建設ITガイド

トップ >> 特集記事 >> 2018年7月 特集記事

書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

施工BIMのデータ連携による現場の図面調整業務の省力化

2018年7月15日

 

はじめに

施工BIMの中で活用事例が多いのは鉄骨と設備で、干渉チェックと納まり確認である 1)。ところが鉄骨は鉄骨専用CAD、設備は設備専用CADで描かれるため、合成した統合モデルで干渉や納まりを検討するには、IFCが広く用いられている。
 

表-1 梁貫通孔要求CSVに対応している各種ツール
*)保守契約しているユーザーには常に最新バージョンへの更新がなされている




 
一方で、設備側からの梁貫通孔要求に対する成立性検討の作業は、大量の梁貫通孔要求図を基に一つずつ鉄骨CADへ入力する単調な入力を強いられる。そこで、データ連携により単純作業にかかる労力を大幅に低減させるべく、設備専用CADと鉄骨専用CADや汎用BIMツールを結ぶ「設備-梁貫通孔連携中間ファイル」を定義 2)して展開している。
 
さらに既製リング補強計算ソフトへの入力まで連携させると、梁貫通要求に対して即座に可否計算ができることになるが、計算ソフトはBIMに対応していない。そこで、鉄骨梁貫通孔既製リング補強の成立性検討ソフトを結ぶ中間ファイルの定義も行った。
 
本報では、データ連携による新しい業務の進め方(図-1)について解説する。
 

図-1 BIMを活用した新しい鉄骨と設備の調整業務の流れ




 

鉄骨BIMの作成要領

鉄骨BIMは、構造計算ファイルから変換したり、構造設計図の元になった設計BIMを使った例がみられるが、設備との干渉や納まり調整に活用する場合、柱・大梁・ブレースという主架構だけでは十分とはいえない。小梁位置を決定した上で接合部、ガセットプレート、火打材、方杖材、スティフナー、フランジ拡幅、デッキ受材を配置し、正確に表現することにより、現場で手戻りがなくなる干渉チェックが可能となる(図-2、図-3)と言っても過言ではない。鉄骨BIM作成には細部にわたる知識と経験が必要なので、構造計算ファイルや設計BIMをベースにしても、鉄骨ファブリケーターの技術を投入しなければならない。
 

図-2 設備との干渉チェック・納まり調整に用いる鉄骨モデルの例
(KAPシステム)




 

図-3 鉄骨を正確に表現した精度の高い干渉チェックの事例
(鉄骨:KAPシステム+実寸法師、設備:Tfas、統合:Solibri Model Checker)




 
鉄骨BIMからIFCを出力して設備サブコンに提供するのであるが、構造設計者が定める梁貫通孔の設置可否ゾーンにより梁を色分けしたIFCが出力できる機能はまだ認知度が低いようである。IFCを読み込んだ設備専用CAD上にも設置可否ゾーンが明示されるため、初回の調整時点から、設置不可領域に梁貫通孔が要求されるケースがなくなる(図-4)。
 

図-4 鉄骨モデルのIFCに梁貫通孔設置可否ゾーンを表示し、不可ゾーンを避けた納まり確認
(鉄骨:KAPシステム+実寸法師、設備:Tfas、統合:Solibri Model Checker)




 
 

設備BIMの作成要領

設備専用CADに正確に表現された鉄骨をIFCで参照し、鉄骨と3次元上の原点(共通原点)を合わせて、鉄骨と干渉しないようにダクト・配管・ケーブルトレイ等の配置をする。フロアごとに設備BIMを作成する場合には、フロアごとの原点と共通原点の関係に常に注意しておかなければならない。
 
必要な梁貫通孔を鉄骨に要求するに当たり、空調設備・衛生設備・電気設備・防災設備は、設備同士で納まりを調整する。梁貫通孔要求する際には隣接するダクトや配管をまとめて一つの梁貫通孔にして要求する工夫が、鉄骨製作の生産性を上げ、コスト的にも有利になる(図-5)。
 

図-5 複数の設備配管をまとめて、一つの梁貫通孔を要求している例




 

設備-貫通孔連携中間ファイル

「設備-梁貫通孔連携中間ファイル」は、将来IFCになるまでの暫定的な位置付けとして、カンマで区切られたテキストデータ(CSVファイル)である。
 
設備施工図がフロアごとに描かれる場合、慣習で見上図と見下図が使い分けられているので、共通原点1カ所を定義した場合とフロアごとに原点を定義した場合で使い分けることができるよう工夫している。
 
「設備-梁貫通孔連携中間ファイル」の諸元を表-2に、データ例を表-3、4に、解説図を図-6に示す 2)
 

表-2 設備-梁貫通孔連携中間ファイルの諸元




 
 

表-3 CAD上で3次元原点を定義して、見下げで作図した場合のデータ例




 
 

表-4 CAD上で2次元原点を定義して、見上げで作図した場合のデータ例




 
 

図-6 建物の共通原点と設備CADでのフロア別原点のイメージ




 
 
なお、「設備-梁貫通孔連携中間ファイル」は鉄筋コンクリート造の梁に設ける矩形の梁貫通孔要求にも対応させているが、鉄骨梁の場合は隅角部の応力集中を避けるため、円形の梁貫通孔にする。設備側から角型のダクトを貫通させる場合でも包絡する円形貫通孔とするので、注意が必要である。
 
 

梁貫通孔要求を鉄骨専用CADへ

「設備-梁貫通孔連携中間ファイル」を読み込んだ鉄骨専用CADは、鉄骨BIM上に梁貫通孔を「仮配置」する。これは設備側からの一方的な要求であって構造的な成立性が検討されていないからである。
 
補強方法によって検討内容が異なるため、元請と構造設計者はあらかじめ、梁貫通孔の補強が必要になった際、どの補強方法を採用するかを決めておかなければならない。
 
1フロア5,000㎡規模のオフィスビルになると、図-7に示すように1フロア当たりの設備梁貫通孔要求数は500個以上の数になる。一つずつ手作業で鉄骨専用CADに配置し、入力間違いをチェックするには早くて1日かかるが、それが一瞬にして正確に配置されるほど、省力化の効果がある。また、梁貫通孔要求の修正があった場合にも効果がある。
 

図-7 1フロア5,000㎡規模の事務所ビルの天井内設備と鉄骨の調整




 
従来は、設備サブコンは梁貫通孔要求図(スリーブ要求図)を設備専用CADにて図面出力し、設計者・監理者まで打合図を回覧していた。新しい業務の流れでは、設備専用CADから「設備-貫通孔連携中間ファイル」を鉄骨側に渡せば鉄骨CAD上で仮配置される。
 
