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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

施工CIMが目指しているもの−目的を明確にした施工CIMの賢い使い方とこれから−

2016年9月17日

 

株式会社 大林組 土木本部本部長室情報企画課
課長 杉浦 伸哉

 

はじめに

 
株式会社 大林組 土木本部本部長室情報企画課 課長 杉浦 伸哉氏
 
生産性向上を目的としたCIM導入は、国土交通省が2012年7月から本格的な取り組みとして進み始め、本年ですでに3年が経過した。
 
その間、多くの試行業務、試行工事が実施され、
また、同時に進められてきた建設機械と3Dモデルデータの連携による施工の効率化を高めるために、
2015年11月18日にはi-Construction構想が国土交通省からしめされ、その動きはさらに加速してきている。
 
これら新しい流れを起こさせざるを得ない状況となったのは、人材不足が大きく関与している。
 
建設就業者数が1997年のピーク時である685万人から2014年では505万人となり、
約120万人の減少(73.7%まで減少)となっており、今後、日本の人口構成や生産人口の減少の流れが変わらない限り、
品質を維持して施工を進めていくためには、一人当たりの生産性を向上させ、少数精鋭で臨まなければならない。
少ない人数で手戻りをなくし、多くの効率的な検討を行うには従来と同じ方法では実現できない。
規格化された製品を大量に作り上げる製造業と違い、
われわれ建設業が扱うものは、同じ条件がないものを一定の期限と品質を確保して取り組まなければならない。
そのためのツールとして、昨今CIMというマネジメント手法に注目が集まっている。
 
CIMは一般的に設計段階における不具合をなくし、計画段階から手戻りなく、効率的な設計を行うツールとしての位置付けである。
 
しかしながら、設計段階からの3Dモデルが流れてこない現状では、
施工段階での取り組みとして、何をしたいかを明確にすることでモデルの構築方法・活用方法が異なることになる。
 
本報告は、CIMというツールを「賢く」使うためのコツを、さまざまな事例をもとに現場で活用した内容を報告するとともに、
当社の事例ではあるが、施工CIMのROI(費用対効果)として定量的な観点からもその効果を説明したい。
 
 

施工CIM取り組みの効果は初期段階にあり

本来設計段階で、多くの検討がなされた3次元モデルが施工で利用することができるようになれば、
設計照査などの時間が短縮され、施工方法への検討が集中的に行える。
しかし、現段階では設計図をもとに施工方法を検討することで見えてくる不具合など、多くの問題を抱えているのもまた事実である。
 
そこで、施工段階でのモデル活用が効果的になるが、施工検討段階から設計図をもとにした3次元モデルがあれば、
当初の段階で多くの関係者が同じモデルを見ながら検討に参加することができるようになる。
実はわれわれ施工者も、必ず全員が同じ施工イメージを2次元図面から持ちあわせているかといえば、
然に非ず、同じイメージを持つためにスケッチを描いたり、長時間の話し合いを行って意識統一を図るといったことで、
多くの時間を割いてきた。
 
特に下水道施設などの地下躯体構造系の図面は枚数が多く、
また、建物のようにフロアごとの高さが同じレベルで統一されていないような場合が多くあり、
そのような図面を全員が同じレベルで理解するためには、相当な時間を要する。
 

図-1 複雑な躯体レベルの3次元モデル

図-1 複雑な躯体レベルの3次元モデル


 
図-1のように複雑な躯体レベルであっても、
3次元モデルが初期の段階からあれば、図面との不整合や施工検討の深度をさらに深めることが可能である。
 
その意味で当社では、できるだけ初期の段階で3次元モデルを構築し、それを活用することで、関係者全員の意識統一を図ったり、
施工検討時間を短縮し、協力会社との間で徹底的に利用することで、手戻りなどの時間を削減している。
 
結局、施工段階で便利なものは設計段階でも便利であり、
3次元モデルをまず、設計から受け取ることが施工を効率的、効果的に進めるためには非常に重要であることが分かっている。
 
 

土工事への見える化

土という不定形な形状の表現の難しさなどから、構造物の3次元対応とは違い、土工の出来形管理への取り組みには高いハードルがある。
 
3Dレーザースキャナによる点群を利用した形状計測管理は当社でも実施しているが、
3Dレーザースキャナにおける計測は、広範囲な計測には不向きで、
大規模土工では出来形数量や形状管理に必要な時間的制約や、データ処理の制約から実利用まで至らないことが多々あった。
 
そこで、大規模なエリアを短時間でいち早く形状を表現し、
出来形として、月ごとの土工形状を比較することで、土量を算出する取り組みを進めることにした。
 
土工現場全体の写真を大量に撮影し、その画像データを解析することで土工の出来形管理を実施することで、
短時間でいち早く現場の形状と、その形状差から土量を把握することで施工管理に役立てようとするものである。
 
当社では、現在、回転翼と呼ばれるUAVを6機保有し、固定翼と呼ばれるUAVを1機保有している(図-2)。
 

図-2 鉄道交差部の図面作成例

図-2 鉄道交差部の図面作成例


 
さて、この固定翼と回転翼では、その特性から、撮影できるエリアの大きさが違ってくる(図-3)。
 
図-3 点群取得手段の比較表

図-3 点群取得手段の比較表


※上記の精度は土工を扱う場合を想定したものであり、写真計測で取得される精度は「UAVの高度ターゲットの設置方法、写真の解像度」によりmmまで高めることは可能である。
 
これらの特性を生かし、あるいはこれらの特性を混ぜ合わせながら土工計測を実施し、全体を写真撮影し、
その画像から3次元点群を構築している。
 
UAVで撮影した情報が点群として画像解析され、その後点群としてモデルが生成される。
点群として生成されたあとは、時間軸でその点群データを比較することにより、土量変化を確認することが可能である。
 
3次元CADにさえなってしまえば、土量差分を出すことも容易にできそうに思われるが、
実はかなり高度な3次元CADを使った操作を行わなければならない。
そのために3次元CAD利用に精通しなければならないが、施工会社の職員が全員、3次元CADの利用に精通しているわけではない。
 
そこで「誰でも」「迅速に」「簡単に」実施することができるか否かという点で、
市販されているソフトウェアを組み合わせて利用する方法で、着実に差分を出す方法を実施している(図-4)。
 
