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2018年7月15日
はじめに施工BIMの中で活用事例が多いのは鉄骨と設備で、干渉チェックと納まり確認である 1)。ところが鉄骨は鉄骨専用CAD、設備は設備専用CADで描かれるため、合成した統合モデルで干渉や納まりを検討するには、IFCが広く用いられている。 ![]() 表-1 梁貫通孔要求CSVに対応している各種ツール 一方で、設備側からの梁貫通孔要求に対する成立性検討の作業は、大量の梁貫通孔要求図を基に一つずつ鉄骨CADへ入力する単調な入力を強いられる。そこで、データ連携により単純作業にかかる労力を大幅に低減させるべく、設備専用CADと鉄骨専用CADや汎用BIMツールを結ぶ「設備-梁貫通孔連携中間ファイル」を定義 2)して展開している。 さらに既製リング補強計算ソフトへの入力まで連携させると、梁貫通要求に対して即座に可否計算ができることになるが、計算ソフトはBIMに対応していない。そこで、鉄骨梁貫通孔既製リング補強の成立性検討ソフトを結ぶ中間ファイルの定義も行った。 本報では、データ連携による新しい業務の進め方(図-1)について解説する。 ![]() 図-1 BIMを活用した新しい鉄骨と設備の調整業務の流れ 鉄骨BIMの作成要領鉄骨BIMは、構造計算ファイルから変換したり、構造設計図の元になった設計BIMを使った例がみられるが、設備との干渉や納まり調整に活用する場合、柱・大梁・ブレースという主架構だけでは十分とはいえない。小梁位置を決定した上で接合部、ガセットプレート、火打材、方杖材、スティフナー、フランジ拡幅、デッキ受材を配置し、正確に表現することにより、現場で手戻りがなくなる干渉チェックが可能となる(図-2、図-3)と言っても過言ではない。鉄骨BIM作成には細部にわたる知識と経験が必要なので、構造計算ファイルや設計BIMをベースにしても、鉄骨ファブリケーターの技術を投入しなければならない。 ![]() 図-2 設備との干渉チェック・納まり調整に用いる鉄骨モデルの例 ![]() 図-3 鉄骨を正確に表現した精度の高い干渉チェックの事例 鉄骨BIMからIFCを出力して設備サブコンに提供するのであるが、構造設計者が定める梁貫通孔の設置可否ゾーンにより梁を色分けしたIFCが出力できる機能はまだ認知度が低いようである。IFCを読み込んだ設備専用CAD上にも設置可否ゾーンが明示されるため、初回の調整時点から、設置不可領域に梁貫通孔が要求されるケースがなくなる(図-4)。 ![]() 図-4 鉄骨モデルのIFCに梁貫通孔設置可否ゾーンを表示し、不可ゾーンを避けた納まり確認 設備BIMの作成要領設備専用CADに正確に表現された鉄骨をIFCで参照し、鉄骨と3次元上の原点(共通原点)を合わせて、鉄骨と干渉しないようにダクト・配管・ケーブルトレイ等の配置をする。フロアごとに設備BIMを作成する場合には、フロアごとの原点と共通原点の関係に常に注意しておかなければならない。 ![]() 図-5 複数の設備配管をまとめて、一つの梁貫通孔を要求している例 設備-貫通孔連携中間ファイル「設備-梁貫通孔連携中間ファイル」は、将来IFCになるまでの暫定的な位置付けとして、カンマで区切られたテキストデータ(CSVファイル)である。 ![]() 表-2 設備-梁貫通孔連携中間ファイルの諸元 ![]() 表-3 CAD上で3次元原点を定義して、見下げで作図した場合のデータ例 ![]() 表-4 CAD上で2次元原点を定義して、見上げで作図した場合のデータ例 ![]() 図-6 建物の共通原点と設備CADでのフロア別原点のイメージ なお、「設備-梁貫通孔連携中間ファイル」は鉄筋コンクリート造の梁に設ける矩形の梁貫通孔要求にも対応させているが、鉄骨梁の場合は隅角部の応力集中を避けるため、円形の梁貫通孔にする。設備側から角型のダクトを貫通させる場合でも包絡する円形貫通孔とするので、注意が必要である。 梁貫通孔要求を鉄骨専用CADへ「設備-梁貫通孔連携中間ファイル」を読み込んだ鉄骨専用CADは、鉄骨BIM上に梁貫通孔を「仮配置」する。これは設備側からの一方的な要求であって構造的な成立性が検討されていないからである。 ![]() 図-7 1フロア5,000㎡規模の事務所ビルの天井内設備と鉄骨の調整 従来は、設備サブコンは梁貫通孔要求図(スリーブ要求図)を設備専用CADにて図面出力し、設計者・監理者まで打合図を回覧していた。新しい業務の流れでは、設備専用CADから「設備-貫通孔連携中間ファイル」を鉄骨側に渡せば鉄骨CAD上で仮配置される。 設計者と監理者の理解が得られれば、最終形だけ作図して承認図とする省力化が可能となる。 梁貫通孔の構造成立性検討仮配置した貫通孔が補強を含めて構造的に成立するかどうかを、貫通孔の径、位置、間隔と鉄骨形状の関係で検討する「仕様規定」と、梁に作用する長期荷重、短期荷重と梁断面性能である終局耐力時の健全性を検討する「性能規定」で検証を行う。仕様規定と性能規定は4種類の既製品リング補強で定められている。EGリングの仕様規定は図-8に、性能規定は図-9に示す通りであり、ハイリング、OSリング、フリードーナツにも同様の規定が設けられている。 ![]() 図-8 梁貫通孔既製リング補強の仕様規定の例 ![]() 図-9 梁貫通孔既製リング補強の仕様規定の例(EGリング:日本ファブテック(株)提供) 4種類の既製品リング補強を対象に、仕様規定の検討に必要な情報と性能規定で必要な情報を整理したものが表-5である。今後、これを整理して「リング補強計算用CSV」と定義し、鉄骨CADと補強リングメーカーと協力しながら、データ連携による作業効率化を図る。 ![]() 表-5 鉄骨専用CADから既製リング補強計算への連携用データ 成立性結果の出力現在の既製品リング補強の成立性計算ソフトからの出力は、全てのスリーブ要求に対して合否判定がリスト形式で出力されるので、これを見ながら設備側に梁貫通孔要求に対する成否を連絡していた。また、設備側が描いた梁貫通孔要求の伏図に赤で×印で連絡する場合に、否の理由まで書き入れるのは手間がかかっていた。 ![]() 表-6 既製リング補強計算結果から鉄骨専用CADへのデータ この出力を、鉄骨専用CADや設備専用CADで読み込めば、BIMモデルやそこから生成される図面にも成立可否が、表-7あるいは図-10のように記されると予想している 3)。 ![]() 表-7 判定理由の簡易表記方法 ![]() 図-10 判定理由の簡易表記方法の例 まとめ鉄骨専用CADと設備専用CADを用いた納まり検討や干渉チェックはIFC連携により可能だが、梁貫通孔要求とその構造成立性検討は現状のIFCではデータ連携ができないため、3種類の中間ファイルを定義して、広く公開して標準化を行った。 おわりに鉄骨専用CADにKAPシステムを用いて、貫通孔補強をEGリングとした場合には、設備専用CADがCADEWA、DesignDraft、Rebro、Tfasで描かれていれば、既にデータ連携による効率化が可能であった 4)。しかしながら、鉄骨ファブリケーターが使い慣れた鉄骨専用CADは他にも複数あり、既製リング補強も4種にわたっている。このため、(一社)buildingSMART Japanの構造設計小委員会の下部組織である、鉄骨梁貫通補強ワーキンググループを2018年1月に発足して、展開する予定である。 清水建設株式会社 生産技術本部 生産計画技術部 主査 室井 一夫
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2018年7月13日
はじめに国内外のBIM推進の活動が進展している中で、異業種分野間におけるBIMデータ連携が求められるようになってきている。設計段階におけるBIM活用が発展してきている状況下、施工分野におけるBIM活用も活発になってきている。施工現場とBIMデータが接点を持つことにより、MR(MixedReality: 複合現実)、IoT(Internet Of Things)、製品流通コードタグなどを含むさまざまな情報通信技術(ICT:Information and Communication Technology)とBIMの連携の可能性が高まってきている。