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成功事例集

建設ソフトやハードウェアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。

BIMデータの活用〜建築と設備のコラボレーション〜

大成建設株式会社

Brain Gear


会社概要  大成建設株式会社
所在地:東京都新宿区
創業:1873年
設立:1917年
資本金:約1,124億円
従業員数:8,282名(2010年12月現在)

設計本部シニア・エンジニア 小林 光 氏 大成建設(株)では従来より建築系CADとしてAutoCAD、Autodesk Revit Architectureを導入し、業界のBIM推進の中心メンバーとして3次元モデルによる情報化を推進している。設備系CADシステムは2003年よりBrain Gearを導入。機能追加を含むカスタマイズを行い、意匠設計・構造設計とのコラボレーションとデータの有効活用を図ることで意・構・設、設計分野間の整合性の向上と、実施設計の効率化を進めている。

設計本部シニア・エンジニア 小林 光 氏

建築CADとのコラボレーション

【効率化コマンドの一例】経路作図時のサイズ指定の簡略化を図るサイズスタンプ機能を提供
 建設業界を取り巻く環境は民間需要の縮小、公共工事の減少、建設資材の高騰、など厳しいものとなっている。一方で省エネ、省CO2をはじめとする環境配慮へのニーズの高まりに代表される建築の高機能化や高品質化への要求も強く、コストの圧縮と高機能・高品質を同時に満足することが求められている。
 設計業務においては、限られた時間の中でCADあるいはITの力によって業務を効率化し、より密度の高い設計を実現することが期待される。2000年以降大成建設では部門間のCADデータ連携と活用を全社的イノベーションとして進めてきた。具体的な取り組みとして建築モデルを各部門間で共有し、図形情報や属性情報を活用することを目指している。
 設備設計では、開発当初から作図の効率化はもちろんのこと、建築オブジェクトから部屋形状/階高・天井高/用途/室エリアなどの情報を得て、CAD上で各種技術計算を行い、躯体情報を利用した作図や収まりのチェック等を行う開発に取組んできた。
 建築モデルとの連携は設備設計者の業務を大幅に効率化させる可能性がある。こうしたオブジェクトが持つ情報に期待する建築CADとのコラボレーションでは、CADまたはそのデータの互換性がポイントになる。当時各分野のCADをつなぐ有効な共通フォーマットが存在せず、また、将来的にはどのCADでも共通フォーマットが使えるようになると予測されたため、開発のベースとなる設備CAD選定においては、建築が用いるAutoCADと親和性が良いことを重視した。また、電気/衛生/空調の3設備が揃う製品であること、2次元図面から3次元モデルの作成が可能なこと、カスタマイズ要請に対応できること等を条件として検討した結果、将来性を含めてAutoCADを基本とするジオプラン社のBrain Gearを選択した。


設備設計CADのあり方

Brain Gear Brain Gearの採用から7年が経過した。当初は設計図書作成の効率化と高品質化、積算へのデータ利用等を中心にコマンド開発・運用を進めた。当時はBIMの概念も整理されていなかったが、大成建設ではAutoCADをベースに独自の建築部材オブジェクトの開発に取り組むことで、いわば独自のB I M 開発を行っていた。設備設計CADはBrain Gearをカスタマイズした独自CADで建築部材データとの連携を図るほか、作図の効率化を意図したコマンド開発を多数行った。Brain Gearは作図・編集のしやすさに定評はあったが、図面のモデル化に伴って、従来必ずしも必要ではなかったサイズ属性等を単線表現の配管やダクトオブジェクトに入力する必要が生じ、その煩わしさが設計者の負荷となって不評であった。また煩わしさの軽減を意図した自動化も、時に設計者の意図に合わずにむしろ歓迎されないなどの失敗も経験した。こうした反省を踏まえて開発元であるジオプランとともに作図機能や手順を見直し、設計者の手順に沿った作図効率化(兼、属性設定)コマンドを開発・運用している。その成果はBrain Gearの標準機能にも反映されている。設備設計の成果品は基本的に2次元の平面図である。
 少なくとも今は従来通りの成果品を作ることが必須であり、BIM対応や3次元モデル化に重点を置き過ぎれば、業務の効率を阻害する結果にもなる。
 設備設計CADは従来通りの2次元作図にも使いやすく、高機能化したコマンドも手数を減らすことよりもむしろ設計者の思考に沿って使いやすいことが重要である。それでいて、作図すれば自ずとBIM等に対応できる属性が設定されていくようなCADが理想的だ。ジオプラン社の開発陣とはこうした意識を共有しており、今後さらに設計でも使い勝手の良いCADに発展することを期待している。現在、大成建設の建築作図はRevitArchitectureによる3次元化が進み、設備設計CADも新たな取り組みが必要となっている。これまでの知見を活かして設計の現場とバランスを取りながら、将来を見据えた展開を検討している。


設備設計におけるBIMの活用

 米国建築家協会では、BIMを「プロジェクト情報データベースに連動したモデル技術」と定義している。コンピュータ上に作成した3次元の形状情報に加え、室名や仕上げ、材料・部材の仕様・性能、コスト情報等、建物の属性情報を併せ持つ建物情報モデルを構築する技術で、設計から施工、維持管理に至るまでの建築ライフサイクルのあらゆる工程でBIMモデルを活用する概念である。このように定義されるBIMは製造業でいうPDM(プロダクトデータマネジメント)の概念を建築にとり入れたものと考えられる。PDMでは、各段階で各製造部門が作る3次元設計データをヴァーチャルに組み立てて調整し、また、その調整後のデータを後工程で活用することでさまざまな効果を上げる。こうしたデータマネジメントは、どちらかといえば各部門で作られた情報を縦横に活用する技術であり、各部門で行う設計行為そのものをサポートする仕組みは含まれない。BIMにおいても各分野がモデルを利用し、成果品を作るためのツールは分野毎に用意しなければならない。意匠設計ではRevit他の有力なツールが普及しつつあるが、設備分野では、どのフェーズでBIMから何を利用し(または何が利用可能で)、何をBIMにフィードバックできるか、その際にどんなツールが有効か等、十分な議論がなされていないように思われる。現在、BIMというと建物を3次元モデル化することをイメージする人が多いと思う。しかしながら、前述のとおり設備設計の成果品で必須となるのは2次元を基本とする設備図であって、3次元を基本とする施工図ではない。CGパースなどで見る3次元モデルの迫力や面白さに眼を奪われがちだが、BIMの建築形状等情報を利用して効率よく高品質な設計を進めることが最重要で、成果は必ずしも3次元モデルでなくてもよい。設備設計を効率化するためにCADはBIMの情報を巧く使えるツールになっていく必要がある。また、必要なときに検証したい部分または全体が3次元化できればよい。決して3次元モデルの価値を否定するものではない。大成建設においては、Brain Gearの効率化コマンド開発や2D、3D化機能の利用を検討し、運用上の課題を解決しながらBIMの利用を進めようとしている。
BIMのデータ連携イメージ





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