図-4 点群を使った土量差分取得の流れ

図-4 点群を使った土量差分取得の流れ


 
非常に効果のある方法で、3次元CADの利用に長けた一部の職員だけが利用するのではなく、
全ての職員が対応できる仕組みを構築することこそ、施工での利用が進むポイントである。
 

1.計測管理データの見える化

ここでは、施工管理として重要な計測管理データの見える化事例を紹介する。
 
従来は計測機器から出力されるデータをExcelなどでグラフ化し、
閾値を超えるか否かという管理をするのが一般的な計測管理の見える化であった。
しかし、昨今の3次元データを表現する多くのツールを組み合わせることで、
偏位や応力の変化が線形上で時系列に見えることにより、変化の傾向が理解しやすくなった。
 
例えばトンネルの天端や側壁の変位といった地山の挙動を見える化することで、施工管理として全体像が把握でき、
安全管理のみならず品質管理への利用が可能である(図-5)。
 

図-5 トンネル内偏位計測の状況

図-5 トンネル内偏位計測の状況


 
●調査解析ツールの見える化を活用
トンネルで当社が開発したトンネルナビというツールと当初設計で作成したトンネルモデルの支保パターンを重ねることで、
このような分析も可能である(図-6)。
 
図-6 トンネルナビと支保パターンを重ねたモデル

図-6 トンネルナビと支保パターンを重ねたモデル


 
切羽写真などの情報と合わせて、切羽判定会議の資料として利用することで、
会議実施時間が3分の2まで短縮できたことは非常に効果のある内容であった。
 

2.施工管理ツールとしての活用

PC上部工工事への適用で、仮設足場計画検討、過密配筋の施工順序検討、品質続映の設定、たわみなど
計測データをモデルに取り込んで危険予知・回避といった施工管理での活用などで効果を発揮した(図-7)。
 

図-7 各種検討活用

図-7 各種検討活用


 
デジタルモックアップとしての活用では、
発注者〜技術者〜技能者間の良好なコミュニケーションで問題点・注意箇所の早期認識・特定や
計測結果のモデル取り込みで品質確保・工程厳守が達成された。
竣工後の不具合の原因特定手段としても利用される予定である。
 

3.合意形成ツールとしての利用

着工前の現地空間データに設計モデルを組み入れることで将来計画全体像を技術者・技能者だけでなく、
地元住民や納税者に対して現況〜施工各段階〜全体完成〜供用までを立体可視化して提供・共有化することで理解が深まり、
ステークホルダー全員の事業に対するベクトルが揃い迅速な事業推進が可能となる。
 

図-8 街づくりへの適用事例

図-8 街づくりへの適用事例


 
図-8は街づくりへの適用例で、
6Dモデルで街造り計画・ステークホルダー間の合意形成・土工計画・維持管理計画などの取り組みを実施している。
街全体のイメージ共有化は、図-8に示す地元説明会では質問に対して3Dモデルでは説明しにくい経時的な質問に迅速に対応でき、
また、関係機関との協議でも合意形成を早めるという効果があった。
 

4.最新テクノロジーを活用したイメージの共有ツール

当社では、これら3次元データを活用した見える化ツールや施工管理ツールとしての取り組みを当社職員だけではなく、
建設事業に携わる全ての関係者が共有することで、CIMの持つポテンシャルがいかんなく発揮できるものと思っている。
 
そのために、最新テクノロジーを建設産業にも適用することを積極的に進めている。
 
3Dモデルがあれば、仮想空間の中で自由に移動できるといったAR技術を通して、
多くの関係者が仮想空間のデータをもとに建設事業を進めていけるようなことが進むのではないかと、
これら新しいデバイスを使った建設事業への展開をさまざまな現場で取り組み始めている(図-9)。
 

図-9 最新デバイスを活用した仮想空間

図-9 最新デバイスを活用した仮想空間


 
 

3Dプリンターの進化も見逃せない

建築ではとかく華やかな3Dプリンターであるが、土木分野での進化はどうか。
 
ここに、2年前からの3Dプリンターの進化を並べてみた。
 
2年前に最初に作成したトンネル坑口部の3Dプリンターは石膏しか対応できなかったため、
3Dプリンターを利用することの意味をあまり感じられなかった(図-10)。
 

図-10 2年前のトンネル坑口部3Dモデル事例(石膏利用)

図-10 2年前のトンネル坑口部3Dモデル事例(石膏利用)


 
とりあえずトンネルではこんな感じというものしかできずに、感想としては、「まぁ」この程度かという感想が多かった。
 
図-11 デフォルメされたロックボルトモデル事例(石膏利用)

図-11 デフォルメされたロックボルトモデル事例(石膏利用)


 
図-11も石膏モデルのため、ロックボルトは忠実に再現できず、デフォルメされた形状しか表現できなかった。
土木では3Dプリンターの利用は躯体構造物といった建築的要素が多いものしか効果がないのではないかとも思われていたが、
図-12のように最新3Dプリンターを使うと、透明樹脂の材料が利用できるようになり、ロックボルトは忠実に再現され、
構造物系でなくても、地盤が透明にできるというアイデアを利用することで、さまざまな利用範囲が広がってきた。
 
図-12 透明樹脂を材料に使った3Dプリンター事例(透明樹脂利用)

図-12 透明樹脂を材料に使った3Dプリンター事例(透明樹脂利用)


 
図-13のように地山に透明樹脂を利用することにより、
トンネルの様子が透けて見えるモデルも作成することができるようになったことから、土木分野でも多くの活用が見込まれる。
 
図-13 地山を透明樹脂で作った3Dプリンター事例(透明樹脂利用)

図-13 地山を透明樹脂で作った3Dプリンター事例(透明樹脂利用)


 
●MMSの活用事例
点群を効率的に活用した事例を紹介したい。
 
現状構造物の図面がない場合の手段として、点群を取得することの意義は大きい。
点群が今の状況を忠実に表現し、スケールも合わせて3次元上で仮想的な空間を構築することが、
まさに施工検討を行う場合に非常に有益な手段となっている。
 