設計者と監理者の理解が得られれば、最終形だけ作図して承認図とする省力化が可能となる。
 
 

梁貫通孔の構造成立性検討

仮配置した貫通孔が補強を含めて構造的に成立するかどうかを、貫通孔の径、位置、間隔と鉄骨形状の関係で検討する「仕様規定」と、梁に作用する長期荷重、短期荷重と梁断面性能である終局耐力時の健全性を検討する「性能規定」で検証を行う。仕様規定と性能規定は4種類の既製品リング補強で定められている。EGリングの仕様規定は図-8に、性能規定は図-9に示す通りであり、ハイリング、OSリング、フリードーナツにも同様の規定が設けられている。 
 

図-8 梁貫通孔既製リング補強の仕様規定の例




 

図-9 梁貫通孔既製リング補強の仕様規定の例(EGリング:日本ファブテック(株)提供)




 
4種類の既製品リング補強を対象に、仕様規定の検討に必要な情報と性能規定で必要な情報を整理したものが表-5である。今後、これを整理して「リング補強計算用CSV」と定義し、鉄骨CADと補強リングメーカーと協力しながら、データ連携による作業効率化を図る。
 

表-5 鉄骨専用CADから既製リング補強計算への連携用データ




 

成立性結果の出力

現在の既製品リング補強の成立性計算ソフトからの出力は、全てのスリーブ要求に対して合否判定がリスト形式で出力されるので、これを見ながら設備側に梁貫通孔要求に対する成否を連絡していた。また、設備側が描いた梁貫通孔要求の伏図に赤で×印で連絡する場合に、否の理由まで書き入れるのは手間がかかっていた。
 
そこで、梁貫通孔補強の成立性可否を、梁貫通孔リング補強メーカーの計算ツールから標準化された表-6に示す「貫通孔成立性結果CSV」データで出力することを目論んでいる。
 

表-6 既製リング補強計算結果から鉄骨専用CADへのデータ




 
 
この出力を、鉄骨専用CADや設備専用CADで読み込めば、BIMモデルやそこから生成される図面にも成立可否が、表-7あるいは図-10のように記されると予想している 3)
 

表-7 判定理由の簡易表記方法




 

図-10 判定理由の簡易表記方法の例




 
 

まとめ

鉄骨専用CADと設備専用CADを用いた納まり検討や干渉チェックはIFC連携により可能だが、梁貫通孔要求とその構造成立性検討は現状のIFCではデータ連携ができないため、3種類の中間ファイルを定義して、広く公開して標準化を行った。
 
1)「設備-梁貫通孔連携中間ファイル」
2)「リング補強計算用CSV」
3)「 貫通孔成立性結果CSV」
 
日本国内で多用されている設備専用CAD、鉄骨専用CAD、既製リング補強の相互のデータ連携が、業務フローになるのはそう遠くない。
 
 

おわりに

鉄骨専用CADにKAPシステムを用いて、貫通孔補強をEGリングとした場合には、設備専用CADがCADEWA、DesignDraft、Rebro、Tfasで描かれていれば、既にデータ連携による効率化が可能であった 4)。しかしながら、鉄骨ファブリケーターが使い慣れた鉄骨専用CADは他にも複数あり、既製リング補強も4種にわたっている。このため、(一社)buildingSMART Japanの構造設計小委員会の下部組織である、鉄骨梁貫通補強ワーキンググループを2018年1月に発足して、展開する予定である。
 
参考文献
1) 室井一夫、染谷俊介「BIM連携の最新技術紹介」2017年8月 一般社団法人 日本 建設業連合会
2) 室井一夫、三戸景資「設備と梁スリーブのBIMデータ連携 中間ファイルの共通フォーマット化」日本建築学会大会学術講演梗概集(九州)2016年8月 No.1503
3) 室井一夫、鹿島孝、金子智弥、安井好弘、大越潤、染谷俊介、三戸景資、佐脇宗生「BIM連携による鉄骨梁貫通孔補強の自動計算 その1~その3」日本建築学会大会学術講演梗概集(中国)2017年8月 No.1654~ No.1657
4) 熊谷和彦「KAPシステムの紹介(24)-BIM設備設計との連携」2014年片山技報 No.33
 
 

清水建設株式会社 生産技術本部 生産計画技術部 主査 室井 一夫

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2018
特集1「i-Construction×CIM」



 



buildingSMARTにおける国内外のオープンBIMへの挑戦

2018年7月13日

 

はじめに

国内外のBIM推進の活動が進展している中で、異業種分野間におけるBIMデータ連携が求められるようになってきている。設計段階におけるBIM活用が発展してきている状況下、施工分野におけるBIM活用も活発になってきている。施工現場とBIMデータが接点を持つことにより、MR(MixedReality: 複合現実)、IoT(Internet Of Things)、製品流通コードタグなどを含むさまざまな情報通信技術(ICT:Information and Communication Technology)とBIMの連携の可能性が高まってきている。これら多様な分野との情報連携を行うため、クラウド上で信頼性の高いBIMデータ連携を行う仕組みにも注目が高まり、CDE(Common Data Environment)、IFC(Industry Foundation Classes)モデルサーバ、ブロックチェーン技術などのテーマがbuildingSMARTの国際会議においても取り上げられるようになってきた。
 
本稿ではbuildingSMARTの国内外における活動内容を共有するため、buildingSMART Japanが行っているIFC検定において、2017 年度に新しく加わった鉄骨IFC検定の概要と、2017年10月末に英国ロンドンにおいて開催されたbuildingSMART International Summit(ロンドンサミット会)の全体像を以下に紹介したい。
 
 

鉄骨ファブから設備へのIFCデータ連携

2016 年、buildingSMART Japan構造設計小委員会に設置された鉄骨IFC検定WGにおいて、鉄骨IFCデータ連携をテーマに、BIMデータ連携仕様IDM(Information Delivery Manual)の検討が開始された。2017年度には、そのIDMを基に鉄骨ファブから設備へのIFCデータ連携を対象としたIFC検定が開始されることになった。
 
