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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

施工BIMの今 -日建リース工業のBIM-

2019年7月12日

 

はじめに

当社の設立は1967年。まだレンタルという言葉が一般化していない時代から、仮設資材のレンタルを中心に、52年にわたってその経験とノウハウを磨いてきました。「仮設事業」として仮設資材をレンタルするとともに、これまでの建枠に替わって建築現場で主流となってきた、クサビ緊結式足場「NDシステム(通称:ダーウィン)」のメーカーでもあります。
 
自社開発の足場CADシステムで業務を行っていますが、これまでに2回、3次元での運用にチャレンジしてうまく活用できなかった苦い経験を持っています。
 
 

BIMへの取り組みのきっかけ

そんな当社が再び3次元に取り組むことになったのは、社長の「今後のCADシステムはBIMを視野に入れて考えてほしい」という一言からです。そのときは、「また3次元をやるのか…」というネガティブな思いが浮かんできましたが、あらためてBIMについて調べてみて、すぐに「今からやっておくべきで今回は失敗しない」という思いに変わりました。
 
●なぜ、「今からやっておくべき」と考えたのか。
 
それはBIMの「企画」→「設計」→「施工」→「維持管理」のサイクルにあります。
 
当時のBIMはまだ「設計」での活用が中心だったので、それならば次は「施工」になるはず、「施工」となれば足場仮設計画になるはずと思いました。そうなれば必ず当社にもBIMでできないかと声が掛かる。声が掛かった頃に始めても遅いと考えたのです。
 
●なぜ、「今回は失敗しない」と思えたのか。
 
理由は明確で、BIMであれば躯体モデルをお客さまが作ってくれているからです。
 
これまでの3次元取り組みの失敗の原因は、担当者自身がお客さまから頂く2次元図面を見ながら、躯体モデルをワイヤーフレームで作っていたことにあります。そんなことをしている間に、最初から2次元で作図していればとっくに図面は完成しています。
 
それがBIMであればお客さまが躯体モデルを作ってくれており、ワイヤーフレームとは違って視覚的に分かりやすい完成されたBIMモデルに、自分のスキルを思う存分生かして足場仮設計画に専念できるのですから、当社にとってこんなにラッキーなことはありません。
 
 

施工BIMへの本格的取り組み

社長の一声でBIMに取り組むことになり、やるぞ!と意気込んではいたものの、そもそもお客さまがBIMでの足場仮設計画を必要と考えているのだろうかという疑問がありました。既に幾つかの仮設材パーツは試験的に製作しておりましたが、BIMは設計での活用が中心だったので、BIMをやったことのないわれわれには施工でBIMを活用するイメージが浮かばなかったからです。
 
そこで営業の力を借りて、行く先々で「BIMでの足場仮設計画の重要性」についてアンケートを行いました。2013年10月~12月頃のことで、その結果が図-1です。
 
BIMを推進している(BIMのことを知っている)本社や支店の方々からは、ある程度期待されているものの、実際に施工する現場となると「あってもなくても困らない」的な回答が多い結果でした。出鼻をくじかれテンションが下がったことは否めませんが、それでも当時はBIMについて尋ねると「何のビーム?どこの開口部?」と、冗談のようなリアクションが多かったときですから、ここは現場さんの話は置いておき、本社支店さんのことを信じてBIMを推し進めることにしました。
 
そんな折、2014年1月に日本建設業連合会(以下、日建連)から『施工BIMのスタイル』が発刊されました。「施工BIM」というキーワードを目にしたのは、そのときが初めてだったと思います。そしてどこの新聞かは失念しましたが、鹿島建設様の新聞記事(2015年5月頃)で、「建築全現場にBIM」「ライセンス貸出で協力会社と連携」「足場などをモデル化」などの記事を読んだときに、「いよいよ来たんじゃない?」と思ったことを覚えています。
 
こうした経緯で当社は本格的にBIMでの足場仮設計画に取り組み始めます。
 

図-1 「BIMでの足場仮設計画の重要性」
アンケート結果




 

具体的な取り組み

(1)仮設材パーツの製作
仮設材パーツの製作はBIMの取り組み当初から行っており、次の2点を方針として取り組んでいます。
 
①お客さまがARCHICADとRevitのどちらを使用していても対応できるように両方で製作する。
②当社カタログの基本部材は全てモデル化する。
 
製作当初はARCHICADのGDLを勉強しつつ、まずは簡単に作成できるRevitで研究がてら製作して、試行錯誤しながら4~5回作り直して今のLODと属性になっています。
 