図-14 点群を利用した現状モデル

図-14 点群を利用した現状モデル


 
図-14を見ていただきたい。
2kmにわたり現状を取得した点群である。
 
点群を取得する際には、点群を利用する目的を明確にし、どこの範囲をどこまで取得し、
何を入れて何を入れなくてもよいかという事前の確認が重要である。
 
今回の例では、現状構造物の図面がなく、図面を再構築するために測量を実施しているところであるが、
それと合わせて短時間で取得することができる点群を活用することで、施工検討を平行して進めることが可能となった。
 
従来であれば、各自のイメージと平面を駆使した打合せを行っているところであるが、この点群を利用することにより、
形状確認や離隔の確認、最終構造物を重ねることで、施工手順を忠実に検討することが可能となっている。
 
このような使い方は施工ならではの使い方といえるのではないだろうか。
 
●ROIによる評価
当社では3年にわたり、3次元モデルの活用を施工で利用してきたが、同時に費用対効果もずっと継続して検討してきた。
 
図-15 UAVを使用した費用対効果

図-15 UAVを使用した費用対効果


 
例えば、UAVを使った場合の費用対効果を図-15にまとめてみた。
実際の測量を行った場合の出来形確認にかかる労務人工とUAV等のツールを使った場合の労務人工を比べた例である。
 
UAV等のツールを使った方が労務人工は必ず少なくなることは分かっているが、
定量的な数値として検討したところ、約74%も省力化されていることが分かる。
 
もちろん前提条件などの諸条件があるため、この74%という数値が全ての案件で適用できるということはあり得ないが、
他案件の状況を見ても、効果があることは明らかである。
 
このような数値をバックデータとして確認しながら、施工CIMを進めていくことは、
全員がその効果を感じながら進められるために重要である。
 
 

おわりに

2014年に土木学会の米国CIM視察調査団として参加した際、イリノイ大学のNora博士が
「20世紀のものしか使っていなければ、20世紀の方法で得た利益しか得られない。
 21世紀の新しいものを使って、プロセスやルールなどの仕組みを変えるパラダイムシフトができれば、
 20世紀の技術で得られる利益を大きく超えることができる」
と言われていた。
 
今まさに、建設産業は新しいマネジメント手法を得て、それをどのように活用するか、産学官全体で挑戦しているところである。
従来の手法でも十分対応できるマネジメントを21世紀型にチェンジすることは、従来の思考回路を大きく変える必要がある。
そのためには大局的な視野でマネジメント手法や全体プロセスを見直す必要がある。
 
施工フェースにとどまらず、本来の建設産業全体のイノベーションとしてCIMの持つ意味を理解し、
現状に満足せずさらなる活用の場を広げていきたい。
 
そのためには、個別最適化にとどまらず、施工全体の利用を流れとしてつなげていくことが重要だと思い、
将来の建設現場がICTやCIMといった生産性向上ツールを活用し、魅力ある建設業となることを期待してやまない。
 
少なくとも当社の現場では、これらの展開を積極的に進めることで、さらなる施工で効率化を図っていく予定である(図-16)。
 

図-16 ICTを活用した将来の施工現場

図-16 ICTを活用した将来の施工現場


 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2016
特集1「本格化するCIM」
建設ITガイド 2016
 
 



BIMソフトの実践テクニック講座 Vectorworks編

2016年9月11日

 

エーアンドエー株式会社

 
Vectorworksは30年に及ぶ開発において、CADとして2D図面の作成効率を目指し、多くの設計者のサポートツールとなってきた。基本設計から詳細設計、実施設計、さらにはプレゼンテーション作成までを一つのアプリケーションで完結することができる。さらに初期から3Dモデリングツールを取り入れるとともに、いち早くデータベース機能を持つことによって、モデルと情報の高度な連携を実現してきた。これは現在BIMと言われているものに近く、BIMが叫ばれる前から似たような機能を提供してきた歴史を持っている。また、2Dと3Dの属性を持つハイブリッド建築オブジェクトによって、モデリングは簡便になり、図面の作成も素早く行うことができるようになっている。モデル情報の集計もより一層手軽で、モデルと集計表の連動も兼ね備えている。
 
ここではBIM機能を中心にTipsをご紹介する。一般的なBIMツールでは、壁ツールやスラブツールなどの専用ツールを使ってモデリングするが、Vectorworksは2DでのエスキスからスムーズにBIMに移行する機能を併せ持っている。汎用CADをベースにするVectorworksならではの大きな特長であり、ユーザにとってのアドバンテージとなる。BIMに移行してからも、柔軟なモデリング環境を使い詳細なBIMモデルを構築することができる。
 
エーアンドエーでは、BIMの情報サイト「VectorworksBIMlog」を開設し、その中で、Vectorworks Architectをベースとした、BIM機能の連載を行っている。
http://bim.aanda.co.jp/BIMlog/
 
 





2D図形から部屋を作成

2D CADの機能を使ってエスキスを行うことができる。四角形や多角形などで間取りを検討したら、そこからBIMの部屋オブジェクト(スペース)に変換することが可能。使い慣れた環境からBIMへの移行をサポートする。
 
スペースには高さや面積以外にも、照明やコンセントなどの設備情報を割り当てることができるため、一覧表として集計することができる。
 
 

部屋図形から壁を作成

部屋を作成したら外壁・間仕切り部分に一気に壁を作成。壁ツールで一つ一つ作成することも可能だが、部屋図形を活用することで手間を省き、モデル作成を簡略化することができる。
 
作成する壁も、ダブルラインのものから材料の設定されたものまで、外壁と間仕切りで個別に選択することができる。
 



 

ダブルラインの壁を置き換える

設計初期の段階では壁の仕様が決まっておらず、ダブルラインの壁で作成することが多い。仕様が決まった段階で、ダブルラインの壁から各材料の厚みが設定されたもの(壁スタイル)に置き換えることができる。
 
書き直す手間を抑え、置き換え基準を設定しながら変更ができる。もちろん、壁の仕様が変わった場合も他のスタイルに変更可能。
 



 

フロアの高さと仕上げレベル

フロアの設定(ストーリ)をGLからの高さで明示的に指定できる。これはどのBIMツールでも当たり前にできることだが、Vectorworksはフロア内部にあるさまざまな仕上げ高さも設定することができる。
 