建築鉄骨の分野では、構造計算ソフトウェアにより柱・梁などの主架構の鉄骨データが生成され、多くの場合、鉄骨ファブの鉄骨CADへデータ連携して、接合部や仮設材などの付帯鉄骨を追加する。その鉄骨モデルを基に、設備会社において配管ルートや機器の計画を行い、梁のスリーブ要求などの情報を鉄骨ファブに伝達する。スリーブによって梁に補強が必要になる場合は補強メーカーに情報を渡して補強リングを決定する。通常、スリーブ位置調整は複数回のやり取りを経て決定され、最終的な鉄骨モデルデータが施工会社に渡り、外装材やエレベーターなどとの干渉チェックに用いられる。以上が、鉄骨分野のBIMデータ連携の全体像であるが、2017年度に実施される鉄骨IFC検定では、鉄骨ファブから設備会社へ主要な鉄骨部材および付帯鉄骨部材(デッキ受け)をIFCデータとして連携し、配管計画や干渉チェックを行うプロセスをBIMデータ連携シナリオとしている。
 
鉄骨IFC検定のために、鉄骨CADおよび設備CAD間におけるBIMデータ連携を基に、以下の情報を含む鉄骨MVD(Model View Definition)が策定された(図- 1)。
 

図-1 鉄骨MVD定義概要書




 
●鉄骨部材および構成要素の幾何形状情報、材質、寸法などの属性情報。
●鉄骨部材の開口情報。
●梁貫通可能領域の情報。
 
鉄骨分野における、より詳細な鉄骨部材、鉄骨梁貫通補強情報、設備側からのスリーブ要求情報、エレベーター分野との調整など、より広いBIMデータ連携に関しては今後検討を行い、IDM・MVD策定、ソフトウェアへの実装、IFC検定へ展開する予定である。
 
 

buildingSMARTロンドンサミット会議について

2017年10月末、buildingSMART International Summitが英国ロンドンで開催された。参加者はヨーロッパ地域だけでなく米国、日本、中国、韓国、オーストラリアなどから設計、施工、エンジニアリング、ソフトウェアデベロッパー、政府、大学関係者など、世界各地のBIM関係者が約400 名参集した。日本からは16名が参加した。
 

図-2  buildingSMARTロンドンサミット会議2017の全体会議風景




 
 

英国におけるBIM推進

今回の会議での基調演説では、英国政府主導のBIM導入計画“Digital Built Britain”について、英国政府側のBIM推進組織BIM Task Groupより英国におけるBIM推進ビジョン、現時点での状況についての講演が行われた(図-3)。
 

図-3 Digital Built Britainにおける情報フローと経済効果の循環イメージ(英国政府BIM Task Groupによる基調講演から)




 
BIMを導入することで、竣工後の国土空間情報のデジタル化を進め、英国の設備投資、運用投資およびアセットが生み出すサービス価値を向上させ、英国の競争力を強化させるという内容であった。これは、日本においてICTを最大限に活用し、サイバー空間と現実世界とを融合させた取り組みにより、「超スマート社会」を実現するというSociety5.0に近い概念であるといえる。英国では、政府主導のBIM Task Groupだけでなく、最近では民間におけるBIM推進組織として、buildingSMART英国支部が中心となり、住宅、高速道路、鉄道、水道、自治体、中小企業などを含むグループが英国BIM連盟(UK BIM Alliance,http://www.ukbimalliance.org/)を設立し、英国におけるBIM推進を行っていることが報告された。また英国におけるBIMの発注者、受注者などの関係者に必要となるBIMプロセスにおける要求事項が、BS-1192シリーズ(British Standards: 英国標準)においてBIMガイドラインとして定義されてきており、今後国内のBIM/CIMガイドライン整備にも参考となると考えている。
 
英国におけるBIM活用事例報告では、大規模な複合施設プロジェクトのBIM活用において、意匠、設備、構造など各分野のBIMモデルをbuildingSMARTが策定したBIM国際標準のIFC形式で重ね合わせをして、効率的に分野間モデルの調整をした例や、原子力発電所(Hinkley Point Cプロジェクト)施工BIM事例(数量積算、鉄筋BIM、溶接記録とBIM連携など)が紹介された。
 
ヨーロッパにおいては国単位のBIM推進活動の上位活動として、EUレベルにおけるBIM推進の枠組みがEUBIM Task Groupとして進められており、ドイツ、フィンランド、フランス、オランダ、ノルウェー、スペイン、英国、デンマークなどの政府系BIM推進機関の連携の状況、ISO(国際標準化機構)やCEN(欧州標準化委員会)などの標準機関との連携、EU BIM Handbook(EUにおけるBIMガイドライン)発行などについて報告があった。
 

図-4 EU BIM Task Groupによる基調講演資料から




 
 

buildingSMART Internationalの各Room

buildingSMART International(bSI)における活動内容を説明するため、現在どのような委員会活動が行われているのかを以下に紹介したい。Roomと呼ばれているのが、分野ごとに設立された委員会相当の活動単位である。
 
・Building Room:建築分野のBIMガイドライン、BIM教育、IDM、MVDなどの標準、ドキュメント、技術仕様などの検討、策定。
 
・Infrastructure Room:道路、橋梁、鉄道、トンネル、港湾分野へのIFC拡張。
 
・ Product Room:BIMに関連する用語、分類体系コードなどをデジタル辞書フレームワークbSDD(buildingSMART Data Dictionary)によりオントロジー(概念体系)として扱うことでBIMライブラリなどへ活用する運用手法の検討。
 
・Regulatory Room:建築行政、建築申請分野へのBIM活用ガイドライン策定や、自動チェックシステムの研究。
 
・Technical Room:IFC拡張・メンテナンス、IFC開発ツールキット、Linked Dataなど新領域の技術をIFC活用へ連携する研究。
 
・Construction Room:施工分野におけるBIM活用の事例研究、建設現場におけるICT活用、AR(拡張現実)やMR(複合現実)とBIMの連携、BIM-IoT連携、4D-BIM、BIMデータ連携に関するCDEなどに関する課題把握、協調領域の検討。本サミットでは製品流通コードの国際規格の標準化、普及を進めているGS1(日本では一般財団法人 流通システム開発センター)と、建設サプライチェーンにおけるBIMと流通コードの連携の可能性について意見交換を行った。
 
・Airport Room:空港分野の資産管理、運用管理の視点から空港施設ライフサイクルへのBIM活用に必要なIDM 、MVD、ガイドラインなどの策定。
 
Infrastructure Room においては、これまでに行われてきた道路、橋梁、鉄道分野に加え、トンネル、港湾施設分野へのIFC拡張が開始されることになった(図-5)。
 