これら多様な分野との情報連携を行うため、クラウド上で信頼性の高いBIMデータ連携を行う仕組みにも注目が高まり、CDE(Common Data Environment)、IFC(Industry Foundation Classes)モデルサーバ、ブロックチェーン技術などのテーマがbuildingSMARTの国際会議においても取り上げられるようになってきた。 鉄骨ファブから設備へのIFCデータ連携2016 年、buildingSMART Japan構造設計小委員会に設置された鉄骨IFC検定WGにおいて、鉄骨IFCデータ連携をテーマに、BIMデータ連携仕様IDM(Information Delivery Manual)の検討が開始された。2017年度には、そのIDMを基に鉄骨ファブから設備へのIFCデータ連携を対象としたIFC検定が開始されることになった。 ●鉄骨部材および構成要素の幾何形状情報、材質、寸法などの属性情報。 ●鉄骨部材の開口情報。 ●梁貫通可能領域の情報。 鉄骨分野における、より詳細な鉄骨部材、鉄骨梁貫通補強情報、設備側からのスリーブ要求情報、エレベーター分野との調整など、より広いBIMデータ連携に関しては今後検討を行い、IDM・MVD策定、ソフトウェアへの実装、IFC検定へ展開する予定である。 buildingSMARTロンドンサミット会議について2017年10月末、buildingSMART International Summitが英国ロンドンで開催された。参加者はヨーロッパ地域だけでなく米国、日本、中国、韓国、オーストラリアなどから設計、施工、エンジニアリング、ソフトウェアデベロッパー、政府、大学関係者など、世界各地のBIM関係者が約400 名参集した。日本からは16名が参加した。 ![]() 図-2 buildingSMARTロンドンサミット会議2017の全体会議風景 英国におけるBIM推進今回の会議での基調演説では、英国政府主導のBIM導入計画“Digital Built Britain”について、英国政府側のBIM推進組織BIM Task Groupより英国におけるBIM推進ビジョン、現時点での状況についての講演が行われた(図-3)。 ![]() 図-3 Digital Built Britainにおける情報フローと経済効果の循環イメージ(英国政府BIM Task Groupによる基調講演から) BIMを導入することで、竣工後の国土空間情報のデジタル化を進め、英国の設備投資、運用投資およびアセットが生み出すサービス価値を向上させ、英国の競争力を強化させるという内容であった。これは、日本においてICTを最大限に活用し、サイバー空間と現実世界とを融合させた取り組みにより、「超スマート社会」を実現するというSociety5.0に近い概念であるといえる。英国では、政府主導のBIM Task Groupだけでなく、最近では民間におけるBIM推進組織として、buildingSMART英国支部が中心となり、住宅、高速道路、鉄道、水道、自治体、中小企業などを含むグループが英国BIM連盟(UK BIM Alliance,http://www.ukbimalliance.org/)を設立し、英国におけるBIM推進を行っていることが報告された。また英国におけるBIMの発注者、受注者などの関係者に必要となるBIMプロセスにおける要求事項が、BS-1192シリーズ(British Standards: 英国標準)においてBIMガイドラインとして定義されてきており、今後国内のBIM/CIMガイドライン整備にも参考となると考えている。 英国におけるBIM活用事例報告では、大規模な複合施設プロジェクトのBIM活用において、意匠、設備、構造など各分野のBIMモデルをbuildingSMARTが策定したBIM国際標準のIFC形式で重ね合わせをして、効率的に分野間モデルの調整をした例や、原子力発電所(Hinkley Point Cプロジェクト)施工BIM事例(数量積算、鉄筋BIM、溶接記録とBIM連携など)が紹介された。 