現時点では目標の1/3程度の部材しかできていませんが、LODや属性に関しては、「こうあるべき」と、はっきりした結論はまだ出ていません。実案件を通してお客さまからのご意見を伺い、これからも妥協することなく、修正を続けて進化させていきます。
 
また、ありがたいことにパーツ提供のご依頼をよく頂きますが、当社はクサビ緊結式足場「NDシステム」(図-2)と「S造関連部材」(図-3)についてはメーカーとしての立場でもありますので、この2点については、日建連の『施工BIMのスタイル2014』に掲載されていた「BIMモデルの取扱いに関する覚書」をベースとした独自の「覚書」を作成し、内容合意の下ご提供しています。
 

図-2 NDシステム

図-3 S造関連部材




(2)BIM担当者の育成
将来的には海外にBIMオペレーターを配置して、件数をこなせるようにしていく必要があります。しかし今は、国内で将来のBIMマネージャーを育成していく段階と考えており、現時点で全国に10名ほどいます。
 
BIMマネージャーとなるためには、まずはオペレーターとして実案件を複数経験し、直接現場とBIM調整会議を行い、2次元図面とは違うBIMならではの打合せ内容や、お客さまからどのような要望があるのかを知る必要があります。仮設材配置だけのBIMオペレーターであればすぐに育成できますが、当社はただ配置して終わりにしたくありません。重要なのはBIM担当者全員がBIMに取り組む目的や、この物件はどう進めるべきか、どうしたら問題解決できるのかをご提案できることであり、当社の全国に70人近くいる技術スタッフの中から、ある意味選ばれたこの10名は、今後の当社の「施工BIM」での立ち位置をより高めていかなければいけない人材です。
 
 
(3)仮設計画モデリングの請け負い
当社の仮設材を現場で採用していただくことが大前提ですが、2018年からは本格的にBIMでの足場仮設計画モデリングを請け負っています(図-4)。
 
2016年、2017年もご依頼がなかったわけではありませんが、試行的に年2~3件ほどしかなく、少し不安になるくらいでしたが、2018年に入ってからは急激にご依頼が増え、常に数件は重複して作業している状況です。施工BIM元年は2015年といわれていますが、当社のBIM元年は2018年だと考えています。
 
作業内容としては先ほどご紹介したように、ただ仮設材を配置して終わりにしたくありませんので、事前打合せ(キックオフ)→基本配置→社内BIM検討会(写真-1)→現場でのBIM調整会議1回目→修正→BIM調整会議2回目 と、このような工程を基本として作業しています。「工区ごとの数量を拾いたい」(図-5)ですとか、「危険箇所を可視化して対処したい」(図-6)というご要望もよくありますので、必要に応じて対応しております。
 

図-4 足場仮設計画モデリング

写真-1 社内BIM検討会


図-5 工区ごとの数量拾い


図-6 危険箇所の可視化



 

現状の大きな課題

実は課題を挙げればきりがないので、ここでは現状悩んでいる「大きな課題」を2点だけ挙げておきます。
 
(1)図面化の難しさ
BIMによって2次元作図や修正の業務負荷は軽減されているといわれていますが、足場仮設計画図に関していえば決してそうではありません。BIMによって見えてほしくない所が見えてしまうためです。
 
全てができないわけではありませんが、まだまだ研究が必要ですので、これからも試行錯誤していきます。
 
 
(2)現場にBIM担当者がいない
現場にBIMアプリに精通している人が、まだまだ少ないのが現状です。そういう方が居るのと居ないのとでは、工程確認や数量抽出の生産性に大きな違いが出てきます。
 
ただこれは施工BIMが広がっていくことによって時が解決するような気もしますが、当社でも可能な限りご協力してまいります。

 

最後に

BIMは施工から始めても効果は抜群です。2次元図面だけのときとは大きく打合せ内容が変わり、初期の打合せにかかる時間は増えたかもしれませんが、施工BIMで先行して検討することで、工事中に発生しそうな不具合が確認でき、事前に対処したり、対処できなくても解決策を考えておくことができるようになったことは素晴らしいと思います。一度BIMに携わった現場関係者さんは、次も必ずBIMでやりたいと仰います。
 