図-5 道路・橋梁・鉄道に加えてトンネルと港湾施設分野へのIFC拡張




 
特に鉄道、港湾施設分野のIFC標準化には、中国のプレゼンスが高まっている。国内のBIM・CIMの展開を一層活性化させる必要性が高まってきている。
 
また、bSI国際戦略諮問委員会(SAC: Strategic Advisory Council)において、今回中国からCCCC(China Communications construction company Ltd.: 中国交通建設)がゲストとして招かれた。中国政府の一帯一路政策、高速鉄道輸出などの政策と戦略的にBIMの標準化活動を連携しており、今後の中国国内の航空旅客数増大による空港建設需要などのポテンシャルを背景に、BIMを革新的技術開発テーマとして位置付けているとの報告があった。
 
建設現場や維持管理分野におけるBIMとIoT、製品流通コードなどとの連携、建築確認プロセスにおけるBIMとブロックチェーン技術の可能性なども討議され、今後のサミットにおいても継続的にこれらのテーマを取り上げていくことが決議された。
 
 

BIM個人能力認証開始

bSIでは、国際的に共通なオープンなBIM個人能力認証の仕組みを確立するため、2016 年秋に準備WGを結成して下記項目を目的に準備活動を進めてきた。
 
●BIMの教育・トレーニングコンテンツの標準化と提供
●教育・トレーニング機関への支援とBIM教育・トレーニングコース認定
● テストおよび個人能力認証(certification)
 
これまでの活動において、BIMの学習成果基準(LOF: Learning Outcomes Framework)が2017年春に策定され、その後オンラインテスト問題データベースのベータ版策定を経て、ドイツ、ノルウェー、英国、スペイン、カナダ、スイス支部などが、BIM個人能力認証を開始する段階まで進展したことが、本サミットにおいて報告された。現在のLOFはフェーズ1段階として、BIMに関する基本知識の理解を目的とした基本編の位置付けで、以下の内容を範囲としている。
 
●BIMについての基本的な用語・背景知識の理解
●BIMによるプロジェクト推進の利点に関する理解
●BIMプロセスにおける情報フロー計画の必要性を理解
●オープンで相互運用可能なソリューションの必要性に関する理解
●BIMプロセスに取り組むために必要な組織の能力について
 
今後フェーズ2として、BIM Manager,BIM Coordinatorなどの応用学習レベルの認証の仕組みを検討する予定である。
 

図-6 buildingSMARTで検証中のオンラインBIM個人能力テストサイト




 
 

building SMART Awardについて

bSIでは、IFC 、BCF( BIM Collaboration Format)などbuildingSMART標準を活用したオープンBIMの普及促進を目的に、2014 年からbuildingSMART Awardを年一回実施している。春に応募を開始して、秋のサミット国際会議において設計、施工、維持運営、学生の4部門の審査発表、表彰式を行う形式である。2017年度は、北米から5、ヨーロッパから13、アジアから3の計21の応募があり、7つの応募チームにAwardが授与された。Awardの判定は、オープンなBIM標準であるIFC, BCF, COBie(Construction Operations Building Information Exchange), bSDD,IDM,MVDなどの活用、およびユースケース(空間調整、数量積算、コスト分析、エネルギー分析、環境シミュレーション、建築確認、4D/5D-BIM、維持管理など)の状況などが総合的に審査される。
 
例えば、今回の施工部門Award(図-7)では、IFCにより建築・構造・設備などの分野モデル間の調整が行われ、課題管理にはBCF、情報抽出にはCOBieが使用された点が評価へとつながった。また、学生部門Awardでは、ドローンによって取得された建設現場の画像データから、IFCデータで表現された4D-BIMデータに対して現時点での進捗状況を自動的に更新させて4D-BIMを自動化させる手法提案が評価された(図-8)。
 

図-7 buildingSMART Award 2017施工BIM部門Award(病院建設プロジェクト)




 

図-8 buildingSMART Award 2017学生部門技術賞アワード(ドローンによる4D-BIM自動化手法)




 
 

おわりに

本稿では、現在buildingSMART Japanが進めている鉄骨分野におけるIFC検定の概要、および英国で最近開催されたbuildingSMARTサミット会議の概要を紹介した。
 
2018 年には、buildingSMARTサミット会議がフランス・パリ(3 月26日~29日)および東京(10月16日~ 19日)において開催予定となっている。特に東京サミット会議においては、国内外から数多くのBIM関係者が参集することが予想され、日本からの情報発信やネットワーキングの良い機会となる。また、buildingSMART International Awardには、これまで日本からの応募、入賞はまだないため、2018 年春のAward候補募集開始までには、日本からの参加、および審査員の推薦などを積極的に進める働きかけを行っていく。
 
buildingSMART Japanでは、今回のサミットからのアウトプットを基に、以下の活動へとつなげていく予定である。
 
・BIM個人能力認証への対応
・bSIが進めているIFC4以降のIFCソフトウェア認証への対応
・buildingSMART International東京サミット2018への日本からの情報発信準備
・Infrastructure Roomにおける道路・橋梁・鉄道・トンネル・港湾分野へのIFC拡張プロジェクトへ対応するため、
 国内に設立された国際土木委員会とのコラボレーション強化
・BIMとIoT,AI、ブロックチェーン,製品流通コードなどの連携を進めるため国内の関連活動とのネットワーク構築
 
buildingSMART Jap anでは、英国のBIM Task GroupやUK BIM Allianceのように、国内外の関連団体とBIM普及推進の連携を進めていく体制を強化していきたいと考えている。これらの活動の原動力となっているbuildingSMART Japanの各小委員会、WG等へ、ご興味のある方はぜひ参加していただきたい。
 
参考文献
●buildingSMART Professional Certification(BIM個人能力認証):
https://www.buildingsmart.org/compliance/professional-certification/
●buildingSMARTAwards2017:
https://www.buildingsmart.org/news/bsi-awards-2017/
●buildingSMART International Standards Summit,Tokyo:
https://www.buildingsmart.org/event/international-standards-summit-tokyo/
 
 

一般社団法人 buildingSMART Japan 技術統合委員会 委員長
buildingSMART Fellow
 足達 嘉信 博士(工学)

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2018
特集2「BIM」



 



鹿島建設における生産性向上へ向けた取り組み

2018年7月9日

 

はじめに

日建連の推計によると、建設業では今後10年以内に技能労働者が100万人規模で離職する見通しである。そのため、若者を中心として新たな技能労働者を確保するとともに、生産性を向上させることが喫緊の課題となっている。
 
