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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

3次元データの利活用推進に向けて! −中国地方整備局におけるBIM/CIMの取り組み―

2019年4月24日

 

はじめに

中国地方整備局では平成24年度からCIMの試行を始め、平成28年度から始まったi-ConstructionによりBIM/CIM活用の拡大を図っているところです。本稿では、その取り組み状況の紹介をするとともに、今後の3次元データの利活用推進に向けた意見を述べます。
 
 
 

工事におけるBIM/CIMの活用

平成28年度までは、主に橋梁やトンネル等の大規模構造物の工事においてBIM/CIMの活用を行ってきました。活用事例としては、主に細部構造の照査(干渉確認)、施工シミュレーション(段取り・安全確認)、地元説明等でBIM/CIMモデルを利用しています。




 

ECIによるBIM/CIMの活用

BIM/CIMの取り組みは、調査・設計・施工・維持管理の建設プロセス全体を3次元データでつないでいく取り組みです。平成29年度からは、設計段階でのBIM/CIM活用拡大を目指して、岡山国道事務所の大樋橋西高架橋をモデルにECI方式によるBIM/CIM活用に着手しました。
 
ECI方式では、技術提案により選定した工事の優先交渉権者(施工者)の技術協力を得ながら設計コンサルタントが詳細設計を行います。
 
施工段階で活用可能なBIM/CIMモデルを設計段階で作成することを目標に現在、BIM/CIMモデルの作成を行っているところであり、属性情報の付与方法、自動的な数量・工事費・工期の算出、施工段階を見据えたCIMモデルの構築、情報共有および契約図書化に向けた検討を併せて実施することとしています。実施に当たっては、CIMLINKを活用し、国土技術政策総合研究所の助言を得ながら発注者、設計者、施工者が相互に情報共有を図り検討を進めています。設計段階で作成したBIM/CIMモデルは、施工段階で活用を図っていきます。
 

大樋橋西高架橋予備設計CIMモデル
(CIMLINKで共有した3DPDF)キャプチャ画像


 

3DA検討図面(CIMLINKで共有した
Navisworksデータ)キャプチャ画像




 

3次元データの利活用推進に向けて

さらなる3次元データの利活用推進に向けて、次の3つの課題について意見を述べます。
 
 
(1)活用効果が大きいICT土工等での3次元データ活用推進
 
BIM/CIMの活用は、橋梁やトンネル等の大規模構造物を中心に進められているところです。その一方で、3次元位置情報の利用により大きな施工の効率化が図られているICT土工の現場では、設計段階での3次元土工設計データ作成が求められているところです。ICT土工の現場からは、土工以外でも3次元データの活用はできるとの意見もあることから、今後は、ICT土工で必要となる3次元データ作成も視野に入れ、事業着手段階の道路や河川の予備設計、詳細設計でのBIM/CIM活用が必要であると考えています。
 
 
(2)3次元CAD利用による設計コンサルタント業務の効率化
 
BIM/CM活用業務では、現在、2次元データによる従前の設計に加え、3次元データの作成を行っているところです。2次元データ、3次元データ両方を作る必要があるため効率的ではないとの意見もありますが、コンサルからは最初から3次元データで設計することは難しいとの意見も聞きます。3次元データの利活用を推進するためには、3次元CADを利用した効率的な設計が行える必要があり、BIM/CIM活用業務におけるリクワイヤメント事項の検討を通して課題を抽出し、改善が図られていくことを期待します。
 
 
(3)発注者が納品された3 次元データを確認・利用するスキル向上
 
従前の2次元データによる報告書は、紙での印刷物やPDF等のデータで成果品を確認することができました。しかし、3次元データ、特にBIM/CIMのような属性情報を伴う成果品は、紙での印刷物ではその内容を正確に確認することができません。そのため、BIM/CIMによる成果品を確認するためのスキル向上が発注者に求められているところです。3次元データを確認する手法として、3次元PDFを使用することもできますが、現状では作成されたBIM/CIMデータを全て3次元PDF化することはできないことから、中国地方整備局では、3次元CADソフトのビューアソフトを活用して成果品を確認する試みを進めており、その一環としてBIM/CIMセミナーを開催しました。BIM/CIMセミナーでは、3次元データ利活用に関する座学と3つの3次元CADソフトのビューアを使った成果品確認の演習、3次元データの利活用に向けた意見交換を実施しました。現在、3次元データによる契約書化の検討が進められているところであり、今後は職員が3次元データを編集するスキル向上も図っていく必要があると考えています。
 