これからも各社のBIM推進部門、管理部門の方々とも一緒になって、施工BIMを推進していきます。
 
持ち分のページ数では説明したいことがあまり説明できませんでした。もし足場仮設計画のモデリングをご検討中でしたらご連絡ください。ぜひ一度、意見交換させていただきたいと思います。
 
 
 

日建リース工業株式会社 技術安全本部 技術システム部 部長 小川 浩

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集2「進化するBIM」



 



「河川専用システムを創ろう」 河川設計に精通した建設コンサルタント 7社が集結した『RFA研究会』

2019年7月10日

 

河川BIM/CIMを牽引「RFA研究会」設立

2017年12月、CADベンダーである川田テクノシステムの呼びかけにより、7社の建設コンサルタントが顔を揃え、「RFA研究会」のキックオフ集会が開かれた。いずれも河川設計に精通した企業ばかりだ。
 
研究会は、「黎明期にある河川BIM/CIMを、河川事業に精通した建設コンサルタントが集結して、その推進に貢献すること」を目的として設立され、当面の目標として「業界初のBIM/CIM対応河川専用3D CADシステム」を構築することが掲げられた。
 
主催した川田テクノシステムは、BIM/CIM対応の3次元CAD「V-nasClair(ヴィーナスクレア)」の開発元であり、これまで道路、橋梁、砂防、地質ボーリング等、各分野のモデリングに特化した機能拡張を行ってきた中で、河川に特化した3次元CADの必要性を感じていた。そこで、より実態に即したシステム開発に取り組みたいと考え、7社の賛同を得て「RFA 研究会」を設立。その活動の中で、河川設計のノウハウや技術支援を受けながら、3D河川堤防・河道設計システム「RIVER_Kit」の開発・リリースに至った。
 
この経緯を、1年間の活動を振り返りながら実際の活動メンバーに聞いてみた。
 
 
 

普段はライバル同士でも

     
(株)建設技術研究所
志田 氏

 
 
志田:私達は業界内ではライバル企業同士ですが、同じ河川技術者として河川設計技術やBIM/CIMの情報交換をできるチャンスではないかと思いました。意外とこんな機会は少ないんですよ。
   
   
   
   
   
   
   
   
 

     
東京コンサルタンツ(株)
三井 氏

 
 
三井:私も他社の状況は気になりましたね。それと、堤防設計や河道設計の専用システムが存在しない状況で「河川専用の3Dツールの開発」という点にも興味が湧きました。
   
   
   
   
   
   
   
   
 
盛:お二人の意見に全くの同感です。私自身、既存の3次元CADソフトの汎用機能だけでは河川設計の効率化には限界がある、と感じていました。そこに専用ソフト開発の話ですから、まさに渡りに船の心境でした。この研究会なら、これがクリアできると信じて参加しました。
 
 
――情報交換、交流の場としての参加目的も多かったが、やはり「3D堤防設計に活用できるシステムの構築」を待ち望んでいたことが伺える。実際にシステム開発に携わった感想も聞いてみた。
 
 
 

ベンダーを交えての活発な意見交換

志田:会の進行がとても意見の出やすい場の雰囲気になっていて、かなり活発な意見交換ができましたね。まるで社内会議のようでした。
 

     
三井共同建設
コンサルタント(株)
宮田 氏

 
 
宮田:確かに毎回そんな雰囲気でしたね。付け加えればベテランと若手の技術者が同席することでバランスよく意見が集約され、より実用的なシステムが構築できたのではないでしょうか。
   
   
   
   
   
   
   
   
 
 
佐藤:そうですね。そしてシステム開発者を交えながらの会合なので実施の是非の判断が早く、毎回、実のある議論ができたことが印象的です。
 
志田:結果的には、他社の方々と一緒に知恵を出し合って共同で一つのものを作り上げていくことの面白さを体験できたことは大きな自信になりました。
 
 

     
いであ(株)
芝田 氏

 
芝田:その反面、システム構築の大変さも肌で感じることができましたね。開発者の方が目の前で頭を抱え込む姿が目に焼き付いています(笑)。座長さん、1年間本当にご苦労さまでした。
   
   
   
   
   
   
   
   
 
 

「RIVER_Kit」 完成祝賀会にて


 
(写真左から)
いであ(株) 古堅 氏
(株)東京建設コンサルタント 岡井 氏
(株)建設技術研究所 小畑 氏
川田テクノシステム(株) 山野社長
東京コンサルタンツ(株) 原木 氏
パシフィックコンサルタンツ(株) 荒川 氏
日本工営(株) 陰山 氏
三井共同建設コンサルタント(株) 伊藤 氏
 
