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海外CIM調査レポート−米国におけるCIM人材育成−

2016年6月28日

 

宮城大学 事業構想学部 デザイン情報学科
教授 蒔苗 耕司
一般財団法人 日本建設情報総合センター 研究開発部
影山 輝彰

 

はじめに

CIM(Construction Information Modeling/Management)とは、
公共事業の計画から調査・設計、施工、維持管理そして更新に至る一連の過程において、
ICTを駆使して、設計・施工・協議・維持管理等に関わる各情報の一元化および業務改善による一層の効果・効率向上を図り、
公共事業の品質確保や環境性能の向上、トータルコストの縮減を目指すものである。
 
平成24年度に提唱されたこの理念を推進するため、
JACIC研究開発部では、研究開発事業の一環として継続的に海外調査を実施している。
海外調査の主たる目的は、
CIMやBIM(Building Information Modeling)の国際標準化、基準・ガイドライン類や人材教育に関する動向を把握し、
わが国の建設生産システムでのCIMのあるべき姿や具体的な適用方法を検討するための参考または、基礎資料を得るためである。
 
平成27年11月、JACICでは、これらに関わる研究成果の一部を踏まえ、
国内の3次元CADソフトを実務として活用できる技術者を育成し、
CIMの普及に向けた環境を整備する「CIMチャレンジ研修」の開設を発表したところでもある。
 
 

CIMに関わる国際調査

平成27年度に実施したCIMに関わる国際動向調査は、
欧州での要領・基準・ガイドラインを主体とした調査と米国での教育・訓練を主体とした調査の2つである(表-1)。
 

表-1 平成27年度 CIMに関連する海外調査

表-1 平成27年度 CIMに関連する海外調査


 
今回は、教育・訓練調査を主体とした米国方面の調査概要を紹介したい。
 
 

BIMを核とした生産管理システムの構築 ニューヨーク市デザイン・建設部

ニューヨーク市の建設事業を担うデザイン・建設部(NYCDDC; New York City Department of Design and Construction)では、
平成26年より建設IT研究者であるF.Penamora博士(前・コロンビア大学工学・応用科学部長)をコミッショナーとして迎え、
BIMの導入を精力的に進めている。
今回の訪問では、Penamoraコミッショナーの他、K.F.Donnelly副コミッショナー、各担当者らから
BIMの導入状況等について説明を受けるとともに、意見交換を行った。
 
NYCDDCでは、数年前より大規模プロジェクトを対象にBIMの導入を開始し、平成24年にはBIMガイドラインを作成し(図-1)、
モデリングの対象物とその詳細度LOD(Level of Development)を定め、
受注者にはガイドラインに基づいたBIM実行プランを30日以内に提出することを求めている。
 

図-1 BIM Guidelines (NYCDDC)

図-1 BIM Guidelines (NYCDDC)


 
現在のガイドラインは主に建築物を対象としたものであるが、
平成28年春に発行予定の「BIM Guidelines 2.0※1」ではインフラ構造物や施設管理への拡張を予定している(図-1)。
またレーザー測量の有用性についても理解がなされ、BIMとの融合についても取り組んでいる。
教育訓練については、市独自に教育訓練プログラムは有しておらず、受注各社が独自で行っている状況である。
ただし最近の米国の大学教育では建設マネジメントに人気があり、
BIMに関する教育も盛んに行われており、基礎知識を持った技術者が輩出されるようになってきているとのことであった。
 
 

維持管理・サービスの一体化 マサチューセッツ州港湾局

マサチューセッツ州港湾局 (Massport)は、ボストン地域の3空港と港湾の建設・管理を担っている。
今回の訪問では、BIMを所管部局長のS. Sleiman氏からMassportの概要説明の後、
L. Burdi副局長、D.ArcieroマネージャーからBIMのガイドラインの整備状況等について説明を受けるとともに、
BIMに関する意見交換を行った。
Massportでは3年前から、設計の正しい理解、設計変更・干渉等によるRFI(Request for Information)の減少、
アセットマネジメントを目的にBIMの導入を進めている。
平成27年には「BIM Guidelines for Vertidcal and Horizontal Construction※2」を定め、
Vertial(建築物)、Horizontal(インフラ構造物)の別、概算費用に応じたBIMの利用指針を定めるとともに、
BIM実行計画(BIMxP)の作成方法、建築物に関するLOD(level of development)を定めている。
 

図-2 BIM Guidelines for V&H

図-2 BIM Guidelines for V&H


 
また、平成32年までのBIMのロードマップを作成し、
今後、プロジェクトマネジメント、教育訓練、そして施設管理、統合的なアセットマネジメントに至るまでの目標を段階的に示している。
また人とプロセス、技術のバランスを保つことが必要であると考え、
トヨタ生産方式に基づくプロセスマネジメント手法LeanをBIMと合わせて導入している点が大きな特徴となっている(図-3)。
 
図-3 BIMの流れと求められる3次元モデルの詳細度(LOD)Model Submissions

図-3 BIMの流れと求められる3次元モデルの詳細度(LOD)Model Submissions


 
 

明確な実施目標と着実な積み重ね ウィスコンシン交通局南東地域(WisDOT SE)

WisDOT SEはウィスコンシン州南東地域を管轄しており、
Zooインターチェンジ(IC)をはじめとした複数の大規模プロジェクトが集中している。
第1日はWisDOTウォーケシャオフィスを訪問し、 B. Wallace局長、S.Schmit副局長からの組織概要の説明後、
各担当者からMDU (Method Development Unit)におけるCIMへの取り組み、 Zoo IC改築プロジェクトの概要説明、
そしてZoo ICを中心とした南東地域の道路事業におけるCIMへの取り組みについての情報提供を受けるとともに、意見交換を行った。
第2日にはZoo IC現場事務所を訪問し、 R. Luck建設長からの概要説明の後、
3次元設計や文書情報の管理についての技術的情報に関する説明を受けるとともに、意見交換を行った。
また同日午後には、工事現場および交通管制センターの視察を行った。
 
WisDOT MDUは、州全体でのCIM(Civil Integrated Management)の導入のためのマニュアル等の整備を担当する部局である。
MDUでは3次元設計の有効性を高く評価し、
平成20年にAutodesk社のCivil3Dの導入、平成25年には”WisDOT Design Model”を定め、平成26年からその運用を開始している。
また教育訓練については、通常の講義形式では個人の習熟度の違い等により教育が難しいことから、
ビデオ教材を用いたオンライン教育を導入し、作業分野ごとにカリキュラムを設定している。
今後は、“Design Model”のさらなる整備を進めるとともに、その導入効果の検討、トレーニングコンテンツの改良、
そして建設契約管理システムとの統合、ライフサイクルを考慮した情報モデルの開発(図-4)を進めていく予定である。
 

図-4 CIMモデルの納品仕様

図-4 CIMモデルの納品仕様


 
WisDOT SEでは、平成25年にウィスコンシン大学と共同で3次元技術実装プランを作成し、
3次元モデリング、干渉評価、可視化、仮想現実(VR)・拡張現実(AR)の導入までを対象とした平成27年までのロードマップを作成し、
CIM導入を進めている。
 
WisDOT SEの管内に存するZoo ICは、
2本のインターステートハイウェイと1本のUSハイウェイが交差する平均日交通量35万台の大規模インターチェンジであり、
道路構造改良のために大規模な改築工事を進めている。
平成24年に改築工事に着手し、平成32年度に竣工を予定している。
工事の実施においては、15分の通行遅延を最大限度としたガイドラインを設け、日中の交通制限を極力避けるよう実施している。
また工事による規制情報は、SNS等を含めたさまざまな媒体を通じて住民への周知を図っている。
工事の遂行ではCIMを積極的に導入しており、工事契約時に必要とされる大量の設計図書が不要となること、
3次元設計の導入により異なる工種間での干渉検出が極めて有効であることが示されている。
またプロジェクト管理においては、さまざまな文書管理のシステム化を進めていることと、
事業遂行において予算、スケジュール、変更管理、リスクマネジメント、ドキュメント管理等を含めた
工程管理が重要であることが説明された。
またCIM全体の調整役として“CIMコーディネーター”が重要な役割を担っている。
 
 

