2016年8月27日
地方共同法人 日本下水道事業団 情報システム室
室長 富樫 俊文
はじめに下水道施設は、処理場、ポンプ場、管路などにより構成されています。 経緯私がBIMを本格的に意識し始めたのは、BIMとFM連携のデモを見た平成25年7月のことです。 処理場の構成要素処理場は、機能的には揚水、水処理、汚泥処理、監視・管理、場内修景、外構等に分類できます。 初期の取り組み最初に取り組んだのは、市販のBIM/CIMソフトウェア(以下、BIMソフト)を利用し処理場を3次元化することです。 また、3次元化と並行して、IFCの検討にも着手しました。 下水道事業は公共事業であり、JSは発注者側の役割を担っています(図-3)。 このような事情から、BIMソフトのネイティブファイルを公式に利用することには多少問題があるので、 事実上の国際標準であるIFCに着目しました。 IFC検討に当たっては、IFCオンライン仕様書に目を通しましたが、理解が難しかったため、 現物重視、すなわち、ARCHICADに簡単なモデル(例えば柱1本)を入力後、ifcxml形式で出力し、 それをIFCオンライン仕様書と照らし合わせて確認する、といった方法で検討を進めました。 3次元モデル化(1)手順3次元モデル化は、既設の処理場を対象に汚泥処理、水処理、管理棟、外構の順で実施しました(図-4)。 設計が平成13~19年度、工事が平成15~20年度と比較的新しい処理場であり、 電子納品もきっちりとされていたので3次元モデル化の入力データとしては十分に揃っていました。 汚泥処理では、まずARCHICADにより構造物を完成図から3次元モデル化し、 次に、ARCHICADから出力したIFCファイルをRebroで読み込み、そこに設備の3次元モデル(図-5)を追加しました。 設備を3次元モデル化する過程で構造物3次元モデルの不備も散見されたので、 途中何回かデータを交換しモデルの精度を高めることが必要でした。 最終的には、ARCHICADに統合(ホットリンク)し、汚泥処理の最終3次元モデルとしました。 これと同様の手順を残りの施設についても行い、施設ごとの最終3次元モデルを作成しました。 全体統合モデルについては、最初はARCHICADのホットリンクを利用することを試しましたが、 各施設の階高が違うので統合に手間がかかる、コンピュータ上でスムーズに動かない等の問題が生じました。 そこで全体統合にはSolibri Model Checkerを利用しました。 合計8個のIFCファイルを読み込んだことになりますが操作性は良好なものでした(図-6)。 (2)分かったことこの最初の3次元モデル化から分かったことは以下の通りです。 マネジメントとBIM/CIMの統合・一体化(1)プロジェクトマネジメント下水道施設はライフサイクル中に数多くのプロジェクト、例えば、新設、増設、改築・更新等のプロジェクトが下水道整備の進展、 プロジェクトマネジメントでは、まず、プロジェクトの対象である施設や機能を施設WBSで特定(ワークフレーミング)し、 次に、施設WBSに対して必要な工種を作業WBSとして組み合わせます。 この組み合わせたものをワークパッケージ(WP)と呼び、プロジェクトの管理単位とします。 これらは、プロジェクトマネジメントの中のスコープマネジメントに相当します。 WPがほぼ確定すれば、これらと工事発注計画との関係を検討し、マスタースケジュール(図-7)を作成します。 PMR(プロジェクトマネージャー)は、マスタースケジュールをベースに、予算要望、設計、積算・発注等プロジェクトを遂行し、 実績を逐次マスタースケジュールに反映することで、プロジェクトをコントロールします。 (2)アセット/ストックマネジメント設備台帳は、設置、点検、修繕・故障履歴等を記録・整備することを目的として作成・利用するもので、 (3)統合・一体化BIM/CIMのMにはModelingだけではなく、Managementの意味も込められていることから、 まず、IDEF1Xというデータモデリング手法によりIFCの各エンティティのデータ構造を分析しました。 ifcxml形式のファイル(表-4)は、一部入れ子構造になっているものの、データにタグが付けられている、 ファイル内で一意となる識別番号(id)がエンティティごとに振られている等、 RDBと似通ったデータ構造であることが分かりました(図-8)。 これは、維持管理へのデータハンドオーバーを検討する上で非常に大きな発見でした。 並行して、IDEF0というプロセスモデリング手法により建設プロジェクトのプロセスの分析を行いました。 