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成功事例集

建設ソフトやハードウェアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。

会員企業の利用環境を構築 災害時に慌てない情報共有システム

一般社団法人 三重県建設業協会

情報共有ASPサービス「basepage」

一般社団法人 三重県建設業協会

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専務理事 松井 明 氏(左)
事務局長 大井 良之 氏(右)



桑員、四日市、鈴鹿、亀山、津、一志、松阪、伊勢、志摩、伊賀、尾鷲、熊野の12支部約430社で構成される、一般社団法人 三重県建設業協会は、東日本大震災の記憶も新しい2012年から、災害情報共有ASPサービス「basepage」を利用している。
その経緯や運用について、専務理事の松井氏、事務局長の大井氏に話を伺った。




南海トラフの大型地震に備えて

東海・東南海・南海地震等、南海トラフを震源とする巨大地震の発生が懸念されている中部地方。
中でも三重県は伊勢、志摩、尾鷲、熊野といった地域で大型の津波が襲来する危険性が高く、連動型大地震ともなれば波の高さが30mにも達するといわれている。
こうした背景を踏まえ、一般社団法人 三重県建設業協会は、2011年3月11日の「東日本大震災」の3カ月後、被災地に状況調査に赴いた。
未曾有の広域的大災害においての応急復旧に関する情報収集が目的であった。

その時、宮城県建設業協会から、災害時の情報や現場の技術者を登録するシステムの試行段階であったことを聞いた。
そのシステムが本稼動していれば、より迅速な対応が可能であっただろうとのことであった。

「そのシステムが川田テクノシステムの『basepage』だったんです」(大井事務局長)

東北建設業協会連合会と宮城県建設業協会では、当時、東北6県の建設業協会員の保有する資機材のデータベースを構築する動きがあり、3.11のわずか2週間前にそのシステムを利用した防災訓練を終えたばかりで、本格稼動の直前だったという。

「まず第一に、大規模災害の現場で、何が一番困ったか、これについて伺ったところ、『情報の伝達がうまくいかない』ことを挙げられました。
とにかく連絡が取れないといった状況下で、電話はつながらなかったが、メールは、送達に時間がかかったものの、届いたという話を聞いて、メールを活用した同システムの検討に入りました」(松井専務理事)

東北の被災地調査から戻ってすぐさまシステム導入の具体的検討に入り、約1年かけて土木委員会において検討を繰り返しながら、2012年3月には、実績を踏まえて「basepage」の導入を決めた。


QRコードで登録作業を効率化

導入を決めたものの、最初に立ちはだかったのは、職員全員分の携帯電話の電話番号やメールアドレスの登録であった。

「建設業協会登録会社が約430社、その従業員全員分と関連職員、行政などを含め、ざっと5000人規模の登録が必要となります。
自分が登録されているか分からないといった状況は避けたかったため、自分で登録していただくよう推進していましたが、数字やアルファベットの入力は単純ミスも多く、予想以上に手間がかかりました。
そこで、システム側に『QRコード』読み込みに対応してもらいました」(大井事務局長)

職員が、自分の携帯電話やスマートフォンでQRコードを取得し、返信するだけで登録が完了するよう、作業を簡略化したのだ。
各支部でシステムを使った防災訓練を実施する機会を利用して、登録は一気に進んだ。


企業内での個別利用も可能に

もうひとつ、三重県建設業協会が特徴的に実施したこととして、会員各企業が、個別に、このシステムを利用できるようにした点だ。


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会社ごとにクローズした、高セキュリティな環境を提供することで、安否確認等のBCP対策として利用して欲しいという思いによるもので、協会本部は各企業内での情報のやりとりは閲覧しない。
一方、建設業協会に送られてきた情報に関しては行政や警察、消防など、県や国の機関がいつでも閲覧できるようにしている。
情報に基づいて、迅速に適切な判断を下す資料としてもらうためだ。

このように、情報のレベルに応じて情報の共有範囲や閲覧制限を設定することにより、情報送信の活性化を狙っている。

 「協会員には、どんな用途でもかまいませんので、会員メリットとしてどんどん利用して欲しいと思います。
普段から使っていないといざという時に使えませんので、日常的な環境として慣れて欲しいんです。
支部や本部への状況報告が必要な場合は、送信するメールの宛先を変えるだけですので、災害時に慌てることがありません」(大井事務局長)

こうした働きかけにより、会員企業が情報を“送る側”のみならず“受け取る”側として管理画面を見ることで、情報共有の全体像がイメージしやすく、各社の理解が深まったという利点もあった。


いかに利用していただくか

また、日常的に利用してもらうために、他にもいくつか施策を講じた。
「建協カメラ」というスマートフォン用のアプリを製作し、ごくシンプルな操作で写真を送信できるようにしたり、イントラネットのログインページから情報共有システムにログインできるようにし、入り口に迷うことのないようにした。

このように、basepageの導入を決めて以降約1年かけて、システムを使った防災訓練や説明会等を何度も実施して啓発に努めた結果、ようやく環境が整備された。


常にシステムの完成形を意識する

今後、このようなシステム構築を検討する方々へのアドバイスを松井専務理事に伺ったところ、

「災害対策というのは生命線。そのシステム化ともなれば、長く使い続けていくものですから、最終的にどのようなシステムを構築したいかという完成形が練れていないと、混乱が生じます。
完成形を描いた上で、現段階でできる範囲を把握する、そして、優先順位を付けながら段階的に理想に近付けていくことが大切です」

現在は、その過程で情報の「分類」や「リンク」に課題を感じていると言う。

「情報過多の時代、必ず確認して欲しいもの、目を通すだけでよいもの等、情報の重要度や優先度のレベルに応じた“伝達手段”を整備したり、点在したデータをつなぎ合わせて情報化することが必要です。
例えば、災害時の「連絡体制図」や「資機材登録情報」等、それぞれはデータとして整備されていても、そのデータ同士の連携等が考慮されていないケースがあります。
こうした点を、システムでカバーし、有用な情報にできればよいと思います」

地元建設業がいち早く災害の全体像を把握することで、限られた資機材を有効に稼動させることができる。
建設業が早期復旧の実現に不可欠であるという自負と使命感で、三重県建設業協会の活動は続く。

防災訓練の模様

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2013年9月1日、南海トラフを震源とする巨大地震の発生とそれに伴う津波発生を想定した「平成25年度 三重県・熊野市他総合防災訓練」が大規模に実施され、県知事立ち会いのもと、警察、自衛隊、国土交通省らが一堂に会した。
建設業協会は道路啓開訓練を実施し、テレビ取材も入りメディアでも大きく取り上げられた。






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