BIM/CIMセミナー開催状況(ビューアソフト
によるハンズオン演習)


 



 
 
 

国土交通省 中国地方整備局 企画部 技術管理課 建設専門官 浜田 健一

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集1「i-Construction×BIM/CIM」



 



北陸地方整備局におけるBIM/CIMの取り組み

2019年4月15日

 

はじめに

国土交通省では、平成24年からCIMの導入に向け試行を実施しています。平成30年度には、名称をCIMからBIM/CIM(Buiding /Cons truc tionInformation Modeling Management)に改め、本格導入へ向けて邁進しております。BIM/CIMとは、社会資本等の整備に当たり、計画から調査・設計、施工、維持管理そして更新に至る一連の過程において、3Dモデル等ICTを駆使して、各過程において3Dモデルを連携・発展させ、併せて事業全体にわたる関係者間で情報の一元・共有化をすることにより、一連の建設生産システムの効率化・高度化を図ることを目的としているものです。
 
 
 

BIM/CIMの取り組み

北陸地方整備局においても、平成24年からCIMの導入検討や試行を行っており、年々試行数が増加し平成30年度では24件の実施を予定しています。
 
今回は、北陸地方整備局において実施している大河津分水路の改修事業(図-1)において実施しているBIM/CIMの取り組みを紹介します。

図-1 大河津分水路位置図




 
(1)大河津分水路の改修事業におけるBIM/CIM活用の概要
 
大河津分水路の改修事業は、多くの利害関係者と協議・調整を図りつつ、厳しい現場条件のもとで複数の構造物を並行して築造等を進める必要があります。そのため、事業の初期段階から各工事の特徴を捉え、想定される課題を解決しながら円滑な事業進捗を図ることが求められていることから、平成28年度においては、山地部掘削の検討、第二床固改築の詳細設計、野積橋架替の詳細設計の3件の業務において、BIM/CIMを導入しています(図-2)。
 
また、各業務で作成されたCIMモデルを統合することで、事業全体を効率・効果的にマネジメントするためのCIMモデルに発展させることを目指し、各業務で作成することとなる現況地形および既設構造物のCIMモデルを基図とし、発注者が提供し、関連業務間で共有する取り組みを行いました(図-3)。

図-2 CIM試行対象の範囲


図-3 CIMモデルの流通について




なお、基図の作成に当たっては、後工程での利用も想定し、測量成果を基に作成を行いました。その際のCIMモデル作成ツールは表-1、設定した基本条件は表-2のとおりであり、利用するツールや基本条件は、業務受注者とも共有しました。

表-1 CIMモデル作成ツール


表-2 基本条件の設定




 
 
(2)山地部掘削検討におけるBIM/CIMの取り組み
 
図-2に示す左岸山地掘削部を対象に、地質・土質モデル、山地掘削施工計画検討モデルを作成しました。
 
 
①地質・土質モデル(図-4)
当該地区は多様な地質、岩級区分を有し、さらに、脆弱層を含む地層も存在していることから、土工事の際の岩級別、地質別の数量を把握することを目的にモデルを作成しました。さらに、過去のボーリングデータ(柱状図)を3次元化し、統合したことで、どこに、どれくらいの深さで調査したかが容易に確認できるようになり、今後の地質調査における参考情報としての活用が期待できるようになりました。

図-4 地質・土質モデルと3Dボーリング柱状図の統合




 
②山地掘削施工計画検討モデル(図-5)
長期にわたり発生する土工数量や、施工ステップごとの法面形状の把握、第二床固や野積橋の工事用ルートを確保した上での山地掘削の施工検討、また、地山掘削の施工範囲と工事用車両の進入路についての施工ステップごとの検討に使用することを目的に作成したモデルです。

図-5 山地掘削施工計画検討モデル(施工ステップで表示)




 
③モデルに付与する属性情報
関連業務間でのCIMモデルの共有、または後工程での利活用を想定して、地質・土質モデルには、表-3に示す属性情報を付与しています。
 
山地掘削施工計画検討モデルには、属性情報の付与は行っていませんが、年度ごとの施工範囲が確認できるよに色によるエリア分けを実施しました。
 
今後は、年度ごとに発生する土工数量を地質区分ごとに把握していく必要があります。このことから、地質・土質モデルを細分化し、立方体で表現し、一つ一つの立方体に地質特性や体積(土量)、掘削時期等の情報を属性情報として付与することで、施工段階での利活用も可能になると想定されるため、引き続き、検討を進めていきたいと考えております。