IDEF0は、プロセス、各プロセスのつながり、プロセスに関する情報等を、アクティビティ(作業・処理)を表す箱と、 入力、コントロール、メカニズム、出力を表す4つの矢印で可視化するものです(図-9、10)。 例えば「WPを作成する」というアクティビティは、空間とその空間に建築要素、設備要素が配置され、 さらに属性データも登録されたBIMモデル(図-11)を参照(コントロールに相当)することで、 2次元図面と設計図書による従来の方法よりも、作業の効率化と質の向上が期待できます(図-12)。 下水道用BIM/CIM部品・部材下水道用のBIM/CIM部品・部材はまだ十分には揃っていないので、 下水道施設で必要な6工種のうち、建築、建築機械設備、建築電気設備はBIMそのものなので、 土木、機械設備、電気設備についてのみ、詳細な概念モデルが必要となります。 例えば、下水道施設の土木施設は、一般土木や建築と大きな相違点はないのですが、 防食塗装、越流堰版、流出水路の銅版張り、開口部の蓋、安全対策としての柵等の多種多様の付帯施設が設置されています。 機械設備は、機器といくつかの部品類で構成されていますが、 マネジメントの観点では、部品までをBIMモデル化する意味はほとんどないので、 機器レベルを概念モデルの最下位レベルとしました。 このレベルは、工事設計書の機器費として記載されるレベルと同じレベルでもあります。 属性データについては、下水道用のプロパティセットの作成を検討しています(表-5)。 データの有効活用(1)概要BIM/CIMは、形状だけでなく属性データを入力できる点が大きな特徴ですので、 その手順(図-15)ですが、まずBIMソフトから維持管理に必要なデータをifcxmlファイル形式で出力します。 設備台帳には形状等は不要なので、必要なデータのみを抽出できる機能のBIMソフトへの実装が望まれます。 次に、変換システムを起動し、ifcxmlファイルを読み込み、中間RDBへのデータ変換・登録、設備台帳RDB用のデータ出力を行います。 事前に、マスターコード設定、設備台帳RDBと中間RDBとのデータマッピング等の準備は行っておきます。 最後に、設備台帳のデータ読み込み機能でデータを登録し、不足しているデータは追加入力します。 中間RDBを設けるのは、設備台帳RDBは多種多様なのでBIMソフトから設備台帳RDB用のデータ出力を行うことは現実的ではないこと、 データは一度変換すれば終わりではなく追加・修正・削除等が発生するので拡張性・柔軟性を確保することがその理由です。 IFCは構造化されていますが入れ子構造になっているので、 第3正規形まで正規化し、必要なマスターテーブル等を追加して実装する予定です。 (2)変換例ifcxmlファイルから設備台帳「AMDB」へは、 プログラムの処理としては、まず、中間RDB(図-8)のIfcRelDefines-ByPropertiesから その設備要素と関連付けられたIfcPropertySetを探し、 さらにそのプロパティセットに関連付けられたIfcPropertySingleValueをHas-PropertiesLinesから探し出します。 次に、IfcPropertySingleValueのNameと「AMDB」のデータ項目とのマッチングを行い、 マッチングルールに応じてNominalValueを「AMDB」のデータとして登録することになると想定しています。 今後の取り組みJSのBIM/CIMへの取り組みはまだ始まったばかりで、まだ検討の域を出ていませんが、一定の方向性は示せたと感じています。 建設ITガイド 2016 特集2「海外のBIM動向&BIM実践」 |
一般社団法人 建築・住宅国際機構
加藤 秀弥
はじめに日本国内の建設業界でも「BIM」を耳にする機会が増えてきました。 NBS International BIM Survey国際調査のこれまでまずイギリスNBSについて紹介いたします。 RIBA Enterprise社は“NBS”を登録商標とし、”NBS”をいわばブランド名として、 工事仕様書の整備に留まらず、BIMライブラリの提供や建設一般に関するセミナーの開催、出版、 テレビ局運営による建築関連教育の実施や行政情報の提供を行っています。 イギリス政府は2011年5月に「2016年から政府発注の工事にBIMの利用を要求」する計画を発表しました。 その発表に先駆けて、同年初めに第1回のNBS National BIM Surveyと称するアンケート形式の国内調査を実施しました。 