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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

東北地方整備局におけCIMの取り組みについて

2017年5月20日

 

はじめに

国土交通省では、平成24年度より建設生産システムの効率化・高度化を図るため、CIMの導入について検討を実施してきているところである。東北地方整備局においても、CIMの試行成果については年々蓄積されているところであり、設計、工事、管理の段階ごとに、代表的な事例を紹介する。
 
 

設計段階のCIM事例について

1)業務概要
 
業務名;掛田橋詳細設計業務
期 間;平成27年8月11日~平成28年3月15日
受注者;中央復建コンサルタンツ(株)
概 要;一般国道115号相馬福島道路の伊達市霊山町地内に計画している掛田橋、
    橋長175mのPC4 径間連結コンポ桁橋の詳細設計業務である。
 
 
2)CIMの取組み内容
 
この設計業務では、橋梁設計において主に次の4項目についてCIMを活用し、導入の効果を検証している。
 
①基礎の支持層根入れ照査(図-1)
複雑に起伏している支持層に対し、橋台基礎の根入れが十分に確保できているかを、CIMモデルで確認することで、適切な橋台位置を決定した。
 

図-1 基礎の支持層根入れ照査




 
 
②配筋の施工性評価(図-2)
配筋図のCIMモデルにより、配筋密度や付属物との取り合いを確認の上、施工性を評価することで、橋脚形状を決定した。
 

図-2 配筋の施工性評価




 
 
③配筋・PC鋼材の干渉照査(図-3)
部材の干渉状況を、CIMモデルで確認・照査することで、配筋計画を決定した。
 

図-3 配筋・PC鋼材の干渉照査




 
 
④排水ます・排水管の配置検討(図-4)
主桁セグメント位置を避けた排水ますの配置、主桁と排水管の離隔を、CIMモデルで確認することで、適切な排水計画を実施した。
 

図-4 排水ます・排水管の配置検討




 
 
3)得られた課題等
 
CIMを活用することで設計品質等の向上効果が得られた反面、ソフトウェア機能や技術者スキルの問題などの周辺環境整備が、今後の解決すべき課題である。
 
 

工事段階のCIM事例について

1)工事概要
 
工事名;国道45号 田老地区道路工事
工 期;平成26年10月3日~平成29年3月31日(予定)
受注者;(株)フジタ
概 要;復興道路として整備中の三陸沿岸道路の宮古田老工区内において、2本のトンネル工事と、橋梁下部工工事を行うものである。
 
 
2)CIMの取組み内容
 
この工事では、トンネル工事において主に次の3項目についてCIMを活用し、導入の効果を検証している。
 
① 施工の可視化(図-5)
2次元の設計図からCIMモデルを作成し、実際の施工進捗状況に応じたCIMモデルに更新していくことで、進捗状況を可視化している。これにより、現在の切羽位置や、次の掘削工程の地山地質などを作業所全員で共有できる体制を構築して工事を進めている。
 

図-5 施工の可視化




 
 
②施工情報の一元化(図-6)
これまで、個別に管理していた設計図や各種施工情報などの工事情報を、CIMモデルに属性情報として付与することで一元管理することを可能とした結果、工事情報の共有・活用がしやすくなったほか、必要な施工情報の取り出しも容易にしている。
 

図-6 情報の一元化




 
 
③施工管理の高度化・効率化(図-7)
事前にFEM解析を実施し、解析モデルおよび結果をCIMモデルに付与することで、FEM解析結果と内空変位等の実測値を比較し、施工の安全を確認しながら掘削作業を行う体制を構築し、より高度化・効率化した精度の高い施工管理を実施している。
 

図-7 施工管理の高度化・効率化




 
 
3)得られた課題等
CIMを活用することで施工効率化の向上効果が得られた反面、前述の設計事例と同様に、CIM普及に向けての周辺環境整備が解決すべき課題である。
 
 

管理段階のCIM事例について

1)胆沢ダムの概要
 
胆沢ダムは、北上川ダム統合管理事務所の胆沢ダム管理支所で、平成26年度から管理を行っている、国内第2位の堤体積1,350 万m3を誇る、中央コア型ロックフィルダムである(図-8)。
 

図-8 胆沢ダム位置図および全景




 
 
2)胆沢ダムCI Mの構築
 
これまでのダム建設事業においては、多くの調査資料や図面等の膨大な情報が蓄積されていながら、そのほとんどが紙媒体であるという課題を抱えていた。そこで、維持管理の高度化・効率化に向けて、各種情報を電子化・3 次元活用する「胆沢ダムCI M」を、先導的に平成25年度までに構築している(図- 9)。
 

図-9 胆沢ダムCIM構築イメージ




 
 
3)胆沢ダムCI Mによる管理
平成26 年度より、ダム管理へのCIM活用を具体に開始している。
 
①点検結果の可視化(図-10)
3次元の立体画像でダムを可視化し、点検時にはタブレット端末を用いることで、現地において管理項目の値に短期的に極端な変化がないかを速やかにチェックしている。
 

図-10 点検結果の可視化




 
 
②点検作業の効率化・迅速化(図-11)
タブレット端末に直接、現場点検記録や写真を入力することで、所定の様式やグラフ類の自動作成を可能としているほか、基準値を超すデータが入力されれば、アラーム音等の自動応答で確認できるものとしている。
 

図-11 点検作業の効率化・迅速化




 
 
4)CIM活用の継続と向上
 
現場の意見等も取り入れながら、年々、ステップアップさせて継続中のところである。一例を挙げれば、GPS観測による堤体変位状況について、これまでの2次元管理のものから、CIMを活用した3次元による可視化を実施している(図- 12)。
 

図-12 堤体変位状況の可視化




 
 
今後は、これまでの管理実績を踏まえつつ、ダム維持管理のさらなる高度化・効率化に向けて、「主要な電気通信ケーブル敷設情報」、「貯水池内の堆砂状況」、「水質データ」等の情報について、CIMへの追加付与を検討する予定である。
 
 

おわりに

国土交通省の取り組みとして、平成28 年度にCIM導入ガイドラインを策定、平成29年度以降はガイドラインに基づく運用検証、その後適宜拡充という予定になっている。東北地方整備局としても、これまでのCIM試行で得られた知見・課題等も踏まえ、引き続き、CIMの展開・推進に取り組んでいきたい。
 
 
 

国土交通省 東北地方整備局 企画部 技術管理課 係長 三文字 美彦

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2017
特集1「i-Construction時代の到来とCIM」



 
 



国土交通省におけるCIMの取り組み-CIMの新たな検討体制-

 

