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2016年5月5日
国土交通省 九州地方整備局 企画部
工事品質調整官 森山 博文
はじめに国土交通省では平成24年度からCIMの導入に向けた取り組みを実施しており、九州地方整備局においても、 (1)CIM導入検討会ならびに分科会CIM導入検討会は、建設生産システムの効率化を図るための各段階におけるCIM活用や課題の検討を行っており、 (2)分科会①トンネル(道路)分科会 CIM試行事例の紹介(1)平成24・25年度 筑後川橋詳細設計業務本業務は、筑後川下流部を渡河する有明海沿岸道路筑後川橋の詳細設計である。 ①景観検討 歴史遺産への圧迫感(外部景観)や橋面上からの眺望(内部景観)の確認のため、CIMを利用して検討を行った。 橋梁本体をすっきりとした印象を持たせ、橋脚幅をコンパクトにすることで歴史遺産への圧迫感を軽減できる単弦構造を選定した。 その他主桁やアーチリブの形状、吊材の配置なども3DCADや模型を利用して最適化を行った(図-2)。 ②構造的課題の解決 アーチリブが単弦構造から橋脚に向かい二股構造に変更する複雑な構造であり、 従来の2次元図面では把握が困難な構造的課題に対してCIM(3DCAD、全体模型、部分模型)を活用して解決した(図-3、4)。 (配慮事項) ●煩雑な板組の製作性の確認 ●溶接困難箇所の回避 ③関係機関との合意形成 CIMを活用した3次元モデルによる施工ステップを関係機関や地域住民との協議に利用することで、 漁業や船舶航行などの河川利用者への施工方法の理解を促すことができ、円滑に合意形成を図ることができた。 (2)赤松谷川11号床固工工事本工事は、水無川砂防基本計画に基づき、周辺地域を土石流等による災害から守ることを目的に、床固工を設置したものである。 工事に際し、情報共有および作業の効率化の観点からCIMの活用を実施した。 本工事におけるCIM活用効果は次の通りである。 ①工事前 工事着手前には施工計画の立案が必要となる。 この基礎情報となるのが地形図と構造図であるが、本工事では無人化施工に向けてこれらのデータの3次元化を行った。 これを活用したことにより、工事数量の算出や、施工方法検討における施工図およびステップ図の作成が迅速化できた。 ②施工中 無人化施工では、重機を遠隔操作しながら施工管理を行う必要がある(写真-3)。 このため、3次元化したデータと無人化施工におけるICTや計測機器からのデータを組み合わせた 施工状況モニタリングシステムを導入することで、情報の共有化(見える化)と施工管理の効率化が図られた。 ③完了時 3次元化したデータに対し、施工記録(品質、出来形、写真)を付加したCIMモデルを作成した(図-5)。 これを用いることにより、床固工の維持管理において、完成時の記録閲覧や、補修履歴の更新など、データの一元管理が可能となった。 おわりにこれまでに調査・計画・施工段階でのCIM活用の有効性・必要性を確認することができた。 建設ITガイド 2016 特集1「本格化するCIM」 ![]() |
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国土交通省 四国地方整備局 企画部 技術管理課
係長 太田 芳宏
はじめに今回、四国地方整備局では自動車専用道路である四国横断自動車道阿南四万十線(阿南~徳島東)のランプ橋設計において CIM試行項目の選定今回、設定した箇所は、徳島県小松島市前原町の国道55号と都市計画道路 江田小松島港線の交差点付近に施工する そこで、検討項目としてCIMの特性を考慮して (1)交差点内の橋脚位置および視認性の検討 (2)地下埋設物と構造物との干渉照査 (3)歩道橋建築限界の検討 (4)橋脚・杭の配筋とフーチング配筋との干渉照査 (5)施工計画の検討 (6)景観検討 を選定し、定量化するための指標として各項目における作業時間で比較検証することとした。 CIM試行項目の検討結果(1)交差点内の橋脚位置および視認性の検討運転者や歩行者からの見通し(安全性)が確保できているかの判断が確実にでき、 (2)地下埋設物と構造物との干渉照査地下埋設物や支持層線を3次元モデルで表現したが、 (3)歩道橋建築限界の検討3次元モデルの場合、上部工の桁と歩道橋の建築限界間の最小離隔となる位置や距離が自動算出されるため、 (4)橋脚・杭の配筋とフーチング配筋との干渉照査橋脚、杭頭、フーチングの配筋は、3次元空間を考えないと把握困難な3方向配筋ではなかったため、 (5)施工計画の検討立体的に交差する高圧線や歩道橋の3次元的な位置関係、施工上のコントロールポイントのデータを3次元モデル化することで、 (6)景観検討形状のイメージが容易に把握・共有できるとともに、見た目のイメージ(景観性)だけでなく、3次元モデルで提示することで、 CIM試行による課題CIMでは、2次元図面では表すことが困難な部分の確認が容易になるという効果がある一方で、下記の課題が抽出された。 従来手法との作業量比較CIMモデルごとの作業時間および従来手法との設計作業量の比較を表-1、表-2に示す。 なお、3次元モデルの作成時間は、CIMモデル作成者の技術レベルによって大きく異なる。 