例えば、FL基準をスラブ仕上げとし、床仕上げや天井仕上げ、腰壁天端などをFLからの高さで作成することが可能。仕上げレベルはレイヤとしても作成できるため、高さの変更によってオブジェクトの位置を連動させることができる。
 



 

壁の材料の高さ設定

壁の設定(壁スタイル)では、各種材料の厚みや順序を指定することができるが、実際の建物では、材料ごとに高さが異なってくる。石膏ボードは床仕上げから天井仕上げ、躯体コンクリートはスラブ仕上げから上階のスラブ仕上げなど、材料ごとに変えられるため、設計に応じて柔軟にモデリングができる。
 



 

壁とスラブ、屋根との取り合い

材料の構成が設定されるのは壁だけではない。スラブや屋根にも材料の厚みを設定することができる。
 
さらに、壁とスラブ、壁と屋根の材料同士の取り合いを設定することが可能。それぞれの部材の関係性をきちんとモデリングすることができる。
 



 

2D図形から建築部材への変換

2D図形から変換できるのはスペースだけではない。手摺やスラブ、道路などに変換することができる。
 
いきなり専用ツールで作成する必要はなく、2Dで検討しながら、必要なものを建築部材に変換可能。
 



 

地形モデルの作成と編集

BIMツールとして建物のモデリングは当たり前だが、Vectorworksでは地形モデルも作成することができる。しかも等高線や測量データをもとに作成するため、再現性が非常に高い。
 
さらに、作成した地形モデルに対して、造成地や法面の設定ができ、その結果から盛土や切土の量を算出することができる。
 



 

部材へのカスタム情報追加

建築部材は多くの情報を標準で持っている。しかし、さらに情報を追加したいケースも出てくる。Vectorworksでは、レコードと呼ばれる任意情報を作成し、部材に割り当てることができる。
 
割り当てた情報は、ワークシートと呼ばれる一覧表に集計でき、一覧表からも情報の編集ができる。
 



 

IFC 取り込みのフィルタリング

OpenBIMではIFCデータの授受が重要となる。VectorworksではIFCデータの取り出し、取り込みに対応しているが、設備や構造のデータはファイルサイズが大きい場合が多い。そのような時は、取り込み時にフロアや部材の種類などでフィルタリングして取り込むことができる。
 
大きいデータでも、必要なものだけを取り込むことでデータ量を極力小さくし、モデルを取り回しやすくすることができる。
 



 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2016
特集2「海外のBIM動向&BIM実践」
建設ITガイド 2016
 
 



BIMソフトの実践テクニック講座 ARCHICAD編

2016年9月10日

 

株式会社 シェルパ 平川 史明、藤井 健男、丸山 順一

 
シェルパでは、2010年より社員全員での当番制による「毎日1記事投稿」を合言葉にブログを更新しており、2015年11月末現在で記事総数が約900件となった。
 
BIMに関する記事は全体の6割を占める約550件で、その内、ARCHICADに関する記事は約400件と割合が高い。
 
シェルパでのモデル作成フローは、モデルから得られる成果の「目的・目標」設定から始まり、
① 「手法」を確認し、
② 「設定・テンプレート」を準備し、
③ 「作図ノウハウ」を活用し、
④ 「モデルチェック」を行い、
⑤ 「成果物」の利活用の幅を広げる、
という流れである。
 
ARCHICADに関するブログ記事の閲覧数を、このカテゴリ分けで分析してみると、グラフのような結果となった。
 
記事の中で全体の51%を占めるのが、読者が高い興味を示す、「③作図ノウハウ」である。一番時間のかかるモデル作成段階で、ARCHICADの機能をうまく使って効率よくモデル作成したい、という思いの表れだろう。
 
続いて2 6%を占めるのが、「① 手法」であった。ARCHICADでどのようなモデル活用手法があるのか、という記事も高い興味を示している。
 



 
記事の内容は、シェルパ社内での改善提案活動資料の内容も多く掲載している。この改善提案活動は、社員全員が毎月最低1件、日常業務で知り得た業務改善項目を提案資料として作成し、毎月の社内会議で社員全員によって評価する、という取り組みである。これは約10年前から続けている建築技術ナレッジを蓄積する仕組みの一つである。改善提案シートは2000枚以上を蓄積しており、新たなプロジェクトが開始する際に事前検討資料として活用している。
 



 
シェルパでは、建築技術ナレッジをBIMと結びつけて、蓄積・管理・分析・評価していくという取り組みも行っている。具体的には始めの「目的・目標」設定段階において分析・評価された建築技術ナレッジをモデル作成段階で反映し、また成果物のモデルにナレッジを蓄積していき、PDCAサイクルを回し続ける取り組みである。
 
次ページからは、各カテゴリの中で人気が高い記事と、新たにシェルパで取り組んでいるこの活用方法について紹介していく。また、シェルパは建築技術ナレッジのマネジメントに力を入れていき、BIMによるフロントローディング力向上に邁進していく所存である
【シェルパブログ:http://sherpa-net.blogspot.jp/
 



 

特定天井を検討する

特定天井は、建築の天井補強材が密集して設備部材との干渉が多数発生する。この事例は、モデルのやり取りだけで建築部材と設備部材との干渉確認を行った、というものである。
 



 
ポイントとしては、まず建築部材の吊ボルト、野縁受材、斜め補強材を実際の施工の決まり通りにモデル入力する。すると建築構造材との干渉がないかがモデルを見て確認できる。さらにSolibri Model Checkerで自動検出すると干渉箇所が検出できる。
 



 
建築部材同士の干渉を回避したら、設備業者へこのモデルのIFC データを渡して配管モデルと統合してもらうことで、瞬時に干渉箇所の確認が可能だ。建築と設備での干渉確認をモデルで検討・やり取りをするだけで、2D 平面図や断面図で伝えることに比べると、建築と設備の調整をとても早く確実に行うことができる。
 



 
近年の大地震以来、天井の耐震化が厳しくなり、建築と設備の調整箇所はさらに増える傾向にある。建築と設備それぞれが、各専門部分のモデルを正確に作成し、そのモデルを統合することで効率の良い調整が可能となる。Solibri Model Checkerを用いた干渉チェックを行うことで、より確実に建築と設備の整合を図ることが可能となった。
 
