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2021年10月4日
はじめに現在、わが国ではSociety5.0の実現に向けたさまざまな取り組みが進められており、仮想空間上に現実空間の事象をリアルタイムに再現する「デジタルツイン」への関心が高まっている。 企画・設計フェーズ本件は設計・施工プロジェクトの特性を生かし、デザインビルドの協業をより効率的、かつ迅速的に行うため、施工部門、維持管理部門も参画したスーパーフロントローディングを実施した。
各種シミュレーションによる検証「着工時仮想竣工」を達成するためには、バーチャル空間でのさまざまなシミュレーションが有効となる。 また、近年の防災に関する関心の高まりもあり、火災時の熱や煙が人の避難行動に与える影響を考慮したマルチエージェント型の避難シミュレーションを実施した(図-3)。 着工時仮想竣工へ向けたもの決めの推進顧客への「もの決め」を促進し、合意形成の精度を向上させることも、着工時仮想竣工の重要な要素となる。 モジュールプランニングと製造設計工事背景として、建設業界全体の繁忙の影響を受け、深刻な労務不足、資材・人件費の高騰が懸念された。また、昨今の「働き方改革」の推進により、生産現場でのさらなる業務効率化を求められる状況であった。 (1)オフィスエリアにおける取り組み さらに、以下記載の製造・施工フェーズにおける高効率生産の軸となるプレファブ・ユニット化へのスムーズな連携のために、製造を見据えたモジュールの最適化、すなわち製造設計へのデータ展開・利活用を促進した。 BIMモデルを用いた気流シミュレーション評価により、最適な制気口位置を検証し、その結果を基にBIMの「数量拾い機能」を使い、複数パターンのモジュールモデルの中から材料ボリュームが最少となるものを設計へ反映させた(図-8、9)。 (2)ホテルエリアにおける取り組み 客室シャフトは、狭小な空間で多工種の作業が発生するため、非効率で労災リスクが伴う作業となることが多い。 そこで、デジタルモックアップによるメンテナンス性の確認を行うのと同時に、モジュールプランニングによるシャフト全体のユニット化を計画した(図-10)。 製造・施工フェーズ今後の建設業は、入職者や熟練工の減少により、工程の逼迫や、施工品質の低下が懸念されている。
オフィスエリアにおける取り組み企画・設計フェーズで行ったモジュールプランニングと製造設計を基に、現場でのプレファブ・ユニット化を推進した。 (1)工事プロセスのデジタル化ならびに進捗管理 資機材に設置したQRコードとBIMデータの属性情報を連携させることで、工事進捗をリアルタイムに見える化し、デジタルツインを活用した工事プロセスのデジタル化を行った(図-12)。 (2)施工アシスト 現場における品質管理は、個人の技術力に左右されるのが現状である。 そこで、施工BIMモデルとMR(複合現実)技術を連携させた「施工管理アシスト」の試行を実施した。 施工BIMモデルには、各種の属性情報を付与しているため、さまざまな情報を呼び出し、現地出来形と施工BIMモデルとの照合や、納入仕様書の確認、耐震支持の設置状況等、MR画像にて迅速に確認することが可能となる。 さらに、同技術を応用し、躯体工事中のスリーブチェックにも試行し、その有効性が確認された(図-13、14)。 ホテルエリアにおける取り組み企画・設計フェーズで行った客室シャフトのモジュールプランニングとデジタルモックアップを基に、客室シャフト全体のユニット化を計画した。 (3)リアルタイム現場管理システム 維持管理・運営フェーズ本件では、企画・設計フェーズから継続して醸成させたBIMモデルに、建物の維持管理・運営で必要な属性情報を付与することで、FM用BIMデータベースを構築し、一気通貫のFM連携を達成することを目標とした(図-18)。 FMプラットフォームへBIMデータベースを連携させることで、①設備台帳作成の効率化、②メンテナンス情報の一元管理、③スマートデバイスによる現地作業の効率化、④顧客デジタル資産の付加価値機能の向上等、従来の維持管理業務の効率化・高度化が達成される。 さらに、当社開発のスマートBMを連携させ、クラウドに蓄積されたビッグデータをAI解析することで、設備の最適チューニングや省エネルギー支援によるランニングコストの削減、機器の異常や故障の早期把握等、ライフサイクルマネジメントが可能となる(図-20)。 ![]() おわりに本稿では、従来からの生産プロセスを見直し、企画・設計から維持管理・運営フェーズにおけるデジタルツイン活用による次世代型生産システムの構築を目指した取り組み事例を紹介した。