表-1、2に示す時間は、CIMの経験が豊富な技術者が作成に要した時間であり、 従来手法の時間はこれまでの経験による想定の時間である。 3次元モデルを活用した場合、各項目の確認・検討に費やす時間は、 従来手法より少ないか同等だが3次元モデル作成時間を考慮すると従来手法より13時間多い。 ただし、本業務では、「橋梁配筋」、「地下埋設物」、「地層」については、3次元モデル導入による有効性は認められなかったため、 そのモデル作成時間を差し引くとその時間は26時間となり、設計作業量比較では6時間減少させることができることが分かった。 ●結果 一度3次元モデルを作成することで設計照査などは、 従来手法より短い時間で実施することが可能となり、設計の効率化が図られることが期待できる。 なお、3次元モデル作成時間を短縮するためには、 目的に応じて、作成すべき項目と不要な項目および作り込みレベルを事前に検討し、適切に設定する必要がある。 また、CIMを活用することで作業時間の短縮のみならず 、関係機関等との協議や施工計画の打合せ等において効率化を図ることが期待できる。 おわりに今回は、CIM導入の効果を作業時間のみで比較したが、 建設ITガイド 2016 特集1「本格化するCIM」 ![]() |
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2016年5月3日
国土交通省 近畿地方整備局 滋賀国道事務所
建設監督官 森 光正
はじめに国土交通省における土木分野でのICTの活用としては、 施工段階でのCIMデータの作成今回「国道161号溝橋・青柳高架橋下部工事」および「国道161号青柳北地区改良工事」(A社)、 CIMデータの閲覧について滋賀国道事務所の試行におけるCIMデータは、下記の方法で閲覧できます。 CIMデータの閲覧等により施工業者としての試行の効果、負担および施工管理上のメリット・デメリットについて、 以下の通り示します。 ●試行の効果 A社:施工時の効果としては、工事打合せ時にCIMモデルを利用することで、非常に理解度が高まり、手戻りの削減に効果があった。 B社:工事完成後の維持管理において、既存の台帳や電子納品データに加え、CIMデータを利用することで効果が期待できる。 C社:施工時にCIMモデルを活用すれば、作業工程の確認や安全管理、出来形管理など作業の効率化が期待できるが、 完成時の納品資料としての役割では施工業者としての効果は限定的に感じる。 スケッチアップなどの比較的安価なCIM対応ソフトやビューアを利用して CIMモデルから得られる情報が簡単に取り出せるようになれば活用の幅が広がっていくと思います。 ●施工業者としての負担 A社:現場施工管理担当者だけでは、日常業務以外にCIMを導入すると負担が大きく、 CIM担当として新たに教育を受けた者を配置する必要があった。 また、導入について、ハード・ソフトのコストに加え、教育訓練等の2次的な費用が発生した。 B社:弊社においては、今回が初の試みであったため初期投資に負担がかかったが、 CIMの今後における汎用性を考慮すると実際のCIMデータ作成に要した労力のみと考えるため、負担について問題ない。 ただし、設計段階からデータがない場合は、最初からのデータ作成となるため負担は非常に大きくなる。 C社:現状ではCIM対応のソフトを導入するための費用負担が大きく、 また操作についても慣れが必要で専門部署やチーム編成ができない場合においては施工業者だけでの導入は困難です。 今後は、CIMに関する要領や基準などが整備されることで、導入に向けた取り組みが業界全体で進むと思います。 CIMモデルを工事発注時に発注図面と一緒に提供していただけると CIMデータ作成についての施工業者の負担は最小限に抑えられます。 ●施工管理上のメリット・デメリット 【メリット】 ●鉄筋加工において現場での組み立てが不可能である箇所が確認できた ●埋設管との近接施工において、試掘で得られたデータを基に非常に理解度の高い危険予知活動に結びつき、安全な施工が実施できた ●作業員に対して作業手順周知会を開催することで、桁架設の順序が分かりやすく手戻りの削減につながる 【デメリット】 ●CIM実施のため、ハードやソフトに費用がかかり、操作する担当者確保と教育費用がかかる ●通常のパソコンでは操作ができず、高性能のパソコンが必要 CIMデータの活用に対する課題コンサルタントと施工業者の協力で青柳工区全体の3次元モデルができてきましたが、今後活用するための課題について考えました。 おわりに滋賀国道事務所で行ったCIMの試行は、小規模な試行でした。 建設ITガイド 2016 特集1「本格化するCIM」 ![]() |
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2016年5月2日
国土交通省 中部地方整備局 企画部 満仲 滋夫
同 企画部 技術管理課 下野 裕徳・有田 博宣
