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2021年8月10日
はじめにデジタル工事写真の高度化に関する協議会(2021年4月に法人化予定)では、一般社団法人 日本建設業連合会から、「工事写真レイヤ化」の要望を受け、技術的な検討を進めてきた。度重なる検討の結果、工事写真レイヤ化のファイルフォーマットとして、SVG(「Scalable Vector Graphics」JIS X4197:2012)を採用した。デジタル写真管理情報基準(2020年3月)では、写真のファイル形式が、日本産業規格(JIS)に示される形式であれば納品可能と緩和され、SVGは今後活用が期待される技術である。 配筋検査アプリ SiteBox配筋検査 株式会社 建設システム■配筋検査における工事写真レイヤ化橋梁下部工における工事写真レイヤ化の試行事例(図-1、図-2)を紹介する。 ■電子黒板、電子マーカーのオンオフ機能 「工事写真レイヤ化」により配筋検査業務を効率化できる事例を紹介した。建設システムでは、配筋検査業務の効率化を目指し機能をアップデートしていくとともに、配筋検査以外にも活用できるシーンを拡大し、建設業の生産性向上に寄与していくという。 【工事専用タブレット 蔵衛門pad】 株式会社 ルクレ ■撮影の手間が半減従来、配筋写真などの撮影には、カメラ以外に木製黒板や、配筋を目立たせるためのマーカーが必要だったが、「蔵衛門Pad」では、電子小黒板を画面に投影しながらの撮影が可能だ。さらに、工事写真に「電子マーカー」を描画できるため、「蔵衛門Pad」だけで配筋写真の撮影をすることができる。 ■より発注者へ伝わる工事写真に パソコン用の工事写真管理ソフト「蔵衛門御用達 2021」では、電子マーカー付きの工事写真(SVG形式)と、通常の工事写真(JPEG形式)を 同じ工事写真台帳に取り込むことができる。さらに工事写真台帳では、電子マーカーの表示をオンオフで切り替えられるため、より施工品質が分かりやすく、信ぴょう性のある工事写真台帳の提出が可能だ(図-6)。 【デジタル野帳 eYACHOforBusiness】株式会社 MetaMoJi
■概要 ■レイヤ化による工事写真へのアノテーション eYACHOにはもともとノートに追加した写真上に手書きによる説明を加える機能があるが、工事写真の撮影後に画像を編集すると改ざん検知機能のチェック対象となるため、工事写真については書き込みを許しておらず、検品する側は証明される現場情報を画像そのものから読み取るしかなかった。工事写真レイヤ化に伴い、次版のeYACHOでは写真撮影と信ぴょう性適用処理の間に注釈(アノテーション)を作成する機能を追加(図-8)。電子納品向け工事写真そのものに補助線や説明文、どこが注目箇所かを書き込むことができ、納品側・検品側双方のコミュニケーションコストを低減する。 ■「写真にそのまま書ける」手書きの直感性 ■確認したいレイヤだけを表示 デジタル工事写真の高度化に関する協議会
【出典】 建設ITガイド 2021 BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX” ![]() |
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2021年8月5日
はじめに国土交通省の土木工事においては、工事着手前および工事完成、また、施工管理の手段として各工事の施工段階および工事完成後目視できない箇所の施工状況、出来形寸法、品質管理状況、工事中の災害写真等を写真管理基準(案)に基づき撮影し、提出するものとされている。 工事写真のレイヤ化について工事写真のレイヤ化とは、撮影した写真の映像データに黒板の画像や注釈画像を個々に別レイヤとして重ね合わせることにより、写真に情報を重ね合わせることができる技術である。なお、工事写真および電子小黒板についてはおのおの異なるレイヤとすることにより、それぞれの信ぴょう性を確保するものとし、注釈画像のレイヤのみ変更可能な領域とする。 「デジタル写真管理情報基準」の改定デジタル写真管理情報基準においては、従来は写真ファイルの記録形式は「JPEG」とされていたが、令和2年3月の改定により、写真のファイル形式を「J PEGやTI FF形式等」と変更した。これにより、レイヤ化した工事写真のファイル形式(SVG)による提出を可能とした(表-1)。 おわりに今回の「デジタル写真管理情報基準」の改定においてはファイル形式による制限をなくすことにより、工事写真のレイヤ化を可能とした。 今後も同様にICTを活用した新たな技術の実装化が進み、工事における生産性向上や品質確保に寄与することを期待する。また、今後は画像データの活用に加え、映像データの活用や3次元点群データの活用、BIM/CIMとの連携により、より一層の建設現場における生産性革命が進むことを期待したい。 国土交通省 大臣官房 技術調査課