はじめに

わが国は人口減少時代を迎えているが、これまで成長を支えてきた労働者が減少しても、労働者の減少を上回る生産性を向上させることで、経済成長の実現が可能と考えられる。そのため、国土交通省では平成28年を「生産性革命元年」とし、本年3月に国土交通省生産性革命本部を設置し、省を挙げて生産性革命プロジェクトを推進しているところである。このうち、「産業別」の生産性を高めるプロジェクトとして、本格的なi-Constructionへの転換を進めている(図-1)。
 

図-1 生産性革命の概要




 
 
わが国の建設産業は近年、就業者数の減少とともに高齢化の進行が著しく、今後10年間で高齢等のため、技能労働者約340万人のうち、約1/3の離職が予想され、労働力不足の懸念が大きい。このような厳しい環境の中において、社会資本の整備・管理体制を持続的に確保していくためには、建設産業全体の労働生産性を高め、より多くの付加価値を生み出すことが重要である。
 
i-Constructionは建設生産システムの調査から施工、維持管理までのシステム全体の生産性向上を図るものであり、「ICTの全面的な活用(ICT土工)」、「全体最適の導入(コンクリート工の規格の標準化等)」、「施工時期の平準化」をトップランナー施策として、建設現場の働き方革命の実現を目指すものである(図-2)。
 

図-2 ICTの全面的な活用




 
 
「ICTの全面的な活用」では、まずは改善の余地が大きい土工について、測量・施工・検査等の全プロセスでICTを活用することとしており、情報化施工やCIMの試行で得られた知見等を参考として、平成28 年度より国が行う大規模な土工については、原則としてICTを全面的に適用することとしている。これにより、土工の現場では調査、設計の段階から施工、監督、検査の段階まで3 次元データを活用する環境、言い換えればCIMを活用する環境がかなり整備されたといえる。
 
今後、ICT土工におけるCIMの活用検証を踏まえ、土工以外の橋梁やトンネルなどの工種、構造物に広げることで「ICTの全面的な活用」の実現を図っていくものである。
 
 

CIM試行で確認された効果と課題

平成24 年度からスタートした国土交通省直轄事業におけるCIMの試行は、平成27年度までで、業務、工事の合計で165件の試行を実施した(図- 3)。
 

図-3 平成24~27年度CIM試行件数




 
 
試行で導入効果が認められた主な項目として、合意形成の迅速化、フロントローディングの実施、安全性の向上があり、この活用事例について紹介する(図- 4)。
 

図-4 CIMの試行で確認された導入効果




 
 
合意形成として事業計画の住民説明会において、3次元モデルを用いた映像による説明だけでなく、3Dプリンターで模型を作成し、説明会で用いることで、計画内容の理解が促進し、合意形成の迅速化に資することが確認された。
 
また、設計段階で3次元モデルを用いると、鉄筋が複雑に交差するような構造物における鉄筋の干渉箇所を容易に発見でき、施工に設計成果を受け渡す前に修正することができる。さらに、完成後における橋梁の検査員の導線を確認しながら効率的な点検が可能となるよう検査廊の設計ができるなど、工程の上流段階で後工程の作業等を考慮することで手戻りの防止や品質向上を図るフロントローディングの実施がCIMによって効果的に進められることが確認された。
 
施工段階では、3次元モデルを用いて、重機の配置計画や施工手順の確認、さらに新規入場者教育やKY活動に3次元モデルを活用し、現場作業員へ周知することにより、施工段階での重機の輻輳等の危険因子をあらかじめ取り除くことができ、安全性の向上に寄与できることが確認された。
 
一方で、課題も浮き彫りとなっており、3次元モデルを取り扱うことができる人材が不足していること、パソコンや3次元CADソフトの導入に際してコストがかかること、またモデル作成の際の詳細度についても明確化の必要性があることが確認されたことから、今後、導入、普及に当たっての対応策が必要である。
 
 

CIMの新しい検討体制

これまで、CIMの導入、普及方策については、平成24年度よりCIM制度検討会やCIM技術検討会において産学官にわたる関係機関がそれぞれの役割の下で、制度的、技術的な観点から検討を重ね、CIMの導入効果や普及推進に向けた課題を整理してきた。平成29年度からCIMを本格的に導入するに当たり、関係者間の目標の共有や役割・責任の明確化を図り、CIMの推進・普及をより強力に進める体制とするため、これまでの検討体制を一本化し、CIM導入推進委員会を設置することとした(図- 5)。
 

図-5 CIM導入推進委員会の体制図




 
 
このCIM導入推進委員会は、国土交通省が進めるi-Constructionにおけるトップランナー施策であるICTの全面的な活用を、CIMを用いて推進するために、関係機関が一体となりCIMの導入推進および普及に関する目標や方針、具体的な方策について検討し、意思決定を行うことで、CIMの導入、普及に向けた施策を円滑かつ強力に進めていくものである。
 
当面の取り組みとしては、今年度から3次元データの活用を先行して進めているICT土工の取り組みを検証し、成果をこれまで検討を重ねてきた各工種(橋梁、トンネル、ダム、河川構造物)に展開するため、CIMの導入推進や普及に関する実施方針や方策の検討、ガイドラインや基準類の整備を行う。これらの方針や方策、基準類の整備等を進めるため、3つのWG(ワーキンググループ)を設置する。以下にその内容について記載する。
 
 
(1)CIM導入ガイドライン策定WG
 
受発注者双方がCIMを効果的に導入できるように、CIMの活用方法や3次元モデルの作成方法等を体系的に整理したCIM導入ガイドラインを平成28年度中に策定する予定であり、これまで試行事業の結果などを踏まえ、ガイドラインの検討を進めてきた。
 
昨年度までに、CIM導入ガイドラインの骨子を策定しており、その構成は、CIMの概要や各工種に共通する測量、地質調査について記載した共通編、また工種(橋梁、トンネル、河川、ダム、土工)ごとに、設計や施工、維持管理におけるCIMの活用方法を記載した各分野編から成り、調査から維持管理段階まで体系的に記載し、受発注者双方のCIM活用を支援するものである(図-6)。
 

図-6 CIM導入ガイドラインの構成




 
この骨子を基に素案を作成し、試行業務および工事で検証し、今年度中のガイドライン策定を目指すこととしている。
 
 
(2)要領・基準の改定WG
 
このWGでは、CIMの導入に必要な要領や基準について検討する。具体的には、設計や施工段階での3次元データを活用した発注方法の整備、3次元データを活用した監督・検査要領の改訂、試行においてCIMの導入効果が確認された鉄筋の干渉チェックの確認方法を明確化し、現場でのCIMの活用を促進する。
 