鹿島建設株式会社 加藤 誠
建設ITガイド 2021 BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX” ![]() |
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はじめに2020年10月末、世界各地のBIM関係者が集い、建設産業におけるデジタル化についての標準化や実用化に向けての情報共有、議論を行うbuildingSMART International(以下bSI)サミット会議がオンライン会議形式で開催された。今年の世界的COVID-19拡大の影響を受け、これまで世界各地の会議場で開催されていた形式を、今年度はバーチャルサミットと称して約2週間にわたるオンライン形式へと完全に切り替えての開催となった。 buildingSMARTバーチャルサミット2020bSIでは、建築・土木、スマートシティ、法規、教育などの各分野において、それぞれRoomと呼ばれている分科会活動が行われている。今回のサミットでは、53のRoomセッション、104のプレゼンテーション、196名の発表者、80時間以上の発表コンテンツ量となった。今回のバーチャルサミットにおける各Roomと、BIM個人能力認証プログラムにおける主なセッション概要を以下に示す。 bSI Awards 2020にみるオープンBIM活用bSIでは、IFC、IDM、MVD、BCF(BIM Collaboration Format)などbuildingSMART標準を活用したオープンBIMの普及促進を目的に、2014年からbuildingSMART Awardを年一回実施している。春に応募を開始して、秋のサミット国際会議において設計、施工、運用・維持運営、学生、研究などの部門ごとの審査、表彰式を行っている。2020年度も、全世界から100以上の応募があり、10の分野別Awardが発表された(図-3)。また、今回のAwardプログラムには各buildingSMART支部から111名の審査員(内3名が日本支部から)が参加した。 建設デジタルツイン関連の動向建設プロセスをデジタル化する過程で、BIMが提供する3次元空間情報、4D(時間軸)、5D(コスト情報)はさまざまな情報をつなげる重要な要素となる。製造業から生まれた「デジタルツイン」のコンセプトが、建設業においても建設デジタルツインとして注目されている。2019年の開催されたbSIサミット・ドイツデュッセルドルフ会議以降、製造業で進展してきているデジタルツインの概念がBIMへと拡張されてきており、今回のバーチャルサミット会議においても、デジタルツインに関連する話題が多数発表された。 英国では、英国政府のBIMタスクグループのBIM導入の延長線上において、インフラ・建設業をはじめとしたサービスバリューチェーンと資産ライフサイクル全体をデジタル化し、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を目指すため、「デジタル・ビルト・ブリテン(Digital Built Britain)」プログラムを2016年に開始した。この取り組みを推進するためにケンブリッジ大学に設置された Centre forDigital Built Britain(CDBB)が、BIM Level 3以降 を目指すための戦略として、BIM をスマートシティ・デジタルツインの基盤として位置付け、産官学連携のDX推進活動を行っている(図-5)。 おわりに本稿では、オンライン会議形式で開催されたbSIバーチャルサミット会議2020秋の概要を紹介した。BIMの展開は、設計、施工フェーズを超えて、製造業、サプライチェーン、インフラストラクチャー、運用・維持管理、スマートシティなどの領域に広がってきている。今回のbSIサミットにおいて、建設分野におけるデジタルツインについての議題がさまざまな分科会で取り上げられ、bSIとデジタルツインコンソーシアムとの協調活動の合意が署名された。今後、BIMとデジタルツイン間の連携についての検討、実証が加速していく状況である。 【参考文献】 一般社団法人 buildingSMART Japan 理事・技術連携委員会委員長 buildingSMART Fellow
足達 嘉信 博士(工学) 建設ITガイド 2021 BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX” ![]() |
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