ヨーロッパにおいては国単位のBIM推進活動の上位活動として、EUレベルにおけるBIM推進の枠組みがEUBIM Task Groupとして進められており、ドイツ、フィンランド、フランス、オランダ、ノルウェー、スペイン、英国、デンマークなどの政府系BIM推進機関の連携の状況、ISO(国際標準化機構)やCEN(欧州標準化委員会)などの標準機関との連携、EU BIM Handbook(EUにおけるBIMガイドライン)発行などについて報告があった。 ![]() 図-4 EU BIM Task Groupによる基調講演資料から buildingSMART Internationalの各RoombuildingSMART International(bSI)における活動内容を説明するため、現在どのような委員会活動が行われているのかを以下に紹介したい。Roomと呼ばれているのが、分野ごとに設立された委員会相当の活動単位である。 ![]() 図-5 道路・橋梁・鉄道に加えてトンネルと港湾施設分野へのIFC拡張 特に鉄道、港湾施設分野のIFC標準化には、中国のプレゼンスが高まっている。国内のBIM・CIMの展開を一層活性化させる必要性が高まってきている。 また、bSI国際戦略諮問委員会(SAC: Strategic Advisory Council)において、今回中国からCCCC(China Communications construction company Ltd.: 中国交通建設)がゲストとして招かれた。中国政府の一帯一路政策、高速鉄道輸出などの政策と戦略的にBIMの標準化活動を連携しており、今後の中国国内の航空旅客数増大による空港建設需要などのポテンシャルを背景に、BIMを革新的技術開発テーマとして位置付けているとの報告があった。 建設現場や維持管理分野におけるBIMとIoT、製品流通コードなどとの連携、建築確認プロセスにおけるBIMとブロックチェーン技術の可能性なども討議され、今後のサミットにおいても継続的にこれらのテーマを取り上げていくことが決議された。 BIM個人能力認証開始bSIでは、国際的に共通なオープンなBIM個人能力認証の仕組みを確立するため、2016 年秋に準備WGを結成して下記項目を目的に準備活動を進めてきた。 building SMART AwardについてbSIでは、IFC 、BCF( BIM Collaboration Format)などbuildingSMART標準を活用したオープンBIMの普及促進を目的に、2014 年からbuildingSMART Awardを年一回実施している。春に応募を開始して、秋のサミット国際会議において設計、施工、維持運営、学生の4部門の審査発表、表彰式を行う形式である。2017年度は、北米から5、ヨーロッパから13、アジアから3の計21の応募があり、7つの応募チームにAwardが授与された。Awardの判定は、オープンなBIM標準であるIFC, BCF, COBie(Construction Operations Building Information Exchange), bSDD,IDM,MVDなどの活用、およびユースケース(空間調整、数量積算、コスト分析、エネルギー分析、環境シミュレーション、建築確認、4D/5D-BIM、維持管理など)の状況などが総合的に審査される。 おわりに本稿では、現在buildingSMART Japanが進めている鉄骨分野におけるIFC検定の概要、および英国で最近開催されたbuildingSMARTサミット会議の概要を紹介した。 一般社団法人 buildingSMART Japan 技術統合委員会 委員長
buildingSMART Fellow 足達 嘉信 博士(工学) 建設ITガイド 2018 特集2「BIM」 ![]() |
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2018年7月9日