また、これまでのCIM技術検討会や土木学会での海外動向調査も踏まえ、多様な入札契約方式において、CIMの導入に当たり効果的な採用方式の検討および課題を整理する。
 
さらに、インフラ構造物を対象とした3 次元モデルの国際標準化に関して、日本国内の意見集約および現況に関する共有の場を提供し、日本としてのスタンスを提示しやすいように支援する。
 
 
(3)現地での検証WG
 
これまで、CIMの試行業務と試行工事にてCIMの導入効果や課題について抽出を行ってきたが、平成28 年度からは、CIM導入ガイドラインの素案を基に試行検証を行い、得られた導入効果および課題について集約・整理し、委員会や各WGに展開し、ガイドラインや要領基準の内容をより現場で活用しやすくするようにしていく。
 
 

おわりに

CIMを活用して、調査から維持管理まで全ての段階をシームレス化することにより、各段階での効率化だけでなく、成果物や情報の受け渡しの効率化が図られ、維持管理の高度化や、迅速な災害対応にも役立つと考えられる。
 
CIMの推進による建設生産システムの生産性向上の実現には未だ多くの課題が残されている。この解決には建設生産システムに携わる企業、団体や各学会の協力が不可欠であり、関係各位に対し、これまでのご尽力に感謝申し上げるとともに、引き続き、CIM導入推進、普及に当たってのご協力をお願いしたい。
 
 
 

国土交通省 大臣官房 技術調査課 工事監視官 山下 眞治

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2017
特集1「i-Construction時代の到来とCIM」



 
 



20周年を迎えたbuildingSMARTの歴史と今後の展望

2017年5月4日

 

はじめに

BIMに関わる標準化、普及展開を進めている一般社団法人buildingSMART Japanの設立20周年記念式典が2016年11月24日に建築会館において開催された(図-1)。
 

図-1 buildingSMART Japan20周年記念式典講演会(2016年11月)の一場面




 
 
1995 年6 月に米国アトランタで開催された建築・建設のITソリューション展示ショーであるAECSYSTEMS‘ 95において、3次元でオブジェクト指向である建築・建設分野CADデータの標準化を目指すIA(I International Alliance forInteroperability)の設立が発表された。この動きに呼応して、1996年4月に日本においてIAI日本支部の第1回総会が開催され、この時IAI日本が発足した。IAI日本発足から20年目となる2016年6月、すでにIAIから改名されていた国際組織buildingSMARTInternationalと合わせるため、一般社団法人buildingSMART Japanと改名されることとなった。
 
本稿では、IAI日本として出発したbuildingSMART Japanの20 年にわたる活動を振り返るとともに、今後の活動の方向性についてご紹介したい。
 
 

buildingSMART Japanの20年

BIMモデルデータの国際標準IFC
 
1996年の発足当時、IAI日本は72社の企業と4つの研究機関が会員となって活動を開始した。2年後には117社に会員が増え、建築・建設分野の3次元建物情報モデルIFC(Industry Foundation Classes)の策定、標準化への高い関心がうかがえた。
 
IFC は下記に示すように数々のリリース(バージョン)を経て、BI Mデータ標準として完成度を上げ、2013 年3 月に正式な国際標準IS016739:2013として発行された。
 
·IFC Release 1.0(1997 年1月):パイロット版
·IFC Release 1.5.1(1998年7月):改良版
·IFC Release 2.0(1999年4月) :実証実験本格化
·IFC 2x(2000 年10 月) : 現在のIFC2x3 およびIFC4 の原型となるバージョン
·IFC 2×2(2003年5月):設備・構造分野のデータモデルを拡張
·ISO/PAS 16739(2005年10月):準ISO規格
·IFC 2×3(2005 年12 月):現時点でBIMアプリケーションに採用されているバージョン
·国際標準(IS) 化作業をIFC2x4(後にIFC4と改名)として開始(2008年春)
·IFC4 Offi cial Release(2013年3月)
·ISO 16739:2013(2013年3月)
·2013 年以降はインフラストラクチャー分野へのIFC仕様を策定中
 
現時点で市販されているB I M対応ソフトウェアが対応しているのは2007年7月に公開されたIFC2x3の改訂版IFC2x3 TC1(TechnicalCorrigendum 1)である。2016年夏に、IFC4に対応したBIMソフトウェア認証の試行が行われた。2017年以降、IFC4による国際IFC認証を受けたBIMソフトウェアが増加すると予想される。
 

図-2 3次元建物情報モデルIFCの概要




 

図-3 IFC策定の変遷




 
 

buildingSMARTの活動と出来事

1997 年4 月にはIAI国際評議会(International Council meeting)ならびにIAI国際技術統合委員会(I n t e r n a t i o n a l T e c h n i c a lManagement meeting)を東京で開催し、日本からは構造分野が検討していたRC造に関するI FC仕様(ST- 2)および施工分科会(1997当時)で検討していた仮設部材に関するIFC仕様(CM-2)の提案を行い承認されるなど、日本はホスト国として、国際の舞台でも一定の存在を示すことができた。
 
1998年9月にはA/E/C SYSTEMSJAPAN’98において、IAIが独自にブースを構えて、IFCによるデータ連携のデモンストレーションを実施した。IFCデータ形式は、CADソフトウェア以外にも、積算ソフトや構造計算ソフトなどとのデータ連携が可能であることを示した(図- 4)。
 

図-4 意匠CAD(左)から構造計算ソフトウェアへIFCによりデータ連携した例




 
 
1 9 9 9年1月に米国サンフランシスコで開催された国際技術統合委員会から、IFCの仕様策定を行っている国際チームSTF(Specification TaskForce)のメンバーとして、日本から筆者が加わることになり、2000年からSTFの後継グループとなるM S G( M o d e lSupport Group)へと引き続きその任を継続することとなった。4月には、STFにより策定されていたIFCの初期実用バージョンとなるIFC Release 2.0が公開された。9月には昨年に引き続いてA/E/C SYSTEMS JAPAN‘99にIAI日本支部としてブースを設置し、IFCデータ連携の最新成果について17社が4つのグループでデモンストレーションを実施した(図-5)。
 

図-5 AEC SYSTEMS Japan ’99におけるIAI日本支部ブースの様子




 
 
2002年10月に、日本で初めてIFCの国際認証ワークショップが開催され、4社8ソフトが認証を受けた(図-6、7)。
 

図-6 日本初の国際IFC認証で使用された認証テスト用モデルの一例(左)とIFC認証ロゴ(右)




 
 

図-7 2002年の国際IFC認証に臨むため準備中の関係者




 
 