 

材料倉庫、スタートモデル

シェルパでは、モデリング効率化のために「材料倉庫」と社内で呼ばれているテンプレートを用意している。
 



 



 
この「材料倉庫」とは、モデリングの際に必要であると思われる部品が、種類ごと、情報ごとにあらかじめ設定されて倉庫のように揃えられているテンプレートファイルである。例えば扉であれば、「防火扉」や「遮音扉」の開き勝手の種類ごとに揃えておく、性能ごとに色分けする、といった具合にモデルの目的に応じて用意している。
 
材料倉庫の種類はこの内外装モデル以外に、仮設工事部品、外構工事部品などのテンプレートファイルを用意しており、モデル活用の評価を元に中身を随時追加・更新している。
 
またBIM マネージャーがプロジェクトで必要な部品をこの「材料倉庫」からピックアップし、基本部分を組み立てた「スタートモデル」を作成する。この「スタートモデル」から作図者がモデリングすることで、統一したルールで早く間違いが少ないモデルが出来上がる。この方法でモデル作成すると、同じ品質のBIM モデルが完成するため、BIM モデルの扱いがしやすくなり、条件設定を変えることなく情報を引き出してのモデルチェックや、建物の不整合箇所の発見、概算数量出し、などの活用が可能となる。
 



 

モルフツールでモデリング

掘削法面のモデルを作成する場合、1カ所程度であれば、メッシュにポイントを作成し、ポイントのレベルを1 カ所ずつ変えていく作業をするであろう。しかし、ある程度の規模の建物になるとこの方法では気が遠くなるほど手間がかかる。
 
シェルパでは、基礎躯体モデルを利用し、モルフツールを使うことで効率を高めたモデル作成方法を取り入れている。
 



 
この作成方法のポイントは、躯体モデルからマジックワンドで根切り底をモルフで作成する、という方法である。
モルフツールとマジックワンドを組み合わせることで簡単に面を作成でき、根切り底モデルを効率よく作成することが可能である。



また、法面の作成は、あらかじめ角度を付けた壁をマジックワンドで配置することで効率を高めている。掘削法面モデルは、根切り底モルフと法面の壁を合わせて地盤モデルから減算をして完成する。
 



 
モルフツールは、いろいろな使い方ができる優れたツールである。シェルパブログでもモルフに関する記事が多数掲載されている。
 
シェルパブログ「2014/6/12【モルフの使い方のご提案】」では仕上げツールで作成されるオブジェクトの代わりにモルフを使用し、「2014/4/11【モルフの体積を一覧表に表示する】」ではモルフから数量を算出する手法を紹介している。
 
この他にもモデリングツールとして複雑な形状の作成や、展開図を張り付ける際の編集・加工手段として使用するなど使い方は多様である。
 
 

条件セットの活用

No.2 で紹介した「材料倉庫」や「スタートモデル」のテンプレートファイルに、「検索と条件」で条件セットを作成しておくとモデルチェックが楽にできる。
 



 
この記事の例では、「病院の各用途別の部屋に必要な扉の幅が確保されているか」のチェックをしている。テンプレートファイルには、各種属性を与えておいた部品を用意してあるのでモデル作成も容易になり、同時に検索セットも用意しておけばモデル作成者もチェックをしながら作業を進めることができる。
 
この条件セットは、複雑な条件を作成できない代わりに、「+」と「-」をうまく使うことでいろいろな検索選択をすることができる。例えば「防火区画壁に防火戸が配置されているか」のチェックを行うとする。防火区画壁を条件セットで選択した後、そのまま防火戸の条件セットで「+」をクリックすると、防火区画壁と防火戸のみが選択された状態となり、モデル入力ミスがないかのチェックが可能となる。
 



 

天井インサート割付図を書く

この事例は、ARCHICADから2D施工図の切り出しを行った事例である。ポイントは2D施工図を切出していることもさることながら、作図された図面を用いて設備配管等との調整を行ったのではなく、調整された建築と設備の統合モデルから、成果物として図面を切出しているところである。
 
設備業者によりT-fasで作成された設備配管モデルを、建築モデルを作成しているARCHICADへ統合し、SolibriModel Checkerを使用して干渉のチェックを行っており、調整が必要な箇所の提示や修正の指示もモデルのやり取りだけで済ませている。
 
図面化に関しては、モデルの平面に直接2D線、寸法等を追記し、図面化する手法を採っている。
 
BIMソフトウェアは2D平面図の詳細表現が苦手だとされているが、目的を明確にし、必要な箇所だけモデルからの切出しを行い、不足分を2D作図機能で補うことで、天井インサート割付図の作図を、ARCHICADだけで完結させている。
 



 
また、図面作成においてシェルパブログ「2012/4/23【お気に入りの部品を作っちゃおう】」や、「2012/8/20『2Dオブジェクトを作ってみよう』」の記事のように、部品を揃えておくことで、より図面作成の効率化となる。
 



 

リンクオブジェクト(情報オブジェクト)

シェルパでは、GDL オブジェクトで、ファイルやフォルダ、URL へリンクする部品(変更BOX)を作成した。いわゆる、ハイパーリンク機能である。他のソフトではこの機能が付いたものもあるが、ARCHICADでもGDL オブジェクトでこの機能をツールとすることが出来る。作成手順は以下の通りである。
 
1:「ファイル」>「ライブラリとオブジェクト」>「新規オブジェクト」
2:「インターフェーススクリプト」に以下を記述
 



 
3:「3Dスクリプト」に以下を記述
 



 
4:「2Dスクリプト」に以下を記述
 



 
以上、名前を付けて保存して完成。
設定画面を見てみると、下図のようにボタンがあり、クリックするとURL が開く。
 



 
フォルダやファイルのパスを指定すれば、フォルダやファイルが開く。
 
シェルパでは、この部品を利用して変更履歴の蓄積などを行っている。ただ蓄積するのではなく、この変更履歴を項目別(例:工種別)に分類し、どの項目でどのような理由でどのような変更が多く発生しているかを分析する。分析の結果から、次に携わる同じ用途や同じ構造の建物の変更予測を行い、早期に問題を解決していく、という活用をしている。
 
