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2019年7月12日
はじめに当社の設立は1967年。まだレンタルという言葉が一般化していない時代から、仮設資材のレンタルを中心に、52年にわたってその経験とノウハウを磨いてきました。「仮設事業」として仮設資材をレンタルするとともに、これまでの建枠に替わって建築現場で主流となってきた、クサビ緊結式足場「NDシステム(通称:ダーウィン)」のメーカーでもあります。 BIMへの取り組みのきっかけそんな当社が再び3次元に取り組むことになったのは、社長の「今後のCADシステムはBIMを視野に入れて考えてほしい」という一言からです。そのときは、「また3次元をやるのか…」というネガティブな思いが浮かんできましたが、あらためてBIMについて調べてみて、すぐに「今からやっておくべきで今回は失敗しない」という思いに変わりました。 施工BIMへの本格的取り組み社長の一声でBIMに取り組むことになり、やるぞ!と意気込んではいたものの、そもそもお客さまがBIMでの足場仮設計画を必要と考えているのだろうかという疑問がありました。既に幾つかの仮設材パーツは試験的に製作しておりましたが、BIMは設計での活用が中心だったので、BIMをやったことのないわれわれには施工でBIMを活用するイメージが浮かばなかったからです。 ![]() 図-1 「BIMでの足場仮設計画の重要性」 具体的な取り組み(1)仮設材パーツの製作 ![]() 図-2 NDシステム ![]() 図-3 S造関連部材 (2)BIM担当者の育成 将来的には海外にBIMオペレーターを配置して、件数をこなせるようにしていく必要があります。しかし今は、国内で将来のBIMマネージャーを育成していく段階と考えており、現時点で全国に10名ほどいます。 BIMマネージャーとなるためには、まずはオペレーターとして実案件を複数経験し、直接現場とBIM調整会議を行い、2次元図面とは違うBIMならではの打合せ内容や、お客さまからどのような要望があるのかを知る必要があります。仮設材配置だけのBIMオペレーターであればすぐに育成できますが、当社はただ配置して終わりにしたくありません。重要なのはBIM担当者全員がBIMに取り組む目的や、この物件はどう進めるべきか、どうしたら問題解決できるのかをご提案できることであり、当社の全国に70人近くいる技術スタッフの中から、ある意味選ばれたこの10名は、今後の当社の「施工BIM」での立ち位置をより高めていかなければいけない人材です。 (3)仮設計画モデリングの請け負い 当社の仮設材を現場で採用していただくことが大前提ですが、2018年からは本格的にBIMでの足場仮設計画モデリングを請け負っています(図-4)。 2016年、2017年もご依頼がなかったわけではありませんが、試行的に年2~3件ほどしかなく、少し不安になるくらいでしたが、2018年に入ってからは急激にご依頼が増え、常に数件は重複して作業している状況です。施工BIM元年は2015年といわれていますが、当社のBIM元年は2018年だと考えています。 作業内容としては先ほどご紹介したように、ただ仮設材を配置して終わりにしたくありませんので、事前打合せ(キックオフ)→基本配置→社内BIM検討会(写真-1)→現場でのBIM調整会議1回目→修正→BIM調整会議2回目 と、このような工程を基本として作業しています。「工区ごとの数量を拾いたい」(図-5)ですとか、「危険箇所を可視化して対処したい」(図-6)というご要望もよくありますので、必要に応じて対応しております。 ![]() 図-4 足場仮設計画モデリング ![]() 写真-1 社内BIM検討会 ![]() 図-5 工区ごとの数量拾い ![]() 図-6 危険箇所の可視化
現状の大きな課題実は課題を挙げればきりがないので、ここでは現状悩んでいる「大きな課題」を2点だけ挙げておきます。
最後にBIMは施工から始めても効果は抜群です。2次元図面だけのときとは大きく打合せ内容が変わり、初期の打合せにかかる時間は増えたかもしれませんが、施工BIMで先行して検討することで、工事中に発生しそうな不具合が確認でき、事前に対処したり、対処できなくても解決策を考えておくことができるようになったことは素晴らしいと思います。一度BIMに携わった現場関係者さんは、次も必ずBIMでやりたいと仰います。 日建リース工業株式会社 技術安全本部 技術システム部 部長 小川 浩
建設ITガイド 2019 特集2「進化するBIM」 ![]() |
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2019年7月10日
