土木工事積算システム「らくらく積算」
会社概要 福井県福井市
人口: 269,340人(2010年11月1日現在)
URL: http://www.city.fukui.lg.jp/
九頭竜川、日野川、足羽川をはじめ大小の河川が多く流れる福井市は、古くから治水事業が重要な位置を占めてきた。また、1948年の福井地震以来、歴史と文化を取り入れた区画整理事業が推進されるなど土木工事の比重が高い地域だ。
現在も年間1,000件規模の土木工事が行われる福井市で、工事などの設計・積算の基準づくりを行う技術管理課。今回は、その業務効率化のために採用した積算業務管理ソフト「らくらくシリーズ発注情報管理システム/土木工事積算システム」(以下「らくらく積算」)導入の背景と成果について取材した。
福井市工事・会計管理部技術管理課
副主幹 塚本 和幸 氏(左)、主査 石塚 景一 氏 (右)
積算システムの変遷と課題
工事積算業務とは、工事を実施するために必要な数量、価格を決定する際の必須業務。したがってそこでは公平・公正・適格な金額設定が欠かせないばかりか、品質の確保ももちろん重要視される。現在の福井市役所の積算システムは3代目である。
初代ではこの積算業務を、各事業課が独自のシステムを用いてバラバラに行っていた。ただ、部署間で歩掛・単価の違いが生じる可能性や書類の様式が違うなどの不具合も発生していたため、1993年、独自開発した統一積算システムの使用をオフコン上で開始。ただし、カスタマイズや他システムとの連携面で発生した新たな問題にも悩まされていたことも事実である。
2代目の課題をまとめたのが次の5点。
(1)システム開発から10年以上が経過し、改良・修正を重ねた結果、プログラムにバグが発生
(2)オフコンベースのシステムなので、Windows系の他システムとの連携がとりにくくデータ互換性やCALS/ECへの対応に問題
(3)連携する財務系システムの2010年度からの新システム移行が決まり、そのままのシステムでは連携が困難
(4)プログラムの改修、単価・歩掛の作成・更新を職員が実施しており、カスタマイズへの負担が大きいばかりか、異動時の引継ぎ漏れによる問題も発生
(5)コードNo.による入力方式のため常にコード表が必要で、非効率かつミスの可能性も高い
また、福井市は2005年には「福井市建設CALS/EC整備基本計画」を策定し、積算システムにおける他自治体との共同利用を視野に入れていたが、福井市単独では、現実とかけ離れたコストがかかり実現は難しいと判断。そこで、課題を多く抱えた独自開発システムの代替案として市販システムの利用が浮上したのである。その背景には福井市全体に関わる「第3次地域情報化計画」(07年)に沿った情報化の大きな流れもあった。
らくらく積算の導入の経緯と効果
福井市の技術管理課は、市販システムの導入に当たり選択の基準として次の4点を重点項目に設け、2007年にプロポーザルを実施。
(1)官公庁版であること
(2)カスタマイズ(システム改良)に柔軟に対応できること
(3)他自治体への導入実績があり、十分な装備とシンプルな操作性があること
(4)非常時など、スピーディに対応ができるサポート拠点があること
これらの基準に照らして選ばれた3代目が「らくらく積算」である。2008年の導入過程では4月に仮運用を開始し、7月の歩掛改定に向けて細部のチェックを重ねるなど周到な日程で計画どおりにシステム(300利用ユーザ数)を稼動させた。
この「らくらく積算」運用開始後、以前の課題解消も含め次のような改善が見られている。
(1)市販ソフトのため汎用性が高く、積算基準の変更に対してもバージョンアップなどで対応が可能
(2)クリック一つで歩掛・単価を選択でき、コードNo.の入力が必要ないため初心者でも積算業務が可能
(3)旧システムでは対応しきれなかった、機械・電気・業務委託等への積算も可能
(4)すべての基準情報が保存されているので、たとえば下水道の積算途中で関連する水道のデータを容易に参照可能
(5)マスターデータを呼び出し、数値を入力するだけで図面から設計書が直感的に作成可能
(6)歩掛や諸経費のデータ作成業務等も業務負担が縮小
(7)帳票をExcelデータやPDFデータで出力できるため情報共有にも対応可能
(8)Windows系のソフトで、他システムとのデータ互換性がある
「らくらく積算」 メニュー画面 積算データも自動連携で有効利用
内訳も項目のクリック選択で人為的なケアレスミスを削減 ExcelやPDFへの帳票出力も容易
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