当社では、2017年4月に「CIM推進室」と「自動化施工推進室」を新設し、さらなる生産性向上に取り組んでいる。本稿では、CIMや施工管理ツールの活用推進を中心に当社における生産性向上への取り組みについて紹介する。
 
 

CIMの活用推進

当社では1990年代から3次元CADを施工計画検討、設計変更協議、品質管理および出来形管理に利活用してきた実績があるが、CADオペレーターに依存する体制となっており、実際に検討する作業に時間を要する状況となっていた。そこで、施工計画検討や施工管理における利活用は、社員自らがCADを操作することで、速やかに結論を導ける体制を構築することを目的に、本社主導による工事入手段階での「CIM初期モデル」の提供と、社員のCIMスキル向上を図る「CIM教育システム」を導入した。
 
CIM初期モデルについては、現場における入手時検討会や生産性向上検討会などで活用されている(写真-1)。
 

写真-1 生産性向上検討会でのCIM初期モデル活用




 
CIM教育については、集合教育による時間的拘束を避けるために、現場または支店から全社標準の「Skype forBusiness」を利用した遠隔教育としている。また、現場のPC全てが高機能というわけではないため、誰でもCIMソフトを快適に利用できるよう、VDI(仮想デスクトップ)を利用した環境を整備している(図- 1)。
 

図-1 VDIとSkypeによるCIM教育のイメージ




 
 
カリキュラムは、施工計画検討用にInfraWorks360、SketchUp Pro、Navisworks、土工事用にCivil3D、構造物用にRevitを教育するコースを用意し、半日単位で選択できるカフェテリア形式としているため、現場の工種や工程に応じた組み合わせで受講できる。
 
さらに、施工計画に使える約350点の3D部品を用意し展開している。部品は、建機、設備、汎用の3項目から構成されており、建機ではバックホウ、クレーンやブルドーザー、設備では足場材・矢板、防護柵・ガードレール、測量・計測、汎用では作業員や乗り物などを用意している(図-2)。
 

図-2 3D部品サンプル例




 
 

現場向け施工管理ツールの展開

当社土木部門では、CIMに工程とコストを連携させて施工管理できる「5D-CIM」の構築を目指している。原価管理については従来から標準ツールにて実施してきたが、2017 年4 月から工程管理についても標準ツールを定めて全社に展開している。
 
また、現場における重機の稼働や作業員の活動も含めた作業内容については、いわゆる「IoTプラットフォーム」を一部現場にて構築して情報の収集・蓄積・分析を始めている。ただし、「IoTプラットフォーム」を全現場に適用していくには時間を要することから、当面は「作業間連絡調整システム」を全社標準化し、作業内容や重機稼働状況を入力・管理することで、工種や部位ごとの歩掛情報を収集・蓄積・分析し、次工程や今後の同種工事の生産性向上につなげている。
 
このように、従来は現場によって利用しているツールが異なっていたため、施工計画や実績のデータが一現場に閉じてしまっていたが、システムを統一することで、データを一元管理し、生産性に関するデータ分析や分析結果を基にしたフィードバックも可能となっている。
 
 

UAVの活用

当社は2015年に、UAVによる写真測量を利用して高精度な3次元図面を短時間で作成し、土量管理、工事の進捗管理に利用するシステムを開発し大規模造成工事に初適用した。本システムによる測量は、光波測量、地上3Dレーザー測量と比較して、所要時間、測定にかかる人数を大幅に削減でき、費用についても、光波測量の5分の1以下となることが分かった(図- 3)。
 

図-3 各測量方法の所要時間、概算費用比較




 
現在では、造成工事だけでなく、ダムや橋梁などさまざまな工種で幅広くUAVを活用している。
 
 

機械化・自動化・見える化の推進

建設工事は、元請による全体的な施工管理の下、協力会社による分業体制で行うことが一般的となっているため、どうしても施工行為そのものの生産性向上にはつながりにくい側面があった。当社では、土木工事の「省人化」だけでなく、「作業分析による施工全体の合理化」を図り、施工における生産システムそのものをより合理的にすることを目的に「機械化・自動化・見える化」を推進している。
 
当社が開発した次世代建設生産システム「A4CSEL」(クワッドアクセル)は、汎用の建設機械に計測機器や制御用PCを搭載することにより建設機械の自動運転を実現したもので、一人で複数の自動化重機を同時に稼働させる新たなコンセプトを実現した世界初の技術である(図-4)。
 

図-4 クワッドアクセルのフィルダムでの適用イメージ




 
2015 年に五ケ山ダム建設工事で自動振動ローラーを実用化させるとともに自動ブルドーザーの実証実験を行い、2017年には大分川ダム建設工事において、ダンプトラックの導入試験を行い、運搬・荷下ろしから、ブルドーザーによる巻き出し、振動ローラーによる転圧まで、一連の土工作業の自動化の流れを確立した。2017年9月には、さまざまな開発技術を検証する実験場として「西湘実験フィールド」を整備し、自動化システムの精度をさらに高めていく方針である(写真-2)。
 

写真-2 自動ダンプ、自動ブルドーザー、自動振動ローラーの連動作業




 
将来的には、インターフェースが簡素化されたCIMモデルを用いて容易に作業計画、作業指示を作成し、自動化された機械をコントロールするとともに、機械から稼働状況・出来形・品質データを収集することで施工方法の評価を行い、建設工事全体の最適化を図っていく。
 
 

鹿島建設株式会社 土木管理本部 土木技術部CIM推進室 室長 後閑 淳司
次長 森本 直樹

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2018
特集1「i-Construction×CIM」



 



施工BIMの今-横森製作所のBIM-

2018年7月5日

 

はじめに

建物ごとに一品生産となる鉄骨階段の作図から製作の効率化を図るために開発した、鉄骨階段専門CADシステムの開発とその背景、専門工事会社におけるBIM活用の取り組みについて紹介する。
 
 

鉄骨階段専門CADシステムの変遷

当社は1993年より8年間、自社開発した鉄骨階段専門の2DCADシステムを使用した後、2001年よりAutoCADをプラットフォームとした自社開発のCADシステムを現在まで使用している。
 
このシステムはAutoCADの3D機能を利用して、鉄骨階段モデルを構築した後に、施工図、工作図(部材加工図)を2Dに投影して出力する、いわば現在のBIMに近い概念のシステムを使って、鉄骨階段、階段用受け鉄骨、手すりという各製品の作図を行ってきた。
 