河川BIM/CIMを牽引「RFA研究会」設立2017年12月、CADベンダーである川田テクノシステムの呼びかけにより、7社の建設コンサルタントが顔を揃え、「RFA研究会」のキックオフ集会が開かれた。いずれも河川設計に精通した企業ばかりだ。 普段はライバル同士でも![]() (株)建設技術研究所 志田 氏 ![]() 東京コンサルタンツ(株) 三井 氏 ベンダーを交えての活発な意見交換志田:会の進行がとても意見の出やすい場の雰囲気になっていて、かなり活発な意見交換ができましたね。まるで社内会議のようでした。 ![]() 三井共同建設 コンサルタント(株) 宮田 氏 ![]() いであ(株) 芝田 氏 ![]() 「RIVER_Kit」 完成祝賀会にて (写真左から) いであ(株) 古堅 氏 (株)東京建設コンサルタント 岡井 氏 (株)建設技術研究所 小畑 氏 川田テクノシステム(株) 山野社長 東京コンサルタンツ(株) 原木 氏 パシフィックコンサルタンツ(株) 荒川 氏 日本工営(株) 陰山 氏 三井共同建設コンサルタント(株) 伊藤 氏 検討初期段階から3次元で設計できるのがメリット実際にリリース直後のシステムを使った感想を聞いてみた。 ![]() 日本工営(株) 佐藤 氏 ![]() パシフィック コンサルタンツ(株) 荒川 氏 荒川:入力手順が堤防設計用になっているので操作しやすいですね。実務での生産効率が大幅に向上できると期待しています。河川設計もいよいよ3次元設計になりますね。 堤防法線を作図するだけで3次元モデル生成佐藤:堤防のCIMモデルの作成が圧倒的に早い。まさに、こんなシステムが欲しかった。という感想です。この会に参加できて、とても充実した研究会だと実感しています。 ![]() (株)東京建設コンサルタント 盛 氏 盛:距離標と法線の設定だけで堤防の計画高を自動的に計算してくるので検討や設計時間が大幅に短縮でき効率化につながります。ここは意外と手間がかかるんですよね。 堤河川BIM/CIM普及の課題とは芝田:BIM/CIMが一般化される前に先ずは人材を確保、育成する必要がありますね。今後は社内でもCIMの勉強会等、積極的に企画しなければならないと感じました。 最後に―― 今回「RFA研究会」で「RIVER_Kit」を開発できたことはBIM/CIMを推進するための一つの道具を作ったに過ぎないかもしれないが、この道具には河川設計技術者のノウハウが集約されている。おそらくCADベンダー単独では成し得なかったことであろう。 ![]() 「RIVER_Kit」でモデリングした堤防と河道 既設堤防あるいは河道の3次元地形モデル上で「距離標」ごとに設定された計画堤防高、計画高水位、計画高水敷高、計画河床高等を利用して、新たな3D堤防・河道の計画・設計を行うことができる。 RFA研究会 事務局 川田テクノシステム株式会社
建設ITガイド 2019 特集1「i-Construction×BIM/CIM」 ![]() |
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2019年7月5日
はじめに~施工BIM以前当社は2010年10月よりBIM対応に取り組み始めた。当初は、施工段階におけるBIMの取り組み方として、「製作図作成・サッシ製作と連携するために、3次元モデルは詳細に作成するもの」と信じていたため、その作成に当たっては、施工図レベルの詳細度で作成することに注力した。 Modeling ~施工BIM2015年6月、セミナー「施工BIMのインパクト」に参加し「施工BIM」の存在を知る。各業者が作成した3次元モデルの統合データを確認しながら、調整や打合せを行って合意形成したのち、製作図を作成するという作業の進め方である。調整作業(主に干渉チェック)に支障がなければ、詳細なモデルを必要としないこと、使用ツールをそれほど限定されない(当然だが関係者間合意の上)ということは、施工段階のBIM対応への疑問を解消するには十分であった。 ![]() 図-1 (左:調整前 右:解決案) ※透過表示 【事例2】 当社施工:アルミサッシ アルミカーテンウォール 関係工種:鉄骨 躯体 設備 使用ツール:AutoCAD 提出データ:ifc(dwgを変換) ほぼ全ての業者が参加する本格的な施工BIM物件。 製作図の作成とモデル作成は同時進行となってしまったが、モデル作成時に必要と思われた場合は2次元の図面も作成し、製作図へ反映できるようにした。 調整会議については、事前に配布される干渉チェックリストを確認することで、当社の関係する干渉部分についての回答を用意することができた。