その後、国内調査は毎年実施されております。 NBS International BIM Surveyと呼ばれるNBS BIM国際調査は、 国内調査と同様にアンケート形式で、2013年に初めて実施されました。 この調査は、NBSからICISに参加している国へ呼びかけられ、 イギリス、カナダ、フィンランド、ニュージーランドの4カ国が参加しました。 第2回目となる今回は、2015年にNBSから再びICISの参加国へ国際調査の呼びかけがあり、 今回は日本もIIBHを通じて参加しました。 日本ではICIS国内対応委員会を通じて回答者を募り、244名からの回答が得られました。 2011年のイギリス国内調査では、建設産業に従事する回答者のうち40%は「BIM」という言葉すら、認知されていませんでした。 その後、状況は年々改善され、2015年の国内調査時にはBIMを知らない人はわずか6%、 またBIMを経験したことがある人は39%に達しました。 ほとんどの人が今後5年以内に業務においてBIMに関与することになると予想しています。 イギリスでは2016年の政府調達案件での実用化に向けて、急速にBIMが普及してきたことが分かります。 2015年NBS BIM国際調査の参加国の概要2015年のNBS BIM国際調査には、イギリス、カナダ、デンマーク、チェコ、日本の5カ国が参加しました。 (1)カナダカナダでは、IBC(The Institute for BIM in Canada:カナダBIM協会, https://www.ibc-bim.ca) と (2)デンマークデンマークでは、bipsが調査を実施しました。 (3)チェコチェコは、BIMの認知は増えつつあるとはいえ、まだBIMが浸透していない国といえます。 2015年NBS BIM国際調査の概要ここでは、NBS BIM国際調査の内容をデータとともに紹介していきます。 (1)BIMの認知度 図-1に示されているように、BIMを知っていると回答した人の割合を見ると、チェコでは回答者の半数程度にとどまっているのに対し、 他の参加国では90%以上で、BIMが広く認知されていることが分かります。 なお、各国とも主催者に近い団体から回答者を募っているという点では日本と共通しており、 他の設問を含む本調査全般において、調査結果が社会一般や建設業界全体を反映していると考えることはできませんが、 日本でも一定の認知度の広がりがあることが確認できます。 次にBIMを知っていると答えた人のうちで、現在BIMを使用していると回答した人の割合が図-2になります。 この図を見ると、調査時点で既にBIM利用が制度として求められ、 また建設の電子化に積極的なデンマークの利用者が高いのが数字に表れています。 一方、BIM必須が目前のイギリスが制度的な制約のないカナダより低いことや日本と同等であるのは目を引きます。 BIMを利用する制度環境と機運、社会的な経済力の3点が揃っているのがデンマーク、機運に欠けるのがイギリス、 制度環境が未整備なのが日本とカナダ、機運だけが備わっているのがチェコと読んでは早合点でしょうか。 この調査ではBIMとは何かという定義を明確に示していないため、回答者あるいは国によってBIMの意味が異なる可能性もあります。 例えばBIMは建設工事に必要な設計図や仕様書を統合したものという理解もありますが、 さらに広範に建物のさまざまな性能や履歴などを含めた情報を含む理解もあります。 回答者が感じるBIMの位置付けに対する不明確さを反映するのが、図-3の回答です。 いずれの国でも半数以上が、BIMの定義が不明確という回答を寄せていることが分かります。 もっとも、制度等の環境が整備されているデンマークで不明確と感じている回答も多く、 むしろ国民気質の生真面目さを表す結果とも読めそうです。 (2)BIMの理解 図-4の回答からBIM利用者がBIMで活用している機能は何かが分かります。 いずれの国でも立体的な可視化映像の利用がほぼ90%を超えています。 続いて、干渉チェック、技術的解析としての利用が多いことが分かります。 イギリスだけ技術的解析の利用率が50%を割っており、他国と差があるのが特徴的です。 図-5はBIMとは何かをどう捉えているかを示す回答です。 「BIMとはコンピューターソフトの一つである」という回答も、「BIMとは3次元CADである」という回答も、 約25%以下の少ない回答になっています。 BIMの活用によって、さまざまな立場から建物に関係する人々の相互の情報共有や協力関係の構築が容易になることや、 竣工後の建物管理での活用が可能となるなど、建設に留まらない技術であるため、 これらの回答が少数にとどまっているのは、BIMの特長が理解されていないと捉えることができます。 (3)IFCおよびCOBieNBSの報告書では、BIM利用のメリットを最大限に活用するためには、IFCの利用が不可欠としています。 BIM利用経験者に対し、IFCの利用状況を問うた回答が図-6です。 デンマークではIFCが活用されていることが分かります。 デンマーク以外の国では、日本でIFCを利用している回答者が多いのが目を引きます。 一方、特にイギリス、カナダ、日本では利用しているファイル形式がIFCかどうかを認識していない回答が20%程度と少なからずあり、 IFCの重要性が十分に認識されていないことを示していると思われます。 COBieとは、建物竣工時に建物管理者に渡されるものを意図して開発されたBIMの出力形式です。 回答者のうちBIM利用経験者に対しCOBie出力を利用したことがあるかの質問に対する回答が図-7です。 この結果からCOBie出力がほとんど活用されていないことが分かり、今後の展開が課題と考えられます。 (4)BIM利用による環境の変化BIMを利用することによって、従来の業務方法がどのように変化していくかを知る手がかりとなるのが以下の設問になると思われます。 BIMを採用した場合、業務フローの修正が必要と考えるかどうかというのが図-8の設問です。 上段にBIM未経験者、下段にBIM経験者を示しています。 BIMを採用することによって、業務フローの修正が必要と考えている人が多いことが分かります。 デンマーク以外の国では、BIM未経験者の方が業務フローの修正が必要であるという予想が多くなっています。 次に、顧客および施工者のそれぞれからのBIM採用の要望が増加するかどうか、BIM未経験者と経験者別の回答が図-9です。 BIM未経験者と経験者の回答を比較すると、 いずれの国および設問に対しても、経験者の方が顧客や施工者からの要望が増えると予想していることが分かります。 BIM経験者の回答を見ると、日本、イギリス、カナダでは顧客からの要望と施工者からの要望の増加の予想はほぼ同程度ですが、 チェコとデンマークでは施工者からよりも顧客からのBIM採用の要望が増えることを予想する回答の方が圧倒的に多くなっています。 チェコとデンマークでは、BIM未経験者でも同様の傾向が見られ、 BIMの採用は顧客に対するメリットに資する部分が大きいと考えられているように見受けられます。 一方、日本では、BIM経験者ではほぼ同程度ですが、 BIM未経験者では施工者からの要望の増加を予想する回答が多いことが分かります。 この傾向は日本では施工者のBIM活用が先行していることが一因にあると思われます。 BIM未経験者にBIMを利用したくないかとBIM経験者にBIMを利用して後悔したかを問うた回答が図-10です。 各国ともBIMを利用したことによって後悔した回答者は少なく、 BIMの利用を経験することによって、BIMに対して前向きな感想を持っていることが分かります。 (5)BIM行政に対する姿勢 図-11は、上段にBIMに対する政策を支持するという回答者と 下段に今後公共工事においてBIMの利用を促すと予想する回答者の割合を示しています。 イギリスでは、政策への支持率が高いことが分かります。 イギリスで公共工事へのBIMの導入の予想が高いのは、2016年の施策導入以降も対象工事の拡大を予想しているものと推測されます。 日本では政策に対する支持は低いにもかかわらず、将来のBIM導入の予想は高くなっています。 (6)BIM利用の予想 図-12は、現在BIMを利用している人、1年以内、3年以内、5年以内に使い始めると予想する回答者をそれぞれ表しています。 カナダとデンマークでは、1年以内に80%以上の回答者が使い始めると予想しています。 日本とイギリスでは3年以内に、チェコでは5年以内に80%以上の回答者が使い始めると予想しています。 参加国全般で見ると、5年以内には80%以上の回答者がBIMを利用し始めると考えていることが分かり、 今後5年間の間に急速にBIM利用が拡大することを予想する回答者が多いことが分かります。 (7)全般的にこれまで見てきたように、BIM導入に対する行政の姿勢やBIM経験者の割合は国によって異なることが分かりました。 この結果を見ると、総じて多くの回答者がBIMが建設プロジェクトの将来像を表しているという期待を抱いていることが分かります。 まとめBIM国際調査をを通して、調査参加国ではBIMは設計の将来像と捉えられており、 建設ITガイド 2016 特集2「海外のBIM動向&BIM実践」 |