 


 



 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2016
特集2「海外のBIM動向&BIM実践」
建設ITガイド 2016
 
 



buildingSMARTシンガポールサミットにおけるBIM海外動向

2016年9月2日

 

一般社団法人 IAI日本 IFC検定委員会委員長
足達 嘉信

 

はじめに

2015年10月中旬、シンガポールにおいてbuildingSMARTサミットが開催された。
本稿では、国際的なBIMの普及展開に関するさまざまなテーマについて話し合われたそのサミットの内容について紹介する。
 

図-1 buildingSMARTシンガポールサミットの全体会議の様子(2015年10月15日)

図-1 buildingSMARTシンガポールサミットの全体会議の様子(2015年10月15日)


 
buildingSMART International(旧表記はIAI, International Alliance for Interoperability)は、
建設業界におけるデータの共有化および相互運用(Interoperability)を目的として、
BIMの要となる3次元建物情報モデルIFC(Industry FoundationClasses)、
BIMデータ連携仕様を記述するためのIDM(Information Delivery Manual)、
MVD(Model View Definition)、分類コード体系を情報化するためのIFD(International Framework for Dictionaries)を標準化し、
その普及を目指している国際的な団体である。
buildingSMARTでは毎年春と秋の2回、BIMの国際的な普及展開に関わる技術的、実務的な課題の解決を進めるため、
サミットと呼ばれる国際会議を開催している。
今回のシンガポールサミットは、同じ会場で開催されたISO TC59会議、
およびシンガポールExpo会議場で開催されたGovernment BIM Symposiumとの合同開催となっていた。
 
2013年にBIMの3次元建物情報モデルIFCの国際標準化(ISO 16739:2013)が完了してから、
buildingSMARTの活動は、BIMデータ連携シナリオや、IFCに基づいたBIMデータ連携仕様、エンドユーザー向けBIMガイドラインなど、
BIMが活用されるために必要な国際的な仕組みの標準を策定する作業へ移行してきている。
また、道路、橋梁、トンネル、鉄道などのインフラストラクチャー分野へのIFC拡張も活発な作業となってきている。
これらの標準化作業は、下記の5つのRoomと呼ばれる委員会で行われている。
 
●Building Room:BIMガイドライン、BIM教育、IDM、MVDなど建築分野のBIM活用に必要な標準、ドキュメント、
 技術仕様などの作成を行う
●Infrastructure Room:道路、橋梁、トンネル、鉄道分野へのIFC拡張を行う
●Product Room:IFD、分類体系コードなどの標準をBIMライブラリへ活用する手法の開発
●Regulatory Room:建築申請分野へのBIM活用ガイドライン策定や、自動チェックシステムの研究など
●Technical Room:IFC拡張、メンテナンスおよびセマンティックWebへのIFC活用手法の研究など
 
本稿では、buildingSMARTシンガポールサミットの各委員会(Room)において共有されたBIMガイドライン、BIM教育プログラム、
BIMライブラリ、インフラ分野へのBIM活用などの各国のBIM関連の動向について以下に紹介する。
 
 

BIMガイドライン

BIMガイドラインデータベース

 

図-2 buildingSMART BIMガイドラインプロジェクトがまとめたBIMガイドラインマップ

図-2 buildingSMART BIMガイドラインプロジェクトがまとめたBIMガイドラインマップ


 
Building Roomに設置されたBIMガイドラインプロジェクトは、
世界各国で発行されたさまざまなBIMガイドラインを収集し、データベースとして整理をした。
現在、BIMガイドラインデータベースには、77のBIMガイドラインについて、
名称、作成者、ガイドラインの種別、概要、目次などの情報がデータ化されている。
図-2に示しているのは、BIMガイドラインデータベースから、作成場所が世界地図として表示している様子である。
 

シンガポールのBIMガイドライン

アジア地域でもBIMの普及が急速に進展しているが、
中でも今回のサミット開催国のシンガポールはBIM活用に関しては先進的な取り組みを行っている。
シンガポール政府の建築建設局(BCA, Building and Construction Authority)は、2012年から2015年にかけて順次、
以下のように建築確認申請時のBIMモデル提出(BIM e-Submission)の義務化を進めてきている。
 
●2013年は2万㎡超の建築物における意匠モデル
●2014年は2万㎡超の建物における意匠・構造・設備モデル
●2015年からは5,000㎡超の建物における意匠、構造、設備モデル
 

図-3 シンガポールBIM基本ガイドラインのイメージ

図-3 シンガポールBIM基本ガイドラインのイメージ


 
シンガポールではこのBIM e-SubmissionによりBIM活用度を高めることを目指しており、
必要なBIMガイドラインの策定、教育プログラムやBIMを採用したプロジェクトへの助成金など、
BIMを根付かせるためのさまざまな仕組み作りに取り組んできている。
 
シンガポールでは、BIM e-Submission向けのBIMガイドラインの他に、BIM基本ガイドライン(BIM Essential Guide)と呼ばれる、
下記のような各職能向けのドキュメントが公開されている。
 
●BIM Essential Guide For Architectural Consultants:意匠設計編
●BIM Essential Guide For BIM Adoption in an Organization:BIM採用組織編
●BIM Essential Guide For BIM Execution Plan:BIM実行計画編
●BIM Essential Guide For Civil&Structure Consultants:土木・構造編
●BIM Essential Guide For Contractors:施工者編
●BIM Essential Guide For MEP Consultants:設備設計編
 

フィンランドのBIMガイドライン

2007年、フィンランドにおいて公共建築の発注・維持管理を行っているSenate Properties社が
BIMガイドライン(BIM Requirements)を公開した。
その後、2012年にCommon BIM Requirements(COBIM)として、
国レベルの共通BIMガイドラインとして13編のドキュメントが公開されている(図-4参照)。
 