 
 

検討初期段階から3次元で設計できるのがメリット

実際にリリース直後のシステムを使った感想を聞いてみた。

     
日本工営(株)
佐藤 氏

 
 
佐藤:従来の設計手法である2次元から3次元ではなく、堤防検討業務の早い段階で3次元設計に入れることが大きな利点ですね。
 
   
   
   
   
   
   
   
   

     
パシフィック
コンサルタンツ(株)
荒川 氏

荒川:入力手順が堤防設計用になっているので操作しやすいですね。実務での生産効率が大幅に向上できると期待しています。河川設計もいよいよ3次元設計になりますね。
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
 
芝田:正直なところ、私は現在使っているCADとは操作性が違うので慣れるまでは戸惑うのではないかと不安はあります。でも、サポートセンターの方が丁寧に指導してくれると聞いていますので、どうかよろしくお願い致します。
 
 
――やはり「専用CAD」の利点を挙げる意見がほとんどであり「河川BI M/CIMの幕開け」という空気がヒシヒシと伝わってくる。
 
 

堤防法線を作図するだけで3次元モデル生成

佐藤:堤防のCIMモデルの作成が圧倒的に早い。まさに、こんなシステムが欲しかった。という感想です。この会に参加できて、とても充実した研究会だと実感しています。
 
荒川:CIMが浸透しても2次元図面成果の納品は当面なくなりませんので、モデルを作成するだけで平面図、横断図、縦断図が即座に出力できるのは助かります。モデルと図面の連動はまさに理想的です。それに3D数量まで出してくれるのは本当にありがたい。
 
 

     
(株)東京建設コンサルタント
盛 氏

盛:距離標と法線の設定だけで堤防の計画高を自動的に計算してくるので検討や設計時間が大幅に短縮でき効率化につながります。ここは意外と手間がかかるんですよね。
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
 
――BIM/CIMは「設計段階から3Dモデルを活用(作成)」することにあり、早い段階から簡単に3Dモデルが作成できることに大きな期待感が出ている。一方、当面は2次元成果との併用が避けられない状況を見据え、2D図面作成の省力化も利点として挙げられている。
 
 
 
   

堤河川BIM/CIM普及の課題とは

芝田:BIM/CIMが一般化される前に先ずは人材を確保、育成する必要がありますね。今後は社内でもCIMの勉強会等、積極的に企画しなければならないと感じました。
 
三井:そうですね。そして現在使用している2D CADと同じように3DCADを使いこなせるようになることでしょうか。CADオペしか使えないようなシステムだと普及も遅れ、活用効果も薄れてしまうと懸念しています。
 
宮田:ソフトウェアも充実していってほしいですね。しかも、お手軽価格で(笑)。
 
 
――やはり第一の課題として挙げられるのは「人材育成」。しかも「CIM担当者」を置くのではなく「全ての設計技術者が3D CADを使いこなせなければBIM/CIMの普及は加速しない」と口を揃える。
 
 
 

最後に

―― 今回「RFA研究会」で「RIVER_Kit」を開発できたことはBIM/CIMを推進するための一つの道具を作ったに過ぎないかもしれないが、この道具には河川設計技術者のノウハウが集約されている。おそらくCADベンダー単独では成し得なかったことであろう。
 
研究会では「坂路工」や「階段工」への対応など、既に第二次開発に着手しており、今後のバージョンアップに期待がかかる。
 

 

「RIVER_Kit」でモデリングした堤防と河道




既設堤防あるいは河道の3次元地形モデル上で「距離標」ごとに設定された計画堤防高、計画高水位、計画高水敷高、計画河床高等を利用して、新たな3D堤防・河道の計画・設計を行うことができる。
 
 

RFA研究会 事務局 川田テクノシステム株式会社

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集1「i-Construction×BIM/CIM」



 



施工BIMの今 -不二サッシにおける施工段階のBIM対応-

2019年7月5日

 

はじめに~施工BIM以前

当社は2010年10月よりBIM対応に取り組み始めた。当初は、施工段階におけるBIMの取り組み方として、「製作図作成・サッシ製作と連携するために、3次元モデルは詳細に作成するもの」と信じていたため、その作成に当たっては、施工図レベルの詳細度で作成することに注力した。
 