米国の流れ

今回の調査を通じて、米国の公共事業発注機関でのBIM/CIMの先進的な取り組みの状況を把握することともに、
それを進めるに当たってのさまざまな工夫や課題を把握することができた。
Horizontalとも呼ばれる土木インフラに関する取り組みは、米国においてもまだ試行段階にあるが、
Vertical(建築)でのBIMの急速な進展の影響を受けて、その整備は急速に進みつつあること、
またBIM/CIMの導入のための技術者への教育訓練も一体としてロードマップに取り入れられていることが明らかとなった。
 

新たな生産管理システムへの移行

米国では、5億ドル以上(または交通省の長官指定の)プロジェクトにはIPD (Integrated Project Delivery)※3を義務付けている。
 

表-2 ウィスコンシン交通局南東地域のIPD指定事業

表-2 ウィスコンシン交通局南東地域のIPD指定事業


 
今回現地訪問した、「Zoo Interchange」は、IPDの指定事業であるが、いくつかの理由により実施していないとのことであった。
なお、今回調査した組織おける調達方法は、主に設計施工分離発注方式であった。
これらの背景として、BIM、CIMの運用を始めたばかりであり、
従来の生産管理システムとの融合または置き換えを進めている途中段階であることが挙げられる。
 
しかしながら、BIM、CIMの利点を踏まえ、その効果を生かすための調達方法を取り入れるのは自然な流れと考えられる。
なお、今回調査した組織の全てにおいて、BIM、CIMを取り入れた新たな生産管理システムを運用するにあたり、
必須となる役割や部署が設置されているのが理由の一つでもある。
 

技術の進歩により求められる新たな役割と立場

現在、われわれの日常業務において電子メールやインターネットの利用が一般的になっているが、
これらの利用に当たり、企業内の情報システムの整備や管理を担う部局が組織されていることが多い。
自らの企業活動の中で新たな技術や手法を組織的に導入する場合には、
それらに対応した役割と立場が必要になるのは当然の流れである。
BIMによる生産システムでも同様であり、今回、調査した組織でも、CIMに専門特化した新たな役割・立場として、
BIMによる生産システムを管理する「BIM Manager」、
既存システムとの親和性の確認やデータ交換を専門とする「BIM Coordinator」が配置されている(図-5)。
 

図-5 新たな役割と立場 BIM Manager 等

図-5 新たな役割と立場 BIM Manager 等


 
このようなBIMの専門職員の配置は、CIMを円滑に利用していく上で重要な役割を果たしており、
今後、同様の試みは増加していくものと考えられる。
 
 

おわりに

平成24年度より、わが国においては、CIMの取り組みを始めたところである。
現在、国土交通省におけるCIM試行事業における取り組みは、
まずは試行を受注した業者が取り組めるところからCIMの適用を始めていた。
これを調査、設計、施工、維持管理に跨る段階へ広げるため、
河川・ダム、道路、橋梁の4分野において産学官CIMの取り組みが行われている。
 
平成28年度には「CIM導入ガイドライン(案)」を作成することが発表されている。
わが国においてCIMを核とした新たな生産管理システムの導入を進めるに当たっては、
今回調査した内容が大いに参考になると考えられる。
 
 
 
※1http://www.regional-alliance.org/news/nyc-department-design-and-construction-nyc-ddcseeking-smwbes-rfqs
※2https://www.massport.com/media/325526/MPAFinalDraftBIMGuide_021115_2133.pdf
※3http://www.fhwa.dot.gov/ipd/project_delivery/
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2016
特集1「本格化するCIM」
建設ITガイド 2016
 
 



Bulid Live Japan2015の新たな試みと今後

2016年6月27日

 

IAI日本 Build Live分科会リーダー
山極 邦之

 

Build Live Japan 2015

2015年10月23日に開催されたArchi Future 2015のセミナーS-1には、ほぼ満員の聴衆にご来場いただき、
Build Live Japan 2015(以降BLJ2015)の審査結果を発表しました。
BLJ2015はそれに先立ち、9月9日から13日にかけて、大分県杵築市の城下町地区に課題敷地を設定して開催されました。
 

Archi Future 2015のBLJ2015セミナー会場

Archi Future 2015のBLJ2015セミナー会場


 
セミナーには杵築市から市長と城下町地区まちづくり協議会会長らも出席され、熱い思いの込もったコメントをいただきました。
12チームの参加を得たBLJ2015は、
杵築市の活性化につながる土地活用のアイデアや事業化への気付きを誘発するきっかけになり得たのではないかと感じました。
 
BLJ2015の上位入賞チームは次の通りです。
チームスカンクワークスに、今回課題敷地となった地元から地域賞として杵築大賞、
および主催者であるIAI日本からはデータ連係などの技術的な観点から、Best BIM Practice賞がダブルで授与されました。
また、チーム見沼ドラゴンズにBIMのプロセスや提案された建築の質を重点に審査する審査員賞として最優秀賞が贈られました。
 
表 BLJ2015結果一覧

表 BLJ2015結果一覧


 
チームスカンクワークスは前田建設工業を中心とした実務チームであり、
地元の方々に最も感銘を与えた完成度の高い取り組みを見せました。
近年のスカンクワークスは、職員のBIM教育の一環としてBuild Liveへの参加を継続しており、
毎年異なる陣容にも関わらず上位入賞の常連です。
 
チームスカンクワークスのポスター

チームスカンクワークスのポスター


 
また、最優秀賞を受賞したチーム見沼ドラゴンズは芝浦工業大学の学生チームで、
BIMの新しい可能性を毎回のように提案してくる上位入賞の常連チームです。
 
チーム見沼ドラゴンズのポスター

チーム見沼ドラゴンズのポスター


 
さらに、チーム東京都市大学インテリアプランニング研究室が杵築賞と優秀賞をダブル受賞しました。
東京都市大学インテリアプランニング研究室はBuild Liveに2011年から参加されている研究室ですが、
建築専攻ではない学生のチームということに驚かされます。
 
そして、もうひとつの杵築賞は、なんと高校生のチーム 大阪市立都島工業高校 KITTNESが受賞しました。
 
最後に、チーム中部大学Kitsuki-Labが優秀賞を受賞しました。
チーム中部大学 -KitsukiLab-は初参加にもかかわらず、質の高い提案をしたことが評価されました。
 
BLJ2015の各チームの取り組みは、公式Blogや、そこからリンクされている各チームのアピールサイトに記録されています。
また、要項や課題、公開資料もここからリンクが張られています。ぜひご覧ください。
 
BLJ2015公式Blog

BLJ2015公式Blog


http://bljapan2015.seesaa.net/
 
BLJ2015は、大分県杵築市および国土交通省九州地方整備局からの後援を得るなど、地元とのつながりが強い取り組みとなりました。
このため、これまでのBuild Liveと比べて、事業へつながる可能性をひときわ感じる大会となりました。
地元の方々も、全国から集まった多くの提案を見ることによって、まちの活性化の起爆剤になることを期待していたのです。
 
 

Build Liveとは

さて、Build Liveは、2009年2月に初回が開催され、今回が第8回となりました。
当初のBuild LiveはBIMの普及を目指した取り組みでした。
Build Liveは主催者(IAI日本)が用意した3Dの土地IFCモデルの上に、参加チームが課題建物を設計し、
期限までに所定のデータを提出するという流れで進みます。
今回のBLJ2015では四日後を最終提出期限としましたが、
当初は提出の期限を二日後に設定したので、その非常識な短期間さに注目が集まりました。
 
所定のデータの提出先は、
主催者が用意したインターネット上の情報共有サーバ(アルファオフィスhttp://cabi.alpha-office.jp/)です。
情報共有サーバには、
このほかに各チームが設計検討のプロセスで使用した要となるデータを提出するように指示していますので、
参加チームが何をしているのかは、最初から丸見えになります。
もちろん参加チーム同士でもお互いに何をしているのか分かってしまいます。
しかしこれは、参加チームがBIMをどのように進めているのかを審査員が確認して評価するために指示しているのです。
もっとも、いくら他チームの様子が見えるとしても、妙なことはできません。
全てのチームが見られているわけですから。
 
こうして、BIMソフトやシミュレーションソフトを駆使してさまざまな検討を重ね、フィードバックし、
設計を進めていく参加チームの取り組みがデータ共有サーバに記録されていきます。
さらに、BLJ2013からは、各チームの取り組みの様子を自らアピールサイトに公開してもらうことにしました。
各チームの進捗の様子やトラブル発生などをリアルタイムに報告していただくことで、
BIMの現場の臨場感がよく伝わるようになりました。
このように、Build Liveの進め方も変化しています。
 