図-4 フィンランドの共通BIMガイドライン(COBIM)英語版の表紙イメージ

図-4 フィンランドの共通BIMガイドライン(COBIM)英語版の表紙イメージ


 
原文はフィンランド語であるが、英文のドキュメントも公開されている。
2014 年には建築確認分野の14編目のフィンランド語のドキュメントが公開された。
 
●Series 1:General part:概要編
●Series 2:Modeling of the starting situation:モデル初期設定編
●Series 3:Architectural design:意匠設計編
●Series 4:MEP design:設備設計編
●Series 5:Structural design:構造設計性
●Series 6:Quality assurance:品質保証(モデルチェック)編
●Series 7:Quantity take-off:数量積算編
●Series 8:Use of models for visualization:ビジュアライゼーション編
●Series 9:Use of models in MEP analyses:設備分析編
●Series 10:Energy analysis:エネルギー分析編
●Series 11:Management of a BIM project:BIMプロジェクトマネージメント編
●Series 12:Use of models in facility management:FM編
●Series 13:Use of models in construction:施工編
 
今回のサミットでは、building-SMARTスペイン支部から、
このフィンランドCOBIMガイドラインのスペイン語版の翻訳が完成したとの報告があった(図-5参照)。
 
図-5 COBIMを基に作成されたスペインのBIMガイドライン

図-5 COBIMを基に作成されたスペインのBIMガイドライン


 
フィンランドのCOBIMは、エストニア、ポーランドにおいても翻訳がされているとのことである。
また、IAI日本支部BIMガイドライン分科会においても、2012年から2013年にかけてCOBIMの内容に関する分析を行っているが、
COBIMは各国のBIMガイドライン策定にさまざまな形で貢献し、影響を与えているといえる。
 

フィンランドのインフラ分野のBIMガイドライン

フィンランドではインフラ分野へのBIM活用を進めるためInfraBIMプロジェクトを推進している。
これは日本におけるCIM(Construction Information Modeling)に相当するものである。
InfraBIMプロジェクトは、2015年にインフラ分野のBIMに関するガイドラインを
Common Infrastructure modeling requirementsとして公開した(図-6参照)。
 

図-6 フィンランドのインフラ分野BIMガイドラインのイメージ

図-6 フィンランドのインフラ分野BIMガイドラインのイメージ


 
ガイドラインは12章から構成されており、原文はフィンランド語である。
現時点で12章の内4章が英文に翻訳されている。
 
 

BIM教育プログラム

BIMが要求されるプロジェクトが増加するにつれ、
発注側、受注側の人材にBIMについての知識、運用、管理能力などが求められるようなってきている。
組織的にBIMを推進する場合、BIMソフトウェアの操作のみならず、BIMの実行計画を策定したり、
BIMプロセスをマネジメントしたりする多様なBIM能力が必要となる。
そのようなBIM人材を募集する際にも、どのようなBIM能力が求められているかを明確にするため、
BIMに関するスキルセットの定義が求められるようになってきている。
今回のサミットでも、特に国境をまたいだBIM人材を募集する際には、
国際的に共通なBIM能力、職能、認定制度などが必要になるとの認識が高まってきていると感じた。
 
英国では、公共建築プロジェクトへのBIM導入を2016年までに達成させるため、BIM人材の育成に関しても力を入れている。
BIMマネジメントに関するスキルセットを定義し、それらをBIM教育プログラムとして構築して、
一定レベルのBIM運用力を持った人材の育成を体系的に行う資格認定の仕組みを構築する計画を進めている。
同様な、BIM人材の認証に関しては、ノルウェー、フィンランド、シンガポールなども積極的に進める動きを見せている。
 

ノルウェーのBIM教育

ノルウェーでは、BIM人材の教育カリキュラムを、
基本編、マネジャー編、発注者編、コンサルタント編、施工者編、行政機関編などから構成し、
2日間で履修できるBIM教育コースの提供を開始している。
基本編では45、設計者・施工者編では89の教示ポイントを設定し、eラーニングサービスも提供している。
BIMソフトウェアに関するトレーニングは、このカリキュラムには含まれていない。
ソフトウェアのトレーニングは、ソフトウェアベンダーのトレーニングプログラムと組み合わせるとのことである。
 

シンガポールのBIM教育

シンガポールにおけるBIM教育は、建築建設局BCAの教育機関であるBCA Academyが中心なって進められている。
BCA Academyは、建築・建設関連のさまざまな技能研修が受けられるように、教室や技能研修施設を備えている。
BIM関連では、BIMソフトウェアトレーニングや、
3次元計測、VR装置などの研修が可能な教室やワークショップを持つBIM Studioと呼ばれる施設を備えている。
 
シンガポールのBIM教育カリキュラムは、以下のような数種類のコースが用意されている。
5カ月間のパートタイムで履修するコース、4日間(32時間)で履修するBIMモデリング認証コースなどがある(図-7参照)。
 

図-7 シンガポールBCA AcademyのBIM教育コース案内

図-7 シンガポールBCA AcademyのBIM教育コース案内


 
●BIMモデリング認証コース(意匠)
●BIMモデリング認証コース(設備)
●BIMモデリング認証コース(意匠)
●BIMマネジメント認証コース
 
例えば、BIMモデリング認証コースでは、
BIMの基本、BIMツールユーザインターフェース、モデリング演習(マスモデル、敷地モデル、ビジュアライゼーションなど)、
電子申請(e-Submission)演習、BIMライブラリ作成などがコースの概要である。
受講料は1600シンガポールドル(約15万円弱)であるが、助成金を適用すると553ドル(約5万円)となる。
 

BIM職能について

今回のサミットでは、BIMに関わる職能、職務(Role)に関して用語を整理する検討会が立ち上がった。
今回の会議では、下記のような職能が例として上がられた。
 
●BIM Modeler:BIMモデルを作成
●BIM Coordinator:BIMプロセスのコラボレーション管理
●BIM Manager:BIM環境の構築・管理
 

図-8 BIM職能の構成イメージ

図-8 BIM職能の構成イメージ


 
図-8に示すのは、buildingSMARTスペイン支部が作成したBIM職能の検討資料で、
BIM Coordinator,BIM Specialist,BIM Expert Master,BIM Managerなど4つ職能に分かれており、
それぞれ複数のBIM能力単位から構成されている。
今後、国際的に共通なBIM職能定義を検討することになる。
 
 