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2021年8月4日
はじめに2020年建築BIM推進会議モデル事業で採択された企業は、日本版BIM運用標準の策定に向けた評価を行っている。当社はこのモデル事業に採択していただいた。 建築設備工事の“こと”と“もの”“こと”と“もの”について記述する。“こと”は、仕事や方法、システムのような手法を指し示す。“もの”は、“こと”を構成するオブジェクトとして以下の記載をしていく。 分類での“もの”英国建築家協会RIBAのPlanof-Worksを参考に、分類体系として“もの”に分類コードをあてがうことで、積算業務の分類仕分けをすることができる(図-4)。 設備基本設計は、Excel等に要件を入力していく作業を伴うシステム構築の場面である。必要要件を設定していく、“もの”を配置することで作図に加え、スペース、部屋、ゾーン空間に必要な機能を持たせるためのパラメータを付与する準備を行う。 空調の計画では、負荷の発する熱・水蒸気・排気を処理させるためにどのような条件があるか、空間の条件がどのような“もの”か、部屋・スペース・ゾーンに対する事項を定義する。 定義した部屋要件を満たす“もの”を選ぶまでを実行する。 空間情報が“こと”から“もの”を特定空間は“こと”でBIMオブジェクト=“もの”につながる仕組みがある。空間情報をBIMデータベースの世界で実現することに多くの期待が集まっており、空間情報を用いる受け皿として、buildingSMARTではSpatial Zoneを定義している。 フェーズの移行により得られる確からしさ実施設計は「Coordination」である。選ばれた機器を空間に配置することで、整合性を確保して設計情報を固めていく。P&IDが設備的には大変重要な情報だ。機器と器具、配管においてはラインを形成する制御弁やろ過、熱交換の装置要件を満たす仕様をラインで結んでいくことで、配管・ダクト・配線といった搬送に必要な管路が形成される。管路情報をライン情報として定義するのである。ファミリをプロジェクトに配置することで、視覚的な空間に配置する作業が、BIMでは数量算出に直結する(図-8)。 “もの”をいかに集めて仕分けるか集計表に代表されるテーブルに“もの”が配置される。配管は流体種別の用途、管材、口径、数量であるところの長さ、個数、ダクトは形状構成する数字から、面積が情報としてもたらされる。 クラウドで数量を出す環境施工は実現の場面であり、形とした“もの”の設置が検収評価対象であることを考えると、手直しや後戻りがあった場合に即大きな損失が発生する。クラウドのCDE環境を用いた多拠点同時作業が現実の“もの”となっている。BIMデータを構築して施工実現が可能な精度までに作り上げるには、多くの調整が必要である。天井内部で管路決定に行われる空間調整、総合図調整、取り合いと呼ばれる他業種の工事内容をお互いに調整し合う。例えば廊下天井内で電気ラックと設備の調整、無駄の少ない施工情報として曲がりの数がある。 コスト構成要因は仮設工事が大きい予備コストの顕在化、施工の場面では十分に計画された手順にも関わらず、現場でしか見いだせないこともある。工事において、ある一定比率で算出されている仮設費を効率よく積算できればと考えている。 損失を見込んだコスト評価が現在の日本で行われているため、建設コストの30%に相当する時間と価値損失が発注者の負担となっている。加えてSDGsに提唱される循環型持続的社会の実現には、材料の無駄をなくす計画が求められている。 評価する数量を出せないが故に、無駄なコストの発生を黙認している。 ダクト数量を最適化するFabricationという環境でダクトの計画をした場合、材料であるロール鉄板から、何枚のダクト部材を取ることができるか、ネスティングという技術が備わっていることで、ダクトのサイズを変えた場合、曲がりの度合いを変えた場合、何枚の板取ができるかを計画段階で簡易に比較できる。ダクト材料ロールの効率的な板割付がなされることで、目に見えなかった製作過程の破材(廃材)の最適化が図られており、工事費算出にもインパクトが出ている(図-17、18)。 BIM時代、数量算出への期待BIM時代では、要件と施主・設計思想で設定された仕様が確定されることで、情報が判断の余地なく(悩むことなく)付与されていく。BIMから獲得する成果を、人間が拾い・分類し・再調整する大きな負担が、BIM積算で省力化されることが実現できている。仕分け作業が“もの”に的確に付与されることで実現できる。
新菱冷熱工業株式会社 技術統括本部 BIM推進室 副室長 谷内 秀敬
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2021年8月2日