Build Live終了後、主催者は参加チームから提出されたIFCデータを自動解析ツールにかけて、
所要室面積表への変換を試みました(スペースバリデーション)。
主催者はBuild Live開始前に、参加チームに提出してもらうIFCデータの作成方法を伝えています。
内容はIFCデータの仕様だけでなく、その参加チームが使うBIMソフトに合ったIFCデータの作成手順です。
その上で、提出されたIFCデータが指定の仕様と合致しているか解析するのです。
これによって、各チームの技術のレベルや作業のマネジメントのレベルなどを評価できると考えています。
これまでのBuild Liveではスペースバリデーションの結果はあまり思わしくありませんでしたが、BLJ2015では過去最高の出来でした。
 
また、最近の審査会では、提出された3Dモデルを画面表示しリアルタイムで確認することや、
TV会議システムを用いて参加チームによるプレゼンテーションと質疑応答を行い、的確で素早い審査が実現しています。
 

審査員審査の審査風景

審査員審査の審査風景:左側画面から、UC/win-Roadによるリアルタイムパススルー表示、GotoMeetingによるTV会議、資料表示


 
 

遠隔地から参加するチームへの配慮

BLJ2015では、現地見学会を開催するなど事前の情報発信が活発に行われました。
しかし、地元で行われる説明会では、遠隔地からの出席が困難で、Build Liveへの参加障壁となりかねません。
このため、主催者は、インターネットのさまざまなサービスを活用した情報発信に努めました。
 
情報発信の中心は公式Blogです。
公開した全ての情報へのリンクがここにあります。
Facebookは双方向性を活用して応募者とコミュニケーションするグループと応援グループを設けました。
またGISの利用ではGoogle Mapを使った敷地周辺の店舗情報などを提供しています。
 

Google Mapで公開中の商店街のマップ

Google Mapで公開中の商店街のマップ


 
まちの様子は主催者が撮影した1,500枚近い写真を写真公開サイトで提供。
さらに、敷地周辺を文字通りウォークスルーする動画も公開しています。
 
まちなみのマッピング素材写真の提供

まちなみのマッピング素材写真の提供


 
これらの情報掲載は、杵築市の情報発信のメディアとしても機能します。
実際に遠隔地の参加チームから、これらの情報が役立ったとのコメントもいただきました。
 
一方で、深刻な問題として考えているのが一部の企業、
特に大きな企業で社内からBuild Liveで利用しているインターネットサービスを参照できない事態で、
デジタルデバイドに類似した課題と考えられます。
このような事態が足かせとなってIT化が進む世界中の建設業から、わが国の建設業が遅れをとらないように願うばかりです。
 
 

BLJ2015主催の技術的な特徴

先にも書いたように、BLJ2015では一般の方々にアピールすることが求められたため、
誰が見ても分かりやすいBuild Liveにすることが求められました。
このため、なじみのあるCGパースや実体験に近い感覚の得られるVR(パススルー)といった表現方法を重視することにしました。
 
また、今回の課題敷地は、まちの中心を貫く道路の両側の12カ所に点在する上、
これらを総合的にまちなみとして検討する課題となったため、
まちなみをパススルー表現できるツール、および、周辺建物と土地形状の正しいモデルが必要でした。
城下町地区の多くの建物は瓦の勾配屋根で、これを再現しないとまちの雰囲気が出そうもないと考えました。
 

12カ所の課題敷地

12カ所の課題敷地


 
杵築のまちなみ

杵築のまちなみ


 
さらに、杵築市の城下町地区は谷沿いの商店街と両側の高台の間の斜面が複雑な地形です。
国土地理院の標高メッシュデータでは精度良く表現しきれませんし、手作業でモデル化するのも困難です。
杵築市からArcGISのデータをお借りすることができたのですが、さらに情報が必要でした。
中心となる道路も緩やかな勾配と曲線が続く複雑な形状です。
 
ドローンを飛ばして計測するなどいろいろな可能性を探っていたところ、
地元の測量会社が航空機でレーザー測量した杵築市のポイントクラウドデータをお持ちでその活用先を探っており、
利用させていただけることになりました。
ポイントクラウドは概ね17cm間隔のメッシュデータで、これを変換して課題敷地周辺の土地モデルを作成できる見込みとなりました。
 
一方、まちなみをパススルーするソフトには、
上記のポイントクラウドから地面形状を作成、道路モデルの作成、周辺建物の表現、パススルーの機能が求められ、
支援体制なども検討し、土木系の道路シミュレーションソフトのUC-win/Roadを利用することに決定しました。
 
BLJ2015におけるBIM/CIM連携と参加チームで取り組む範囲

BLJ2015におけるBIM/CIM連携と参加チームで取り組む範囲


 
しかし、UC-win/Road の採用には課題が予想されました。
まずは、UC-win/Roadの操作理解という課題がありますが、厚意で講習会受講とヘルプデスクの利用ができることになりました。
 
また、UC-win/Roadは作成したまちなみモデルを建築BIMソフトで利用できる適当な形式でエクスポートできません。
もっとも、エクスポートできたとしても、建築BIMソフトには大きすぎると見込まれました。
このため、12カ所の敷地モデルは、各敷地ごとに12個のモデルを作成しIFC形式で各チームに配布することにしました。
 
さらに、建築BIMソフトからUC/win-Roadへの逆方向へデータを移動するには、UC/win-Roadがモデルとして読み込める3ds形式で、
建築BIMソフトからエクスポートしたものを利用し、建物BIMモデルとまちなみモデルとを合成しました。
しかし、ここでもデータ合成のための原点がモデル上で約50km先になるなど、
BIMとCIMやGISとの連携で検討すべき課題が表出しましたが、主催者側で参加者に影響のないように対応しています。
 
一方、参加チームにUC/win-Roadが利用できるように貸し出ししたところ、
短期間にもかかわらず、いくつかのチームはこれらの変換作業や動画作成などを自力で成し遂げ、技術力の高さに驚きました。
 
BLJ2015の終盤の週末と翌週の週末の2回、のべ四日間にわたり杵築市でパブリックビューイング(PV)を開催しました。
PVでは、各チームの取り組みや、提出作品を地元の方々に紹介しています。
初回のPVでは、参加チームとTV会議をつなぎ、参加チームのメンバーと地元の方々のコミュニケーションを図りました。
2回目のPVでは、参加チームの提出作品をVRで紹介しました。
 
インターネットにVR-Cloudを用いて公開された各チームのVRモデル(現在公開終了)

インターネットにVR-Cloudを用いて公開された各チームのVRモデル(現在公開終了)


 
VR体験では、地元の方々にHMD(Oculus rift)で
各チームから提案された建物モデルを組み込んだまちなみを体験していただく場を設け、好評をいただきました。
このときの様子は、地元の方がUSTREAMで中継されました。
地元では、この後ポスター展示と投票を実施し、その結果が地域賞の選定に反映しています。
 
このように、BLJ2015 では、初めてのことを数多く実施しました。
その結果、IFCの運用やBIMの取り組みにおいても、多くの課題が表出しました。
特にBIMとCIMやGISとの連携では、検討すべき点がまだ多いことが具体的に分かりました。
これらの具体的な課題を主催者であるIAIの今後の活動や、IAIメンバーのソフトベンダーにフィードバックすることで、
改善につながっていきます。
 
 

Build Liveの公共事業との整合性

今回、BLJ2015への取り組みでは、Build Liveの方式によるデジタルコンペが、
透明性を求められる公共事業などにマッチしているのではないかという思いを強くしました。
Build Liveは参加者の取り組みが記録され、全てオープンになることが特徴です。
何をどのように考えて、どのようなプロセスを経て提案に至ったのか、追試行することもできます。
また、コミュニケーションはインターネット経由なので遠隔地からの参加も可能で、距離による参加障壁地も小さくなります。
今後、言語障壁が改善されれば、海外からの参加も可能です。
実際に、BuildLiveではすでに海外のメンバーをチームの一員として参加された実績もあります。
また、BIMの特徴の一つである3Dモデルによる表現は、住民や利用者など一般の方にも分かりやすいということも重要でしょう。
さらに適切なVR表現ができれば、正しいスケールで計画案を伝えることができ、
運用者や利用者による事前チェックの実効性も増すでしょう。
 
 