表-3 地質・土質モデルに付与した属性情報




 
(3)野積橋架替の詳細設計におけるBIM/CIMの取り組み
 
図-2に示す河口部に架け替える野積橋を対象に、施工ステップ、工事工程等を基に、基礎工事、下部工躯体工事、上部工工事と施工段階に応じた施工ステップ情報(時間軸)を付与した構造物モデルを作成しました(図-6)。

図-6 施工ステップ情報構造物モデル




 
①上部工構造物モデル
構造的に張出横桁(図-7左:赤枠で示した箇所)が必要となったため、支承配置間隔の違いによる景観性の確認のためモデル化し、道路管理者との協議に用い構造決定を行いました。また、排水桝位置について、鉄筋切断等の構造性のほか歩行者目線から配置状況を確認し(図-7 右:赤枠で示した箇所)、道路管理者との協議に用い位置決定を行いました。モデル化を行うことで、円滑な合意形成に寄与したと考えます。

図-7 張出横桁(左)、排水枡位置(右)の比較




 
②下部工構造物モデル
下部工の橋脚構造物や橋脚の掘削工に伴う土工の数量の把握を行いました(図-8)。鉄筋については従来より長さの確認はできていましたが、今回、3次元化し属性情報を付与したことで、鉄筋径ごとの集計や鉄筋総重量の把握も可能となりました。

図-8 橋脚構造物モデルの体積(上)と橋脚掘削部の土工数量(下)




 
③上・下部工接合部
上・下部工接合部の複雑な形状における鉄筋、支承アンカーなどの相互の配置を3次元空間で確認することで、施工段階での加工、配置変更が困難であるPC鋼材配置の干渉チェックを行いました。一部の橋脚を切り出し、PC鋼材、支承アンカー、仮固定鋼棒等の干渉を確認し、仮固定鋼棒の位置や外ケーブルの配置をずらすことで干渉しないように変更を行いました(図-9)

図-9 変更前配筋モデル(上)と変更後の配筋モデル(下)




 
④モデルに付与する属性情報
属性情報については、モデルごと、設計、施工、維持管理の各段階ごとで表-4のとおり整理しました。
 
属性情報の付与方法については、外付けする形で定義できるようにモデルを作成しました。今後、橋梁のCIMモデルに付与する標準的な属性情報が提示、または義務付けられた場合には、今回作成したCIMモデルに付与し、活用可能となるようにしています。

表-4 属性情報の付与(案)




 

おわりに

今回の紹介事例である大河津分水路の改修事業は、平成27年から平成44年の18年間に及ぶ大規模事業であり、効率的・効果的な事業実施のため、工程管理の充実が重要と考えております。
 
平成30年度からは、BIM/CIM活用工事として本格着手が始まりました。今後、次々と後続業務、工事の着手が行われる状況下で、各種業務等で取り扱うデータに関し、複数のコンサルタントとのデータ交換、施工者とのデータ共有、管理段階でのデータ変更等、その一元監理を行うことによって、業務、工事それぞれの契約単位の事業進捗に比べ、より効率的・効果的な事業マネジメントに寄与するものと考えられ、引き続き検討をしていきたいと思います。
 
 
 

国土交通省 北陸地方整備局 企画部 技術管理課  阿部 涼

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集1「i-Construction×BIM/CIM」



 



北海道開発局におけるBIM/CIMの取り組み

2019年4月8日

 

はじめに

BIM/CIMの活用は、調査・設計・施工・維持管理を通して、事業全体の生産性向上と高度化には欠かせないものであり、今後もその需要は高まるものと考えられる。
 
このような背景のもと北海道開発局では、平成24年度からCIM試行を進めてきたところであり、平成29年度からはさらにi-Constructionの重要な取り組みとして推進している。本稿では、平成29年度に取り組んだ橋梁詳細設計と樋門詳細設計におけるBIM/CIM活用事例について紹介する。
 
 
 

設計段階におけるBIM/CIMの活用

(1)橋梁詳細設計の活用事例
 
1)設計概要
業務名:一般国道5号 仁木町銀山大橋 詳細設計業務
設計概要:一般国道5号 倶知安余市道路の橋梁新設設計
上部工:9径間連続鋼鈑桁橋(橋長:565m)
下部工:壁式橋脚(場所打ち杭)
 