しかし、データが重くなることや、製作図との連携ができなかった(工程の関係上、製作図作成が先行し、モデル作成が後追いになった)ため、BIMに取り組むということが自社にとって何の役に立つのかという疑問だけが大きくなっていった。
 
 

Modeling ~施工BIM

2015年6月、セミナー「施工BIMのインパクト」に参加し「施工BIM」の存在を知る。各業者が作成した3次元モデルの統合データを確認しながら、調整や打合せを行って合意形成したのち、製作図を作成するという作業の進め方である。調整作業(主に干渉チェック)に支障がなければ、詳細なモデルを必要としないこと、使用ツールをそれほど限定されない(当然だが関係者間合意の上)ということは、施工段階のBIM対応への疑問を解消するには十分であった。
 
その後「施工BIM」の物件対応を行う機会が少しずつ増えてきた。その幾つかの事例を以下に紹介する。
 
 
【事例1】
当社施工:スチールカーテンウォール
関係工種:鉄骨 躯体 昇降機 設備
使用ツール:AutoCAD
提出データ形式:ifc(dwgを変換)
 
2フロアにまたがる昇降機周りに関係する工種間の干渉チェックと調整作業。
 
モデル作成時間短縮のため、使い慣れたAutoCADを使用した。上階床下の鉄骨は、昇降路開口に平行でなかったため、フロア間に取り付け予定のパネルが納まるかどうか気にしていたが、統合データを確認すると干渉していることが分かった。解決策としてパネルの形状を変更する案を提案した(図-1)。
 
解決案を容易に思い付くことができたことが、統合データを確認することの効果だと感じている。
 

図-1 (左:調整前 右:解決案) ※透過表示




 
【事例2】
当社施工:アルミサッシ
     アルミカーテンウォール
関係工種:鉄骨 躯体 設備
使用ツール:AutoCAD
提出データ:ifc(dwgを変換)
 
ほぼ全ての業者が参加する本格的な施工BIM物件。
 
製作図の作成とモデル作成は同時進行となってしまったが、モデル作成時に必要と思われた場合は2次元の図面も作成し、製作図へ反映できるようにした。
 
調整会議については、事前に配布される干渉チェックリストを確認することで、当社の関係する干渉部分についての回答を用意することができた。また、当社が他業者に依頼したい事項がある場合、調整会議で検討事項として挙げることで、依頼をスムーズに伝えることができた。
 
統合データ確認の効果は、事例1と同様「見て、直感的にどうしたらいいかが分かる」ことにあるが、がらりと設備ダクトの調整において、単に2者間だけでの調整ではなく、その下部に存在する庇の調整も必要になることが統合データを確認することで分かり、その後設計者を含めての調整作業を行ったことが、大きな効果であったのではないかと思う(図-2)。
 
反省点としては、AutoCADで作成した3次元モデルの修正作業に手間取ったこと。RevitやARCHICAD等、パラメータで修正可能なモデルが作成できるものを使用すべきだと感じた。
 

図-2 (左:調整前 右:調整後)




 
【事例3】
当社施工:アルミサッシ
関係工種:鉄骨 躯体 設備
使用ツール:Revit
提出データ:ifc
 
本例もほぼ全ての業者が参加する施工BIM物件。
 
事例2での反省を踏まえ、モデル作成にRevitを使用した。それ以外の調整作業(調整会議への参加・質疑応答など)については事例2と同様の対応を行った。
 
その他、モデル作成による自社内での利点を探るべく、次のような活用を試みた。
 
①Revitの機能で立面図・平面図を作成し、サッシの位置やサイズの確認に使用した。
 
②Revitの集計機能により、サッシ数量・窓符号名・サイズを集計しこれらの確認に利用した。(①,②とも図-3参照)
 
こうした活用は、BIM専用のツールを使用してモデルを作成したからこそできることである。作成モデルを活用してその効果を引き出すためには、BIM専用のツールを使用するべきなのだと実感した。
 

図-3




 

Information~情報の活用

モデル(形状)を活用するのが「施工BIM」であるのに対し、BIMのもう一つの要素「情報」を活用する取り組みも紹介する。
 
(株)長谷工コーポレーション様と、BIMモデルのデータをサッシ製作に活用するための取り組みを2015年より行っている。その最終目標は、BIMモデルのデータの確認をもって承認行為とすること、そのデータをサッシ製作図作成やサッシ本体の製作に活用することで、サッシ製作までに要する時間を短縮することにある。
 