はじめに日建連の推計によると、建設業では今後10年以内に技能労働者が100万人規模で離職する見通しである。そのため、若者を中心として新たな技能労働者を確保するとともに、生産性を向上させることが喫緊の課題となっている。 CIMの活用推進当社では1990年代から3次元CADを施工計画検討、設計変更協議、品質管理および出来形管理に利活用してきた実績があるが、CADオペレーターに依存する体制となっており、実際に検討する作業に時間を要する状況となっていた。そこで、施工計画検討や施工管理における利活用は、社員自らがCADを操作することで、速やかに結論を導ける体制を構築することを目的に、本社主導による工事入手段階での「CIM初期モデル」の提供と、社員のCIMスキル向上を図る「CIM教育システム」を導入した。 ![]() 写真-1 生産性向上検討会でのCIM初期モデル活用 CIM教育については、集合教育による時間的拘束を避けるために、現場または支店から全社標準の「Skype forBusiness」を利用した遠隔教育としている。また、現場のPC全てが高機能というわけではないため、誰でもCIMソフトを快適に利用できるよう、VDI(仮想デスクトップ)を利用した環境を整備している(図- 1)。 ![]() 図-1 VDIとSkypeによるCIM教育のイメージ カリキュラムは、施工計画検討用にInfraWorks360、SketchUp Pro、Navisworks、土工事用にCivil3D、構造物用にRevitを教育するコースを用意し、半日単位で選択できるカフェテリア形式としているため、現場の工種や工程に応じた組み合わせで受講できる。 さらに、施工計画に使える約350点の3D部品を用意し展開している。部品は、建機、設備、汎用の3項目から構成されており、建機ではバックホウ、クレーンやブルドーザー、設備では足場材・矢板、防護柵・ガードレール、測量・計測、汎用では作業員や乗り物などを用意している(図-2)。 ![]() 図-2 3D部品サンプル例 現場向け施工管理ツールの展開当社土木部門では、CIMに工程とコストを連携させて施工管理できる「5D-CIM」の構築を目指している。原価管理については従来から標準ツールにて実施してきたが、2017 年4 月から工程管理についても標準ツールを定めて全社に展開している。 UAVの活用当社は2015年に、UAVによる写真測量を利用して高精度な3次元図面を短時間で作成し、土量管理、工事の進捗管理に利用するシステムを開発し大規模造成工事に初適用した。本システムによる測量は、光波測量、地上3Dレーザー測量と比較して、所要時間、測定にかかる人数を大幅に削減でき、費用についても、光波測量の5分の1以下となることが分かった(図- 3)。 ![]() 図-3 各測量方法の所要時間、概算費用比較 現在では、造成工事だけでなく、ダムや橋梁などさまざまな工種で幅広くUAVを活用している。 機械化・自動化・見える化の推進建設工事は、元請による全体的な施工管理の下、協力会社による分業体制で行うことが一般的となっているため、どうしても施工行為そのものの生産性向上にはつながりにくい側面があった。当社では、土木工事の「省人化」だけでなく、「作業分析による施工全体の合理化」を図り、施工における生産システムそのものをより合理的にすることを目的に「機械化・自動化・見える化」を推進している。 ![]() 図-4 クワッドアクセルのフィルダムでの適用イメージ 2015 年に五ケ山ダム建設工事で自動振動ローラーを実用化させるとともに自動ブルドーザーの実証実験を行い、2017年には大分川ダム建設工事において、ダンプトラックの導入試験を行い、運搬・荷下ろしから、ブルドーザーによる巻き出し、振動ローラーによる転圧まで、一連の土工作業の自動化の流れを確立した。2017年9月には、さまざまな開発技術を検証する実験場として「西湘実験フィールド」を整備し、自動化システムの精度をさらに高めていく方針である(写真-2)。 ![]() 写真-2 自動ダンプ、自動ブルドーザー、自動振動ローラーの連動作業 将来的には、インターフェースが簡素化されたCIMモデルを用いて容易に作業計画、作業指示を作成し、自動化された機械をコントロールするとともに、機械から稼働状況・出来形・品質データを収集することで施工方法の評価を行い、建設工事全体の最適化を図っていく。 鹿島建設株式会社 土木管理本部 土木技術部CIM推進室 室長 後閑 淳司
次長 森本 直樹 建設ITガイド 2018 特集1「i-Construction×CIM」 ![]() |
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2018年7月5日