2017年後半からは、ARCHICADをプラットフォームにした新システムの運用を開始した。
 
※以降Aut oCADのシステムを「旧システム」、ARCHICADのシステムを「新システム」と表現。
 

図-1 鉄骨階段専門CADの変遷




 

システム開発の背景

2DCADの時代から作図精度の向上および効率化と、製作工場の加工機械とCADから出力されるNCデータ連携を行い、作図と製造の生産性向上を図ってきた。しかし2DCADである以上、平面図、立面図、その他各種詳細図の編集は、線の1本1本を手動で行うため、施工図、工作図で図面間の不整合が多く発生した。また階段は必ず勾配が絡んでくるが、階段に絡む干渉物との回避や、ヘッドクリア確保などの確認も複雑になる。
 
旧システムではパラメータによる階段3Dモデルの自動組み上げ機能や、部品同士の干渉チェック機能を実装し、作図の段階で干渉を確認できるようにした。また工作図は、施工図との不整合や形状などの間違いが製品の誤作に直結するため、3Dモデルから工作図を自動で出力し、階段の骨格となるササラ桁からボルト1本まで正確に出力できるシステムを開発した。
 

図-2 鉄骨階段モデルの自動組み上げ




 

新システムの開発

旧システムは、鉄骨階段モデル編集に必要な機能を全てカスタマイズにより実装している。これまで最新のAutoCADへ載せ替えをしなくてもそれほど不都合がなかったことと、カスタマイズ機能の多さから、載せ替えには時間とコストがかかることもあり、プラットフォームはAutoCADのバージョン2006のまま運用してきた。しかし2015 年頃から最新のOSでは動作が不安定になる現象や、32ビットのパソコンでなければ動作しないといった問題が徐々に発生してきたため、最新環境で動作するシステムの開発に至った。プラットフォームの選定を行い、建築で利用されているBIMツールの中からARCHICADを選択し、新たな鉄骨階段BIM-CADシステムの開発を行った。
 
建築用BIMツールにはあらかじめフロア(階)の概念があること、建築用の作図機能や3D部品が実装されているので、その部分をそのまま利用できるというメリットがある。また設計事務所、ゼネコンとは、IFC形式でBIMデータの連携が行える部分も選定の理由である。
 

図-3 編集中のモデル




 
作図上重要となるルールは「モデルを使って作図をする」ということである。3Dなのでモデルを使うことがそもそも当たり前だが、客先とのやり取りで図面修正を行う際に、操作に長けていないスタッフが、2D出力された図面だけを修正してしまうということがある。この場合、承認の段階で2D図面は最新状態だが、モデルは古い状態のままとなる。しかし工作図作業ではモデルが必要になるため、社内ではモデル修正から工作図だけを行う専任者が生まれる。そこで承認後の2D施工図面を見てモデルを後から修正するという無駄な作業が発生する。また施工図担当者と工作図専任者間のやりとりで、伝達漏れや、工作図専任者の図面理解不足によるミスが発生する。
 
新システムはそれらを踏まえ、編集作業の軽減や自動化を多く実装し、作図者の負担を減らせるような機能を取り入れた。
 
また製作工場からの要求で、工作図に手動で加筆する項目が多く発生していたが、この部分についても自動化を図り加筆作業を軽減させた。
 
ただしシステムが高機能でも、正しい方法で利用しなければ効果は出ないため、現在は社内の操作教育と、運用方法の改善を並行して進めている。
 

図-4 鉄骨階段施工図と工作図




 

製造連携

製作工場ではCADから出力したNCデータによる加工を行っている。NCデータは厚板の切断と孔明けを行う厚板加工ライン、踏板と踊場板などを製作する薄板加工ライン、階段受け鉄骨などの型鋼材加工ラインといった部分で使用している。3Dモデルを直接取り込める機械も出ているが、その中で手すり製作工場では3Dモデルを取り込める3Dレーザー加工機を導入している。現在加工データは手入力しているが、今後は新システムからモデルデータを渡し、複雑な形状の部材加工を行えるようにする準備を進めている。
 

図-5 工場の踏板加工ライン




 

今後の課題と展望

社外とのBIM連携として、鉄骨製作業者(FAB)のモデルを取り込んで、鉄骨階段モデルの編集に利用したいと考えている。現在は鉄骨階段が取り合う部分は、2Dの構造図、鉄骨図面を参照して、受け鉄骨のモデルを当社のCADで配置し、ササラ桁と梁の接続部の取り合いを、階段モデルで編集を行っている。
 
将来FABなどのモデルデータが利用できれば、構造図、鉄骨図の読み違い防止と、階段を受ける鉄骨モデルの配置を省くことが可能になる。
 
その他では、設計事務所やゼネコンが使用している、汎用BIMツールで作成されたモデルから、階段オブジェクトの情報を取り込んで、当社の鉄骨階段モデル構築に必要なパラメータ情報(階段の各部寸法等)をインポートしてモデルの自動組み上げのようなことも思案している。
 
BIMを活用して作業の省力化と、製品の品質向上につなげていきたいと考えている。
 

図-6 屋外階段モデル




 
 
 

株式会社 横森製作所
技術部設計技術課 課長 島崎 建輔

 
 
【出典】


建設ITガイド 2018
特集1「i-Construction×CIM」



 



CIM導入ガイドラインへの対応-ゼネコン編-

2018年7月2日

 

CIMガイドラインの使い方

平成24年度から開始したCIM試行業務・試行工事での知見を基に平成29年3月に「CIM導入ガイドライン(案)」(以下、「ガイドライン」)が策定された。CIMは試行ではなく活用段階として取り組んでいくべき今後の段階において、ガイドラインはその羅針盤となる。
 
まだ発表されて1年未満であるが、ガイドライン公開の意味はどのくらいあり、また、どのくらい成果が上がっているのであろうか。まだまだ未知数のガイドラインに皆さん期待を高く持っているが、そもそもガイドラインを評価するのは、実際に業務を行っているわれわれである。
 
ガイドラインが出るまでは、何を誰がどのように行うとCIMに取り組めるのかという情報が少なく、また、CIMへの取り組みについても、高度な取り組みが必要であるという印象が強すぎてCIM普及促進に課題があった。
 
今までCIMの施工段階における効果を工種ごとにとりまとめてきたCIM活用事例を、日本建設業連合会(以下、日建連)にてとりまとめを行い公開してきた経緯もあり、積極的に日建連と建設コンサルタンツ協会とで協力しながら、今回のガイドラインを構築してきた。
 