 
主な取り組みは次の5項目である。
 
①BIMモデルに入力するデータの選定・追加
 
②BIMモデルに入力されない、共通仕様的な情報の整理と提供形式の検討
 
③製作図に含まれる建具配置図で必要となる平面図の提供方法(①~③は主に(株)長谷工コーポレーション様側の作業・当社は打合せでの意見交換)
 
④抽出データを整理し、サッシ製作に必要な情報を追加して製作図を作成する仕組みづくり
 
⑤サッシ製作図より、製作のための情報を作成する仕組みづくり(④⑤は当社側で行う作業)
 
①と②については、製作図作成に必要な情報のうち、BIMデータに存在するものとしないものを洗い出し、存在しないものの追加が可能かどうかを確認した。次に設計段階でのデータ入力が可能かどうかを協議・検討した。データの中には設計者が決定できないもの、サッシメーカー側で決定しているもの、項目があっても利用されていないものなどがあったため、データを利用する他のサッシメーカーの意見も含めて、製作図作成に利用できるデータの集約をしていただいた。
 
サッシの取り付け部位や開口形式などが同じものに共通する情報に関しては、サッシメーカー共通の仕様書を制定していただき、設計段階で該当項目を選択・入力した情報を活用することとした。
 
③については、BIMモデルから各階平面図の2次元データを作成できるよう対応していただいた。
 
④,⑤であるが、建具配置図上の窓符号に、製作図に必要な情報を属性としてデータ入力し、これらを抽出し整理することで製作図を作成するシステムを自社内で構築しており、さらに一部製品については、その製作図からサッシ製作手配システムへ必要な情報を渡すことが可能となっている。このシステムを、次の4点について変更を加えることで対応した。
 
・BIMデータを基に動作する。
・BIMデータならではの情報(窓符号利用時にはなかった情報)を、製作図作成に反映させる。
・BIMデータで得られない情報や、当社が決定すべき情報が追加できる。
・BIMデータを基に、建具配置図に配置する窓符号を作成させる。
 
 
①~⑤の取り組みにより完成するシステムの概要を図-4に示す。
 
このシステムにより、現行作図における手作業(建築図・仕様等の確認)を削減し、短時間で正確な情報に基づいた図面の作成を可能にすることが期待される。これは、設備施工一貫のBIMを実施していることにより可能となったと言える。
 
取り組み作業は常に順調なものではなかったが、関係者の努力により実施物件対応ができる段階まで到達することができた。現在、実運用に向け、実施物件にて検証中である。
 

図-4




 

おわりに

紹介した事例や取り組みは、施工段階におけるBIM対応の一つの例であり、今後、ツールや手法の進化に伴い対応方法も変化していくと思われる。こうした進化を取り入れながら、BIM対応による効果(特に自社内における効果)を得ることができる最適な方法を探し続けていかなければならないと考えている。
 
 
 

不二サッシ株式会社 設計統括部 設計業務部 システムグループ 茶碗谷 賢

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集2「進化するBIM」



 



「見える化」だけが BIM/CIMじゃない

2019年7月3日

 

はじめに

私自身、3D-CADソフトに関与したのが、平成15年でした。当時、Autodesk社の3D-CADソフトは、現在のCivil 3Dの前身で、Land Desktop 2004だったと記憶しています。この頃はまだ、基本的に道路計画用のコマンド中心で構成されていたので、河川砂防を専門とする私は、結構、悪戦苦闘しておりました。それでも、何とか河川業務に活用しようと工夫を重ね、浸水想定区域図作成等にも挑戦しました(図-1)。
 
成果を「Civil 3Dデザインコンテスト2007」に活用事例として応募してみたところ、地方コンサル技術者ながらも全国大手企業の技術者の中に食い込んで、銀賞を受賞できました。やはり、道路系3D-CADだった当時のCivil 3Dを河川系に活用したことが評価されたとのことでした。
 

図-1 Civil3Dを用いた浸水想定区域図




 

活用場面の拡大

以降、私が関与する業務では、多少なりともCivil 3Dを活用する場面が増えていきました。とはいえ、当時はまだi-ConもBIM/CIMも誕生する前の話で、辛うじて情報化施工が広まり始めていた頃でした。後のi-ConやBIM/CIMに通じる部分になりましたが、そうではないものも多かったです。それでも、現在の私の3D-CADに関する礎は、当時の苦労の積み重ねでできています。
 