M-CIM研究会 事務局
はじめに2012年に株式会社補修技術設計は自動車専用道路高架橋の維持補修業務において3次元レーザースキャナーの活用を開始しました。 維持管理業務への3次元モデリング活用社会基盤構造物の維持管理業務において、株式会社補修技術設計は橋梁を主とする構造物の劣化調査を受託業務としています。 写真-1および図-1は、跨線歩道橋の計測状況および点群データからのイメージです。 3次元レーザースキャナーの活用は、遠隔非接触による計測方法であり、 現場業務での安全性確保でも従来方法に比べ大きく寄与しています。 当然現場作業で安全が必ず確保できるというものではなく、 安全教育を含め現場の安全に関しては最優先で考慮しなければなりません。 その他事例として、図-2は橋梁付属物の取りつけの罫書き位置の原寸取り計測例であり、 付属物の取り付け状況がイメージできます。 図-3は橋梁の落橋防止システム設置用のアンカーボルト位置を計測し 3次元点群データとして群処理ソフトArena4Dで3次元CADデータ図を作成したものです。 維持管理CIMへの展開(M-CIM研究会の発足)3次元レーザースキャナーの利用および3次元点群データによるモデリングは維持管理業務において有効であるものの 写真-2は、「M-CIM研究会」キックオフ会議に合わせて実施した 3次元レーザースキャナーと3次元点群処理ソフトのオペレーションセミナーです。 また実働会員のメンバーは、実働会員会社が受託した業務にパートナーとして参加し、 3次元レーザースキャナーや3次元点群処理ソフトのオペレーションについて習得しています。 「M-CIM研究会」実働会員は、受託した調査業務において、調査対象物の3次元計測を実施し、 3次元データを参照しつつ調査業務に生かすとともに、 必要に応じ3次元CADの利用により2次元への展開図面制作にも活用しています。 図-4は3次元点群データから制作した2次元CAD一般図です。 従来の2次元図で管理していた方法と容易に整合性を取ることができます。 さらに3次元データでは対象構造物を含む周辺部との干渉等もリアルに表現できるため、 補修・補強設計等では干渉のない設計が可能になります。 おわりにCIMによる3次元モデルデータは、社会基盤構造物の維持管理においても多くの有効性を提供してくれます。 今後の課題①3次元点群処理ソフトによる3次元モデルデータオペレーターの育成 建設ITガイド 2016 特集1「本格化するCIM」 |
CIM研究会 事務局 緒方 正剛
(一般財団法人 先端建設技術センター)
はじめにCIM(Construction Information Modeling/Management)の試行が始まり3年目を迎える。 本稿では、「人材育成・教育」の視点から、平成26年度より九州で開催している「CIMチャンピオン養成講座」について紹介する。 なぜ九州なのか九州地方CIM導入検討会もちろん、CIMは国土交通省主導で全国へ展開が進められている施策の一つであるが、 試行を通して見えてきたもの発足に合わせる形で試行業務も始まった。 始まった人材育成・教育の議論九州管内のCIM試行の現場では、地場の会社(建設コンサルタント、建設会社)が、 CIMチャンピオン養成講座平成26年7月、CIMチャンピオン養成講座は開講した。 プログラムと参加者の反応開催概要とプログラム本講座は、任意団体であるCIM研究会が主催しており、小林一郎熊本大学大学院教授の研究室が中心となって構成されている。 各回の講座では、先ず座学から始まる。 CIMの現場で実践している卒業生が、各自で学んだこと、感じたこと等を自分の言葉で伝えているのが特徴である。 そのため、参加者と近い目線での取り組み事例であり、参考になること、すぐに実践に移せることが多いと考えている。 時間にして概ね60分~90分程度である(写真-1、2)。 座学終了後は、演習である(写真-3、4)。 座学での内容を実践するためのソフトウェアを中心に構成し、ソフトウェアの基本的なオペレーションの学習というよりは、 より現場に即した使い方を身に着けられるよう構成した。 ただし、時間は限られているので、本講座で最も重要な役割を果たしたのがCIM-LINKである。 CIM-LINK上では、ソフトウェアに関するあらゆる質問を受け付けることとし、 時には、実際の業務で、「こういうことがしたい」「ここの数量を出したい」といった具体的な質問が投稿される。 