 
2)CIMモデルによる鉄筋干渉確認
本橋梁の基礎工は場所打ち杭であり、杭頭鉄筋と橋梁下部工のフーチング鉄筋の干渉箇所をCIMモデルを活用してチェックを行った(図-1)。
 
鉄筋の干渉箇所について事前に確認をすることで、建設現場では施工者が現地で支障なく作業が行えるなど、現場における省力化が期待できる。



図-1 鉄筋干渉位置の確認




 
3)維持管理用モデルの作成の試行
本業務では、将来の維持管理に使用可能なCIMモデルの作成を試行した。維持管理モデルでは、「管理スペースの確認」と「橋梁点検結果の管理」をリクワイアメント(要求事項)として設定し検討を行った。
 
「管理スペースの確認」では、上部工検査路から下部工検査路への動線確認をCIMモデルをベースにしたVR(Virtual Reality)にて確認することで、実際に点検が可能なスペースや導線の確保の確認を行った(図-2)。
 
また、「橋梁点検結果の管理」では、設計データを基に上部工のモデル化を行ったが、設計モデルでは主桁部材を添接板間隔で認識しているのに対し、点検では、横桁間隔で部材番号を設定するため、現行の点検要領での管理を前提とするとモデルの修正が大掛かりになることが判明した(図-3(a))。ただし、3Dモデルを活用した点検結果の管理の場合は、部材番号がなくとも損傷箇所の確認が容易にできるため、設計モデルをそのまま利用した運用が十分可能と考え、設計モデルを活用することにした。

図-2 管理スペースの確認


図-3 維持管理モデル




 
4)プロセス改善検討の取り組み
本橋梁については本年度CIM活用工事として下部工の工事に着手している。設計で作成した構造物モデルが、施工時にどのように使用され、施工の手戻りを減らしたかを確認し、さらなる効率化を目指し、設計と施工のCIMプロセス改善に向けた検証を実施している。

図-4 国土地理院の地盤データを読み込んだ地形モデルと維持管理モデルの統合モデル




 
(2)樋門詳細設計での活用事例
 
1)設計概要
業務名:根志越樋門詳細設計業務
設計概要:樋門詳細設計一式
 
 
2)機械設備でのBIM/CIM導入の試行
根志越樋門は、石狩川水系千歳川右岸に位置する直轄の排水樋門である。新規築堤盛土で函長が不足する既設函体を活用し、継ぎ足し樋門として詳細設計を実施した。また、門柱高不足のため、門柱レスとして改築し、機械設備へのBIM/CIM適用について試行・検証を実施した。
 
機械設備設計におけるBIM/CIMの適用は、メーカーの特定に至らない形で発注用の数量等を算定する必要がある。そのため、機械設備の3次元モデル化は一般的な土木設備のBIM/CIMにおける詳細度の概念とは異なり、「形状の詳細度(LoD)と付与する属性情報(LoI)」によりモデルの詳細度を規定する概念を検討した。
 
この概念を基に、機械系のCADと土木・建築系のCADの2種類のソフトウェアでモデルを作成し、数量算出、構造計算への連動、データ交換等を検証した。その結果、利用ソフトウェアによってそれぞれの長所、短所があることが判明したことから、モデル作成に当たっての基本事項として取りまとめた。
 
一例を示すと、機械系CADは機械の製作用データを作るためのCADであり、構造計算との連動や部材同士の相互動作をモデル上で確認することができる(図-5)。
 
建築系CADは構造物を作成するのに特化したCADであり、材料情報等をモデルに含め、土木躯体を併せてモデル化することが可能である(図-6)

図-5 機械部材のモデル化


図-6 土木躯体を併せたモデル化




 
3)土木構造物との取り合い確認
作成した機械モデルを土木構造物と重ね合わせ、機械設備の設置状況を確認し、取り合い等を確認した(図-7)。

図-7 土木構造物との取り合い確認




 
4)VR技術の試行
作成したモデルを基にVR(VirtualReality)技術を用いて、維持管理時の動線や空間を確認・検証した(図-8)。
 
一般的に協議段階では、図面を用いるが、VRを活用することでイメージを共有することが可能であり、認識の共有が図れる。また、樋門操作時のイメージを把握できるため、職員や操作員等への教育用途にも活用できると考える。

図-8 VRの活用事例




 
 

技術者育成の取り組み

BIM/CIM活用を推進するためには、3次元データを扱える技術者の育成が受発注者ともに必要である。実際に操作等を体験することでメリットを感じることが重要であり、受注者・発注者ともに講習会を企画し実施している。

写真-1 BIM/CIMの実技講習会




 

