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2019年5月15日
はじめに当社は、新潟県柏崎市に本社を置き、明治18年創業の130年を超える歴史を持つ総合建設業の会社です。 UAV~CIMとの出会い約4年前の2015年にUAV PHANTOMⅢを導入しました。当面は現場の空撮目的で、自社社員で空撮を行って、着手前、完成と月々の進捗の定点写真として撮影を開始しました。 3次元モデルの活用に向けた取り組み2016年3月に3次元CADを導入しました。(Autodesk社:Civil3D、Revit他一式、福井コンピュータ社:TRENDPOINT、TREND-CORE) ![]() 図-1 空撮写真から地形の3次元データを取得 ![]() 図-2 3次元設計データと現況地形データから土工量を算出 ![]() 図-3 鉄筋の干渉チェック ![]() 図-4 クレーンの稼働可能範囲の確認を行い、共用中の高架橋との離隔を確保 ![]() 図-5 VR体験会にて教育活用 3次元モデル活用への当社の課題(1)人材育成 CIMチーム( マネージャー、コーディネーター)の育成 CIMチーム育成の道のりCIMを効果的に運営していくためには、CIMマネージャー、CIMコーディネーター、CIMモデラーの3つの役割によるチームが必要です。CIMマネージャーとは、受発注者でCIMに詳しい人、CIMコーディネーターとは、実際のモデル空間を段取り、データ監理を行う人、CIMモデラーとは、モデルを調達する人のことです(図-6)。 ![]() 図-6 CIMチーム (「CIMを学ぶⅢ」より) おわりに今後の目標として、ソフトを実務で生かせるように習得すること。まだソフトの操作方法が分かってきたところであり、今後、CIMを活用していく中で、現場の特性に合わせて、どういうデータが必要か?作成したデータをどう生かすか?を考えながらやっていくことが大切です。まだまだ勉強することはたくさんあります。CIMコーディネーターを目指し、現場の生産性の向上に貢献できるよう、これからも努力していきます。 株式会社 植木組 土木技術部 陶山 直人
建設ITガイド 2019 特集1「i-Construction×BIM/CIM」 ![]() |
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2019年5月10日
はじめに~施工BIM以前竹中工務店としては、BIMをベースとした業務のデジタル化・高度化を進めており、設計施工の強みを生かし、業務プロセスを通じた生産性の向上を図っている。その中で、施工BIMにおいて生産性を向上させるためには、専門工事会社とのBIM連携が不可欠である。例えば鉄骨工事や設備工事などではBIMに取り組む環境が整備されつつあるため事例が増えつつある。一方、鉄筋工事もBIM連携のニーズが多い工種だが、鉄筋の加工に直結するような機能を有した市販BIMツールがないなど課題も多く、事例が少なかった。そこで本稿では鉄筋工事に着目し、自社開発によってツール上の課題解決を図るとともに、実プロジェクトにおいて専門工事会社とのBIM連携を試行したので紹介する。 鉄筋工事における専門工事会社とのBIM連携方法従来鉄筋工事において施工者は躯体図の発行までが仕事であり、その後職長が構造図と躯体図を読み込み、配筋の納まり検討を実施している。そこから加工図・加工帳を作成し、鉄筋加工工場にて加工帳を基にして加工を実施している。 ![]() 図-1 しかしながら以前まではRCSから出力された加工帳から手作業で加工用に数値を転記しており、データが鉄筋加工まで連動していなかった。そこで主要鉄筋加工機メーカーが対応している仕様のQRコードを直接RCSから出力することを今回開発した。 使用者は当社の生産設計部署および作業所だけでなく、鉄筋工事協力会社の職長へも広めるため、操作教育・展開を現在進めている。両者が使用することで、構造計算時から鉄筋加工までBIM連携で一貫した業務の実現を目指している。 実プロジェクトへの適用事例先述した開発を以下の実プロジェクトにより適用した(図-2)。 ![]() 図-2 建築地:埼玉県草加市 建築用途:独身寮、事務所 建物規模:RC造、地上3階 工期:2018年3月~2019年3月今回の開発は約2 年前からQRコード出力の開発を実施しており実プロジェクトでの適用を実現させた。範囲としては基礎工事(基礎梁4本)部分を対象範囲として以下の手順(図-3)にて試験的に実施した。 ![]() 図-3 STEP1:構造データを読み込んだRCSにて鉄筋BIMモデルを生産設計部署にて作成した。 STEP2:鉄筋BIMモデルを用いて生産設計部署・作業所・専門工事会社の関係者にて配筋納まりを確認、合意をした。 STEP3:関係者にて合意したBIMモデルよりQRコード絵符付き鉄筋加工図を出力した。 STEP4:QRコード絵符を鉄筋加工機にて読み込み鉄筋加工を実施した。 以上のような流れは従来の鉄筋工事における流れと全く異なり、新たな生産体制を構築できたと考える。 今回当プロジェクトにてRCSから出力したQRコード付絵符にて鉄筋自動加工を実施した。その結果は通常の鉄筋工事加工と比較して約50%向上することができた。また今回の開発に携わった専門工事会社の意見では、職長、工場作業員の鉄筋加工図作成工数が今後RCSを活用していき習熟することで従来から約20%低減が見込めるとの見解を得られた。今回の開発効果を鉄筋工事全体で考えると約7.4%のコスト削減効果がある(図-4)。今後減少が予想される熟練技能労働者減少による生産力確保は建設業界の大きな課題の一つである。今回の開発はその問題の解決策の一つとして期待できると考える。 ![]() 図-4 今後の展開と将来展望本稿では鉄筋工事における自社開発BIMソフト活用におけるBIM連携を生かした事例を紹介した。しかし、今回は部位を限定した試行であり、広く展開するためにはツール・体制両面で課題がある。今後は、業界への働きかけと技術開発の2手段でさらなる生産性向上へ寄与したい。建築のリーディングカンパニーとして鉄筋業界へのBIM連携の働きかけを継続していく。技術的には、データ連携の汎用性向上とともに、加工材の出荷管理・生産計画等、工場側で効果の大きい業務とのデータ連携も図り、生産効率の向上を推進していく。 株式会社 竹中工務店 東京本店 調達部 く体グループ 中村 健二
建設ITガイド 2019 特集2「進化するBIM」 ![]() |
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2019年5月8日
はじめに2012(平成24)年に国土交通省がCIM導入推進委員会を設置してから、既に7年が経過しこの間にCIM試行事業により多くの成果が報告されている。2016年には、CIM導入ガイドライン(案)も制定されCIM推進の形も決まりつつある。 ![]() 図-1 「CIM講演会2017」開催報告 アンケート結果のまとめより 3次元への挑戦の歴史2004年Autodesk社はLandDeskTopというCivil 3Dの前身の製品の販売を開始した。当社ではこのLandDeskTopとAutoCADなどをセットにしたにスーパー土木セットを導入し、社内でのCADをAutodesk社製品として標準化した。これが当社での3次元設計への取り組みの始まりである。 ![]() 図-2 Autodesk Civil 3D ロードショウ 2004 講演資料より ![]() 図-3 社内の3次元設計推進の動き yecCIM推進2020行動計画(1)計画 ![]() 図-4 yec CIM推進2020行動計画(表紙) この行動計画の目標は、「59期(2020年7月~)から全ての業務でCIMを活用し生産性を2割向上」させることにある。この目標達成のための各期の取り組み目標は、表-1に示すとおりである。 開始当時は、国土交通省の全ての設計業務で3次元の現況地形モデルの作成を目標として、その中の2割でのCIM対応の実施を目標としている。これは、まだ全ての業務でどのように3次元モデルを利用した実施フローにすべきかが明確でないため、基本である現況地形のモデル化を目標としたものである。現況地形もモデル化による全体を俯瞰することで3次元モデルの新しい見方の習得を目指しているが、まだ明確な答えは出ていない。 ![]() 表-1 各期での取り組み目標 (2)行動計画実施体制 計画の策定・推進は、CIM推進室が中心となり実施しているが、実際の業務を実施するわけではないため、設計現場との連携が必要となる。