これからのBuild Live

BLJ2015では、実際の地方のまちづくりの取り組みと連携したことが、大きな特徴でした。
このために、BIMとCIMやGISとのこれまで以上の連携が求められ、
アウトプットも一般向けに理解しやすい作品紹介のポスターやVRなど、これまでとは異なるものとなりました。
また、杵築の方々に課題敷地の提供をはじめさまざまな関与をいただくなど、開催地と強く連携したことも初めてのことでした。
今回の取り組みをきっかけに杵築市城下町地区のまちづくりが一歩でも進めば幸いです。
 
今回のBLJ2015ではBIMとCIMやGISとの情報連携にかなり苦労しましたが、
今後建築、土木間のなめらかな情報連携はIAIとしても課題の一つです。
まちづくりでは建築・土木一体としての取り組みが進むように、情報連携の基準作りやソフトベンダーが対応するよう、
IAIとして活動を続けたいところです。
 
一方で、Build Liveは建設ITの新しいチャレンジの場であり続けたいと考えています。
Build Liveの運営においても新たなIT技術を取り入れ続けてきました。
しかし、最近は参加チームの取り組みに、
先端的なITを生かすような挑戦的なチャレンジが一時ほど見られないことに寂しさも感じています。
新たな挑戦の場としてリスクのないBuild Liveを活用してほしいと感じています。
 
また、IAI日本の活動に賛同いただき、ぜひIAI日本への参加をご検討ください。
 
Build LiveはIAI日本の登録商標です。
IAI日本 http://www.building-smart.jp/

 

IAI日本

1990年代中盤、企業においてパソコンが一人一台に向けて普及が進むとともに建設業界でもCADが本格的に普及し始めた。
その頃、多様な建設関連ソフトの間で円滑に情報連携行うには標準化が重要であると着目した北米の企業12社によって
IAIが設立された。
そして1995年9月に世界中の建設業界に対して活動への参加を呼びかけ
国際的なIAI(International Alliance for Interoperability)が組織され活動を始めた。
IAI日本は1996年4月にIAIの日本支部として組織され、
以来国際と協調しながらIFC(IndustryFoundation Classes)と呼ばれる
建物を構成する全ての部位の形状や特性の情報を表現する建設データ仕様の策定をはじめとする活動に取り組んできた。
IAI日本の組織は運営委委員会、技術統合委員会、をはじめ、
意匠、構造、設備など職種ごとの分科会や土木分科会、ソフト会社の立場毎の分科会、
Build Liveを開催するBuild Live分科会などで構成されている。
 
これまでのIAIの活動の結果、現在既に多くの建築系ソフトでIFCが利用できるのは大きな成果だろう。
そして、2013年にはIFCがISO(ISO16739:2013)として発行されるに至った。
IFCの標準化を達成したIAIの活動は、IFCの改訂だけでなく、活用展開にも広がりつつある。
そして、組織名称もIAIから、活動目的を端的に表す「buildingSMART」と称するようになった。
 
building SMART
building SMART(http://www.buildingsmart.org/
 

Build Liveのルーツ

IAI日本がBuild Liveを初めて開催したのは、2009年の2月であった。
当時、IAIはIFCのISO化への目処が立ち、次のステップとしてIFCの活用展開のための活動を模索していた。
そのとき注目したのは、2007年頃から米国のKimon Onuma氏が開催していたBIM Storm(http://onuma.com/services/BimStorm.php)というイベントであった。
このイベントは欧米でのBIMの普及を目指したもので、
BIMの特徴である3次元、デジタル、インターネットなどを活用し気軽に参加することができ、
48時間という短時間の間に建築の検討をBIMで行う取り組みであり、そのプロセスを評価するというものだ。
そして2008年にロンドンのテムズ川地域を課題敷地として開催されたBuild London Live 2008には、
日本からIAI日本のメンバーで構成したチームで初参加を果たした。
しかし海外のイベントへの参加につきまとう言語や時差の問題があったため、
わが国の建設関係者に広く気軽に参加できる機会を提供するために国内で同様のイベントを開催することとし、
IAI日本が主催し2009年2月に第一回のBuild Live Tokyo2009(以降BLT2009)を開催するに至った。
 

Build Live Tokyo 2009 公式Blog

Build Live Tokyo 2009 公式Blog


 
BLT2009では当時から先進的にBIMに取り組んでいた6チームが参加し、
東京湾台場の海面に設定した仮想埋め立て地を課題敷地として環境技術研究センターを設計する課題に取り組んだ。
 
BLT2009の参加チームは48時間という短時間にもかかわらず、
高度な3次元モデルを作成しかつ、多くのシミュレーションソフトとデータを受け渡しし、
シミュレーションを実施し、検討を重ね、設計を進めていた。
そして、公式Blogに掲載された参加チームへ訪問取材した突撃レポートやTwitter、Facebookへの投稿などを通して、
その様子がインターネットでリアルタイムに公開されたことから注目を集めた。
 
Build Live開催後には、参加チームのBuild Liveのノウハウを共有、記録できるように、Collectionという冊子を毎年作成している。
Collectionには各チームのデータ交換の連携図やさまざまな情報が掲載されており、BIMの参考にしてほしい。
Collectionの入手は、IAI日本メンバーに依頼いただければ、在庫のあるかぎりお渡しできる。
またPDFファイルとしてもダウンロードできるので、IAI日本のホームページを確認して欲しい。
また、2月頃にはまとめシンポジウムを開催し、
参加チームによるBuild Liveの取り組みを話題としたプレゼンテーションおよびパネルディスカッションにて締めくくりとしている。
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2016
特集2「海外のBIM動向&BIM実践」
建設ITガイド 2016
 
 



官庁営繕事業におけるBIM試行−土浦労働総合庁舎設計業務における維持管理段階のBIM活用検討について−

 

国土交通省 関東地方整備局 営繕部整備課
営繕技術専門官 古堅 宏和

 

はじめに

官庁営繕事業におけるBIM導入プロジェクトについては、
平成22年度より試行的に実施することにより、BIM導入の効果・課題等を検証してきました。
 
国土交通省初のBIM試行プロジェクトである「新宿労働総合庁舎」(図-1)においては設計段階・施工段階での試行を平成25年7月に、
関東地方整備局試行2事案目となる「前橋地方合同庁舎」(図-2)においては設計段階・施工段階での試行を平成27年5月に完了し、
同時に完成、引き渡しを終えています。
 

図-1 新宿労働総合庁舎(BIMモデルと完成写真)

図-1 新宿労働総合庁舎(BIMモデルと完成写真)


 
図-2 前橋地方合同庁舎(BIMモデルと完成写真)

図-2 前橋地方合同庁舎(BIMモデルと完成写真)


 
これらの事案の検証の成果も踏まえ、
国土交通省大臣官房官庁営繕部において「官庁営繕事業におけるBIMモデルの作成及び利用に関するガイドライン」が取りまとめられ、
平成26年3月に公表されています。
 
上記事案の設計・施工段階において見えてきた内容について、
一昨年は「新宿労働総合庁舎」の施工段階における設計意図伝達業務についてのBIMモデルの活用をご紹介するとともに、
関東地方整備局試行2事案目となる「前橋地方合同庁舎」の設計段階のBIM試行について
「新宿労働総合庁舎」との違いも含め紹介させていただき、
昨年は「前橋地方合同庁舎」の施工段階でのBIM活用として
部材の干渉チェックや3次元の工程シミュレーション、施工シミュレーション等について紹介させていただきました。
 
今回は、平成27年8月より土浦労働総合庁舎の新築の設計業務と併せて実施しております
維持管理段階におけるBIMモデルのデータ活用の可能性調査・分析業務の内容について紹介いたします。
 
 

土浦労働総合庁舎新営設計業務における維持管理段階に関わるBIM活用の検討内容について

(1)土浦労働総合庁舎事業概要

●工事場所  茨城県土浦市
●敷地面積  約4,500㎡
●計画面積  約3,800㎡
●構造規模  鉄筋コンクリート造 地上5階
●入居官署数 2官署
 
事業計画としては平成27年度に設計、平成28年度以降に工事予定としています。
 

(2)維持管理段階におけるBIM調査・分析業務の目的

施設の維持管理を進めていくに当たっては、施設の各部位についてさまざまな情報が必要となってまいります。
例えば、一般的な平面図等の他、設備機器の属性情報、メンテナンス履歴等がそれら必要な情報に該当します。
 