はじめに建物ごとに一品生産となる鉄骨階段の作図から製作の効率化を図るために開発した、鉄骨階段専門CADシステムの開発とその背景、専門工事会社におけるBIM活用の取り組みについて紹介する。 鉄骨階段専門CADシステムの変遷当社は1993年より8年間、自社開発した鉄骨階段専門の2DCADシステムを使用した後、2001年よりAutoCADをプラットフォームとした自社開発のCADシステムを現在まで使用している。 ![]() 図-1 鉄骨階段専門CADの変遷 システム開発の背景2DCADの時代から作図精度の向上および効率化と、製作工場の加工機械とCADから出力されるNCデータ連携を行い、作図と製造の生産性向上を図ってきた。しかし2DCADである以上、平面図、立面図、その他各種詳細図の編集は、線の1本1本を手動で行うため、施工図、工作図で図面間の不整合が多く発生した。また階段は必ず勾配が絡んでくるが、階段に絡む干渉物との回避や、ヘッドクリア確保などの確認も複雑になる。 ![]() 図-2 鉄骨階段モデルの自動組み上げ 新システムの開発旧システムは、鉄骨階段モデル編集に必要な機能を全てカスタマイズにより実装している。これまで最新のAutoCADへ載せ替えをしなくてもそれほど不都合がなかったことと、カスタマイズ機能の多さから、載せ替えには時間とコストがかかることもあり、プラットフォームはAutoCADのバージョン2006のまま運用してきた。しかし2015 年頃から最新のOSでは動作が不安定になる現象や、32ビットのパソコンでなければ動作しないといった問題が徐々に発生してきたため、最新環境で動作するシステムの開発に至った。プラットフォームの選定を行い、建築で利用されているBIMツールの中からARCHICADを選択し、新たな鉄骨階段BIM-CADシステムの開発を行った。 ![]() 図-3 編集中のモデル 作図上重要となるルールは「モデルを使って作図をする」ということである。3Dなのでモデルを使うことがそもそも当たり前だが、客先とのやり取りで図面修正を行う際に、操作に長けていないスタッフが、2D出力された図面だけを修正してしまうということがある。この場合、承認の段階で2D図面は最新状態だが、モデルは古い状態のままとなる。しかし工作図作業ではモデルが必要になるため、社内ではモデル修正から工作図だけを行う専任者が生まれる。そこで承認後の2D施工図面を見てモデルを後から修正するという無駄な作業が発生する。また施工図担当者と工作図専任者間のやりとりで、伝達漏れや、工作図専任者の図面理解不足によるミスが発生する。 新システムはそれらを踏まえ、編集作業の軽減や自動化を多く実装し、作図者の負担を減らせるような機能を取り入れた。 また製作工場からの要求で、工作図に手動で加筆する項目が多く発生していたが、この部分についても自動化を図り加筆作業を軽減させた。 ただしシステムが高機能でも、正しい方法で利用しなければ効果は出ないため、現在は社内の操作教育と、運用方法の改善を並行して進めている。 ![]() 図-4 鉄骨階段施工図と工作図 製造連携製作工場ではCADから出力したNCデータによる加工を行っている。NCデータは厚板の切断と孔明けを行う厚板加工ライン、踏板と踊場板などを製作する薄板加工ライン、階段受け鉄骨などの型鋼材加工ラインといった部分で使用している。3Dモデルを直接取り込める機械も出ているが、その中で手すり製作工場では3Dモデルを取り込める3Dレーザー加工機を導入している。現在加工データは手入力しているが、今後は新システムからモデルデータを渡し、複雑な形状の部材加工を行えるようにする準備を進めている。 ![]() 図-5 工場の踏板加工ライン 今後の課題と展望社外とのBIM連携として、鉄骨製作業者(FAB)のモデルを取り込んで、鉄骨階段モデルの編集に利用したいと考えている。現在は鉄骨階段が取り合う部分は、2Dの構造図、鉄骨図面を参照して、受け鉄骨のモデルを当社のCADで配置し、ササラ桁と梁の接続部の取り合いを、階段モデルで編集を行っている。 ![]() 図-6 屋外階段モデル 株式会社 横森製作所