ガイドラインの本来の目的は、建設プロセス全体としてのマネジメントを3次元形状やそれに付随する属性をどのように使うのか、ということが書かれるべきバイブルであると思うが、まだそのレベルまでガイドラインが成熟したものにはなっていない。なので、このガイドラインを見たとしても、具体的にどうするかという観点で、読み込める状況にはなっていないが、だからといってダメ出しをするのではなく、積極的にガイドラインを活用してほしい。
 
まだまだ荒削りのガイドラインではあるが、これに併せて、日建連で平成26年の初版を皮切りに、3年継続して出している施工CIM事例集を見てもらうことにより、設計段階からのモデルはどのようなものが届き、また施工での活用事例を多く参考にしながら、施工管理ツールとして利用できるように読者各位が育てていってほしいと思う。
 

図-1 最新の2017施工CIM事例集※




※施工CIM事例集には施工段階における各工種ごとのガイドラインに合わせた施工事例が掲載されているので、ぜひ参照していただきたい
2015施工CIM事例集(http://www.nikkenren.com/publication/detail.html?ci=216
2016施工CIM事例集(http://www.nikkenren.com/publication/detail.html?ci=239
 
 

コンサルと施工会社のコラボの重要

ガイドラインで重要なポイントは前工程からどのような情報がきて、次の工程にどのように引き継ぐかということである。
 
今回のガイドラインはまだ初版ということもあり情報を整理するのがやっとという印象であるが、ガイドラインに記載された内容をベースにして、建設コンサルと施工会社で情報を受け渡す場合の使い方を検討した事例があるので、紹介したい。
 

全ての工種を対象に行うには時間がかかるため、トンネルを中心に検討してみた。
 

実案件での事例ではないが、ガイドラインをベースに進めてみたトンネル設計から施工への利用が具体的に書かれたものはこれが最初だと思われる。
 

コンサルタントがどのようにガイドラインを理解して、モデルを作成してくるのか、またそれを施工会社はどのように利用できるのかを含め、読み進めていってほしい。
 

以下「設計段階で作成すべきCIMモデル(建設コンサルとしてのモデル作成までの流れとその考え方)」「設計段階のモデルを施工会社が受け取りそれを活用する方法」の2 項目は2017年12月5日に土木学会で行われた、第35回建設マネジメント問題に関する研究発表・討論会で発表された「CIM導入ガイドライン(案)に準じた実行性の高いCIMモデル作成方法に関する一考察」の抜粋である。
 

本考察は、建設技術研究所の藤田さんと大林組の杉浦の連名で発表したものである。
 
 

設計段階で作成すべきCIMモデル(建設コンサルとしてのモデル作成までの流れとその考え方)

山岳トンネルを対象とした設計段階でCIMを活用する目的は、関係者協議や、坑門工形式検討・位置検討による設計品質の確保などが考えられる。ただし、これらはその用途に合った詳細度でモデル化を行う必要があるとともに、設定段階のもので、設計成果の最終形と異なる可能性もある。そのため、これら検討で用いたモデル全てを施工工程に引き継ぐことは必ずしも効率化につながらないものと考えられる。ここでは、設計成果に合致しており、施工段階・維持管理段階で活用することを主目的として、ガイドラインに基づいたCIMモデルの作成方法について検討することを目的とする。
 

(1)CIMモデル作成ツール
 

今回のCIMモデル作成には、表-1に示すツールを用いた。
 



 
(2)3次元モデルの作成方針
 
線形モデル:線形モデルは統合モデルで対象位置を把握するため、測点記号・番号と共に表示した。なお、線形モデルはトンネル内で確認するために道路中心に配置したものと、地形やトンネル外形等全体で確認するためにトンネルモデルの下に配置した2つの線形モデルを併用した(図-2)。
 
 

図-2 2つの線形モデル




 
地形モデル:一般部は国土地理院・基盤地図情報(数値標高モデル)5mを用いた。ただし、坑門工周辺については実測地形平面図のデータを3次元モデル化するものとした。

 
地質モデル:トンネル設計では地質縦断図を作成し支保パターンの区分の根拠として示している。本モデルではこれを道路中心の縦断曲面に貼り合わせたモデルを作成した。
 
また、設計段階から施工段階に引き継ぐべき情報として断層位置が挙げられる。この表現として、トンネル頂点部にキャラクタを配置した。これにより視覚的に対象位置が把握できるとともに、関連する属性情報を付与することが可能となる。また、設計段階の想定地層縦断と現場状況を比較することで設計変更の要否判断に活用することが可能と考えられる(図-3)。
 

図-3 地質縦断モデルおよび本体モデル




 
本体モデル:本体工のモデル化はトンネル設計補助システムVer5.23(エムティシー社)を用いた。トンネル設計で一般的に用いているツールであり、ソリッドモデルにて正確なトンネル断面形状を保持した3次元モデルの作成が可能である。本ツールはCIMモデル作成の省力化とともにIFCおよびDWGへの出力ができる。なお、支保パターン区分ごとにモデルを分割し着色した。
 
施設箱抜きモデル:施設の箱抜きについては設備配置が施工段階で変更になることが多いため、省力化のためにトンネル本体モデル内に反映させず、対象位置の前面に配置した。なお、モデル化は箱抜き形状をソリッドで作成する(図-4)
 

図-4 施設箱抜きモデル




 
 
(3)属性情報について
 
施工段階においては現場でCIMモデルを活用する際に統合モデルを活用すると想定されるため、今回は統合モデルをNavisWorks(Autodesk社)で作成し、Navis+(CTC社)を用いて属性情報を付与した。
 
ガイドラインでは属性情報の付与方法は「3次元モデルから外部参照する」方法を原則としている。また、トンネル編の設計段階の属性情報は支保パターン、ロックボルト、補助工法などを付与するものとしている。これらはトンネル設計補助システムからCSV形式で出力することが可能である。このCSVファイルによりNavis+を用いて統合モデル上から属性情報を確認可能にした。
 
ただし、支保パターンや補助工法は数値で表示されても施工者が理解することが難しいため、トンネル内空断面を示す標準断面図とロックボルトや補助工法等を示す支保パターン図のURLを付与した(図-5)。
 

図-5 トンネル本体の属性情報




 
 

設計段階のモデルを施工会社が受け取りそれを活用する方法

施工段階でのCIM活用はCIM試行工事のアンケートからも評価されているとおり、発注者のみならず施工関係者間の合意形成や、事前打合せなどによる手戻り防止での効果が確認されている。
 