これらの必要な情報の中には、工事の施工情報のみならず、設計者が設計内容を固めていく段階で入手しているものもあります。
そのようなこれまで維持管理者に伝わっていなかった情報について設計BIMモデル等を介して
設計者から施設の維持管理者に情報を伝達することで、
維持管理業務のコスト削減や効率的・効果的な施設の維持管理につながる可能性があります(図-3)。
 

図-3 業務の目的

図-3 業務の目的


 
このような観点から、本調査・分析においては、通常設計段階で入手している各種情報について、
BIMモデルを介して施設維持管理関係者に情報を引き継ぐことの合理性等を検証することとしております。
 
①各種情報を設計段階からBIMモデルに入力し、
 その後BIMモデルまたはその他のツールを介して施設維持管理関係者に必要な情報を提供する場合と、
②BIMモデルに入力することなく他の手法により提供する場合、とのコストやプロセス比較を実施していく予定です。
 

(3)調査・分析の内容

業務として以下のような順序で検討を進めてまいります。
 
ⅰ)施設維持管理段階において必要となる情報の調査
ⅱ)施設維持管理段階において必要となる情報の分析とBIMモデルへの入力の可能性検討
ⅲ)情報項目のBIMモデルへの入力
ⅳ)BIMモデルに入力した維持管理情報項目の活用方法の検討
 
各項目の内容は以下の通りとなります。
 
ⅰ)施設維持管理段階において必要となる情報の調査
まず、一般的に施設維持管理上どのような情報が必要となるか、
ビルメンテナンス会社や官庁施設の維持管理担当者等、官民の施設管理者へのヒアリング等を通して、調査を行います。
 
ヒアリングにおいては、通常実施している業務内容、点検等の実施項目、実施頻度、
実施体制、維持管理業務実施上の課題等について聴取する予定です。
 
ⅱ)施設維持管理段階において必要となる情報の分析とBIMモデルへの入力の可能性検討
ヒアリング調査を踏まえて維持管理に必要な情報項目を一覧表に取りまとめ、
各項目についてその重要性、使用頻度等の分析を行います。
 
これらの分析を通して、維持管理の観点から設計時点の情報を実際のBIMモデルへ入力することについての
合理性、経済性の検討を行い、
設計段階におけるBIMモデルへの入力が合理的と考えられる項目(以下「維持管理情報項目」)を一覧表に取りまとめます。
 
ⅲ)情報項目のBIMモデルへの入力
維持管理情報項目の調査を踏まえ、実際のBIMモデルへ維持管理情報項目の入力を行い、
設計段階の情報を入力する上での課題等を整理します。
 
具体的には以下の工程で進めてまいります。
 
①全ての維持管理情報項目を入力するために必要な空間オブジェクト、建物部材オブジェクト等を含めたBIMモデルを作成。
②BIMモデルに維持管理情報項目を入力し、これに要した業務量(人工)を集計。
 併せて、BIMモデル以外で維持管理情報項目を維持管理関係者に提供する方法
 (例えば表計算ソフトにより一覧表を作成して提供する方法や、機器等の情報をパンフレット等により提供する方法など)
 に要する業務量(人工)やプロセスをまとめ、BIMモデルへの入力作業との比較を実施。
③以上を踏まえ、維持管理情報項目をBIMモデルに入力することの合理性について検証し、
 効率的な情報提供に対する課題や方向性等を整理。
 
ⅳ)BIMモデルに入力した維持管理情報項目の活用方法の検討
中小規模の合同庁舎の管理においては、BIMに対する知識を有さない維持管理担当職員により維持管理業務が行われる場合もあります。
このため、BIMモデルに入力された維持管理情報項目について、BIMモデル以外のツール等を介して、
施設管理担当職員に提供する方法(例えば、BIMモデルのデータを、変換ソフト等によりXML形式、CSV形式等に置換して提供する等)
および当該提供された維持管理情報項目を効果的に利用する方法について、検討を行います。
具体的には以下の5つの工程で進めてまいります。
 
①維持管理に必要な情報項目が整理された一覧表から、
 施設の維持管理担当職員が行う維持管理業務に必要となる維持管理情報項目を抽出・整理。
②①で整理された維持管理情報項目について、維持管理者が確認・利用するための具体的な方法を検討
 (例えば、点検項目を類型化した一覧表、時系列管理が可能な一覧表、
  点検対象機器等が分かりやすくプロットされた図面等を用いて維持管理業務を実施する方法等)。
③②で検討された方法を実行するため、BIMモデルから必要となる維持管理情報項目を抽出する方法について検討。
④②の確認・利用方法および③の抽出方法について、
 技術的課題(たとえば、抽出を行う際に必要となるソフト、確認・利用する際に必要となるソフト、
 必要な機器のスペック、必要経費についての課題等)を検討、整理。
⑤以上を踏まえ、本施設の維持管理段階において、
 BIMモデルに入力された維持管理情報項目等を、本件施設の維持管理担当職員が活用する方法を検討・整理。
 
 

維持管理段階におけるBIMモデル活用に期待されること

前述の通り、本業務においてはヒアリングを通した維持情報管理項目の整理、
設計段階で入手できる情報について維持管理者に伝達する際のBIMモデルの活用検討、
また、維持管理段階におけるBIMモデルデータの活用等を検討していきます。
 
これらを検討することで、維持管理を考慮した際に、設計段階で作成したBIMモデルにおいて入力すべき情報が明らかとなり、
今後のBIM活用に寄与していくことが期待されます。
 
一方、施設維持管理者においてはBIMに対する知識を有さない者により維持管理業務が行われる場合も多く、
BIMに入力された情報を施設維持管理者がより簡易に、より効率よく活用できる方法等の検討が課題として残っています。
このような課題についても本業務を通じて検討することで、何らかの解決策を示すことができればと考えております。
また、BIMモデルの作成に関しては、入力しなければならない項目も多く、手間や時間がかかることが挙げられます。
BIMを活用する上で必要な作業手間についてはある程度想定していますが、
活用方法について取捨選択することで、入力情報の簡素化を検討していく必要があると考えられます。
 
これらの課題が解決されれば、最終的には、設計段階のみならず施工段階においてもBIMモデルに入力した情報から、
施設管理者が中長期的な維持管理計画を含めた庁舎管理に活用できる情報の入手等が容易となることが期待されます。
例えばどのような活用の仕方が考えられるかというと、
設備機器をまとめた機器一覧表と各機器の詳細な属性情報を結びつけることにより、
施設管理者がツール等を介して機器表から必要な詳細属性情報を確認できることが可能となったり、
仕上げ表と仕様の属性情報、面積表と各室の属性情報を容易に把握できることにより清掃業務発注の手助けとなったりする他、
外壁の保全方法の容易な把握、可視化による対象部位の特定等の活用が可能になること等が期待されます
(前橋地方合同庁舎における検討例 図4〜6)。
 

図-4 外壁タイルの保全(維持管理での活用検討)

図-4 外壁タイルの保全(維持管理での活用検討)


 
図-5 仕上材の可視化(維持管理での活用検討)

図-5 仕上材の可視化(維持管理での活用検討)


 
図-6 機能の可視化(維持管理での活用検討)

図-6 機能の可視化(維持管理での活用検討)


 
 

まとめ

施設の維持管理段階の活用については、BIMモデルについて施設管理者としてはどのような情報が必要か把握し、
その後「どのように使うか」という想定が必要となります。
ファシリティマネジメントとしての活用を検討する場合でもこのような想定は必要となってまいります。
 
今回の業務においては、設計段階の検討を通して、
これらの情報をわれわれ発注者と施設管理者等々で連携を図り、整理していきたいと思います。
 
 

おわりに

官庁営繕事業におけるBIMの試行の中で、設計段階における結果を踏まえて「BIMガイドライン」が平成26年に策定されました。
 
今後は、このガイドラインに則った適用事案の蓄積を図り、引き続き、効果や課題を検証するとともに、
今回紹介させていただいたように維持管理段階におけるBIMモデルの活用を検討していくことで、
本来の目的である建築生産のライフサイクル全体を通してBIMがどのように活用できるのかを引き続き検討していきたいと思います。
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2016
特集2「海外のBIM動向&BIM実践」
建設ITガイド 2016
 
 



情報化施工からCIMに向けての挑戦

 

株式会社 砂子組 土木部
千葉 大樹

 