おわりに

BIM/CIMの取り組みによって、調査設計段階から施工・維持管理段階における各プロセスやプロセス間において業務改善が図られる。このような生産性向上の取り組みが働き方改革につながり建設業全体が魅力ある職場になるようさらに取り組みを進めていきたい。
 
 
 

国土交通省 北海道開発局 事業振興部 技術管理課

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集1「i-Construction×BIM/CIM」



 



国土交通省におけるBIM/CIMの普及・促進の取り組み

2019年4月3日

 

はじめに

第四次産業革命によって、今、世界中で次々と新しいビジネスが生まれています。日本では、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会を「Society5.0」として、来たる新時代に対応したさまざまな取り組みを進めています。
 
これを受け、国土交通省では、2019年を貫徹の年と位置付け、31の生産性革命プロジェクトに取り組んでいるところです。建設業においては、社会資本の整備を支え、社会の安全・安心の確保を担う建設業の担い手確保に向けて、建設生産プロセス全てを対象にICT等を活用する「i-Construction」を推進し、建設現場の「生産性革命」と「働き方改革」により、魅力ある建設現場の実現を目指しています。
 
特に、BIM/CIM(Building/ConstructionInformation Modeling, Management)は、「i-Construction」のエンジンとして重要な役割を担っており、建設生産・管理システム全体を3次元データ等でつなぐことにより、品質の確保や生産性向上に大きく寄与することが期待されています。
 
このため国土交通省では、BIM/CIMの本格的な導入に向けて、BIM/CIM導入効果の把握やルール作りの検討のため、2012年度からCIMの試行を開始し、要領基準類を整備してきたところです。
 
本稿では、国土交通省におけるこれまでのBIM/CIMの取り組みと、今後の3次元データの利活用に向けた取り組みについて紹介します。
 
 
 

BIM/CIMに関する基準要領等の整備

国土交通省では、業務については2012年度より、工事については2013年度よりBIM/CIMの試行を進めており、これまで、設計業務で144件、工事で274件の合計418件で実施しています(表-1)。2018年度は、合計200件以上の事業でBIM/CIMを活用することを目標としています。



 
(1)CIM導入ガイドラインの策定
 
国土交通省では、これまでのBIM/CIM活用モデル事業で得られた知見やソフトウェアの機能水準を踏まえ、現時点でCIMモデルの活用が可能な項目を中心に、受発注者の役割、基本的な作業手順や留意点とともに、CIMモデルの作成指針(目安)、活用方法(事例)を参考として記載した「CIM導入ガイドライン(案)」を2017年3月に策定しました。CIM導入ガイドライン(案)は、公共事業に携わる関係者(発注者、受注者等)がBIM/CIMを円滑に導入できることを目的に作成しています。
 
将来的には2次元図面から3次元モデルへの移行による生産性向上等が期待されるものの、2018年度版では「現行の契約図書に基づく2次元図面による発注・実施・納品」を前提にしています。
 
ガイドラインは、共通編(第1編)と各分野編(土工編、河川編、ダム編、橋梁編、トンネル編)の全6編で構成されており、各編を組み合わせて使用することを想定しています。
&nbsp
2018年度は、引き続きガイドラインの拡充(下水道分野、砂防・地すべり分野)を進めるとともに、ガイドライン自体の見直しを含め検討を進めています。
 
 
(2)「3次元モデルの表記標準(案)」の整備
 
BIM/CIMでは、建設生産プロセスで一貫してCIMモデルを流通・利活用し、各プロセスで発生した情報を連携していくことで、より一層の生産性向上が見込まれます。そこで、契約図書におけるCIMモデルの位置付けを従前の2次元図面の参考図書から、単独の設計図書へと転換することを企図し、今回、「3次元モデル表記標準(案)」(以下、「本標準」という。)を作成しました。2018年度は本標準に基づくCIMモデル作成の試行を進めることで、設計・施工間での円滑な受け渡し、2次元図面とCIMモデルの二重納品の解消、2次元図面からCIMモデルを活用した契約へ転換を目指します。
 
本標準をBIM/CIM活用事業に適用し、実践して得られた課題に対応するとともに、関連する基準類の整備と連携しながら、本標準を継続的に改善・拡充していくこととしています。改善・拡充に当たっては、CIMモデルでは構造物の寸法や注記をモデル内から取得可能であることから、従来の2次元での製図法にとらわれない、より効率的な表記・表示の方法を検討していくこととしています。
 