参加した企業は鹿島建設、住友セメントシステム開発、富士通、日本電気の4社で、鹿島建設は社内開発システムDB-CADの意匠/構造/設備インターフェイスをIFCで実現し、この認証結果は海外からも多くの注目を集めた。同時に東京での2度目の国際会議が開催され、8つのワーキンググループ会議とセミナー他が開催された。
 
2003年は10月にシンガポールで行われた国際会議において初めて「BIMに関するディスカッション」が行われ、日本の技術統合委員会でもその報告がなされた。BIMという用語が今のように広く建設業界で使われるようになるのは、この後に開催された2006年のAIA(米国建築家協会)総会以後のことである。
 
2004 年はIAI日本にとって最初の大きな転機となった。データ連携による業務改革の必要性の声が建設業界内でも高まり、IAI日本への情報提供依頼やセミナー協力依頼が増えはじめ、IAI日本は、これらの業務を受託しやすくするために有限責任中間法人として法人格を取得した。法人となったことで、さらに他団体との協業や協賛が増えるとともに、さらに注目を浴びることとなった。北欧、米国などで公共建築分野において、さまざまな実証実験プロジェクトが盛んに行われるようになったのもこの時期である。特に、アメリカの国立標準技術研究所(NIST, National Instituteof Standards and Technology)が発表した報告書 “Cost Analysiso f In a d e q u a t e In t e r o p e r a bili t yi n t h e U . S . C a p i t a l F a c i l i t i e sIndustry”は、建設プロジェクト内の情報流通を促進してコミュニケーションを改善すること、使用されるソフトウェア間の相互運用性向上のためにBIMの採用や中立なデータ形式が重要であることが指摘されており、世界各地のBIMの実証実験の活性化に寄与することになった(図- 8)。
 

図-8 世界のBIM実証実験活性化に影響を与えたNIST報告書




 
 
2007年に入ると、海外ではIFCを活用したBIMプロジェクトの試行が盛んとなり、実際のプロジェクトにおけるBIM活用を発注条件とする動きが始まった。北欧フィンランドでは、大手不動産管理会社であるSenate Properties社による建築プロジェクトへのBIM要求が開始された。そのために、Senate社は、Common BIM Requirementsと呼ばれるBIMガイドラインを発行している(図-9)。
 

図-9 フィンランドで公開されたBIMガイドライン




 
 
また、米国でも連邦調達庁(GSA, General ServiceAdministration)が、2007年度以降の連邦施設設計においてBIM活用を条件とするためBIMガイドラインを発行している。
 
2008 年4月に東京で3 度目の国際会議を開催し、海外からの30 名以上の出席者による2日間にわたっての活発な議論がなされた。また、関連する分野での情報交換や、他団体・研究機関との会議が実施され、国際的な組織との橋渡し役として、存在感を発揮した。この国際会議において、IAIの名称をより明確なビジョンへ表すものとしてbuildingSMARTとする基本方針が決議された。
 
BIMの普及展開に大きな役割を果たすことになる、米国生まれの短時間でBIM活用を競い合うBIMコンペ、BIMstormが世界各地で開催されたのもこの年である。英国でBIMstormとコラボレーションしたBuild LondonLive 2008が開催され、日本からIAI日本がメンバーを募り、チームBIMJapanを結成し初参戦することなった。その際、海外の多くのチームがBIMに取り組む姿を目にし、わが国でも類似のBIM活用イベントを実施することで、国内の設計者の参加を促し、BIMの普及、促進を目的とし、2009年2月に初めてのBuild Live Tokyo2009を開催した。10月に再挑戦したBuild London Live 2009では、チームBIM Japanが最優秀賞獲得を達成した。
 
2009年は日本のBIM元年と言われているが、BIMに関連する書籍の出版が始まり、建設会社においてBIMを組織的に取り組む兆しが見えてきていた。buildingSMART Japanの各分科会の継続的な活動により、BIM対応ソフトウェアのIFCによるデータ連携の試行が進んできており、IFCが建築の業務に浸透し始めようとしていた。buildingSMART Japanの活動も、IFC策定を中心とした軸から普及促進のための軸に移動を開始した時期でもあった。その一つの表れがBuild Liveの開催である。元々は米国で開催されたインターネット上の建築設計コンペティションBIMStormをきっかけにしていたが、日本のBuild Liveは課題の条件設定やブログを使った実況中継など、これまでの建築設計コンペとはまったく異なったスタイルとして定着してきた。Build Liveによって学生への認知度が上がったことは、buildingSMARTの将来に向けて大きな成果となったといえる。Build Liveは、2009年に2回開催され、それ以降、毎年秋に開催を重ね、2016年10月には第9回BuildLive Japan 2016を開催した。
 
初期のBuild Liveでは大組織の参加もあり、48 時間という短期間で設計や施工の広範なプロセスにBIMを活用してビジュアライゼーション・シミュレーション・解析などのアウトプットを実際に出して見せて、BIMの効果を大いにアピールし建設業界への啓蒙普及に貢献できたといえる。Build Liveの回数が進むにつれて、BIMを実践する場として企業内のBIM教育の機会としてBuild Liveを活用したり、大学生から高校生チームなどBIMを学習の延長線上で挑戦する若い参加者の増加も見られる。
 
また、Build LiveはIFCのさまざまな先端活用の実験場でもあり、IFC入出力機能の開発バージョンをブラッシュアップする場としても機能してきた。
 

図 -10 Build Liveの全体像




 
 

図-11 Build Live Tokyo 2009課題敷地モデル




 
 

BIMからCIMへ

2012 年は、JACICセミナーにおいて国土交通省技監(当時)の佐藤直良氏が、インフラストラクチャー分野へのBIM活用をCIM(ConstructionInformation Modeling)として提唱し、国が本格的にBIM / CIMの推進に向け舵取りを始めた年となった。buildingSMARTの国際会議においても、2011年のシンガポール会議においてフランスから、インフラストラクチャー分野へのIFC拡張を目的とするOpen Infraプロジェクトが提案されていた。
 
2013年にはIFCがISO16739:2013としてBIMデータの国際標準になった。IFCは、建築分野の3次元建物情報モデルとして、いくつものバージョンアップと数多くのソフトウェアベンダーのIFC実装の取り組みを経て、完成形へ到達したことになる。建築分野のIFC活用は、海外のBIMガイドラインや発注者のBIM要求により実用化へと進んでいく状況となった。一方、インフラストラクチャー分野においては海外のOpen Infraや国内のCIMの活動の活性化により、IFCのインフラストラクチャー分野への拡張が、次のbuildingSMARTの目標として国内外の関係者に認識され、その結果10月にドイツ・ミュンヘンで開催された国際技術統合委員会において、インフラストラクチャー分野へのIFC拡張を目的とした委員会InfrastructureRoomが設立されることになった。
 