はじめに

近年、建設業では情報化施工をはじめとするICT技術の進歩がめざましく、
3D-CADや点群データを活用した工事における計画や検討、施工が円滑な工事の進捗、意思決定等に効果を発揮している。
 
当社の情報化施工への取り組みは平成20年7月に国土交通省より発表された「情報化施工推進戦略」を受け、
翌平成21年度の工事より本格的に情報化施工を導入したことがきっかけとなった。
 
本稿では当社が行ってきた情報化施工やCIMに向けての取り組みについて紹介する。
 
 

情報化施工導入の目的

当社が情報化施工に取り組む目的として掲げているのは、品質・安全の向上、工程の短縮、利益の向上はもちろんであるが、
業務改善、人材育成を本質とし、ひいては建設業の発展に寄与したいと考えている。
また、近年の若年層の建設業離れ、熟練オペレーター不足、建設業従事者の減少の解消を目的とし、
現場見学会や勉強会、外部への情報発信を積極的に行ってきた。
 
元々当社は情報化施工のノウハウを持ち合わせていたわけではなく、
継続して情報化施工を導入していくことで技術を蓄積してきたのが現状である。
 
そういった経験と技術の蓄積から今までICT技術を取り入れてこなかった工種であっても
ICT技術を取り入れることで施工効率向上が図れるような発想も生まれてくるようになってきた。
 

写真-1 導入した情報化施工

写真-1 導入した情報化施工


 
写真-1は当社で導入した情報化施工の一部である。
 
当社で行う情報化施工は掘削や盛土、整形を行うツールだけでなく
重機に搭載する設計データに水道管などの埋設物の情報を追加することでオペレーターへの注意喚起を行っている。
 
また3D-MCについてはブルドーザ、バックホウともに情報化施工専用機などの新しい技術を積極的に導入したり、
ドレーン打設機械などの特殊な専用機械をMG化することで施工効率の向上を図ってきた。
 
情報化施工を導入することによって丁張設置手間の軽減や重機モニターを遠隔操作で管理、
社内に情報化施工担当者を配置し各現場で行う情報化施工導入に向けての準備を一元化しサポートを行うなど
現場職員の負担軽減にも取り組んでおり、負担が軽減されることで現場管理の充実、休日の確保につながっている。
 
写真-2 3Dモデルによる仮設検討

写真-2 3Dモデルによる仮設検討


 
写真-2は当社で行った情報化施工以外の取り組みの一部で、主に行っていたのはGNSS測量やTS出来形だが、
その他にも3Dレーザースキャナと3D-CADを使用しての施工計画、VRシミュレーションを活用した仮設計画、
構造物の3Dモデル化を行い打合せ等に活用してきた。
 
 

単発の情報化施工からサイクルの情報化施工へ

情報化施工を導入した当初、活用する内容はさまざまな工種の中の一工種または一部だけということがほとんどであった。
 
導入効果の有無はさまざまであったが、知識、経験を得ることができた。
しかし、われわれがモノづくりをしている工事の中で情報化施工を活用しているのはほんの一部であり、
その効果はあくまでも部分効果を得たにすぎない。
 
そこでクリティカルチェーンに着目した情報化施工の活用で全体効果を得られるのではないかと考え、
平成26 年度に受注した築堤工事で実践、効果の検証を行った。
 
工事内容は築堤盛土であるが、盛土材は土砂混合撹拌による製作であったため、需要と供給のバランスが重要であった。
そのため盛土と撹拌の両方に情報化施工を導入し、需要と供給に見合った運行管理を行うことで全体効果を狙うこととした。
 

図-1 一連のサイクルでの情報化施工

図-1 一連のサイクルでの情報化施工


 
図-1のように土砂運搬はGPSを利用した運行管理、土砂混合撹拌は3DMG、築堤盛土は3D-MCを導入することで
一連のサイクルの中で情報化施工を活用することで工事全体の効果を検証した。
 
検証の結果、土砂混合撹拌と築堤盛土は施工効率が約1.2倍に向上、法面整形については約4倍の施工効率の向上であったが、
向上したのは施工効率だけでなく、情報化施工により事前の丁張設置が不要となり丁張箇所の転圧不足等の品質低下の解消、
手元作業員が不要であったため重機の直近作業がなく安全性の向上などさまざまな成果を得ることができた。
 
図-2 情報化施工と従来施工の施工効率とコスト面での比較

図-2 情報化施工と従来施工の施工効率とコスト面での比較


 
図-2の上の表は、情報化施工と従来施工での盛土と法面整形について施工効率を比較したものである。
 
下のグラフは盛土で活用した3D-MCブルドーザについてコスト面での導入効果を検証したもので、
施工条件で変化はすると思われるが、この工事については盛土量約31,000㎥を超えることにより
コスト面でも導入効果を得られる結果となった。
 
以上の事から一連のサイクルで情報化施工を導入することで安全、品質、工程、コストにおいて
単発の情報化施工よりも大きな成果を得ることができた。
 
この工事で3D-MCブルドーザを担当したオペレーターは熟練のオペレーターではなく、
情報化施工は熟練オペレーター不足の解消にも効果を得られることが分かった。
 
また情報化施工と従来施工を行った際のオペレーターの心拍数を計測し、
オペレーターにどれだけの人的負荷がかかるのかの検証も行った。
 
図-3 従来施工と情報化施工の心拍数による比較

図-3 従来施工と情報化施工の心拍数による比較


 
図-3に示す通り情報化施工はオペレーターの人的負担(緊張、プレッシャー)の軽減に寄与しているという結果が得られている。
 
 

情報化施工からCIMへ

クリティカルチェーンに着目し情報化施工を活用してサイクルを回す。
 
それは自然に3D(品質)から4D(工程)へ、そして5D(コスト)へとCIMの考え方に導かれているように感じる。
 
当社では平成27年度から本格的にCIM導入への準備を進めているが、
まず3Dに慣れるために工事受注後早期に現場全体の3Dモデルを作成し施工計画や打合せに活用している(写真-3)。
 

写真-3 作成した3Dモデル

写真-3 作成した3Dモデル


 
またUAVによる航空写真測量から得られる点群データも活用し現場を“見える化”することで
問題意識の共有、意思決定のスピード向上につなげ、情報化施工へのデータ反映にも活用している(写真-4)。
 
写真-4 点群データ

写真-4 点群データ


 
 

おわりに

最初は難しいと思っていた3D-CADも経験を積むことで現場の意図するモデル作成に近づくようになってきた。
当社もCIMへの取り組みとしては始まったばかりで
今後自社でモデル作成、干渉チェック、属性情報の管理などができるように取り組んでいくが、
一口にCIMと言っても人的な問題、費用の問題、ソフトウェアの問題など誰でも簡単にできるものではない。
 
しかし、近年建設業界でも深刻化してきている少子高齢化の影響、担い手不足を改善するには
CIMこそが最適なツールではないかと当社は考えている。
 
地場の中小企業が情報化施工やCIMに踏み込めない理由として、まず最初に挙げられるのはやはり“コスト”である。
しかし前述したように上手にサイクルを回すことでコストの問題も解消でき、
加えて安全、品質、工程についても効果が得られるのであれば使わない手はない。
 
情報化施工を現場で実践した当社の技術者は「次の現場で何か情報化施工できるものはないだろうか」と口を揃えて言ってくるのは、
情報化施工やCIMは良いものだと気付いたからである。
 
その“気付き”が増え、情報化施工やCIMを地場の中小企業が活用し建設業が活性化することを望み、
CIMを通して「良いモノづくり」に携われることに喜びを感じ、本稿を終えたい。
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2016
特集1「本格化するCIM」
建設ITガイド 2016
 
 



ICTを活用したインフラマネジメントシステムの構築 −インダストリー4.0に向けて−

2016年6月24日

 

首都高速道路株式会社 保全・交通部長
東京大学 生産技術研究所 ICUS
客員教授 土橋 浩

 

はじめに

わが国では、高度経済成長期以降に集中的に整備されたインフラの高齢化が、今後一斉に進む。
さらに、この間過酷に使用されてきた高速道路などの構造物では、劣化、損傷の進行が懸念される。
このような状況の中、2013年国土交通省は、社会資本メンテナンス元年と位置付け、
構造物の点検、診断、補修・補強に取り組む方針を打ち出し、同年6月、道路法等の一部を改正する法律が公布された。
道路を適正に管理するため、予防保全の観点も踏まえて道路の点検が明確化され、5年に1度の近接目視による点検が法制化された。
 