しかし、これらの効果についてはCIMの定義である「3次元形状」+「属性」のうち、「3次元形状」を利用した効果がほとんどであり、「属性」を効果的に利用したものは少ない。
 
一般的に利用される属性である「工程」については、今回の対象としたトンネルでは効果があまりなく、「コスト」についても施工段階で使うことのメリットがあまりない。
 
NATMトンネルにおいては、地山の変状管理が重要であり、通常管理としてA計測を実施している。今回このA計測の計測データを「管理属性」として利用することにより、従来の地山の挙動を管理測点のグラフによる管理から、3次元形状に計測状況を表示し施工管理に役立てる方法に変更した(図-6)。
 

図-6 計測情報を属性情報として利用




 
ここで重要なポイントは、管理する単位が設計段階と異なる要素単位であるという点である。施工管理では、支保工ごとに計測管理や切羽観察管理を行うが、設計段階では支保パターンごとに分割している。今回、設計段階で与えられた属性情報の「支保パターン」、「ロックボルト」、「補助工法等」についても支保パターンごとの属性として出力されているため、そのまま施工段階の属性として利用することはできない。
 
そのため、設計段階で付与した属性はあくまでも地山の性質を把握する参考情報として利用し、実際の施工段階においては地山の状況を判断する変位や切羽などを確認しながら、支保ごとに判断していくことがトンネルでは重要である(図-7)。
 

図-7 支保単位の情報を表示




 
なお、ここでいう「施工段階」とはトンネル本体構造物の構築とともに、電気設備や舗装といったトンネル供用までの工事も含まれる。建設会社がトンネル本体構造物を竣工・引き渡した後で電気設備や舗装工事が行われるが、設計段階で計画されている電気設備工事を行う場所等は、施工段階で覆工コンクリート打設割の状況に応じて変更が余儀なくされることが多い。
 
そこで、電気設備などの情報を施工段階から引き渡すものとして次のようなものを考えた(図-8)。
 

図-8 電気設備情報を属性として表示




 
このような取り組みが次の工事のために引き継ぐ際に重要だと考えるが、施工会社も電気設備会社が工事段階で必要な情報が不明であることが多いため、今後ガイドラインの内容を拡充させるために重要である。
 
現在この取り組みを拡充させるために、実現場で実施中である。
 
 

維持管理段階からのCIMモデルに対する要望

建設コンサルタントは点検や補修・補強設計、長寿命化計画策定など、多くの面で維持管理に携わっている。この立場での知見を基に維持管理段階で活用するためのCIMモデルに対する要望を検証してもらった。
 
山岳トンネルは断層位置や湧水の多い箇所など地質状況が変状に大きく影響するため、維持管理段階でも大変有益な情報である。施工段階で修正・作成した地質縦断図をトンネル中心に沿って配置し、断層や湧水位置を明示することが望ましい。
 

トンネル本体では、補助工法の種類と範囲や、不可視部分のコンクリート打ち継ぎ目位置が必要となる。インバートや道路空間内の内装板が配置されている所など点検時に確認できない箇所の精度の向上につながる。
 
これらの情報の3次元可視化によって点検時に留意すべき箇所の把握や、変状に対する補修・補強設計時に原因を踏まえた適切な対策工法や補修範囲の設定につながるものと期待される。
 

このように設計段階から施工を意識し、また点検や維持管理を見越したモデルの構築・運用を考えて進めると、「使える」モデルを作成することができ、また、それに付随する属性を有効に利用するために、CIMをツールとして使えるような取り組みが生まれる。これがガイドラインの本当の使い方だと思う。
 
 

ガイドラインに対する提案

(1)明確な活用場面の掲示
 
今回のコンサルタントとの取り組みでは、施工者の視点および維持管理の視点から、CIMを活用する上で必要となるモデルおよび属性情報について検討を行った。具体的な活用方法を意識することで具体的なCIMモデルへの要望が明確になることから、ガイドラインにおいても効果が見込める活用方法を明示することで、具体のモデル化や属性情報およびその付与方法が明確化すると考えられる。
 
他の工種においても、今回活用したトンネル設計補助システムのようなモデル化のツール開発が望まれるが、活用方法を明示することで、このようなモデル化ツールの開発につながるものと考えられる。
 
(2)活用方法を踏まえたファイル形式
 
現状のガイドラインではデータ交換のために、IFCとともにオリジナルファイル(今回であればDWG)の提出を求めている。現時点ではIFCにおけるデータ交換において、実際のトンネルモデルを施工で活用するための要件を満たしておらず、オリジナルファイルでの交換となった。今後のことを考えるとIFCによる形状と属性も交換するファイル形式を現時点で採用し進めていくのが筋であろうが、現段階では実現困難な状況である。まずはガイドラインに示される各段階の活用例を具現化できるモデルを使い分け、効率化を優先すべきと考える。
 
 

おわりに

ガイドラインがないと何もできないという声が多く聞こえ、作成されればされたで、この内容では分からない、不備が多いという言葉もあちこちから聞かれる。
 
物事の始まりはこのような不明不満から始まることは往々にしてあるが、いまそのような不満を言うよりも、各社が各社の考え方で実施し、ガイドラインを自社で実施できるガイドラインに育てる方が先である。いち早くガイドラインを施工各社が自社の業務に具体的に落とし込み、コンサルタントや発注者との会話を行うためのバイブルとして活用できるようになっていただきたい。生産性向上のために。皆さんの検討を祈り終えることにする。
 
 


一般社団法人 日本建設業連合会
土木本部 インフラ再生委員会技術部会 杉浦 伸哉
(株式会社 大林組)

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2018
特集1「i-Construction×CIM」



 



次の10件
 

新製品ニュース

PDFなど多種の画像、CADデータの表示・印刷・変換に対応「Croscope」(クロスコープ)の新バージョンPDFなど多種の画像、CADデータの表示・印刷・変換に対応「Croscope」(クロスコープ)の新バージョン


建設ITガイド 電子書籍 2022版
建設ITガイド2022のご購入はこちら

サイト内検索

掲載メーカー様ログインページ


おすすめ新着記事

 



  掲載をご希望の方へ


  土木・建築資材・工法カタログ請求サイト

  けんせつPlaza

  積算資料ポケット版WEB

  BookけんせつPlaza

  建設マネジメント技術

  一般財団法人 経済調査会