 
(3)「土木工事数量算出要領(案)」の改定
 
CIMモデルから算出された数量の活用に当たり、従前の「土木工事数量算出要領(案)」では、CADソフト等による体積の算出結果について、適宜結果を確認した上で適用可能と定義されており、必ずしも記載内容が十分ではありませんでした。
 
このため、積算業務の効率化に向けCIMモデルから自動算出された数量をそのまま積算に活用できるよう「土木工事数量算出要領」を2017年度末に改定しました。
 
具体的には、「第1編(共通編) 1章基本事項」に土構造、コンクリート構造と鋼構造の工事数量算出に用いるCIMモデルの基本的な表現方法を新たに追加しました。また、これまで工種ごとに記載していた3 次元CADソフト等による工事数量算出方法などを、3次元モデルに対応した「数量算出項目及び区分一覧表」として整理しました。
 
2017年度は、土構造、コンクリート構造、鋼構造合わせて計58工種について、数量算出項目および区分一覧表を整理したところであり、引き続き対象項目を拡充していく予定です。
 
 
(4)要求事項(リクワイヤメント)の設定
 
2017 年度は「CIM導入ガイドライン(案)」を適用するとともに、発注者が受注者にCIMモデルの導入・活用に関する要求事項(リクワイヤメント)を設定し、事業を進めてきました。この要求事項に基づき、受発注者がそれぞれ知見やノウハウを出し合いCIMモデルを構築し、課題の抽出および解決策を検討しています。
 
2018 年度からは、3 次元データ表記標準(案)に基づくCIMモデルの作成や、情報共有システムを活用した事業の実施をリクワイヤメントに追加し、改善に向けた試行を実施しています。建設生産・管理システムに関わる各団体による議論の場を設け、これらの試行のフォローアップをすることにより技術的な検討を進めています。
 
またフォローアップ結果については、BIM/CIM推進委員会等で議論し、そこでの議論も踏まえ、ガイドラインや要領基準類の改定など必要なカイゼンにつなげることとしています。
 
 
(5)3次元データ利活用方針の策定
 
建設現場の生産性向上に向け、国土交通省における建設生産プロセスの各シーンでの利活用方法を示すとともに、データ利活用に向けた今後の取り組みを示し、3次元データの利活用を促進することなどを目的として、2017年11月に「3次元データ利活用方針」を策定しました。下図は、3次元データ利活用方針に記載している各シーンでの利活用方法を示したものです。
 
今後は、本利活用方針を基に活用促進に向けた制度設計や体制整備を進めてまいります。



 

BIM/CIMの活用促進に向けた取り組み

 
BIM/CIMを効果的に活用していくためには、基準要領等の整備を進めるだけでなく、それを活用する環境を整備していくことも重要です。国土交通省では、2018年から、建設生産・管理システム全体で3次元データを活用する環境を整備するための取り組みを開始しています。
 
 
(1)オンライン電子納品システムの構築
 
これまでは、建設生産・管理システムの各段階で3次元データを活用してきましたが、今後は建設生産・管理システムで一貫したデータを活用していくことが不可欠です。このため、2017年度からは、設計から施工、維持管理までデータが流通するよう、CIMモデル等の3次元データを成果品として位置付けることとしました。
 
また、電子データを利活用するに当たり、遅滞なく最新のデータが共有されるよう情報共有システム機能要件を整備するとともに、電子成果品をオンラインで受け渡しが可能となるようオンライン電子納品システムの構築に着手しました。
 
2018年度は、仮想サーバーを使用したオンライン電子納品の試行により課題を抽出し、2020年度のシステム実装を目指しています。
 
 
(2)発注者向け研修の実施
 
BIM/CIMをより効果的に活用していくためには、BIM/CIMを利用する受発注者双方がその利用方法を十分に理解することが必要です。
 
このことから、国土交通省では2018年度から発注者向け研修に着手することとしました。研修では、BIM/CIMとは何か、何が可能となるのかについて学習するため、導入の背景と目的、また関連基準等の理解を深めるための講義を実施しています。ここでは、概念としてのBIM/CIMの活用だけでなく、発注者としてどのような活用が可能なのかについても併せて学習することにしています。
 
BIM/CIMの現状と課題を把握するためには、発注者だけで検討するだけでなく、実作業を担当する設計者、施工者の意見を共有することが重要であることから、それぞれの段階でどのように活用されているのかについても学習しています。
 