一方、人口の減少や少子高齢化により、2048年代には人口が1億人を割り、65歳以上の人口の割合が4割近くになると予想されている。
このため、財源確保の問題はもとより、インフラの維持管理・更新を担当する技術者、点検を実施する点検技術者の数が減少し、
業務が十分に行えるのかといった問題点も発生する。
 
このような社会環境が変化するなか、適時・的確にインフラのマネジメントを実施することが求められている。
このためには、調査・設計、施工時における情報を維持管理段階に引き継ぎ、
適切な点検、診断の実施、必要な補修・補強等により、構造物の長寿命化を図る必要がある。
加えて、点検、診断等の結果から、構造物の性評価、劣化診断、劣化予測を的確に行うことにより、
構造物のアセットマネジメントが可能となり、ライフサイクルコストの適性化が実現化するものと考える。
 
本稿では、首都高速道路が開発を進めているICT技術を活用した維持管理技術に加え、
今後建設されるインフラも含めたシームレスなマネジメントシステムについて紹介する。
 
 

GISプラットフォームによる維持管理システムの構築

首都高速道路は、現在約310kmの供用延長を有し、
このうち開通から50年以上経過した路線が約10%、30年以上経過した路線は約55%にも及ぶ。
このため、構造物の損傷、補修・補強工事は今後ますます増大するものと推測される。
そこで、大規模更新・修繕事業を実施することにより、
構造物の長期耐久性を確保し、維持管理費の削減に取り組んでいるところである。
 
一方、高速道路の点検、診断、補修・補強を効率的に実施するため、
ICT技術を活用した新たなマネジメントシステムの開発にも取り組んでいる。
これは、従来実施してきている各種データベース(竣工図面、点検台帳、補修・補強台帳等)を個別に検索するシステムから、
GISをプラットフォームとし、地図情報に各種データベースをリンクさせ、地図上から必要なデータベースを検索するものである。
これにより、各種データベースが統合化され、
インテリジェンスサーチ機能により、より高度で迅速な検索が可能となるシステムを構築している。
また、既存のデータベースに加え、非破壊検査結果等のさまざまな調査、点検のデータベースをリンクすることも可能である。
 
加えて、ホストサーバーの各種データベースの情報をインターネットを介して、
点検あるいは維持修繕工事の現場でタブレットPCなどにより、
これまでにどのような問題が生じたのか、過去の点検、補修履歴を確認することができる。
これにより、構造物の劣化がどの程度進行しているのか、損傷が再発していないかなど、
劣化の進行度合いを検証しながら進めることが可能となり、点検、補修の効率化が図られる。
さらには、これらの結果をタブレットPCから、ホストサーバーに送信し、データベースとして蓄積することも可能である。
これらのデータベースは、次回の点検、補修・補強計画策定に反映され、適切なメンテナンスサイクルの見える化が推進される。
 
 

新たなインフラ維持管理システム(InfraDoctor)

InfraDoctor(インフラドクター)は、GISをプラットフォームとし、各種の点検・補修履歴等を統合し、
地図情報からヒトとデータベースを有機的につなげるシステムである。
また、InfraDoctorでは、MMS(Mobile Mapping System)により取得される3次元点群データ等を用いて、
さまざまな点検、補修工事のシミュレーションなどや構造物の変状・変位を計測する点検支援を可能とするシステムでもある。
 

(1)システム概要

 

図-1 GISプラットフォーム

図-1 GISプラットフォーム


 
図-1に示すGISプラットフォームを入り口とし、各種台帳のさまざまなデータや全方位動画、3次元点群データを用いた距離計測、
点検シミュレーション、構造物の変状・変位計測、図面作成等を行うアプリケーション等にアクセスが可能なシステムである。
 
図-1上段に示す地図の任意の位置から、
構造物の竣工図、点検台帳、補修・補強台帳、ビデオ化画像等、タグ付けされたさまざまなデータを検索できる。
ビデオや点群といった3次元データを表示する際は、地図上に視点方向が示される。
背景地図には商用利用可能な「地理院地図」を用いている。
3次元点群データおよび全方位動画は、
MMSと呼ばれる、レーザースキャナや全周囲カメラ、また自らの位置を特定するGPSを搭載した車両を走行させることにより取得する。
河川を横断する橋梁など、周囲の道路上から取得できない箇所については、
人が持ち運ぶことができるレーザースキャナー等を使用して点群データを取得する。
取得した点群データを構成する点の一つ一つが位置情報(座標)を持ち、また色データを付加することができる。
なお、位置情報の相対誤差は数ミリ(公称相対誤差は150m離れた位置で5mm)と、非常に正確である。
同時に、高解像度な全方向走行画像も取得する。
 

(2)点検支援

3次元点群データの各点が位置情報(座標)を持つため、
現場調査を行うことなく、道路の幅員、構造物の寸法(高さ、幅)、構造物同士の離隔等を正確に計測することができる。
この3次元点群データを用いて、点検計画の策定、
点検車を用いた3次元点検シミュレーションや交通規制帯を再現しての走行シミュレーションなど、さまざまな活用が可能となる。
 
また、他の管理者との協議資料の作成において、街路や高速道路の規制図面を作成する必要がある。
上記3次元点群データ上で作成した規制帯を2次平面に展開することにより、簡単に規制状況図のCAD図面を作成することができる。
これにより、高速道路あるいは街路の交通規制を行い、道路幅員等を測量し、
点検計画および規制図面を作成するための作業時間を大幅に短縮することが可能となる。
 

図-2 鉄道交差部の図面作成例

図-2 鉄道交差部の図面作成例


 
さらに、図-2に示すように、鉄道事業者等管理者の異なる構造物の位置情報を取得し、CAD化することも可能である。
限られた機電停止時間の間に測量を実施し図面を作成するには、一般に数日間を要するところ、
本システムでは、測量の時間に拘束されることなく、MMSにより計測し、1〜2日程度で図面を作成することができる。
加えて、図面化の困難な、鉄道の架線や電線などの位置も、正確に把握でき、より効率的に点検計画や補修計画の策定が可能となる。
このように、従来行ってきたさまざまな作図作業を効率化、省力化することができる。
 

(3)構造図面・解析モデルの作成

3次元点群データから、一般図や構造物のCAD図、あるいは構造解析モデルを作成することができる。
今回、首都高速道路(株)、首都高技術(株)、(株)エリジオン、朝日航洋(株)は、
世界で初めてMMS(Mobile Mapping System)により取得し3次元点群データからCAD図作成システムを開発した。
 

図-3 2次元CAD図面作成例

図-3 2次元CAD図面作成例


 
図-3に、2次元のCAD図を作成したものを示す。
Infi Pointsを用いて輪郭線を抽出し、CADソフトにより断面図を作図している。
また、3次元CAD図についても、取得した点群からノイズを除去した後、ポリゴンを生成し、
これから平面や曲面を生成させて、CAD操作により橋脚の図面を作図している(図-4参照)。
 
図-4 3D-CADモデル、FEMモデルの作成例

図-4 3D-CADモデル、FEMモデルの作成例


 
今回、大規模な土木構造物を対象としているため、従前の地上型レーザースキャナと計測精度が異なること、
データ処理の前提が機械系CADデータの精度と異なることから、新たにMMSを用いたリバースエンジニアリングのロジックを開発した。
 
さらに、上記プロセスにより作成された3次元CAD図から、図-4に示すような3次元の構造解析モデルを構築することも可能である。
この解析モデルを用いて、解析ソフトと連携することにより構造物の性能評価、劣化診断および劣化予測を行うことも可能となる。
詳細は、後述するが、点検結果から構造物の状態を定量的に把握することが可能となる。
また、地震を受けた後の耐震診断にも適用を検討している。
 

(4)変位・変状計測

MMSにより取得した3次元点群データを経年で比較することにより、
構造物の変位・変状を把握し、マクロ的な構造物の異常を把握するものである。
この技術により、構造物表面の凸凹等を早期にかつ定量的に発見できる可能性が高まった。
現在、近接目視点検の結果と比較、検証をしているところであるが、点検時における異常の検出精度を確保できることを確認した。
 