平成24年の九州北部豪雨災害において、熊本県も広範囲にわたり大きな被害を受けました。地場コンサルとしては、当然、災害業務による繁忙期を迎えます。ですが、災害業務は、なかなか現場作業が捗らないことが多いです。私が手掛けました河川災害3.5kmの業務も測量成果が上がってくるまで3カ月近くを要する見込みでした。それでは、検討設計も行う期間が短くなってしまう状況にしかなりません。そこで、当該河川の特性を考慮して、活用可能性が高いと判断した数年前の河川LPデータを引っ張り出し、被災前の河川状況を3D地形で復元しました。その上で、縦横断断面を詳細に復元し、被災流量を与えて氾濫解析をしてみたところ、現地の被災水位とほぼ一致する結果を出せました(図-2)。そのまま、検討設計を進め、復旧計画の計画図まで作成したのですが、その期間は約1週間。要するに、測量成果を待っていたら3カ月以上経たないと、復旧計画を示せなかったものを、1週間で示すことができました。この時間短縮によって、発注者との協議や関係機関調整も先手を打つことにつながり、十分な検討計画期間として3カ月という時間を費やすことになりました(表-1)。当然、測量成果が上がってきた際には、再度、解析検証を行いましたが、計算水位差は数cmでしたので、計画高水位設定には影響しませんでした。
 
現在のBIM/CIMでは、生産性向上を目的としつつも、「見える化」を行うことが目的化してしまっている傾向も見受けます。私としては、「『見える化』だけがBIM/CIMじゃない!」と主張したいのは、この事例があってこそです。十分な検討・計画・設計に時間を費やすことで、設計の「質」が高まります。その点にこそ、生産性向上や設計品質向上というBIM/CIMの最大効用があると思うようになりました。
 

図-2 河川LPを用いた3D地形モデルより復元した河川縦断図と実測縦断の合成




表-1 業務遂行イメージ




 

社内での活用拡大

平成28年には、熊本地震という未曽有の大災害が発生しました。あまりにも広範囲な被害で、各地の通行止めなどにより、被災現場にさえたどり着けない状況でした。それでも、実施できる調査・測量を行いつつ、計画検討も同時遂行しなければなりません。私の部署でも河川と砂防の業務を大量に抱えることになりましたので、さまざまな検討を行うに当たって、私以外の人員にも3D-CADソフトの活用を分担させる必要が出てきました。
 
思い切って、入社1年目の女性事務員に最低限の教育を行い、砂防堰堤のモデル化をさせてみました。意外にも楽しかったようで、1日半で3基の透過型砂防堰堤を作ってくれました(図-3)。技術者として、平面・正面・側面図を連動させた図面を作成するのは当然なのですが、土木素人の事務職員にとっては、作成した3Dモデルが平面・正面・側面図と重なることが感動の連続だったようです。それだけではなく、副作用としても効果がありまして、技術者が作成した図面に一部で作図ミスがありました。そこを気付かせてくれたのは、3Dモデルでした。半日で砂防堰堤1基を作成できる3Dモデルが、設計ミスをチェックする設計照査として活用できたことになります。しかも、土木素人の新人事務職員の貢献によって、です。「担い手確保」と「人材育成」と「設計照査」と「見える化対応」の一石四鳥の達成となりました。こうなってくると、土木専門社員ではなくとも、3D-CADスキルを叩き込むことで、設計ミス防止もできますし、発注者への説明に効果の高い「見える化」への対応も図れることになります。
 
この事案が発生して以降、社内でも3D-CAD対応できる人材の育成・増員計画が発動されることとなり、平成29年度には、国のCIM試行業務の経験を重ね、30年度からは、iCon&BIM/CIMプロジェクトチームを発足させ(表-2)、UAV公共測量や地上レーザーその他のi-ConもBIM/CIMも組織的かつ体系的に社内教育を図っており、若手技術者も女性技術者も含めて、下記の例のように目標設定し、鋭意精進中です(表-3)。
 
 
これからの時代に求められている「設計も分かる3D測量士と測量も分かる3D設計技術者」の増員に向かって行っているところです。
 

図-3 入社1年目の女性事務職員(土木素人)が半日で作成した砂防堰堤モデル




表-2 社内プロジェクトチーム編成




表-3 UAV目標レベル設定




 
 

株式会社 有明測量開発社 池本 大輔

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集1「i-Construction×BIM/CIM」



 



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