このため、図-5に示すように、社長をトップとし各部に1~2名の兼務者を配置し、各部には実際のモデル作成の中心となるモデラ―を配置する実施体制を採っており、社長、専任者2名を含め総勢129名となっている。 CIM推進室として月1回の定例会議で、進捗状況やCIMの動向などを報告している。 ![]() 図-5 CIM推進室の体制 (3)行動計画実施のための方策 目標・体制を整えても、やはり現場で使用してもらわないことには始まらない。このため、以下のような方策も実施している。 1)個人への学習支援 社内では、Autodesk AECコレクションの使用を前提としており、こうしたソフトウェア習得のための勉強会を、本店・支店で2カ月に1回程度開催している。 この他に、社員自らがCIM導入のための学習を行うための、e-Learningサイトを構築している。このe-Learningサイトでは、AECコレクション製品のマニュアルだけでなく、CIMの考え方のコンテンツも作成しており、技術系社員のみならず、営業系社員の受講も推奨している。 また、実際に業務に適用した際の疑問と回答のためのQ&Aサイトの運営、年1回の合宿形式の集合研修も実施している(図-6)。 ![]() 図-6 CIM e-Learningサイト 2)全社へ向けた啓蒙とレベルアップ・報奨 入手した業務のCIMを適用した際には、CIM成果報告書を提出してもらっている。これは、CIM試行業務として指定されていない自主的な取り組みも含めて提出する仕組みとしている。 この成果報告書をもとに、年2回12月、5月にCIM成果報告会を開催し、優秀な成果は報奨している。 3)CIM資格制度 59期の全業務でのCIM業務執行を円滑に進めるために、CIM資格制度の導入を検討している。これは、CIM業務の的確な計画と実施を目指し、役割分担を明確にするとともに、社員への新たなモチベーションアップを狙っている。 CIM資格制度としては、熊本大学の小林教授の「CIMを学ぶⅢ」で定義されている資格に、社内で実施する工種の業務への推進を進めるためのCIMインストラクターを加え、CIMモデラーも初級・上級に分けた5区分としている。 資格認定は、各期の期末(6月末)に実施し、翌期より資格者として活動する予定である(表-2)。 社内の執行部所は4つのグループに分類されており、資格制度導入後は、資格者も含めた図-7のような体制でCIM推進を進めていく予定である。 ![]() 表-2 CIM資格制度 ![]() 図-7 まとめ現在は、パソコンが普及して手書きの図面からCADを利用したデジタル図面に移行した時期と似ている。しかし、2次元をベースとしたCADは、利用しなくても紙とペンで代替ができるが、3次元モデルは、確認するためには専用の機器(パソコン、タブレット、スマートフォンなど)と作成するにはモデル作成ツールが必要であり、従来のように紙とペンでは代替できない。3次元モデルから2次元図面を出力することで、修正忘れなどの図面間の不整合も解消され、一度、3次元モデルを作成しておけば、修正・追加は非常に簡単にでき、生産性向上が期待できる。こうした観点で、2020年までの社内での利用を推進している。 八千代エンジニヤリング株式会社 技術管理本部 CIM推進室 藤澤 泰雄/金光 都
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2019年5月1日
はじめに近年、土木事業全体において、i-Constructionに基づくICT活用工事やBIM/CIM活用工事など3次元データを利活用することによる、生産性向上への取り組みが推進されている。急な変化にもかかわらずこの数年で、適用規模や工種が拡大してきている。今後、3次元データを活用する機会はますます増加していくと考えられる。3次元データの取り扱いにおいては、3次元データを扱えるハードウェア・ソフトウェアの環境整備や3次元データを扱える人材育成などが課題として挙げられる。本稿では、それらの課題に対する当社の取り組み事例を紹介する。 3次元データを扱う環境整備国土交通省工事においては、i-Con-structionに基づくICT活用工事が特記仕様書に明記され現場でも適用が進んでいる。