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成功事例集

建設ソフトやハードウェアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。

枠を超えていく木構造とASTIM

なな喜建築設計室

木造一貫構造計算ソフトASTIM


なな喜建築設計室
所在地:宮崎県延岡市
設立:2006年
従業員数:2名
主な事業内容:木質構造設計、木造建物の耐震診断・改修設計

代表 久野奈穂子氏   

なな喜建築設計室は、木造建築物をメインに扱う構造設計事務所である。
年々増え続ける木造建築物の、さまざまな形状の検討にスピーディーな対応が求められる中で、より効率的な手段を求め、木造一貫構造計算ソフト「ASTIM」の導入を決めた。
その導入の経緯と効果について話を伺った。
 
 

木造建物の構造設計の広がり

弊社の拠点は宮崎県と愛知県名古屋市にあり、なかでも九州地方の物件を多く扱っています。
この地域は国内有数の木材生産地域で、その背景より古くよりさまざまな用途の建物に木造を用いる傾向があります。
木造建物の多くは流通量がありコスト調整がしやすい在来軸組工法がメインですが、近年はより自由度の高い建物への挑戦が増えているように感じます。
在来軸組工法は多項目の仕様規定と剛床仮定により、手軽な設計ができる反面、自由な構造検討が難しい部分があります。
また木構造全般、木材の性質を考慮すると、RC造や鉄骨造で行うような部材配置や接合部確保が難しいことも往々にしてあります。
 
木造の構造設計は、そうしたはざまを見極め、適切な設計方法を選定するのがとても難しく、またそこが醍醐味とも言えます。
大型吹き抜け空間やスキップフロア構造、鉄骨やRC構造との混構造、丸太など自然木の利用やツーバイ材を利用した枠組工法やトラス、近年はそこへ3層以上の高層建物やCLTなど新素材構造が入り、木質構造がより複雑・多様化してきているのを実感する日々です。
 
3D図
3D図

3D骨組図
3D骨組図

 
 

ASTIMの導入と活用

在来軸組工法での構造設計の場合、部材入力点数が多く、グレー本に準拠した検討も多項目に渡るため、壁位置など小さな変更が全体に及ぶこともあり、手計算では対応が追い付かないため、かなり早い段階で一貫計算ソフトの導入を決めました。
立体フレーム解析は、任意形状立体フレームの解析ソフトもあるので、まずはその利用からスタートしました。
シンプルなトラス構造などはその方法で十分です。
 
しかし建物全体が複雑な形状の場合、全体検討の対応スピードには考慮が必要です。
そのためASTIM導入を早々に検討し始め、2014年レンタルからスタートしました。
 
構造計算ソフトは軒並み高額で、購入後も保守料の更新の負担が続きます。
そのためレンタルから購入へ入れるシステムは、立ち上げて間もない小さな事務所にはとても助かりました。
年間保守料も妥当な金額です。
 
ASTIMを使いさまざまな用途の木造建物の検討を行いました。
畜舎や倉庫・屋外観覧席・ガレージ・店舗・保育園、住宅では混構造やスキップフロアなど、一筋縄ではいかない建物での活用が目立ちます。
ASCAL機能も利用して、木造建物に付随する鉄骨構造なども設計しました。
 
また海外物件にも活用しました。
 
小規模ながら複雑な形状で、地震や台風など水平力の影響が少なさから建物デザインに耐震性への配慮が取りにくく接合部の構成が難しいケースなど、ASTIMでの検討が役に立ちました。
 
ASTIMでの一貫計算の強みは、立体フレームの部材構成から接合部までトータルな検討を何度も繰り返しながら行うことができることで、計算を行いながら建物をブラッシュアップしていくことが可能です。
全体の検討を一斉に行えるので、拾い漏れや見落としを抑えることができます。
 
3D図で全体の把握がしやすいだけでなく、伏軸の2Dモデル・結果図から接合部など細かい検討がじっくり行えるところも気に入っています。
計算書と入力画面を同時に立ち上げて見ることができたらさらに良いですね。
燃えしろの設定ができるのも地味ながら助かってます。
 
伏図
伏図

軸図
軸図

 
 

ASTIMに思うこと

自由度の高い木造建物に柔軟な対応ができるASTIMはかなりの万能型計算ソフトですが、入出力については少し癖があり、ハードルに感じるところがあります。
建物形状が複雑になると、入力作業はそれなりに労力がかかります。
またASTIMの操作は身体で覚えていくようなところがあり、後続者への伝達が難しいです。
できればCADデータの取り込み、作図の柔軟性や、体感的に単純化された入力をもう少し望みたいところです。
 
またデータ書き出しについても、dxf変換がオプション扱いになっており、構造図作成の手間がかかります。
 
最近は他機器との連携が進み、一部のプレカットCADとも連携できるようになったと聞きますし、こうした機能を使いスムーズな入出力が行えるようにしていきたいと思います。
 
ここまで書いてみて、ASTIMを所有してからある程度年数を経ているのに、まだまだASTIMの効率的な利用に余地があることに気付かされます。
 
開発者やユーザー同士の情報交換ができるとありがたいです。
以前開催されていたウッドサロンなど、zoom形式でもよいので開催希望です。
 
 
在来軸組工法の一貫計算ソフトとASTIMを併用して使っていると、グレー本準拠型の設計と立体フレーム解析との違いを体感的に感じます。
ASTIMでも在来軸組工法の計算は行えますがアプローチの違いを感じます。
もちろんこのような比較により、自身の構造の勉強ができ、とても興味深いです。
審査機関では、木造の立体フレーム解析や一貫計算に柔軟な姿勢を示す所とそうでない所があり、ジレンマを感じることもありますが、木造の構造設計は確実に認知度を上げ、すそ野が広がってます。
 
 
構造設計者は、計算ソフトを使いながらも「ソフトに使われないこと」を戒めにしますが、ソフトとともに学び、より考えを深めていくことはできると思います。
 
これからも自己研鑽を怠らず、新しい情報をくみ取り自身の考えを掘り下げていくとともに、スタッフの成長を促し、事務所全体で伸びていけるようにしたいと思います。
 
 


最終更新日:2023-06-21




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