また、当社が他業者に依頼したい事項がある場合、調整会議で検討事項として挙げることで、依頼をスムーズに伝えることができた。 統合データ確認の効果は、事例1と同様「見て、直感的にどうしたらいいかが分かる」ことにあるが、がらりと設備ダクトの調整において、単に2者間だけでの調整ではなく、その下部に存在する庇の調整も必要になることが統合データを確認することで分かり、その後設計者を含めての調整作業を行ったことが、大きな効果であったのではないかと思う(図-2)。 反省点としては、AutoCADで作成した3次元モデルの修正作業に手間取ったこと。RevitやARCHICAD等、パラメータで修正可能なモデルが作成できるものを使用すべきだと感じた。 ![]() 図-2 (左:調整前 右:調整後) 【事例3】 当社施工:アルミサッシ 関係工種:鉄骨 躯体 設備 使用ツール:Revit 提出データ:ifc 本例もほぼ全ての業者が参加する施工BIM物件。 事例2での反省を踏まえ、モデル作成にRevitを使用した。それ以外の調整作業(調整会議への参加・質疑応答など)については事例2と同様の対応を行った。 その他、モデル作成による自社内での利点を探るべく、次のような活用を試みた。 ①Revitの機能で立面図・平面図を作成し、サッシの位置やサイズの確認に使用した。 ②Revitの集計機能により、サッシ数量・窓符号名・サイズを集計しこれらの確認に利用した。(①,②とも図-3参照) こうした活用は、BIM専用のツールを使用してモデルを作成したからこそできることである。作成モデルを活用してその効果を引き出すためには、BIM専用のツールを使用するべきなのだと実感した。 ![]() 図-3 Information~情報の活用モデル(形状)を活用するのが「施工BIM」であるのに対し、BIMのもう一つの要素「情報」を活用する取り組みも紹介する。 ![]() 図-4 おわりに紹介した事例や取り組みは、施工段階におけるBIM対応の一つの例であり、今後、ツールや手法の進化に伴い対応方法も変化していくと思われる。こうした進化を取り入れながら、BIM対応による効果(特に自社内における効果)を得ることができる最適な方法を探し続けていかなければならないと考えている。 不二サッシ株式会社 設計統括部 設計業務部 システムグループ 茶碗谷 賢
建設ITガイド 2019 特集2「進化するBIM」 ![]() |
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2019年7月3日
はじめに私自身、3D-CADソフトに関与したのが、平成15年でした。当時、Autodesk社の3D-CADソフトは、現在のCivil 3Dの前身で、Land Desktop 2004だったと記憶しています。この頃はまだ、基本的に道路計画用のコマンド中心で構成されていたので、河川砂防を専門とする私は、結構、悪戦苦闘しておりました。それでも、何とか河川業務に活用しようと工夫を重ね、浸水想定区域図作成等にも挑戦しました(図-1)。 ![]() 図-1 Civil3Dを用いた浸水想定区域図 活用場面の拡大以降、私が関与する業務では、多少なりともCivil 3Dを活用する場面が増えていきました。とはいえ、当時はまだi-ConもBIM/CIMも誕生する前の話で、辛うじて情報化施工が広まり始めていた頃でした。後のi-ConやBIM/CIMに通じる部分になりましたが、そうではないものも多かったです。それでも、現在の私の3D-CADに関する礎は、当時の苦労の積み重ねでできています。 ![]() 図-2 河川LPを用いた3D地形モデルより復元した河川縦断図と実測縦断の合成 ![]() 表-1 業務遂行イメージ 社内での活用拡大平成28年には、熊本地震という未曽有の大災害が発生しました。あまりにも広範囲な被害で、各地の通行止めなどにより、被災現場にさえたどり着けない状況でした。それでも、実施できる調査・測量を行いつつ、計画検討も同時遂行しなければなりません。私の部署でも河川と砂防の業務を大量に抱えることになりましたので、さまざまな検討を行うに当たって、私以外の人員にも3D-CADソフトの活用を分担させる必要が出てきました。 ![]() 図-3 入社1年目の女性事務職員(土木素人)が半日で作成した砂防堰堤モデル ![]() 表-2 社内プロジェクトチーム編成 ![]() 表-3 UAV目標レベル設定 株式会社 有明測量開発社 池本 大輔
建設ITガイド 2019 特集1「i-Construction×BIM/CIM」 ![]() |
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