図-12 インフラストラクチャー分野へのIFC仕様拡張




 
 

これからのbuildingSMART

2016年9月、韓国の済州島で開催されたbuildingSMART国際サミット会議において、鹿島建設が中心となり施工分野のBIMを対象とした新しいConstruction Room(施工委員会)を設立した。施工分野におけるBIMとICTの活用、IFCへの仮設部材モデルの拡張などを目的とした活動を今後進めていく予定である。この委員会では施工におけるBIM活用を軸に、3Dポイントクラウド、VR(バーチャルリアリティー)、AR(拡張現実)、ロボット技術、A(I 人工知能)などを活用する手法を探っていくことになるであろう。
 
1996 年から開始された建築分野のIFC策定は、2013 年に国際標準化となり一つのマイルストーンに到達した。2013 年に設立したInfrastructure Roomは、国際標準化されたIFC4(ISO 16739)をベースに、インフラストラクチャー分野の道路、橋梁、鉄道などの情報モデルを追加することを目的に活動を活性化させている。2016 年には、道路、橋梁、鉄道などの情報モデルに必要となる線形モデル(I FC Ali gnment )がbuildingSMARTの標準となった。済州島でのサミットでは、橋梁分野において日本、ドイツ、フランス、スウェーデン、フィンランドが協調してIFC拡張の仕様作成を行うための覚書を交わした。道路モデル、鉄道モデルのIFC仕様については、それぞれ韓国、中国が熱心に活動を行っている。インフラストラクチャー分野へのIFC仕様拡張は、段階的にIFCへ組み込んでいき、数年の後、IFC5として道路・橋梁・鉄道分野が追加されたバージョンとして公開するロードマップとなっている。トンネル分野の仕様拡張も今後作業が進むものと考えている。
 
buildingSMART Japanでは、Construction Room、InfrastructureRoomなどと協調して活動するため、国内にも対応する施工BIM小委員会、国際土木委員会などを設置し、国内外での活動を積極的に進める予定である。buildingSMARTInternationalでは、IFC2x3からI F C 4 への移行が計画されているが、日本国内においてもIFC4による国際IFC認証が実施できる体制の構築や、BIMの個人能力認証などの実施体制の整備などを進めていく予定である。
 
 

おわりに

本稿では、20周年を迎えたbuildingSMARTが行ってきたIFCの策定、国際標準化までの経緯、BIM普及促進のためのさまざまな国内外の活動、出来事などについて触れた。
 
現在buildingSMARTでは、CIMに関連する道路、橋梁、トンネル、鉄道などのプロダクトモデルをIFCへ追加するためのプロジェクトが進展している。また、施工分野のBIM活用についても国内外で最新のICT(情報通信技術)との連携が進められている。近い将来、施工分野やインフラストラクチャー分野のさまざまな新しいアプリケーションにおけるIFCの活用が期待できる。
 
buildingSMART Japanでは、建築設計や施工に横断するさまざまな課題を検討したり、CIMに関連するIFC拡張や活用検討、IFCのソフトウェア実装に関する勉強会、IFCソフトウェアの検定、BIM教科書の作成など、さまざまな活動を進めていく計画である。日本のBIM/CIMを活性化させるため、より多くの皆様のbuildingSMART Japanへの参加をお待ちしている。
 
 
 

一般社団法人 buildingSMART Japan
IFC検定委員会 委員長 足達 嘉信

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2017
特集2「BIMによる生産性向上」



 
 



i-Constructionのための3次元設計データ交換標準

2017年5月2日

 

はじめに

国土交通省では、「ICTの全面的な活用(ICT土工)」等の施策を建設現場に導入する取り組みであるi-Constructionを進めている。これまで、情報化施工で利用するために施工段階で3次元データを作成してきたが、i-Constructionでは、調査・設計段階で作成した3次元データを施工、検査、維持管理等のあらゆる建設生産プロセスで活用し、土工における抜本的な生産性の向上を図ることを目指している。
 
施工段階では、MC・MG(MachineControl・Machine Guidance)やTS(Total Station)を用いた出来形管理などの3次元データを用いた情報化施工技術が一般化し、定着しつつある。また、測量・設計段階ではCIM(Construction Information Modeling/Management)の取り組みが加速しており、UAV(Unmanned AerialVehicle)や地上レーザスキャナー等を用いた3次元測量、構造物同士の干渉チェック、景観検討や関係者協議のための3次元設計等が行われている。
 
こうした背景を踏まえて、i-Constructionでは、建設生産プロセスの各段階で個別に取り組んできたこれらの3次元データを建設生産プロセス内で積極的に流通させ、各段階の業務で横断的に活用していくことを目指している。しかし、現状の測量・設計段階と施工段階では、3次元データを取り扱うシステムが異なりデータの互換性がないことから、横断的な活用は容易ではない。測量・設計段階で作成した3次元データを施工段階で利用するためには、建設生産プロセス全体での利用を念頭に置いたi-Constructionのための3次元設計データ標準を定める必要がある。ここでは、国土交通省が平成28 年3月から新たに導入した15の新基準および積算基準の1つである「LandXML1.2 に準じた3 次元設計データ交換標準(以下、「データ交換標準」という)」と、その「運用ガイドライン」の概要を紹介する。
 

LandXML1.2に準じた3次元設計データ交換標準の概要

LandXML1.2は、土木・測量業界におけるオープンなデータ交換フォーマットとして米国にて提起された、国内外で多数のCADやソフトウェアに対応したデータ形式である。データ交換標準は、表-1に示すLandXML1.2を構成する要素から8 種類を用いて道路分野および河川分野におけるICT土工で必要な3次元形状を表現する。
 

表-1 LandXML1.2の主な要素と内容




 
 
3次元形状をコンピュータ上で表現する主な方法としては、「ワイヤーフレームモデル」、「サーフェスモデル」、「ソリッドモデル」の3つがある。このうちデータ交換標準では、道路中心線形や横断形状を組み合わせた、ワイヤーフレームモデルの一種である3次元の骨組み形状モデル(以下、スケルトンモデルという)および道路形状や地形等を面で表したサーフェスモデルを対象としている。そこで、データ交換標準では、i-Constructionのための納品要領として道路設計で作成するスケルトンモデルとサーフェスモデルを規定した(図- 1)。
 

図-1 スケルトンモデルとサーフェスモデル




 
 