はじめに(産・学・官CIMについて)国土交通省では、平成24年度より建設生産システムの効率化・高度化を図るため、CIM導入についての検討を進めています。 佐久間道路浦川第1トンネルの概要三遠南信自動車道(国道474号)は、 トンネル3Dモデル(統合モデル)の作成さまざまな利活用を想定し、得られる情報について1つに統合するかたちで、 産・学・官CIM検討会(トンネル分野)の取り組み産・学・官CIM検討会では、調査から維持管理までの一連の建設生産システムにおいて次の段階につながり、 おわりに平成27年12月にはWGを開催し試行モデルを題材とした意見交換を行い、 建設ITガイド 2016 特集1「本格化するCIM」 ![]() |
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2016年5月1日
国土交通省 大臣官房 技術調査課
工事監視官 山下 眞治
はじめにわが国の建設業は近年、就業者数の減少とともに高齢化の進行が著しい(図-1)。 また、建設投資額はピーク時の平成4年度の約84兆円に対し平成26年度は約48兆円となっています。 このような厳しい環境の中において、今後建設業が飛躍・発展し、良質な社会資本の整備・管理をしていくためには、 一連の建設生産システムの生産性の向上が求められています。 その鍵となるのが情報通信技術であります。 国土交通省では、平成24年度から、土木事業において調査・設計段階から3次元モデルを導入し、 施工・維持管理の各段階においても活用し、あわせて事業全体にわたる関係者間で情報を共有することにより、 一連の建設生産システムの効率化・高度化を図るCIM(図-2)の試行に取り組んでいます。 CIM試行から見えてきた効果と課題(1)試行状況国土交通省直轄事業のCIMの試行は、 (2)CIM導入による効果CIMにおける一つの大きな効果としては、可視化による業務の効率化が挙げられます。 さらに、組織内外部の協議や地元住民への説明会等において、 ビジュアルに訴えることができる3次元モデルを利用することで合意形成を円滑に行うことができます(図-6)。 また、さまざまな数量(例えば、土量や鉄筋量、コンクリートの量等)を自動で算出できることにより、 概算事費が容易に算出でき、発注業務の効率化に貢献しています(図-7)。 工事においては、3次元モデルに時間軸を組み合わせることで施工手順等を共有化し、 施工計画に関わる所要時間を短縮することができます。 また、重機の動線や可動範囲等を3次元で把握することで、施工現場の安全管理に役立っています。 その他にも、3次元モデルを用いて干渉箇所を確認・修正することによる手戻りの削減や関係者協議の効率化に寄与しています。 CIMの特徴の一つに3次元モデルに付随した属性情報があります。 属性情報はさまざまなものが考えられ、 契約の情報であれば、設計会社や担当技術者、施工会社や請負金額、工期、設計変更の経緯等があり、 現場条件や材料であれば、地質、断層、コンクリート(強度やスランプ試験値等)、鉄筋等があり、 維持管理においては、点検・診断結果等があります。 属性情報を付与することで設計・施工段階の詳細なデータが後世まで残ることになり、 維持管理の効率化や事故発生時の原因究明および対応策の検討等に生かすことができます。 (3)CIM導入による課題一方、課題も見えてきました。 このように、CIMの普及を推進していくには、制度検討、技術開発、人材育成と総合的な取り組みが必要となります。 産学官が連携したCIMの構築これまで直轄事業において、さまざまな工種の設計業務、工事において試行を実施し、 産(民間団体)として、CIM技術検討会等、学(学識経験者)として土木学会、 官(国土交通省)は本省、地方整備局、事務所、国土技術政策総合研究所が関わっており、連携を密にして検討を進めています。 各案件に共通する検討内容として、 建設生産プロセスの各段階(調査、設計、施工、維持管理)に必要なモデルの精度、 各段階で付与すべき属性情報、各段階間のデータ受渡しに関する課題と対応、 受発注者間のデータ共有に関する課題と対応等を検討しています。 各案件においては個別に目標を設定しており、以下に示します。 (1)橋梁 ●関東地方整備局:横浜環状南線 栄IC・JCT(仮称) ●個別目標:輻輳する都市インフラにおける事業計画全体の可視化(効果的な事業実施) ●関東地方整備局:国道4号東埼玉道路 大落古利根川側道橋 ●個別目標:設計~維持管理に至る3次元モデルの利活用(モデルの遷移と授受) (2)トンネル ●中部地方整備局:佐久間道路 浦川地区第一トンネル ●個別目標:施工から設計へのフィードバック (3)ダム ●東北地方整備局:胆沢ダム ●個別目標:新たな情報管理手法の構築と既存維持管理方法の高度化 (4)河川 ●北陸地方整備局:荻原築堤護岸他工事等 ●個別目標:新たな河川管理(築堤事業)の方向性 おわりにCIMの検討体制は、平成24年度より、 CIMの推進による建設生産システムの生産性向上の実現には未だ多くの課題が残されています。 関係者各位のこれまでのご尽力に感謝申し上げるとともに、引き続き、CIM推進に当たってのご協力をお願いいたします。 【出典】 建設ITガイド 2016 特集1「本格化するCIM」 ![]() |
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