これは、3次元点群データから平面を自動抽出し、この平面と点群との位置関係から構造物表面の凸凹を把握し、
これを時間軸で比較することにより、その平面に新たに浮き等が生じたのか否かを判定することが可能となる。
今回、MMSにより取得した点群データから、構造物の変位・変状を経年で把握することが可能となり、
新たな構造物の点検技術の一手法として期待できる。
特に、足場が設置できない箇所、高所作業車による作業ができない場所など、点検が困難な箇所に対しては非常に有効な技術である。
図-5に擁壁側面の変状計測の事例を示す。
 

図-5 構造物側面の変状計測

図-5 構造物側面の変状計測


 
さらに、土工部における法面のはらみ出し、傾動、段差、クラック、目開き、ずれ等の点検にも適用の可能性がある。
 
図-6 擁壁部の変状計測

図-6 擁壁部の変状計測


 
従前の目視点検から図-6に示すように、3次元点群データおよび全方位動画を活用した自動化により、
特に面的な変状の把握に有効である。
これにより、法面の点検に加え、植生・倒木の危険度の調査や航空レーザを併用した斜面防災への適用も期待できる。
 
 

InfraDoctorとCIMの統合

現在、国土交通省によりCIMを活用した試行事業が進められており、調査・設計段階、工事段階でのCIM活用の検証が進められている。
今後、施工段階、維持管理段階の検証に移行しつつある。
このCIMで構築されるデータベースは、インフラの維持管理を効率的に進める上で、非常に有効な初期情報を提供することになる。
 
前述したInfraDoctorは、既設構造物のデータベースを構築するものであるが、これにCIMを統合(Integrate)することにより、
初期の情報、例えば調査・設計段階における地質データ、材料データ、設計条件、設計モデル、3D-CAD図面、
また施工段階における鉄筋の配筋状況、コンクリートの打設状況、
鋼桁の溶接状況や架設状況、出来形等を維持管理データベースに移行することが可能となる(図-7参照)。
 

図-7 CIMとInfraDoctorの統合

図-7 CIMとInfraDoctorの統合


 
この結果、上流側の初期情報と下流側の維持管理情報が統合され、構造物の生い立ちから、置かれている環境条件、
例えば、沿岸地域、積雪地域、凍結防止剤の使用の有無、交通量など使用条件等がつながり、
川上のプロセスと川下のプロセスがつながった点検、診断、措置が可能となる。
CIM導入の取り組みは、設計段階における不整合等の事前確認や施工段階における施工品質の向上に加え、
維持管理段階における点検・診断・補修結果等の「見える化」を図ることができる。
これにより、GISプラットフォーム上から、初期データをはじめ、過去の点検および補修履歴を確認することが可能となることから、
効率的なメンテナンスに寄与する。
加えて、これらの各種データを考慮した解析モデルを用いてシミュレーションすることにより、
構造物の性能評価、劣化診断、劣化予測が可能となる。
この結果、設計・施工から維持管理までをつながった一連の流れとしたより効率的なインフラマネジメントシステムができる。
 
 

シームレスなインフラマネジメントシステム

上述の通り、CIMとInfraDoctorを統合して、CIMの初期情報のデータベースをInfraDoctorに移行する。
これらの初期情報に加え、点検や非破壊検査等から得られる境界条件をInfraDoctorに蓄積する。
さらに、センサーから得られるモニタリングデータ等もIoTを活用してつなげることにより、
リアルタイムデータとしてInfraDoctorに蓄積することが可能となる。
これまで独立して管理されていたこれらビッグデータを用いて、分析、解析することにより、インフラの構造性能を適切に評価し、
不具合のメカニズムが解明され、構造全体あるいは部材単位の劣化を予測する精度が格段に向上する。
この結果、適切なタイミングでインフラの維持管理を効率的に実施することが可能となる(図-8参照)。
 

図-8 InfraDoctorと解析ソフトの統合により適時・適切な補修・補強

図-8 InfraDoctorと解析ソフトの統合により適時・適切な補修・補強


 
このように、ICT技術を活用して、計画・設計段階から施工、維持管理段階までを一連のプロセスとして「つなげる」ことにより、
シームレスなインフラマネジメントシステムを構築することができる。
 
現在、シームレスなインフラマネジメントシステム構築に向け、
CIMとの統合に当たって必要となるデータベースについて請負者と検討を開始した。
また、コンクリート構造物に対して、DuCOM-COM3等の解析ソフトを用いた劣化診断および劣化予測について研究を進めている。
CIMのデータベースとの統合および解析モデルによるシミュレーションとつなぐことについては、1年後を目途に取り組んでいる。
 
さらに、シームレスなインフラマネジメントシステムから得られる点検・診断の結果、
蓄積された経験や技術を、将来のインフラの整備に生かすことも忘れてはならない。
すなわち、維持管理段階で得られた情報を、上流側のインフラ建設にフィードバックあるいは積極的に反映することにより、
高耐久性を有し維持管理に優れるインフラの整備が可能となる(図-9参照)。
 
図-9 シームレスなインフラマネジメントシステム

図-9 シームレスなインフラマネジメントシステム


 
この結果、ミニマムコストで安全、安心、快適なインフラの整備、維持管理が実現され、
サステイナブルなインフラの整備に寄与することが期待できる。
 
 

おわりに

首都高速道路は新たなインフラ維持管理システムとしてInfraDoctorを開発し、
これにICT技術を活用した構造物の維持管理技術の高度化、合理化、省力化を進めている。
このシステムに各種の点検結果、
例えば、接近目視点検や、MT、UT、デジタル画像によるひび割れ自動検出技術、
電磁波や赤外線画像による空洞検出技術、近赤外線分光技術によるコンクリートの劣化診断技術等の非破壊検査や
微破壊検査結果に加えIoTを活用してモニタリングデータを統合(Integrate)することにより、
構造物の状況をより精緻に把握した維持管理データベースが蓄積される。
ここで重要なことは、なんでも「見える化」すればよいというものではなく、
判断に資する有効かつ的確な情報(本稿では、これをビッグデータと定義する)を、
的確な形・タイミングで見えるように選定することである。
このためには、現場から発する現場ベースのニーズを軸にした情報の選定、
すなわち現場力を向上させるICT技術の活用が重要である。
最終的には、「人」が、提供されるビッグデータの意味を正確に理解し、現場ベースで最適解を導くことである。
 
上記のビッグデータを、エンジニアが構造物の使用状況や劣化状況をリアルタイムに分析、解析することにより、
より精度の高い構造物の性能評価や劣化診断、さらにはそこから異常の兆候のパターンを定量的に把握することが可能となる。
この結果、どの段階(タイミング)でどのようなメンテナンスが必要になるのか正確に予測することも期待できる。
すなわち、事後保全から予防保全、予測保全へと進化させ、画一的な耐用年数や標準的な劣化曲線ではなく、
供用環境の異なる構造物ごとにその寿命を的確に予測し、タイムリーで適切な保全を行うことが期待できる。
この結果、効率的かつ維持管理費用を最小化することが可能となる。
 
今後、わが国では人口の減少や少子高齢化に伴い、インフラを維持管理する技術者の不足も大きな課題として抱えている。
持続可能な社会を実現するため、人材の育成に加え、ICT技術やビッグデータの活用を強化し、現場の生産性をより高めることが、
日本の産業構造を考える上でより重要な取り組みと考えられる。
このためには、発注者、設計者、施工者、管理者が同じ目標に向かって連携し、
これらのビッグデータの蓄積や、川上から川下へと円滑につなげる制度の整備も求められる。
さらにインフラマネジメントシステムの開発には、既存の維持管理技術に加え、
通信技術(クラウドコンピューティング)をはじめセンシング技術、ロボット技術、画像処理技術、分析・解析技術、
人工知能(AI)等、異分野のさまざまな技術の統合(Integration)と融合(Fusion)が求められる。
このように、従来の枠組みを超えた技術革新により、部分的な改善、
インクリメンタル(Incremental)な改革から不連続(Discontinuous)な改革へと異次元の進化を遂げる可能性を有している。
インフラマネジメントにおけるこのようなパラダイムシフトにより、
日本発の新たなインテリジェント・インフラマネジメントシステム(Intelligent Infrastructure Management System)が、
インダストリー4.0、インダストリアル・インターネット社会の到来に先駆けて、世界のデファクトスタンダードとなることを期待する。
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2016
特集1「本格化するCIM」
建設ITガイド 2016
 
 



 

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