スケルトンモデルは、道路中心線形と横断形状を組み合わせたモデルで、3次元形状を表現するための設計情報(設計パラメータ)を持つ。そのため、設計変更の際には変更箇所の設計情報を修正すれば、修正結果を基に全体の3次元形状を表現できる。このことから、施工段階で設計変更が生じても、データの修正が容易であり、施工者への負担が最小限になると考えられる。一方、サーフェスモデルは、表面の3次元データで、可視化した時に立体的な形状となる。また、i-Constructionでは、3 次元数量算出や点群データの出来形管理に用いるデータとなる。ただし、設計変更の際には変更箇所を含めたモデル全体の作り直しが必要となるため、サーフェスデータを直接修正するのではなく、スケルトンモデルでデータ修正を行い、スケルトンモデルからサーフェスモデルに変換することが合理的と考えられる。
 
LandXML1.2は、米国で提案された道路の3次元モデルであるため、わが国の道路設計に当てはめて考えた場合、標準のLandXML1.2 のままでは不足する属性情報がある。例えば、測点が線形の開始点からの累加距離でしか扱えず、わが国で一般的な測点番号と追加距離を組み合わせた表現ができないこと、横断設計の基準となる標準横断面が規定できないことや、横断設計を行った管理断面を設定する情報がないこと等がある。LandXML1.2に定義されていない情報をモデル化する場合、LandXML1.2に用意されたユーザ定義の属性情報(Feature要素)を利用することができる。そこで、わが国の道路設計に合わせ、不足する情報はユーザ定義の属性情報を用いて追加した。また、道路を構成する要素名といった属性についても、システムによって異なることのないように、標準的な属性情報を規定した。
 
データ交換標準は、主にCADベンダー向けとしてXML形式のデータ構造とそれを解説した資料であり、CADベンダーはデータ交換標準を参照してソフトウェアを開発することになる。そのため、CADオペレーターはデータ交換標準で規定したデータ構造の詳細を理解する必要がなく、次に説明する運用ガイドラインを参照してデータ作成を行うことになる。
 
 

LandXML1.2に準じた3次元設計データ交換標準の運用ガイドライン

データ交換標準の運用ガイドラインは、データ交換標準に基づいた3次元データの作成・流通などの運用を規定した資料である。運用ガイドラインの内容を図-2に示す。
 

図-2 運用ガイドラインの目次構成




 
 
図で示すように、運用ガイドラインでは、適用する事業、3次元設計データの作成範囲や作成方法、照査方法、電子納品、工事発注時の取り扱いなど、具体的な事業フェーズでの運用を規定した。これらの内容について以下に説明する。
 
(1)適用する事業
 
適用する事業では、ICT土工が対象とする工事の設計業務に適用することを記載している。具体的には道路、築堤、護岸の予備設計および詳細設計に適用する。
 
(2)3次元設計データの作成範囲、作成方法
 
3次元設計データの作成範囲では、利用目的に応じて適切なモデルが作成できるよう作成範囲を記載している。スケルトンモデルの作成範囲は、情報化施工での利用を想定し、道路では道路中心線、横断形状、舗装のそれぞれのデータを、河川では堤防法線、横断形状のデータを、地形では縦断地形線、横断地形線を作成する(図-3)。
 

図-3 完成形および土工工事段階の横断形状(道路面、路体面の例)




 
 
また、道路の横断形状では、完成形の横断形状だけでなく、路床面、路体面の土工工事の完成形も合わせて作成する(図-4)。
 

図-4 完成形および土工工事段階の横断形状(道路面、路体面の例)




 
 
さらに、横断面を作成する位置が3次元モデルの精度に影響することから、測点間隔20mごとの管理断面、線形の変化点、道路の幅員、横断勾配の変化点、法面形状の変化点で横断面を作成することを運用ガイドラインで規定した。また、法面形状は地形とのすり付けや構成物の接続に関連して横断勾配の変化点が多数発生することから、対応する盛土と切土の境界、構造物との接合部での横断面の作成を規定した。しかし、地形とのすり付けで法面の段数が変わるような断面変化点では、設計段階で段数を特定できないため、設計段階では想定される最大段数の法面で横断形状を設計し、施工段階でデータを修正し完成する方針とした。
 
(3)照査方法
 
照査方法では、3次元モデルが正しく作成されているかを照査するために以下の2つの方法を記載した。
 
●3次元設計データを3次元ビューアで表示し外観を目視確認
●2次元の設計図書や線形計算書と照合して確認
 
前者は、作成した3次元モデルが全体として正しくできているかを確認するためのものである。この確認方法では、ビューポイントを変えながら3次元ビューアで表示し、3次元モデル全体をパソコン画面上で目視確認する。また、後者は、3次元モデルを構成する要素の寸法や基準高等の細部を確認するためのものである。この確認方法では、3次元設計データの中心線形や横断面と設計図書(平面図、縦断図、横断図等)や線形計算書の数値とを照合して確認する。これらの照査は、施工段階でもデータ交換標準を修正した際には実施することが、正しいデータを流通する上で肝要である。
 
(4)電子納品
 
電子納品では、納品する電子データの種類、電子媒体への格納、ファイル名を規定している。納品する電子データは、3次元設計データの他、設計照査で確認した3 次元の画像データ、および設計照査のチェックシートを納品する。また、電子媒体への格納は、平成29年2月現在では、平成28年3月に改定した土木設計業務等の電子納品要領に従いICONフォルダに格納する。
 
(5)工事発注時の取り扱い
 
工事発注時の取り扱いでは、設計段階で作成した3次元設計データは、貸与資料として、契約図書の2次元図面とともに施工業者に貸与するものとした(図- 5)。
 

図-5 設計から施工への3次元データの流通イメージ




 
 

おわりに

 
i-Constructionの発表に伴い、国や地方公共団体等の発注者はもとより、ゼネコンやコンサルタント等の受注者も含めてICTの活用により土工における業務のあり方が大きく変化してきている。本稿で紹介したデータ交換標準やその運用ガイドラインに従い、建設生産プロセス全体で共通した3次元設計データが電子納品されることで、データ作成の効率化や入力ミスの防止、生産性の向上が期待されている。平成28年11月現在では、道路土工の設計や施工を利用場面としたソフトウェアベンダー等の8社から本成果へ対応したソフトウェア20種が公開されており、実際の建設生産サイクルへの導入が試行され始めている。この動きは今後、CIMの取り組みと合わせ、建設生産システムの全体を通して活発になっていくと考えられる。また、ICTの適用範囲が拡大するとともに、建設生産システムに関わるあらゆるプロセス、あらゆる現場で、当たり前のように3次元データが活用される時代が間もなくやってくると考えられる。
 