BIMライブラリ

buildingSMARTのサミットでは、ここ数年BIMライブラリに関する報告や検討テーマが増加してきている。
一つは各国のBIMライブラリ整備に関する報告で、
英国NBSのNational BIM Library、ドイツ技術者協会が中心となってISO化を進めている設備系のBIMライブラリ、
ノルウェーのbuildingSMART Data Dictionaryを活用したBIMライブラリ、今回フランスから報告があったPPBIMプロジェクトなど、
さまざまな活動が進められている。
2015年10月、日本においてもBIMライブラリコンソーシアムが発足し、
本格的なBIMライブラリの共通プラットフォームの検討が開始されたところである。
 
本稿では、ドイツ、英国のBIMライブラリの動向と、
BIMライブラリの整備には必須である分類コード体系の標準に関する最新情報を以下に紹介する。
 

図-9 BIMライブラリの事例(左:ISO 16757、右:英国NBS National BIM Library)

図-9 BIMライブラリの事例(左:ISO 16757、右:英国NBS National BIM Library)


 

ISO 16757:設備機器BIMライブラリ

ISO 16757(Datastructures for electronic product catalogues for building services)として
設備機器のBIMライブラリに関連する標準が策定されている。
この仕様の基になっているのは、
ドイツ技術者協会が開発してきたVDI3805と呼ばれる設備機器の3次元オブジェクトライブラリである。
設備分野の電気、空調機器などにおいて、
技術計算可能な属性データやパラメトリックな幾何形状表現を持つ3次元機器ライブラリをIFCで表現することを目的として、
ISO TC59 SC 13/WG11において標準化が行われている。
 

NBS National BIM Library

王立英国建築家協会RIBAの下部組織であるNBS(National Building Specification)が進めている
National BIM Library(図-9の右参照)は、BIMライブラリの一つのプロトタイプとして注目されている。
NBS BIM Object Standard v1.2としてBIMライブラリの技術的仕様が公開されている。
今後、buildingSMARTにおけるBIMライブラリに関するデータ連携の標準化において、
NBSのNational BIM Libraryのフレームワークは参考になるものと考えられる。
 

分類コード体系標準

BIMライブラリを整備する際、建設ライフサイクル全体を対象とした分類コード体系の活用が重要な要素となる。
BIMライブラリが含むBIMオブジェクトの種別や属性情報を産業横断的に情報を流通させるためには、
部材、空間などの機能、プロセス(フェーズ)、製品、材質、性能、関係者の役割などがコード体系としてまとめられている必要がある。
米国のOmniClass、英国のUniclassなど、各国にBIMで参照される分類コード体系が存在しており、
これらがBIMライブラリの定義においても活用されている。
 

図-10 BIMライブラリに関連する分類コード体系関連の標準とIFCの関係

図-10 BIMライブラリに関連する分類コード体系関連の標準とIFCの関係


 
図-10は、IFC,IFD(building-SMART Data Dictionary)と分類コード体系に関連する標準の関係を示している。
 
●ISO/IEC/EN 81346-1:2009:Industrial systems,installations and equipment and industrial products — Structuring principles and reference designations — Part1:Basic rules
●ISO/IEC/EN 81346-2:2016:Industrial systems,installations and equipment
and industrial products — Structuring principles and reference designations — Part2:Classification of objects and codes for classes
●ISO 81346-12:2016:Industrial systems,installations and equipment and industrial products — Structuring principles and reference designations — Part12:Construction works and building services
●ISO 12006-2:2015:Building construction — Organization of information about construction works — Part 2:Framework for classification
●ISO 704:2009:Terminology work — Principles and methods
●ISO 22274:2013:Systems to manage terminology,knowledge and content — Concept – related aspects for developing and internationalizing classification systems
 
 

シンガポールサミットからみるBIMの展望

BIM関連の認証

今回のbuildingSMARTシンガポールサミットでは、BIMの展開に必要な仕組みとして、
BIMの職能・職務、それと連動したガイドラインや教育プログラムなどに焦点が当てられた。
また、これらの仕組みを持続的に運用するために、さまざまな認証の仕組みも検討され始めている。
すでに行われているBIMソフトウェアのIFC認証を含めて、以下のような認証プログラムの可能性を検討した。
 
●BIMソフトウェアのIFC認証
●BIM個人能力認証
●BIM組織認証
●BIMプロセス認証
●BIMライブラリ認証
 
特に、BIM個人能力認証については、英国、北欧、シンガポールなどで既にBIM教育プログラムとともに開始されている。
buildingSMARTではBIM職能、スキルセットなどに関する国際的な共通フレームワークを今後定義し、
上記のような認証プログラムを提供していく予定である。
 

インフラ分野のBIM

これまで道路中心線形を中心にインフラ分野のBIMを議論してきていたが、
今回のサミットでは、中国鉄道による高速鉄道プロジェクトにおけるBIM活用に関する発表により、
鉄道分野のBIMに関して今後強力な推進力が中国から出てくるという印象が強まった(図-11参照)。
 

図-11 中国鉄道による鉄道BIM(buildingSMARTシンガポールサミット2015会議資料から)

図-11 中国鉄道による鉄道BIM(buildingSMARTシンガポールサミット2015会議資料から)


 
また、会議全体の議論の内容を見ると、単体の建物モデルだけではなく、
街区レベル、都市レベルのBIMモデルが集積された場合のアプリケーション、サービスの内容へも広がってきている。
新しい都市建設におけるSmart City化、既存の都市インフラ機能の向上や効率の良い維持管理などへ、
BIM、GISやインフラ関係のモデルも連携して活用していくという流れが生まれてきているといえる。
 
 
 

参考文献

●buildingSMART BIMガイドラインプロジェクト, BIMガイドラインデータベース:http://bimguides.vtreem.com/bin/view/BIMGuides/Guidelinesk
●Common BIM Requirements 2012, buildingSMART Finland:http://www.en.buildingsmart.kotisivukone.com/3
●Common InfraBIM Requirements YIV 2015, buildingSMART Finland:http://www.infrabim.fi/en/requirements-and-guidelines/common-infrabim-requirements/
●National BIM Library, NBS:http://www.nationalbimlibrary.com/
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2016
特集2「海外のBIM動向&BIM実践」
建設ITガイド 2016
 
 



 

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