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2017年8月4日
![]() DWG互換CAD導入に足掛け3年の検討期間を要した。「ここまでの 道のりは決して平坦ではありませんでした」 (右:生産技術課長 吉原 宏和氏 左:課長代理 平井 崇氏) ![]() 施工BIMモデル (奥村組 九州支店) ![]() 施工CIMモデル (阪神電鉄 青木駅付近高架橋)ステップ 免震技術のパイオニア トンネル工事のフロントランナー奥村組は「堅実経営」、「誠実施工」を社是に創業来(1907年創業)、関西はもとより日本の建築・土木を牽引、免震技術やトンネル施工技術に強みを持つ準大手ゼネコンである。建築では今ほど関心が高くなかった1980年代から免震技術の研究を開始し、日本初の実用免震ビルを設計・施工するなど『免震のパイオニア』として名高い。土木においては、得意とするトンネル工事の中でもシールド工事に強みを発揮、従来の2倍以上の施工速度を可能にした六角形の”ハニカムセグメント”を用いた施工法を開発するなどトンネル工事のフロントランナーとしての信頼は厚い。また、昨今では、建設業界において、建設現場における生産性を向上させ、魅力ある建設現場を目指す取り組み“i-Construction(アイ・コンストラクション)”が推し進められる中、同社では、現場におけるスマートデバイスの活用、CIM・BIMの導入加速などICT(情報通信技術)を積極的に活用して生産性向上につなげる取り組みにも力を入れている。同社のICT推進の中心的な役割を担う管理本部情報システム部の生産技術課長 吉原宏和氏と課長代理 平井崇氏にDWG互換CAD導入の経緯と効果について聞いた。 必要に迫られDWG互換CADを検討同社のDWG互換CADの導入は2012年に遡る。当時、2次元CADの大半がAutoCAD。AutoCADから互換CADに変える必要性はあったのだろうか。当時の状況を吉原課長は、「当時、ネットワークライセンス版(以下NL 版)の” Aut oC A D C i v i l 3D 2006″を60 ライセンスと、スタンドアロン版の”AutoCAD LT”を数百ライセンス利用していました。AutoCAD LTにはNL版がなく、利用する全てのパソコンにAutoCAD LTのライセンスを購入しインストールしていました」と話す。利用者全てが常時AutoCADを利用しているわけではなく、スタンドアロン版のAutoCAD LTでは利用効率も低く、また、管理面でも支障が出ていた。 ![]() 「われわれの業務においては生産性向上が 大きな課題となっています。そのためにも DWG互換CADへの移行は欠かせないもの でした」(吉原課長) AutoCADと同等なDWG互換CADは存在するのか?「互換CADはいくつかありましたが、われわれが必要としたのはAutoCADに慣れた利用者がストレスなく作業ができることです。業界ですでにある程度の評価を得ていた数社のソフトを検討しました」互換CADは廉価であるがゆえに機能性だけを見ればAutoCADより劣ることは否めない。しかしながら、現業部門で使えないものを導入できない。必要とされる機能・性能・操作性全てを備えた互換CADを選択する必要があった。「情報システム部で検討を開始し、候補のソフトを現業部門の利用者に試験的に使ってもらいました。まずAutoCADとの相違点を明らかにし、業務への影響がないか、レスポンスや操作性、印刷設定など機能を比較検討しました。検討を開始した頃は、どの互換CADも現業部門から必要とされるレベルには達していないというものでした」(平井課長代理)「AutoCADの機能はかなり成熟しており、多種多様な機能が搭載されていますが、利用者の多い施工部門ではそれら全ての機能が必要とされていたわけではありませんでした。そこで必要な機能、操作感など限定して検討を進めていきました」(吉原課長) 最初の互換CAD導入はB社製のCADにこのような中、2012年にAutoCADの機能には及ばないものの、施工部門で必要となる最小限の機能を備えていると評価されたB社製互換CAD(以下BCAD)が30ライセンス導入され、AutoCADから互換CADへの移行が開始された。評価の結果、IJCADは要求レベルに達しておらず落選していた。BCADはその後機能的に大幅に改善されることはなかったものの2014年1月には70ライセンスとなっていたが、同社はバージョンアップの都度、粘り強くIJCADを紹介してきた。「2013年にIJCADの新バージョン2013を紹介されましたが、すでにBCADを使っていたのであまり興味はありませんでした。過去3度、バージョンアップごとに試してはいましたが、満足いくものでなかったので、”2013″もあまり期待していませんでした」ところが以前に比べ”IJCAD 2013″の操作性が格段に向上していた。「これには驚きました。AutoCADとほぼ同様の操作で作図でき、基本的な機能は備わっていたのです」(平井課長代理) ![]() 「IJCAD 2013がAutoCADと同じ感覚で 業務に利用できるレベルに達したと感じまし た」(平井課長代理) IJCADへの乗り換えは、間違いではなかった現在、導入から2 年余りでIJCADのライセンス数は170を超えた。他社製互換CADとの入れ替えとともに、多くの利用者からAutoCADと同じレベルの操作性が好評を得た。