当然、事務局が中心に回答をするのだが、講座を重ねるごとに参加者同士でも意見交換が始まり、 「こういったことができる」「こうしてはどうか」といった技術者同士の意見交換も始まった(図-2)。 まさに本講座の狙いであり、CIM-LINKを使用している最大のメリットである。 各回の講座間に参加者同士、事務局と参加者間で積極的な意見交換がなされることで、 次回講座で一同に会した際には、さらに深化した議論が行われる。 まさに時間の有効活用である。 なお、平成27年度は、平成27年6月27日(土)に第1回を開催、 本原稿執筆時には、第6回の開催(平成27年10月24日(土))を終えたところである。 最終回は、平成27 年12月19日(土)を予定している。 開催内容は表-2を参考にされたい。 参加者の反応さて、平成26年度の参加者の声を見てみよう。 CIMチャンピオン本講座の目的は、CADのオペレーションのスキルアップが主目的ではなく、 おわりにCIMチャンピオン養成講座も2年目である。 今年度は、参加会社の属性も幅広くなり、より闊達な議論が行われている最中である。 さらに参加者へのインセンティブとして本講座を土木学会認定CPDプログラム(認定番号:JSCE15-0815)として登録した。 今年度は、年間を通して参加することで、参加者は、29.3単位を取得することとなる。 また、積極的に自社のCIMの取り組みを外部で発表する参加者も出てきたのは一つの成果といえるだろう。 CIMは、単に図面の可視化が目的ではなく、3次元モデルだけが成果ではない。 CIMをより良く理解し、現場で実践することで、プロジェクトをマネジメントでき、ひとたび問題があれば、必要に応じICT技術(3次元CADを含む)を駆使して問題解決に向け取り組んでいくことが重要である。 結果として、土木技術者としての価値が向上し、やりがいを感じることができるはずである。 CIMチャンピオン養成講座が、その受け皿となり、そういった土木技術者をこれからも育成していきたい。 そして、本講座を受講した多くの土木技術者が現場で活躍することを願うばかりである。 参考文献小林一郎:技術者復権-九州でのCIMの展開に向けて-、九州技報第56号、2015年1月 建設ITガイド 2016 特集1「本格化するCIM」 |
2016年8月17日
一般社団法人 建設コンサルタンツ協会
情報部会 ICT委員会 CIM技術専門委員会 藤澤 泰雄
建設コンサルタンツ協会では、国土交通省が平成24年度にCIM(Construction Information Modeling)を開始したことを受けて、 CIM技術検討会、CIM制度検討会に積極的に参画し、CIM推進の一翼を担っている。 ここでは、主に平成26年度以降の活動について取り組み状況を報告する。 建設コンサルタンツ協会のCIM推進体制建設コンサルタンツ協会(以下、当協会とする)では、本部内に2つの常設委員会と6つの部会を中心に、 CIMに対しては、図-1に示すように、特別委員会の中のCIM対応SWGが対外的な対応を、 情報部会の中のICT委員会が、技術的検討(CIM技術専門委員会)と協会内の広報活動(ICT普及専門委員会)を行っている。 CIM対応SWGは、技術委員会・業務システム委員会・ICT委員会のメンバーを中心に構成しており、 CIMにおける技術的・制度的な対応を検討している。 対外活動国土交通省のCIMを推進するために、現行の制度、基準等についての課題を整理・検討し、 現在、橋梁(鋼橋、PC橋)、河川に関するガイドラインの策定に向けて、関連する公益社団法人 土木学会、一般社団法人 日本橋梁建設協会、一般社団法人 プレストレスト・コンクリート建設業協会などとともに、策定を行っている。 また、土木学会 米国CIM技術調査(H25年度)、欧州CIM技術調査(H26年度)に委員を派遣して、 報告書作成、講演会開催に協力を行った6),7)。 協会向けの活動対外活動とともに、協会内部では本部、支部の関連委員会で内部として対応するために検討や講習会を開催している。 この他に、設計での対応を進めるために平成26年度から実際にパソコンを使って 設計で利用するためのCIMハンズオン講習会を実施している(表-3)。 また、CIMの考え方普及のために、ICT普及専門委員会により平成26年度には、CIMの動向と関連情報講習会を8回開催し、 本年度も同様の講習会の開催を予定している。 この他にも関連する委員会、支部でも普及のための活動が進められている。 今後現在、ガイドラインの策定に向けた各WGでの検討を進めている。 建設ITガイド 2016 特集1「本格化するCIM」 |