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成功事例集

建設ソフトやハードウェアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。

自由に調整しながら設計できる、3次元CGソフトの常識破りの応用

保坂猛建築都市設計事務所

3次元ソリッド/サーフェイスモデリング&CGツール「form・Z」

会社概要保坂猛建築都市設計事務所


代表取締役
保坂 猛 氏
所在地:横浜市中区
従業員数:4名

保坂猛建築都市設計事務所を主催する保坂猛氏は、国内外で多くの受賞歴を持つ注目の若手建築家だ。中でも、富士山麓にある山梨の郷土料理店「ほうとう不動」は、富士山と建築が一体となった壮大な風景をつくり、高い評価を得ている。この建物は、富士山に浮かぶ雲が地面に降りたような曲面で構成されたフォルムを持ち、3次曲面シェルが分岐・収束しながら建物内外の形状を作る。この複雑な形状を正確な3次元の設計データに仕上げるためには、3次元CGソフト「form・Z」がなければ不可能だったという。form・Zのパフォーマンスについて話を伺った。

 


前例のない3次曲面を使った設計が可能に

3次曲面を使用した建物は数多く存在する。ただし、外観の形状のみに曲面を使い、内部はスクエアな空間を別に作るのが一般的だ。しかし、保坂氏設計の店舗の内部は、1枚の3次曲面シェルから分かれた2枚の3次曲面により、エントランス・客席・厨房・トイレの4空間が区切られる構成になっている。

当初、施主からのオーダーは「和風の建物」だったのだが、例えば、ほうとう料理で古民家風の店舗では面白みに欠ける。そこで保坂氏は「(和の代表ともいえる)富士山と建物で一つの風景をつくれば、お客様には『和』と感じてもらえる」と、この富士山にかかる雲のような柔らかなデザインを発想したという。

設計上の課題は大きく次の2つ。
(1)2枚の3次曲面シェルによる構造を簡単に調整できる
(2)設計自由度が高く、精密なプランにも対応できる

保坂氏が数々のソフトをシミュレーションした結果、この2つの条件を満たすソフトはform・Z以外に見つからなかった。実は、一般的な3次元CG系ソフトでも同様の構造は作成可能なのだが、CADを使った設計段階で最終形がほぼ固まっていることが条件となり、基本設計を基に自由に調整しながら仕上げていく作業はもちろん不可能だ。対して、今回のform・Zの使い方は、form・Zで調整を絶えず繰り返し設計しながら、CADにデータをリンクさせる手順を踏むという、これまでの3次元CG系ソフトの概念とは正反対のアプローチ事例であるといえる。

 


3次曲面のシェルを 複数組み合わせた 複雑な形状を持つ

 


調整力と応用力という2つの条件をクリア

設計プロセスでの調整を簡単にしたのは、建物全体を細かなグリッドで区切り、1つ1つに座標軸が出るように設定したモデリングの発想。例えば、ある地点の高さを変えたい場合、この座標軸に高さの数値を入力し変更することで簡単に上げ下げができる。これにより、1枚の3次曲面シェルが2枚に分かれる接合点もグリッドで特定できるようになり、設計上の最大の課題がクリアできた。

数値入力のため正確かつ簡単に扱うことができ、各エンジニア間で容易に共有できる点も、グループで作業するプロジェクトにとっては魅力だった。例えば、夏に西日が入って暑くならないように西側の開口部を低くしたり、屋根に雨水がたまらないよう形状を調整したり、細かな設計を変更するたびに耐震性をチェックする部門に確認を取る必要が生じてしまう。他にも、後から気付く変更すべき点は多数発生する。こういった調整期間はおよそ4ヵ月にわたったが、変更点を各エンジニアと数値で共有できたことは管理を効率化することができた。

また、現場で実際に納まるか、雨水が屋根から適正に排水されるかなど、その都度、模型を作成しシミュレーションする必要も生じる。数値による管理は、水平・垂直の等高線で見たい部分が必要なピッチで見られるため、模型作成の精度がさらに高まったという。

一方、設計の自由度の高さは、約150種類あるform・Zのツールの多様さが可能にした。一般的な3次元CG系ソフトでは、単一のツールで使い方も決められてしまうため自由度に欠けるが、form・Zで設計する場合は、複数のツールを組み合わせて設計できるため、1つの形に対する設計のアプローチが設計側の発想で自由に広がる。他にも、開口部の位置決めでは、開口部分と本体部分を分けて設計調整できる点も効率的だ。分けたそれぞれのデータで作業できるだけでなく、作業を終えた2つのデータをスムーズに接合できるため、設計の自由度が高まるのだ。

 


グリッドで精緻に区分された図面は、外と内の
3次曲面を色で区別することで設計作業を
補い、 調整する際の利便性を向上させた

 


form・Zなくては不可能だった

この店舗は、屋根の面積だけでも1000㎡という広大なプラン。従って、屋根にたまった雨水の排水機能はもちろん、各部で細心の調整を行わねばならなかった。

構造強度の確認や通風・採光のシミュレーション、人が円滑に動けるかなど店舗としての効率性からサッシの選択に至るまで、設計の詰めには膨大な調整作業が発生した。加えて、複雑な設計のため大臣認定も取得せねばならず、当然、日程上の制約も加味される。もちろん建築プランとしても新たな試みだったため、試行錯誤の中で行う長期間のプロジェクトには予想を超える負荷がかかってしまった。

そのような状況下で、設計上の調整を正確に数値管理できるform・Zの存在は重要な役割を果たした。特に、一般的な3次元CGソフトにありがちな、グリッドが細密になりすぎることがなく、人間が調整するのにちょうどよい感覚で作業を行えたことが大きい。

保坂氏は、form・Zで現実に3次曲面シェルの設計が行えるかどうかをシミュレーションも行うと同時に、form・Zの多彩なツールを綿密に研究。具体的に「どの局面で、どのツールをどう活用するか」の詳細なプランニングを、設計に携わったグループで構築した。それだけに、form・Zは「まだまだ可能性を秘めている」と考えている。いずれにしても「form・Zがなければ、このプロジェクトは実現できなかった」という一言は、このソフトの大きな可能性を感じさせてくれるものだった。


「雪が降れば雪に埋もれ、霧が出れば霧にとけ込む」。そんなふうに自然と一体化した3次曲面の建物は、保坂氏いわく「建築自然現象」とも表現できる姿を見せる






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