また、BIM/CIMの活用を促進していくためには、一部の職員だけが研修を受講できるだけでなく、より多くの職員が研修等を通じた技術習得を可能とする環境づくりが必要です。このため、研修資料等を各地方整備局等と共有し、地方整備局等においても地方整備局職員や地方公共団体職員を対象にBIM/CIMに関する研修を実施することとしています。
 
 
 

おわりに

 
建設現場の生産性向上を図るためには、3次元データ等の導入を国の直轄工事以外にも拡大していくことが必要です。このため、地方自治体に対して、発注関係者の集まる発注者協議会や土木部長会議等の場において、国土交通省における取り組みについて周知を図りつつ、連携して取り組みを進めてまいりたいと考えています。



 
 

国土交通省 大臣官房 技術調査課 課長補佐
那須 大輔

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集1「i-Construction×BIM/CIM」



 



i-Constructionによる建設現場の生産性革命

2019年4月1日

 

はじめに

わが国は、現在、人口減少社会を迎えていますが、潜在的な成長力を高めるとともに、新たな需要を掘り起こしていくため、働き手の減少を上回る生産性の向上等が求められています。また、産業の中長期的な担い手の確保・育成等に向けて、働き方改革を進めることも重要であり、この点からも生産性の向上が求められています。
 
社会全体の生産性を高め、人々の成長期待を高めることができれば、企業の設備投資や賃上げ、さらには個人消費の拡大が促されます。これが企業の一時的な需要の喚起にとどまらない持続的な経済成長につながり、さらにその成果が働く人に分配されることによる好循環が期待されます。
 
こうした観点から、国土交通省では、平成28年を「生産性革命元年」と位置付け、先進的な取り組みとして「生産性革命プロジェクト」を選定しました。「i-Constructionの推進」は、生産性革命プロジェクトの主要施策の一つです。
 
平成30年5月には、プロジェクトの見直しを行い、i-Constructionの推進においても、「i-Constructionの「深化」×Open Innovation」として、これまでの取り組みをさらに具体化・強化しています。
 
 
 

i-Constructionの「深化」

国土交通省では、これまで調査・測量から設計、施工、維持管理の各建設生産プロセスにおいてICT等の導入を進めてまいりました。
 
 
(1)調査・測量
 
レーザースキャナーの技術開発・小型化が進み、ドローン等のUAV(無人航空機)に搭載可能な製品が登場してきたことから、平成30年3月に「UAV搭載型レーザスキャナを用いた公共測量マニュアル(案)」等を策定し、3次元測量に取り組んでいます(図-1)。
 

図-1




 
(2)設計
 
3次元設計(BIM/CIM)を導入することで、建設生産システム全体を見通した施工計画、管理などコンカレントエンジニアリング、フロントローディングの考え方を実施していくことが可能となります。
 
3次元設計については、平成24 年度から橋梁やダム等を対象に導入し、着実に実施件数を伸ばしています。今年度は、原則大規模構造物における詳細設計について、BIM/CIMの活用を導入することとし、「新技術導入促進調査経費」等の活用により、工事・設計業務合わせて200件の実施を目標としています(図-2)。
 

図-2




 
(3)施工
 
①ICT施工
3次元設計データを用いて自動制御可能なICT建機により施工し、3次元データで現場の施工管理等を行うICT施工を、平成28年度に土工に導入しました。平成28年度は、全国で584件の直轄工事でICT土工を実施し、平成29年度は、815件の工事に拡大しました。
 
平成29年度にICT土工を実施した274件の工事を調査したところ、従来手法で平均187人日かかるところを、ICT施工では平均129人日と、約3割の削減効果が確認されました(図-3)。
 
平成29年度からは、舗装の際の整地を自動制御するグレーダーを活用した「ICT舗装工」や、港湾の浚渫工事において海底地形を3次元データで把握し、施工・検査に活用する「ICT浚渫工」などに着手しています。
 
今後は、土工や舗装工以外の工種も含めて、点群データや施工時履歴データなどの3次元データによる工事全体の施工管理等の効率化を図るため、地盤改良工、法面工や付帯構造物工の出来高、出来形管理要領案の作成を進めています。
 
さらに、工事全体の施工管理に3次元データを用いれば、遠隔地からでも施工管理を行うことが可能となりますので、遠隔立会に向けた検討も進めていきます。
 

図-3




 
②コンクリート工の効率化
現場施工の効率化を図るため、流動性を高めた現場打ちコンクリートの活用や機械式鉄筋定着・継手工法の採用を進めてきました。また、埋設型枠やプレハブ鉄筋などのハーフプレキャスト工の活用を促進し、現場作業の省人化を進めています(図-4)。
 