ICT活用工事は、①起工測量、②3次元設計データ作成、③ICT建機による施工、④出来形管理等の施工管理、⑤データの納品の全ての段階において、ICTおよび3次元データを全面的に活用する工事であり、主に大規模掘削・盛土等を伴う道路工事などの土工事で適用されている。一方で、都市土木のような狭隘かつ複雑な施工箇所においても、構造物の構築工事にBIM/CIMを活用するなど工事中の各所で3次元データを扱う場面が生じている。ICT活用工事およびBIM/CIMを活用する工事においては3次元データの作成が必須である。 ![]() 写真-1 標準PCからVDIへの接続 ![]() 図-1 VDI環境イメージ 働き方改革を支えるVDIVDIシステムの導入に当たっては、運用面で支援するシステム部門の負荷低減も考慮し、建築のBIM推進部門とも協調し、同じシステムを導入した。現在、当社では土木部門にVDIサーバー2機を設置し、建築部門と合わせて、10機のVDIサーバーが稼働中である。サーバー1機には最大16台の仮想マシンが稼働する。 ![]() 表-1 シニア層向け講習会カリキュラム ![]() 図-2 講習2日目の成果 3次元データを扱う人材育成前述のように環境を整えるとともに、人材育成についても重要な課題である。 ダイバーシティに向けてまた、2018年度より当社独自の取り組みとして60歳以上のシニア層社員に対するSketchUpの講習受講を原則化した。前述のように施工段階において3次元モデルを活用することは、実施工で発生するリスクを早期に把握し、対策の立案ができるフロントローディングが可能となる。一方で、3次元データを作成する人材に施工リスクを把握できる能力がなければ、その効果を享受することは難しい。土木施工の経験が浅い若手社員やCADオペレーターにとっては、リスクへの気付きが疎かになることもある。 ![]() 写真-2 講習会状況 ![]() 図-3 講習3日目の成果 3次元データから定量的効果を得るi-Constructionに基づくICT施工は、多くの工種に拡大され、それぞれで3次元データの活用は進んでいるものの、都市土木のような複雑かつ輻輳する構造物を対象とする工事では、まだまだその効果を生かしきれていないと考えられる。都市土木においては、BIM/CIMモデルを用いた説明の分かりやすさによって、関係者間の理解力の向上など“定性的”な効果は十分に得ている。しかし、次のステップとして3次元モデルを施工に直結させて生産性を向上させる“定量的”な効果を得ることを掲げなければならない。つまり、施工計画検討に用いたモデルを加工することなく、そのまま現場施工に使うことが必要となってくる。 ![]() 写真-3 狭隘箇所で施工する都市土木工事 都市土木のi-Constructionへそこで、まずは施工ポイントの位置出し確認のため、BIM/CIMモデルを用いて、オートデスクの『Poi ntLayout』『BIM 360 Glue』、トプコンの『レイアウトナビゲーター LN-100(杭ナビ)』が連携した『施工CIM』パッケージを導入した。現場の座標を設定したBIM/CIMモデルをクラウド経由でタブレット端末に表示して見える化し、測量器機とそのまま連携することができる。前述のSketchUpProのデータもNavisworks Manageを介したデータによって、連携が可能となる。 本取り組みでは、3次元データの直接的な活用により、通常、2人がかりの作業を1人に省力化することが可能となった。都市土木においてもi-Constructionに基づいたBIM/CIMの定量的活用を積極的に進めたいと考えている。 ![]() 写真-4 おわりに当社は、2012年のCIMのスタート時から、3次元データの利活用を進めてきた。近年では、3次元データの取り扱いを必須とされる工事も増加しており、ますます3次元データを活用する機会は増加していくと考えられる。今後に向けて、社内全体でのリテラシーの向上、さらに3次元データを扱うための体制の整備を継続して推進していく必要がある。 東急建設株式会社 土木事業本部 事業統括部 ICT推進グループ グループリーダー 小島 文寛
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