「導入以前からの経過は決して平たんな道のりではありませんでした。ただ、満足いかないときでもシステムメトリックス社は何度も何度も機能・操作性アップにトライしてくれました。熱意は強く感じましたね」(吉原課長) ![]() 導入後わずか2年でIJCADは170ライセ ンスを超えた。「今後、他社でもDWG互換 CADは検討されていくでしょう」(吉原課長) 現段階での利用法は、「現場で図面をみること」が大半だということだが、モバイルCADの可能性は無限に広がっている。「今から思えば、2010年前後はDWG互換CADの黎明期だったのではないでしょうか。注目はされていましたがどのソフトにもパーフェクトといえるものはありませんでした。そのなかで”IJCAD 2013″はDWG互換CADが抱えていた問題点の大部分をクリアしていました。一度BCADを導入してからIJCADに変更したのは、回り道したともいえますが、今では、当社にとってベストの選択をしたと思っています」吉原課長のI JCAD導入に対する評価である。奥村組で始まったDWG互換CADへの移行は、2 次元CADの性能向上とともに、3 次元CADの時代を堅固に下支えしている。 ![]() 「すでに200人以上の作業所職員がiPad+ IJCAD Mobileを活用しています」 (吉原課長) 株式会社 奥村組 所在地:大阪市阿倍野区、東京都港区 創業:1907年2月 資本金:198億円 従業員数:2,072名(2016年4月1日現在) 主な事業内容:総合建設業 http://www.okumuragumi.co.jp/ 【出典】 建設ITガイド 2017 特集3「建設ITの最新動向」 ![]() |
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2017年8月1日
はじめに三谷産業株式会社は首都圏、北陸地区、ベトナムを拠点に6つの事業領域を展開する総合商社である。本稿では、6事業領域のうちの1つである空調設備工事部門と、22 社の連結子会社がある中でベトナムを拠点とし建築関係会社からの受託業務を主体とするACSD社(Auroel ConstructionSoftware Development Inc.)との業務連携について紹介する。 取り組み事例の紹介三谷産業とACSD社のBIMモデル構築の実際の業務連携は、三谷産業からの基本的な作図指示に基づきACSD社が3Dモデルを構築するのが基本スタイルである。 ![]() 業務分担フロー 1つは伝達(コミュニケーション)手段である。業務の指示やレビューの際にはベトナムとの専用回線(XVDコミュニケーションシステム※1)を活用し、お互いの顔を見ながら会話するスタイルをとった。 ![]() また、ACSD社(ベトナム側)の大画面に資料を映し出し、ポイントを指し示して指示することで、スムーズなコミュニケーションが図られ、意思疎通を格段に高めることができた。資料の受け渡しや情報共有については、当社が開発したグループウェアである“POWER EGG”を活用し、業務が滞ることがないようにタイムリーに進めている。POWEWREGGの機能を活用することで、プロジェクトに関わる全ての関係者に、情報がリアルタイムで発信されるような仕組みを構築できた。 ![]() ![]() グループウェア“POWER EGG”の活用2 もう1つは言葉である。三谷産業とACSD社の共通語は日本語である。ACSD社では、日本語能力試験N2を取得したチーフが窓口となって現地スタッフに指示を出しており、直接指示では理解が難しい内容についても、現地スタッフをフォローできるような仕組みを構築した。また、三谷産業における研修を繰り返し実施することにより、会話力の上達はもとより技術の習得も図られ、大幅の改善ができている。 現在は、プロジェクトごとにキックオフミーティング→中間レビュー→最終レビューのサイクルを実行し、品質レベルの向上につなげている。 また、このスキームを活用したBIMモデル構築の取り組みとして3Dスキャナーの活用がある。3Dスキャナーを使用し、三谷産業で撮影した点群データを基にACSD社でCADデータ(レブロ)への変換業務を行う。これには、点群処理ソフトと強化されたレブロの連携機能を有効に活用しており、正確性と作図スピードを高めることを目的に取り組みを始めたのだが、ここで問題が発生した。点群データの情報量の多さである。撮影の仕方(設定)にもよるが、撮影した点群データは1カ所当たり110 ~ 150MB程度の容量があり、全箇所分のデータを送信すると数GBとなる。データやり取りを繰り返すことは決して不可能ではないが、膨大な時間を要する。大容量データの送受信方法の改善が業務効率向上には欠かせない課題として、仕組みの構築に取り組み中である。 ![]() 点群データ~CAD化までの流れ 今後の展望BIMというキーワードで建築業界自体が動き出したことを実感している今だからこそ、三谷産業グループの強みとして海外BIM連携を推進していきたい。過去のインフラやハード/ソフトがまだ成熟しておらず、業界自体の3Dの必要性も認識されていない時期に取り組んだ経験をしっかりと反映していかなければならないと考えている。 ![]() ACSD社のベトナム人技術者たち 三谷産業株式会社
建設ITガイド 2017 特集2「BIMによる生産性向上」 ![]() |
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