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成功事例集

建設ソフトやハードウェアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。

ボトムアップから県を巻き込んだ災害情報共有システム

社団法人高知県建設業協会

情報共有ASPサービス「basepage」


会社概要 社団法人高知県建設業協会

川上勲夫氏(社)高知県建設業協会は、室戸、安芸、南国、嶺北、高知、伊野、高吾北、高陵、高幡、中村、宿毛、土佐清水の12支部からなる445社の会員企業を有する。高知県は、台風、豪雨、大地震などの自然災害で過去幾度も甚大な被害を受けており、各行政機関と災害協定を締結している。高知県との災害協定に、「GPS携帯による災害情報共有システム」に関する細目協定が追加されたのが、平成22年9月のことであった。ここに至る経緯を、事務局長に就任したばかりの川上氏に聞いた。

事務局長 川上 勲夫 氏 

ITでできる社会貢献を

 社団法人高知県建設業協会は、平成22年1月に、情報共有ASPサービス「basepage(ベースページ)」(開発元:川田テクノシステム)を利用した災害情報共有システムを構築した。
 高知県にとっての災害の脅威といえば、大規模なものでは、東海、東南海、南海の三連動地震。15~30年以内にも発生するといわれており、最も注視すべきところである。小~中規模の、身近に迫る災害といえば、やはり台風。ここ数年は直撃こそしていないが、さすがに「台風銀座」と呼ばれる高知県だけあって、昭和51年と平成10年に大きな被害を受けている。
 こうした状況下で、社会貢献活動の最大の目的である、「防災」に、ITを活用できないかと考えたのが、川上事務局長であった。
 そんな折、県の建設検査課の課長から「basepage」を紹介された。  「『これだ』と思いました」 川上事務局長が思い描いていたイメージとピタリと合致し、システム化に光明が見え始めたのは2008年の9月頃のことであった。

日常の延長で使えるシステム

 この時、川上事務局長が重要視したシステム化のポイントは、「誰もが身に着けているような手近なものでできること」。その点、「basepage」の災害情報共有システムは、「携帯電話」という汎用性が高く手軽に使える機器を使って、日常的に操作にも慣れている「メール」を利用するシステムであったため、イメージ通りだった。

県が、参加企業の評点をアップ

 災害情報共有システムの稼動にあたっては、協会員の協力が不可欠だ。会員各社に利用されてこそ、多くの情報が集まり、的確な対応ができる。そこで、高知県建設業協会では県の土木部、危機管理部、知事と協力して、会員に呼びかけた。平成22年より説明会や実用を目指した災害訓練などを頻繁に実施し、参加企業数は徐々に伸びを見せた。
 そして、参加企業数が飛躍的に伸びたのは平成22年9月。
 「県が、この災害情報共有システムに参加している企業に対して、評点をアップすることを取り決めたのです」
 経審の評点とは別に、県独自の「地域点数」に10点の加算点を付けるというものだ。10点は大きい。一般的に、経審点数を1点上げるのに100万円かかるといわれているので、その影響度は推して知るべし、である。
 このほかにも、地元企業の協力により携帯電話の配布がなされるなど、会員企業の負担を軽減する動きもきっかけとなって、災害情報共有システムへの参加企業は大幅に伸び、平成23年6月の時点で建設業協会会員会社(土木)445社の内、304社が参加するまでとなった。

建設業の仕事は地域住民への恩返し

 平成19~20年頃には、建設不況のあおりを受け、公共事業量はピーク時の1/3以下、会員数も6割程度になった。依然として厳しい建設業界において、生き残るためのポイントは何かと川上事務局長に尋ねると、
 「確実に利益を上げること。そして、そのために何をするか、ということです」
 ドライに営利目的に走るか、地域に根ざした企業として、社会貢献活動を実施するか――。
 「後者の道を選んで、住民から期待される企業となることです。防災・防犯、清掃活動や催事への参加、いずれもコストのかかることですが、公共事業の原資は税金であり、いかにして地域住民への恩返しをするか、といった視点で業務に当たることが、次の利益につながると思います」

自然災害から地域を守る防災活動

「防災・防犯特別対策室」を設置

 2011年3月に発生した東日本大震災を経て、高知県建設業協会ではより一層の地域貢献を目指して「防災・防犯特別対策室」を立ち上げた。今後、防災訓練・救命講習、炊き出し訓練などを実施する予定だ。
 また、青年部を新設あるいは強化し、いざというときの応急復旧活動で活躍するマンパワー確保に備えている。
 「平成10年の『’98高知豪雨』では、一日の降雨量が1000㎜を超え、水没する地域が出るなど甚大な被害を受けましたが、当時は応急復旧に対する意識が今ほど高くなかったので対応は遅れました。(現在と比べて)初動で2日は違うと思います。住宅地への救助や、特に豪雨後の膨大なゴミ処理などの対応に遅れが出ました」
 「災害情報共有システム」の導入により、視覚的に災害の状況を捉えることで、災害発生の早い時点でまず災害の大枠を認知することが、自発的に動く意識の向上につながっている。
 また、パトロールの結果は電子MAPで確認できるため、救助活動に漏れがないかもチェックできる。

災害情報共有システムの今後に期待すること

 システムに対する今後の要望としては、スマートフォン対応や、メール送信時にGPS情報の付け忘れを防ぐような仕組みなど、情報発信側の機器類に関係した要望が挙がる一方、情報を収集・管理する立場からは、収集した情報をまとめて自動的にリスト化し、災害リストを作りたいといった、実にさまざまなものが挙がっている。
 「システム開発のベンダーが、システム説明会や災害訓練に至るまで立ち会ってくれるので、こうした要望の数々がベンダーに直接届くのがメリットです。今回のシステム化はボトムアップで始めたことなので、それなりに手間と時間がかかりましたが、ベンダーが根気よく相談に乗ってくれたので助かりました。おかげで県を巻き込んでの普及活動につながったのだと思います」
 今後、災害時に稼動できる資機材のデータベース化など、basepageの活用に意欲を見せる川上事務局長は、最後にこう語った。
 「今の時代で、成功している人はITをうまく活用する人。建設業協会として、会員企業の成功の手助けをしたいですね」

利用イメージと災害情報共有システム画面




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