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成功事例集

建設ソフトやハードウェアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。

設計技術者にこそ使ってほしい3次元CAD−真のCIMを求めて−

パシフィック コンサルタンツ株式会社 大阪本社

土木系3次元CAD「V-nasClair」

パシフィック コンサルタンツ株式会社 大阪本社

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交通基盤事業部 保全企画
課長 松浦 功 氏(左)
主任 永田 佳世 氏(中)
森 崇秀 氏(右)

所在地:大阪市北区
資本金:4億9千万円
従業員数:1,624名

国土交通省により「CIM」が提唱された当初より、その担当者として社内外で普及活動をし、社内のシステム導入にも深く関与する松浦氏、永田氏、森氏に、CIMのひとつのキーワードといえる「3次元CAD」の導入について、話を伺った。


3次元CAD導入の背景

パシフィックコンサルタンツ大阪本社では、3次元CADについて、VRやパースといった位置付けで一部取り組んではいたものの、導入が本格化したのは、国土交通省のCIM試行業務が開始された頃であった。

現在では、情報を付加して施工にも活用しようという動きに変わってきたが、3次元CADの導入当初は、設計が終わってから後追いでモデルを作成している場合がほとんどで、“設計ができて、図面が読めて、3次元がわかる”人材がいなかったので苦労したと言う。

「設計する人、3次元化する人、細かいモデルを作る人、パース化する人、それぞれの成果の拡張子をチェックして、統合して、ジャッジする人…など、完全分業化していました。と言うのも、それぞれの工程ごとに使用するソフトが異なっており、その高度な機能を使いこなせる人が限られていたので、結果的に分業にならざるを得なかったのです。各々職人技で仕上げてくるのでかなり完成度の高いものにはなりますが、そればかりにとらわれるとCIMは定着しないのでは、とも考えました」

確かに、時間とお金をかければ精度の高い3次元モデルができる。
しかし、それではCIMとして普及し、標準化されていくことにならないのではないか、という思いだった。


ソフトがなくてもCIMモデルのチェックや修正依頼

こうした中で、次にぶつかったのがソフト選定の課題だ。

「CIMの基準や指針等が定まっていないなかで、各ベンダーがさまざまなソフトをリリースしています。何をチョイスするかが大きな課題でした」

いくつかのソフトを比較検討し、土木系3次元CAD「V-nasClair」(開発:川田テクノシステム)の導入に至った。
同社ではかねてより、電子納品対応を考慮して、土木系CAD「V-nas」を使っていため、その3次元対応版である「V-nasClair」の操作性に慣れていたこともあるが、SXFファイルや他のCADとの互換性が高かった点、そしてなんといっても、土木に不可欠となる「地形」や「線形」、「構造物」を3次元要素として簡単に取り扱うことができ、さらに一つのシステムの中で統一された操作性により概略検討を行える点が大きな決め手となった。

「大まかなイメージだけでもつかみたいとき、概略検討を簡単に行えるので助かっています。地形をモデリングしようとすると、等高線からのモデル化では、簡単にモデル作成が行えない場合があるのですが、分割された等高線を自動でつないでくれるような便利な機能があるんです。従来は、国土地理院の地形データを購入したり、膨大な手間暇をかけてポリラインをつなげて地形モデルを作ったりしていたので、時間も手間も大幅に 軽減できています」



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橋台の位置を動かすと線形と地形に合わせて構造物の形状や土工掘削も自動的に変更される
※「V-nasClair」と3D構造物モデリングシステム「STR_Kit」を使用


業務経験で実感した3次元CADのメリット

このような、3次元での概略検討のニーズは高まっていると言う。
都市部が煩雑化してきて、「合意形成」が一層重要になったからだ。
やはり、平面図より3次元モデルで立体交差や地下埋設物を見ながら打合せした方が断然早く、また、細かいところまで確認できる。
発注者にも、チェックしやすくなったと喜ばれている。

「実際に業務を経験して分かったことですが、平面図では分からない部分もたくさんあったということです。例えば、部分的にデータが欠如していても平面図では気付きにくいですが、立体化してみると一目瞭然となります」


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Google Earthにデータを取り込み、合意形成に利用
*Google および Google Earthは、Google Inc.の商標または登録商標
※「V-nasClair」と3D地形モデリングシステム「LAND_Kit」を使用


培われた想像力

若手技術者の中でも、2次元の世界で平面図しか作図していない人と、3次元を習得している人では、図面に対する捉え方がまるで違うと言う。

「3次元の世界では、土工部や橋梁など、全ての取り合いを正しく把握していないとモデル作成ができないんです。そういう意味では3次元CADを利用することで設計や施工に対する思考や感覚が鍛えられていると言えます」

同社では、新人教育のカリキュラムで3次元CAD講習を実施している。
また、担当した業務での作業マニュアルを作らせ、ノウハウの共有を図るなど、若手技術者の育成に努めている。
若い世代は3次元にもあまり抵抗感がなく、むしろ、視覚的に捉えられることから、土木全体の業務を把握するのに役立っているようだ。


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ボックスカルバートの設置も交差線形などの条件をもとに形状を自動調整し、法面の巻き込み処理が行われる
※「V-nasClair」と3D構造物モデリングシステム「STR_Kit」を使用


照査に使って設計ミスの防止に

業務の経験を通じて、3次元設計は見栄えだけではなく、効率化や品質向上につながると実感した同社は、「V-nasClair」を照査に使っている。

「例えば、完成した一般図を3次元化し、モデルが作れなければどこかに不備があると判断できて細部を見直したり、道路幅員に変更があった場合などは作成したモデルと修正した図面を重ね合わせ、図面に修正ミスがないかをチェックするなど、照査用のツールとして使っています。設計ミスの防止になり、手戻りが少なくなるため、3次元デモル作成の要求がなくても、なるべく3次元化するようにしています。また、その成果を発注者にも確認していただくことで、プラスαの提案にもつながります」


設計技術者にこそ使ってほしい3次元CAD

こうした活用も、操作が煩雑であったり、高額なソフトであれば実現できなかった。

「やはり、土木は建築物と違って曲線の世界なのでモデル化するのも大変なんですよね。そこでモデル作成自体を目的にしてしまうと、見栄え重視の傾向に陥って専門化・分業化が進んでしまいます。そうではなく、設計技術者自らが日常業務において3次元モデルを作成することで、設計における経済性の比較検討や技術的な提案等、本来やらねばならないことに取り組むのが “CIM”だと思います。そのためには、今までの設計業務の流れを変えることなく、設計者の思想が反映できるようなツールや3次元モデルの自動作成機能が求められます。
今後も、真の設計を実現できる機能を充実させて欲しいです」






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