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成功事例集

建設ソフトやハードウェアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。

「3D支承チェックシステム」-直感的に利用できる品質向上システム-

株式会社長大

3次元設計システム「V-nasClair」/「Kit」シリーズ

 
 

株式会社長大

株式会社長大
所在地:東京都中央区
設立:1968年2月
資本金:10億円
従業員数:891名(2022年9月30日現在)
主な事業内容:
国内外インフラ設計・整備、地域開発、その他社会環境改善に関わるソリューション ほか
https://www.chodai.co.jp/


構造事業本部 技術統括部
(左)事業部長 田中 剛氏
(中央)福岡支社勤務 下城 知世氏
(右)主査 大阪支社勤務 酒井 梨恵氏


 
 
株式会社長大は創立以来、経営理念として「社員の創造性と、相互の信頼を育み、美しく、快適な地球環境づくりに邁進する世界の技術と頭脳の会社を創造する」をあげ、そのキャッチフレーズとして「人・夢・技術」を掲げ、豊かな自然を生かしながら人が「夢」を持って暮らすことのできる生活基盤を創造し支えるために技術の研鑽に励んできた。
そして、この技術を活用して、さらに安全に、安心して暮らせる社会の実現に向けて、あらゆる生活基盤に関わるサービスを提供し、ステークホルダーの期待と信頼に応える努力をしている。
 
 

品質の向上に向けて

株式会社長大 技術統括部の田中事業部長に「3D 支承チェックシステム」の開発依頼経緯について話を聞いた。
 
「阪神淡路大震災以降、橋梁設計では、初期条件を与えてから設計計算が一気通貫で収束することがなくなり、上部工・下部工・支承・解析などの各パートで行った設計検討結果を踏まえながら、トライアル計算を何度も繰り返すことが必要になりました。
そのような中で、設計の品質を維持するためには、各パート間で最新データを管理・共有していくことが重要な課題であると考えていました。
従来は、各パート間でのトライアルにより生じる不整合を防ぐために、紙ベースの数値を見比べてチェックを行っていたのですが、人によるチェックのためミスが生じる可能性が潜んでおり、こういった問題を解決するためには、数値を機械的に可視化することが必要であると昔から感じていました。
その中で、今までは2次元データを利用しながら平面的なチェックを行っていましたが、その方法ではZ方向のチェックがしにくく、特に支承周りでは不整合を生じる可能性が残っていました。
そこで、当社が導入している3次元設計システム「V-na sClair」シリーズの開発元である川田テクノシステム(以下、KTS)を思い出し、「3D支承チェックシステム」の開発について相談したことがきっかけです」と語った。
 
 

3D支承チェックシステムとは

「V-nasClair」の「Kitシリーズ」には橋梁下部工構造物をモデリングする
「STR_Kit」と、橋梁上部工をモデリングする「BRIDGE_Kit 」があり、「3D 支承チェックシステム(以下、チェックシステム)」は、この二つのKit 製品をカスタマイズしたもので、上部工と下部工の支承の整合を3Dモデルによる可視化と数値によるチェックを行うシステムである。
Excel上で各部材の数値を入力し、作成したXML形式のファイルを「V-nasClair」のアドオン製品「STR_ Kit」「BRIDGE_Kit」にインポートすることで、上部工と下部工の3Dモデルが瞬時に作成される。
それぞれの3Dモデルを重ね合わせて表示し、支承の不整合を視覚的に確認できるほか、Excelシートで、その差異を出力することが可能である。
 
株式会社長大は、XMLファイルに出力するためのプログラムをExcelベースで作成し、KTSが構築したV-na sClairシリーズのカスタマイズ仕様との連携が実現した。
 
3D支承チェックシステム
 
 

誰もが簡単に利用できる

このシステムは『熟練者から若手エンジニアまで、誰でも簡単に利用できる』がテーマです。
「『STR_Kit 』および『BRIDGE_Kit 』は概略設計用のモデリングシステムなので、頭の中で構造物の立体イメージができる設計の熟練技術者は、詳細設計の数値を臨機応変に概略設計の数値に変換して入力できますが、経験の少ない技術者の場合でも使いやすいシステムとなるよう、入力項目についてもとりわけ工夫をしており、常にヒアリングを行いながらシステムを改善しています」と田中氏は語った。
 

BRIDGE_Kit
 
 

BIM / CIMを見据えて

国土交通省では、「2023年までに小規模を除く全ての公共工事において BIM/CIM 原則適用」を発表している。
 
田中氏は「あくまでもチェック用のシステムだが、3次元の概略モデルが簡単に作成できるので関係者間の合意形成などでも役立ちます。
ミスによる手戻りを事前に防ぎ、品質の向上のみならず、業務の効率化にもつながります」と語った。
 
KTSは、BIM/CIM原則適用に備え、今回対応したXMLデータ仕様を公開し、V-nasClairユーザーに広く利用しても
らう環境を整備することで、BIM/CIMの推進を図り、設計業務の高度化と品質確保の両立に貢献したいと考えている。
 
 

KTSのDXルームを体験

田中氏は、KTS本社にある、DXルームを体験した。
「プロジェクションVR」と呼ばれるCAVEシステムで、約2mのスクリーン3台に映像を投影しており、専用のシャッター眼鏡を通すことで、リアルな臨場感や没入感を得ることができる VR空間システムだ。
田中氏は「既設物を3次元化するだけでなく、本来は見えないものを3次元で可視化できることが一番活用できるのではないでしょうか」と語った。
住民説明や検査での利用など、あらゆる場面での利活用が期待できる。
多人数で実物大のモデルをチェックできることもポイントであり、「若手の育成で利用できそうです。点検の際、点検項目や注意点を図面や文章で説明するのではなく、目の前でモデルを見ながらレクチャーすることができるので、教育ツールとしても有効だと思います」と次世代の教育にも目を向けた。
 
 

今後の発展について

国土交通省が推進する「インフラDX」や「BIM/CIM」の原則実施において、後工程での3Dモデルの利活用やプロセス間連携を考慮した設計が求められている。
さまざまなITツールがある中で、KTS製の情報共有Cloud「basepage」の「DXビューア」機能ではさまざまな3Dデータを格納すると、ブラウザ上で統合モデルとして確認が行える。
今まで意思疎通が難しかった3Dデータへの指示や協議など、遠隔地にいる相手ともリアルタイムで簡単に共有することが可能だ。
格納したデータは表示の切り替えができるため、田中氏は「モデルの比較検討ができそう。
利用者がシステムを用途化でき、何にでも使いたいように使っていけそうですね」と今後のシステムの発展に期待を寄せた。
 
 


最終更新日:2023-06-26




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