技術部設計技術課 課長 島崎 建輔 建設ITガイド 2018 特集1「i-Construction×CIM」 ![]() |
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2018年7月2日
CIMガイドラインの使い方平成24年度から開始したCIM試行業務・試行工事での知見を基に平成29年3月に「CIM導入ガイドライン(案)」(以下、「ガイドライン」)が策定された。CIMは試行ではなく活用段階として取り組んでいくべき今後の段階において、ガイドラインはその羅針盤となる。 ![]() 図-1 最新の2017施工CIM事例集※ ※施工CIM事例集には施工段階における各工種ごとのガイドラインに合わせた施工事例が掲載されているので、ぜひ参照していただきたい 2015施工CIM事例集(http://www.nikkenren.com/publication/detail.html?ci=216) 2016施工CIM事例集(http://www.nikkenren.com/publication/detail.html?ci=239) コンサルと施工会社のコラボの重要ガイドラインで重要なポイントは前工程からどのような情報がきて、次の工程にどのように引き継ぐかということである。 全ての工種を対象に行うには時間がかかるため、トンネルを中心に検討してみた。 実案件での事例ではないが、ガイドラインをベースに進めてみたトンネル設計から施工への利用が具体的に書かれたものはこれが最初だと思われる。 コンサルタントがどのようにガイドラインを理解して、モデルを作成してくるのか、またそれを施工会社はどのように利用できるのかを含め、読み進めていってほしい。 以下「設計段階で作成すべきCIMモデル(建設コンサルとしてのモデル作成までの流れとその考え方)」「設計段階のモデルを施工会社が受け取りそれを活用する方法」の2 項目は2017年12月5日に土木学会で行われた、第35回建設マネジメント問題に関する研究発表・討論会で発表された「CIM導入ガイドライン(案)に準じた実行性の高いCIMモデル作成方法に関する一考察」の抜粋である。 本考察は、建設技術研究所の藤田さんと大林組の杉浦の連名で発表したものである。 設計段階で作成すべきCIMモデル(建設コンサルとしてのモデル作成までの流れとその考え方)山岳トンネルを対象とした設計段階でCIMを活用する目的は、関係者協議や、坑門工形式検討・位置検討による設計品質の確保などが考えられる。ただし、これらはその用途に合った詳細度でモデル化を行う必要があるとともに、設定段階のもので、設計成果の最終形と異なる可能性もある。そのため、これら検討で用いたモデル全てを施工工程に引き継ぐことは必ずしも効率化につながらないものと考えられる。ここでは、設計成果に合致しており、施工段階・維持管理段階で活用することを主目的として、ガイドラインに基づいたCIMモデルの作成方法について検討することを目的とする。 (1)CIMモデル作成ツール 今回のCIMモデル作成には、表-1に示すツールを用いた。 ![]() 図-2 2つの線形モデル 地形モデル:一般部は国土地理院・基盤地図情報(数値標高モデル)5mを用いた。ただし、坑門工周辺については実測地形平面図のデータを3次元モデル化するものとした。 ![]() 図-3 地質縦断モデルおよび本体モデル 本体モデル:本体工のモデル化はトンネル設計補助システムVer5.23(エムティシー社)を用いた。トンネル設計で一般的に用いているツールであり、ソリッドモデルにて正確なトンネル断面形状を保持した3次元モデルの作成が可能である。本ツールはCIMモデル作成の省力化とともにIFCおよびDWGへの出力ができる。なお、支保パターン区分ごとにモデルを分割し着色した。 施設箱抜きモデル:施設の箱抜きについては設備配置が施工段階で変更になることが多いため、省力化のためにトンネル本体モデル内に反映させず、対象位置の前面に配置した。なお、モデル化は箱抜き形状をソリッドで作成する(図-4) ![]() 図-4 施設箱抜きモデル (3)属性情報について 施工段階においては現場でCIMモデルを活用する際に統合モデルを活用すると想定されるため、今回は統合モデルをNavisWorks(Autodesk社)で作成し、Navis+(CTC社)を用いて属性情報を付与した。 