現在、土木業界は大きな変革の中にある。国総研では、今後、データ交換標準に則った機械的なチェックによるデータ信頼性を確保するための検討や、3次元設計データの利用を前提とした3次元数量算出の可能性について検討を進めるなど、データの標準化や基準類の整備等に向けた検討を進めていく予定である。
 
 
 

国土交通省 国土技術政策総合研究所
社会資本マネジメント研究センター 社会資本情報基盤研究室(現 同 土佐国道事務所 工務課長

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2017
特集1「i-Construction時代の到来とCIM」



 
 



i-Construction-建設現場の生産性革命-

2017年5月1日

 

はじめに

建設業は社会資本の整備の担い手であると同時に、社会の安全・安心の確保を担う、わが国の国土保全上必要不可欠な「地域の守り手」です。人口減少や高齢化が進む中にあっても、これらの役割を果たすため、建設業の賃金水準の向上や休日の拡大等による働き方改革とともに、生産性向上が必要不可欠です。
 
こうした観点から、国土交通省では本年(平成28年)を「生産性革命元年」と位置付け、省内に「国土交通省生産性革命本部」を設置し、社会全体の生産性向上につながるストック効果の高い社会資本の整備・活用や、関連産業の生産性向上、新市場の開拓を支える取組の加速化に総力を挙げて取り組んでいます。
 
本稿では、生産性革命プロジェクトの中でも、ICTの活用等により調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新までのあらゆる建設生産プロセスにおいて、抜本的な生産性向上を目指す「i-Construction」の取り組みについて紹介します。
 
i-Constructionは、生産性を向上させることで企業の経営環境を改善し、建設現場で働く方々の賃金水準の向上を図るとともに、安定した休暇の取得や安全な建設現場を実現することを目指す、いわば建設現場の働き方革命でもあります。
 
なお、i-Constructionを進めるに当たっては、「i-Construction委員会」にて基本方針や推進方策を検討いただき、その議論の結果は報告書として取りまとめられています。報告書等は国土交通省HP(http://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000028.html)に掲載されており、適宜参考にしていただければ幸いです。
 
 

なぜいま生産性向上なのか?

少子高齢化社会を迎え、建設現場の生産性向上は、避けることのできない課題となっています。バブル経済崩壊後の投資の減少局面では、建設投資が建設労働者の減少をさらに上回って、ほぼ一貫して労働力過剰となったため、省力化につながる建設現場の生産性向上が見送られてきました。
 
現在、建設現場で働いている技能労働者約330万人(2015年時点)のうち、約1/3にあたる約110 万人が今後10年間で高齢化等により離職する可能性が高いことが予想されています。
 
現在はまだ55歳以上の方々が建設現場を支えることによってわが国の建設現場は成り立っていますが、この方々の大部分が離職することが予想される10 年後には、現在と同水準の生産性では建設現場は成り立たないと考えられます。
 
わが国の建設投資額は1992年度の約84兆円をピークに減少し、2010年度にはその5 割以下となる約42 兆円まで落ち込みました。その後、増加に転じ2015 年度はピーク時と比較し6割の水準である約49兆円となっています。また、12 年連続で減り続けてきた公共事業予算は、2012 年(当初予算ベース約4.6兆円)で下げ止まり、2016年の当初予算では約6兆円となっています。このような建設投資、公共事業予算の状況の中、建設企業の業績も上向き、安定的な経営環境が実現し始めたことで、未来に向けた投資や若者の雇用を確保できる状況になりつつあります。
 
建設企業の業績が回復し、安定的な経営環境が確保されつつある今、生産性の向上に本格的に取り組むべき絶好のチャンスが到来したのではないでしょうか。
 
今がまさに、わが国の建設現場が世界の最先端となるよう、産学官が連携してi-Constructionに取り組むべき時だと考えています。
 
 

トップランナー施策の取り組み状況

i-Constructionを進めるための視点を踏まえて、国土交通省では「ICTの全面的な活用(I CT土工)」、「全体最適の導入(コンクリート工の規格の標準化等)」および「施工時期の平準化」をトップランナー施策として進めることとしています。
 
 
ICTの全面的な活用(ICT土工)
 
ICTの全面的な活用(ICT土工)は、図-1のように、測量や検査時にUAV(ドローン等)などによる3 次元データ計測結果を活用し、施工段階において、自動制御が可能なICT建機を活用するなど、全ての建設生産プロセスで3次元データとICT建機を一貫して活用する取り組みです。
 

図-1 ICTの全面的な活用




 
 
これらにより、現場作業の大幅な省力化・効率化等が可能となります。既に土工については、3 次元データを活用するための15の新基準と、ICT建機の活用に必要な費用を計上するための積算基準を整備し、国が行う土工について、ICT土工の方式を導入しています(図- 2)。
 

図-2 ICT土工用の新たな積算基準の試算(路体(築堤)盛土(15,000m3)の場合)




 
 
具体的には、以下の3つの方式でICT土工を順次拡大していくこととしています。
 
①発注者指定型:直轄工事で行う予定価格が3億円以上となる大規模な土工については、発注者がICT土工を前提として発注
 
②施工者希望Ⅰ型:3 億円未満の中小規模の土工についても、土工量が20,000m3 以上の工事については、総合評価においてICT土工を加点評価
 
③施工者希望Ⅱ型:規模に関わらず、施工者からの提案・協議を経てICT土工を実施
 
これら全ての方式において、ICT土工に必要な費用を計上するとともに、工事成績で評価をすることとしています。
 
2016年11月中旬時点においては3つの方式を合わせると、合計約1,080件以上の工事をいずれかの方式で発注する予定としており、国土交通省としては各施工者が積極的に取り組むことによりICT土工が浸透することを期待しています。
 
また、合わせてICTに対応できる技術者・技能労働者の育成、監督・検査職員の育成を目的に、全国約390 箇所で地域建設業や地方公共団体への普及拡大に向けた講習会を開催予定であり、既に約20,000人が参加しています。このような取り組みにより、受発注者双方の人材を育成し、さらなるICT土工の普及を図っていきます。
 
 
 
全体最適の導入(コンクリート工の規格の標準化等)
 
コンクリート工全体の生産性向上を図るため、全体最適の導入、現場打ちコンクリート、プレキャスト製品それぞれの特性に応じた要素技術の一般化およびサプライチェーンマネジメントの導入に向けて、以下の検討を進めます。
 
① ユニット鉄筋などの活用による現場作業の屋内作業化、定型部材の組み合わせた施工への転換を図るため、部材の規格(サイズや仕様等)の標準化を検討します。
 
②新技術の導入や施工の自由度を確保するため、仕様規定ではなく創意工夫が活用できる性能規定型の規格への転換、および性能規定とした場合のコンクリート構造物等の検査方法を検討します。
 