さらに、プレキャスト製品の採用率が低い大型構造物への導入を目指し、課題となっているプレキャスト製品継ぎ目の鉄筋継手工法などの検討を進めています。
 
今後は、生コン情報などの施工関連情報の電子化による出荷状況のリアルタイム把握や、部材の仕様(サイズ等)の標準化を進め、サプライチェーンマネジメントの実現を目指します。
 

図-4




 
(4)維持管理
 
維持管理の高度化を見据え、ドローン等のロボットにより正確な3次元位置情報を付した点検画像を取得し、3次元モデルを介して蓄積するため、平成30 年3月に「点検記録作成支援ロボットを用いた3 次元成果品納品マニュアル(案)」(トンネル編、橋梁編)を策定し、今年度から試行を実施しています。
 
今後、これらのデータを活用してAI等による変状検知機能を開発し、効率的な公物管理の実現を目指していきます(図-5)。
 

図-5




このように、調査・測量から設計、施工、維持管理の各建設生産プロセスにおいて、3次元データを活用する体制を整えてきているところです。今後は、これらの3次元データをつなぎ、新技術、新工法、新材料の導入・利活用を加速化してまいります(図-6)。
 
なお、3次元データの標準化を図るに当たり、bSI(building SMARInternational:構造物の3次元モデルデータ形式であるIFCの策定などの国際標準化に関する活動を行う組織)の国際標準化の動きとも連携していきます。
 
さらに、民間や他機関の持つデータとも相互に連携することによって、シナジー効果を生み出し、民間におけるイノベーションを促進していきたいと考えています。
 

図-6




 

新技術の開発・導入

建設現場の生産性向上のためには、さらなる新技術の開発・導入が欠かせません。そのためには、新技術の開発を民間に期待するだけではなく、官民が連携して研究開発に取り組む必要があります。
 
 
(1)i-Construction推進コンソーシアム
 
i-Construction推進コンソーシアム(以下、「コンソーシアム」という)は、さまざまな分野の産学官が連携して、革新的な技術の現場導入や3次元データの利活用などを進めることで、生産性が高く魅力的な新しい建設現場を創出することを目的として、平成29年1月に設立しました。
 
平成30年11月時点で、コンソーシアムの会員は965者に上っています。(法人会員879者、行政会員61者、有識者会員25者。なお設立時の会員は458者)
 
コンソーシアムには、全体のマネジメントを実施する企画委員会と、3つのワーキンググループ(以下、「WG」という)を設置しています(図-7)。
 

図-7




その中の一つの技術開発・導入WGでは、最新技術の現場導入のための新技術発掘や企業間連携を促進することを目的に、建設現場の生産性向上に関する行政ニーズや現場ニーズと、それに対する技術シーズのマッチングを行っています。これまでに、平成29年10月に5件、平成30年5月に11件のマッチングが成立し、現場で試行を行っています(表-1)。
 
各地方整備局において同様のマッチングを行っており、今後も、生産性向上に資する技術の導入に努めていきます。
 

表-1




(2)官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)
 
国土交通省では、政府が科学技術イノベーションの創出に向けて今年度創設した「官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)」の制度を活用し、i-Constructionの取り組みにより建設現場で得られる3次元データを活用して、建設生産プロセスのさらなる高度化を図る研究開発を加速化させていきます。また、3次元データ等のインフラに関するデータを集約するプラットフォームの構築を進めていきます。
 
平成30年度は、国土交通省分約29億円のうち約22億円をi-Construction関係の研究開発に充てています。
 
 
 

おわりに

i-Constructionの導入により、建設現場に必要な技術の習得に要する時間が短縮されるとともに、危険の伴う作業や厳しい環境で行う作業も減少することが期待されています。また、生産性向上により安定した休暇の取得が可能になることで、建設現場において若者や女性などの多様な方々の活躍が期待されています。
 
さらに、3次元データを集約・蓄積することにより、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたSociety5.0の実現にも資すると考えています。
 
i-Constructionの取り組みにより魅力ある建設現場を作り出すことで、「きつい、危険、給料が安い、休暇が取れない」と表現されることもある現状を改善し、新たな「給与が良い、休暇が取れる、期待が持てる」建設現場の実現を目指してまいります。
 
 
 

国土交通省 大臣官房 技術調査課 課長補佐 橋本 亮

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集1「i-Construction×BIM/CIM」



 



 

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