ガイドラインでは属性情報の付与方法は「3次元モデルから外部参照する」方法を原則としている。また、トンネル編の設計段階の属性情報は支保パターン、ロックボルト、補助工法などを付与するものとしている。これらはトンネル設計補助システムからCSV形式で出力することが可能である。このCSVファイルによりNavis+を用いて統合モデル上から属性情報を確認可能にした。 ただし、支保パターンや補助工法は数値で表示されても施工者が理解することが難しいため、トンネル内空断面を示す標準断面図とロックボルトや補助工法等を示す支保パターン図のURLを付与した(図-5)。 ![]() 図-5 トンネル本体の属性情報 設計段階のモデルを施工会社が受け取りそれを活用する方法施工段階でのCIM活用はCIM試行工事のアンケートからも評価されているとおり、発注者のみならず施工関係者間の合意形成や、事前打合せなどによる手戻り防止での効果が確認されている。 ![]() 図-6 計測情報を属性情報として利用 ここで重要なポイントは、管理する単位が設計段階と異なる要素単位であるという点である。施工管理では、支保工ごとに計測管理や切羽観察管理を行うが、設計段階では支保パターンごとに分割している。今回、設計段階で与えられた属性情報の「支保パターン」、「ロックボルト」、「補助工法等」についても支保パターンごとの属性として出力されているため、そのまま施工段階の属性として利用することはできない。 そのため、設計段階で付与した属性はあくまでも地山の性質を把握する参考情報として利用し、実際の施工段階においては地山の状況を判断する変位や切羽などを確認しながら、支保ごとに判断していくことがトンネルでは重要である(図-7)。 ![]() 図-7 支保単位の情報を表示 なお、ここでいう「施工段階」とはトンネル本体構造物の構築とともに、電気設備や舗装といったトンネル供用までの工事も含まれる。建設会社がトンネル本体構造物を竣工・引き渡した後で電気設備や舗装工事が行われるが、設計段階で計画されている電気設備工事を行う場所等は、施工段階で覆工コンクリート打設割の状況に応じて変更が余儀なくされることが多い。 そこで、電気設備などの情報を施工段階から引き渡すものとして次のようなものを考えた(図-8)。 ![]() 図-8 電気設備情報を属性として表示 このような取り組みが次の工事のために引き継ぐ際に重要だと考えるが、施工会社も電気設備会社が工事段階で必要な情報が不明であることが多いため、今後ガイドラインの内容を拡充させるために重要である。 現在この取り組みを拡充させるために、実現場で実施中である。 維持管理段階からのCIMモデルに対する要望建設コンサルタントは点検や補修・補強設計、長寿命化計画策定など、多くの面で維持管理に携わっている。この立場での知見を基に維持管理段階で活用するためのCIMモデルに対する要望を検証してもらった。 トンネル本体では、補助工法の種類と範囲や、不可視部分のコンクリート打ち継ぎ目位置が必要となる。インバートや道路空間内の内装板が配置されている所など点検時に確認できない箇所の精度の向上につながる。 このように設計段階から施工を意識し、また点検や維持管理を見越したモデルの構築・運用を考えて進めると、「使える」モデルを作成することができ、また、それに付随する属性を有効に利用するために、CIMをツールとして使えるような取り組みが生まれる。これがガイドラインの本当の使い方だと思う。 ガイドラインに対する提案(1)明確な活用場面の掲示 おわりにガイドラインがないと何もできないという声が多く聞こえ、作成されればされたで、この内容では分からない、不備が多いという言葉もあちこちから聞かれる。 一般社団法人 日本建設業連合会
土木本部 インフラ再生委員会技術部会 杉浦 伸哉 (株式会社 大林組) 建設ITガイド 2018 特集1「i-Construction×CIM」 ![]() |
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