③ 工期短縮や安全性、品質の向上など、コスト以外の観点で優れ、生産性の向上に資する技術、工法の採用を進めるため、これらの性能を総合的に評価する手法を検討します。
 
④コンクリート工において、調達、製作、運搬、組立等の各工程の改善、より効率的なサプライチェーンマネジメントの導入を検討します。
 
これらの検討も踏まえ、現在開発されている生産性を向上させる技術・工法の普及に向け、適用範囲や施工条件等をまとめたガイドラインを整備することとしています。
 
ガイドラインの第一弾として、「機械式鉄筋定着工法の配筋設計ガイドライン」が平成28 年7月に策定されたところです。なお、他のガイドラインについても、平成28年度中に策定し普及を図ることとしています。
 

図-3 コンクリート工の生産性向上に向けた取組方針(案)




 
 
 
施工時期の平準化
 
施工時期の平準化については、人材や機材の効率的な活用による生産性の向上や労働環境の改善等の効果が期待できます(図- 4)。
 

図-4 施工時期の平準化の取り組み




 
 
このため、国土交通省では、工事の早期発注や、これまで単年度で実施していた工期が12カ月未満の工事についても、2カ年国債を設定して、年度をまたいで工事を発注する等の取り組みを進めています。
 
工事の早期発注については、平成28年1 ~ 3月の新規工事契約件数は、前年同時期に比べて約1.3 倍になっており、閑散期の工事の落ち込みが一定程度改善される見込みです(図-5)。
 

図-5 直轄新規工事契約件数の比較(平成27年・平成28年1~3月)




 
 
2カ年国債については、平成27 ~28 年度は約200 億円だったものを、平成28 ~ 29 年度では約700 億円に拡大しています。
 
これらの取り組みは、地方公共団体にも広げることが重要です。平成28年2月には国土交通省と総務省で連携し、各都道府県・政令市に対し、施工時期の平準化に向けた計画的な事業執行について要請を行ったところです。
 
今後とも、国や都道府県、全ての市町村等から構成する「地域発注者協議会」等の場を活用しながら、国や地方公共団体等の発注機関が連携して平準化の取り組みを進めていきたいと考えています。
 
 

推進体制の構築

これらのi-Constructionの取り組みの浸透・拡大を図っていくため、全地方整備局等において、i-Construction推進本部を設置するとともに、産官学で連携できる体制を整備しています。
 
さらに、i-Constructionの推進に当たっては、建設現場の生産性向上について調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新の各建設生産プロセスの関係者間において、常に情報交換し、議論できる場を作ることが必要です。
 
急速に進展するIoTなど最新の技術の動向を踏まえて、技術の現場導入を進めるため、産学官が連携してi-Constructionに取り組むコンソーシアムを設立し、主に以下のテーマ等について検討を進めていきます(図- 6)。
 

図-6 コンソーシアムの体制




 
 
①ICTの全面活用等で蓄積されるビッグデータの活用
 
ICTの全面活用等で蓄積される3次元データ等のビッグデータを集積・分析・活用するためのデータシステムを構築し、データに基づいた的確な現場管理によるさらなる生産性の向上や維持管理・更新等に有効活用することを目指します。データシステムの構築に当たっては、必要な情報を必要な時に、必要な人が即座に取得できることが重要です。
 
これら蓄積したデータの利活用について、オープンデータ化、セキュリティ確保、データ所有権の明確化等、ビッグデータの利活用に関するルールの検討を進めていくこととしています。
 
②最新技術の現場導入に向けた技術開発
 
急速に変化する社会経済情勢に的確かつ早急に対応するため、建設分野の技術だけでなく、建設以外の分野との連携を進め、広範な領域における建設技術の革新を促進していく必要があります。
 
急速に進展しているIoT、ロボット、AI等の技術の速やかな現場導入や新技術の発掘を図るため、産官学の連携を進めて参ります。
 
③国際標準化等による海外展開
 
海外展開に当たっては、わが国の技術基準類や発注仕様等が各国の基準等として取り入れられるよう取り組むとともに、国際標準化することで、広く各国で活用されるよう取り組むことが重要です。
 
近年、個別単体の技術・プロジェクトだけでなく、技術基準、制度、人材育成などを含めたパッケージでの展開を求められることが増えてきています。このことから、今後は、調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新までの建設生産システムの輸出を目指した取り組みを進める必要があります。
 
平成28年10月には、コンソーシアムの設立に向けた準備会を開催し、コンソーシアムの体制や規約、WGの検討内容などについて、有識者・学識経験者よりご意見をいただきました。11月には、i-Construction推進コンソーシアムの設立に向けた会員の公募を開始したところであり、今後、設立総会・第1回企画委員会の開催を実施していきます。
 
なお、会員募集は随時実施することとしており、幅広い分野から多数の会員が参加されることを期待しています(図- 7)。
 

図-7 i-Construction推進コンソーシアムのスケジュール(案)




 
 

おわりに

社会資本の整備・維持管理を支える建設産業は、防災・減災、老朽化対策などの重要な役割を担うとともに、日本経済の成長の実現、都市再生、さらには地方創生など、わが国の活力ある未来を築いていく上でも大きな役割があります。将来にわたって、これらの役割を担っていくためにも、i-Constructionの推進は必要不可欠です。
 
また、IoT、ロボット、AI、ビッグデータなどの分野の技術は日進月歩で進化しており、技術開発と社会実装のサイクルが従来にない速さで回っています。このため、オープンイノベーションに取り組む仕組みを整備するとともに、急速に進展する新技術の動向を踏まえ、技術の現場導入を進めるための柔軟な対応が必要です。
 
今後は、トップランナー施策のさらなる推進を図るとともに、産学官連携の体制により、公共工事の3 次元データ活用するためのプラットフォームを整備し、土工以外の分野においても3 次元データやICT等を活用した生産性向上に向けた取り組みを拡大させていきます。さらに、i-Construction推進コンソーシアムを通した最新技術の現場導入などにより、i-Constructionを推進します(図- 8)。
 

図-8 生産性向上イメージ




 
 
生産性を向上させることで、現場で働く方々の処遇を改善し、魅力ある建設現場を創り出します。「給料が良く」「十分な休暇が取得でき」「将来に希望が持てる」の新3Kを実現し、若者が希望を持って将来を託せるような産業分野となるよう、産学官一体となってi-Constructionの推進に取り組んでいきたいと考えています。
 
 
 

国土交通省 大臣官房 技術調査課 企画専門官 嶋崎 明寛

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2017
特集1「i-Construction時代の到来とCIM」



 
 



 


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