はじめに現在、世界中で猛威を振るうCOVID-19感染拡大の影響を受けてニュースタンダードが求められ、過去の常識とともに働き方は一変している。これまでは人が移動をし、現地にて対面で会議を行うことや、現場の確認を行うことが当たり前であった。しかし、昨今の環境下では、人の移動にはリスクが伴うことから、行動変容は余儀なくされ、テレワークの取り組みや、Web会議による働き方が求められている。建設業界においては、国土交通省が試行を進めている建設現場の遠隔臨場に関心が集まっている。 e-Senseとは飛島建設は、このような時代の問題を解決し、建設業界のニーズに対応するため、多機能ハンズフリーシステム「e-Sense」を開発した。e-Senseは、建設現場の生産性向上を目的として、遠隔地からの情報共有を可能とするコミュニケーション機能、外国人技術者との専門性の高い同時自動通訳機能、さらに、建設現場におけるドライブレコーダー機能を付加した多機能ハンズフリーシステムである。 e-Senseの機能開発した「e-Sense」は、デバイスとしてスマートグラス「M400 SmartGlasses」(Vuzix Corporation)を活用することにより建設現場でのハンズフリーのソリューションを実現した。「e-Sense」は、コミュニケーション機能、同時自動通訳機能、ドライブレコーダー機能、スマホアプリ連携、フォトラクション連携と大きく5つの機能を備えている。詳細を以下に示す。 ①コミュニケーション機能 (遠隔地連携機能)「e-Sense」はM400同士の連携だけではなく、ネットワークシステムを活用し、遠隔地の建設現場事務所、監理者・事業者会社のパソコンやスマートフォンと連携することにより、音声・画像・図面・動画の共有をタイムリーに行うことが可能となる。特徴として、「e-Sense」は技術者のヘルメットに装着することで、現場技術者目線からの建設現場の状況を転送することができる。そのため、遠隔地にいる監理者はどこにいても現場を確認でき、リアルタイムに指示を出すことが可能となる。また、遠隔地側と図面やマニュアルなどを共有することができる。さらに、遠隔臨場の記録提出用として活用するためM400の画像の記録だけでなく、遠隔臨場を行っている画面を記録することができ、後日、記録として利用することも可能である。 ②同時自動通訳機能外国人技術者とのコミュニケーションを円滑にするための通訳機能を備えている。外国人技術者との同時通訳機能は、音声に対してリアルタイムにSpeech to tex(t音声認識)通訳を実施し、結果を画面上に表示することで異なる言語の技術者同士でも円滑なコミュニケーションを図ることが可能となり、適切な業務指示の伝達・事故防止につながる。また、相手が「M400」を着用していない場合であっても、手持ちのスマートフォンやタブレットを使うことで同様のコミュニケーションをとることができる。 ③ドライブレコーダー機能(特許出願中)「e-Sense」を技術者が装着することにより、音声・テキスト・画像データ・LOGをハンズフリーでサーバー上に保存することができる。これまでのハンズフリーは、動画や音声を保存するのみあったが、「e-Sense」は動画にブックマークを付けることで、動画の整理を簡単に行うことができる。 ニーズに合わせた価格設定2020年5月18日の発売段階では高価格帯のサービスであったが、現場の規模や用途により柔軟に対応できるようスマートグラスとユーザーID単位での価格の設定により、11月2日から新たにリーズナブルな価格にてレンタルの提供を開始した。現在のWEB会議需要や遠隔地からの建設現場の検査を行う「遠隔臨場」に、手軽に利用することが可能となった。 今後の展開建設現場で多機能ハンズフリーシステム「e-Sense」を活用することにより、これまで記録することができなかった建設現場に関するさまざまなビッグデータを蓄積することが可能となる。これまでに明らかになっていない新たな安全面に必要な要因分析、技術者の会話や指示の内容、トラブル時の対応などを詳細に分析することで、優秀な技術者の要因抽出を可能とし、AIの活用に生かすことを目指している。 おわりにめまぐるしく変化する環境に対応するべく、当社は2019 年5月に「中期5カ年計画」(2019~2023)を策定した。「飛島建設」から「飛島(トビシマ)」への企業変革を推進し「NewBusiness Contractor」への進化を掲げ、DXの取り組みに重きを置いた経営計画を発表した。これまでの土木事業、建築事業だけに限らず、当社のあらゆる事業においてもDXを基盤とし、経営の活性化を図っていく。 飛島建設株式会社 企画本部新事業統括部 科部 元浩
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