、地下から地上まで複雑に入り組むさまざまな土木構造物や建築物を同時進行で建設していく再開発プロジェクトの設計や施工管理を、従来の2D図面で行うのはもはや不可能と言っても過言ではない。

そこでこれらのプロジェクトに携わる東急建設は、建築のBIMと土木のCIMを統合した「UiM」(Urban Information Modeling[登録商標])という同社独自のコンセプト/ワークフローを導入した。

「渋谷駅周辺の再開発事業のように建築と土木が密接に絡み合ったプロジェクトでは、BIMとCIMを単独で使っていたのでは検討の網から漏れる部分が出てきてしまいます。そこで複数の建築物や土木構造物をさまざまな組み合わせで、あるいは全てまとめて検討するため、東急建設ではBIMとCIMを統合したUiMという独自の概念を導入しました」
と同社建築本部建築部BIM推進グループグループリーダーの越前昌和氏は説明する。


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図-1 地下で複雑に絡み合う土木(えんじ色)と建築の仮設の3Dモデル



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図-2 BIMとCIMを統合したUiMモデル


オートデスクのソリューションでUiMを実現

2013年初頭から建築部門のBIM推進グループ、土木部門のCIM担当が連携しながらUiMを実践し始めた。
そこで選んだツールが、BIMソフト「AutodeskRevit」やCIMソフトの「AutoCAD Civil 3D」、そして両者を統合して閲覧や干渉チェックなどが行える「Autodesk Navisworks」や「Autodesk Infra-works」などのオートデスクのソフトだった。

「単体の建物の施工にBIMを利用するのとは異なり、このプロジェクトでは大規模で広大な範囲を1つの3Dモデルにまとめる必要があり、ソフト間のスムーズなデータ互換性も求められます。そこで、建築ではRevit、土木ではCivil 3Dを使い、NavisworksやInfraworksで両者を統合することにしました」
と同社建築本部建築部BIM推進グループチームリーダー吉村知郎氏は説明する。
これらのBIM/CIMソフトを経済的に活用するため、同社は「Autodesk Building Design Suite」、「Autodesk Infrastructure DesignSuite」というパッケージ製品を導入している。


合意形成や設計で効果を生んだUiM

渋谷駅周辺の再開発プロジェクト群では、時間とともに変化する街並みや通路、ビルの解体や完成時期などの検証は必須で、それらにUiMモデルが役立った。

「日々多くの人が利用する駅自体とその周辺で地下の土木工事やビルの解体工事と並行して新築工事を行うため、通路の位置や幅、アップダウンの歩行者用通路の状態もひっきりなしに変わります。地上や地下、建物内外、土木建築の工事区分にまたがり連続した経路として確保するためには、もはや2D図面のみの検討では不十分。さらに空間的、時間的に変わる工事の状況を、事業主をはじめとする関係者に分かりやすく説明するのにもUiMは役立ちました」(吉村氏)

「さらに、UiMモデルを使って人の流れを分析する群集シミュレーションにも着手し、スムーズな通行ができるかの検証を目指しています」
と語るのは同社土木本部土木技術設計部技術企画グループCIMチームリーダーの小島文寛氏。
実際に、再開発の一部の現場では、現場の土木担当分のCIMモデルと建築担当分のBIMを施工計画の早い段階で合わせている。
いわゆる、「スポットUiM」だ。


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図-3 UiMモデルを活用して行った群集シミュレーション


渋谷から全国の現場にUiMマインドを展開

東急建設のUiMの取り組みは、渋谷の再開発プロジェクトが第1号となり、その成果は全国各地の土木・建築それぞれの現場にも応用可能だ。

東日本大震災で被災した岩手県大船渡市で同社をはじめとするJVが進めている復興プロジェクトでは、Infraworksを使って将来的な街の姿や、施工順序などを3Dでモデル化し、住民説明や工事関係者間の合意形成に活用している。

「かさ上げするエリアの境界部分では、電線が斜めになって地面との間隔が小さくなりすぎるので、境界部分に電柱を増設してもらう必要があります。施主に電柱の増設を依頼するとき、平面図と違ってUiMのモデルなら直感的に理解してもらうことができました」(小島氏)

また、鉄筋が密集するプロジェクトでは、鉄筋を3Dモデル化してNavisworksで干渉チェックを行うこともある。
この3Dモデルは鉄筋工事会社との打合せにも使い、干渉のリスクの確認や3Dモデルから鉄筋組み立てを効率化する気付きを発見することもある。


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図-4 Infraworksで大船渡市の復興計画を3D化したもの


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写真-2 オートデスクのBIM/CIMソリューションで建築と土木を統合した3Dモデルを作成し検討する


安全管理やシミュレーションではUiMへのフィードバックも

今後、UiMとBIM・CIMそれぞれの利活用成果を相互にフィードバックしていこうと計画している。

「ちょっと格好つけて『相互成長エンジン』なんて呼んでいるんですけど」(越前氏)

「3Dに時間軸を加えた4Dで現場を再現し、ウオークスルーで重機の位置や車両の出入りなどを確認すると、どんな危険が潜むのかを事前に予測できるでしょう。こうした取り組みは既に神奈川県の物流倉庫の現場で始まっています」
と吉村氏は語る。
「そんな取り組みを渋谷再開発の複雑な空間の現場にも適用すべく、準備をしています」(同)。

この他、街並み全体での気流や光、群集などのシミュレーションをUiMの大容量モデルにも適用していく計画だ。

「UiMは大規模プロジェクトがさらに複合した状態を1つのモデルにまとめて俯瞰することができ、必要に応じて細部を拡大して確認することもできます。つまり、マクロとミクロを行ったり来たりしながら検討できる『スケーラビリティ』がUiMの強みだと思います」(越前氏)

今後は竣工したUiMのモデルデータを、維持管理にも生かしていくことを検討している。
建築と土木を融合した東急建設のUiMは、さまざまな建設、維持管理プロジェクトのQ(品質)、C(コスト)、D(工期)、S(安全)、E(環境)を改善していくために活用されていきそうだ。
その技術力を、オートデスクのBIM、CIMソリューションが支えている。


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図-5 加工と配筋を考慮した鉄筋3Dモデル






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