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九州地方整備局におけるCIMへの取り組みについて

2016年5月5日

 

国土交通省 九州地方整備局 企画部
工事品質調整官 森山 博文

 

はじめに

国土交通省では平成24年度からCIMの導入に向けた取り組みを実施しており、九州地方整備局においても、
建設生産システムへのCIM(Construction Information Modeling/Management)の導入促進と技術研鑽を推進することによる
職員の省力化ならびに土木技術向上によるアカウンタビリティの向上を図ることを目的とした
九州地方CIM導入検討会(委員長:小林一郎 熊本大学教授)を平成25年7月に設立し、
これまでに業務10件、工事11件でCIM導入に向けた試行に取り組んでいる。
 

(1)CIM導入検討会ならびに分科会

CIM導入検討会は、建設生産システムの効率化を図るための各段階におけるCIM活用や課題の検討を行っており、
さらには、個別事業の実施にあたり内容や手法などの検討を行う分科会(トンネル、河川、ダム)を設置している(写真-1)。
 

写真-1 CIM導入検討会の様子

写真-1 CIM導入検討会の様子


 

(2)分科会

①トンネル(道路)分科会
トンネル・橋梁におけるCIM活用事例について情報交換を行い、今後の取り組みについて議論を行うことを目的に設立した。
 
トンネル工事におけるCIM試行では、地質の分布状況とトンネルの位置関係を3次元化することによって、
地質が変化する箇所が可視化され、受発注者間が同じイメージを共有できた。
 
その結果、掘削方法の切り替え協議が円滑に進み、段取り替えのロスが軽減されるなど施工の効率化につながったことが確認された。
一方で、設計・施工段階で作成したCIMデータを維持管理で活用するには、データが膨大で利便性に欠けるため、
目的に応じたデータの受け渡し(データの保管)を検討する必要があるなどの課題が挙げられたため、今後も継続して検討を行う。
 
②河川・ダム分科会
河川・ダムにおける計画・管理段階のさらなる活用を目的に設置し、
平成26年度には「河川におけるCIM活用勉強会」、平成27年度には「ダムにおけるCIM活用勉強会」を実施した。
 
これまでの試行業務、試行工事では、
施設配置計画、景観検討におけるイメージの共有、協議の円滑化などに効果があることが分かった。
 
また、延長の長い河川などでは、3次元データを作り込むまではしなくても、2.5次元(※)で作ることで、
立体的な形状の把握や位置関係などを容易に把握することが可能となり、今後のCIM活用の可能性についても議論を行った。
※2.5次元とは、平面図や横断図等の既存データを組み合わせたもの
 
 

CIM試行事例の紹介

(1)平成24・25年度 筑後川橋詳細設計業務

本業務は、筑後川下流部を渡河する有明海沿岸道路筑後川橋の詳細設計である。
 
架橋位置は、土木学会選奨土木遺産であるデ・レイケ導流堤、国指定重要文化財である昇開橋が存在し、
周辺風景や歴史遺産に十分配慮すべき箇所に計画されている。
そのため、歴史遺産との修景や長大アーチ橋(鋼橋)としての構造的課題、
地域住民や河川利用者との協議の面からCIMの活用を実施した(図-1)。
 

図-1 筑後川橋(完成イメージ)

図-1 筑後川橋(完成イメージ)


 
①景観検討
歴史遺産への圧迫感(外部景観)や橋面上からの眺望(内部景観)の確認のため、CIMを利用して検討を行った。
橋梁本体をすっきりとした印象を持たせ、橋脚幅をコンパクトにすることで歴史遺産への圧迫感を軽減できる単弦構造を選定した。
その他主桁やアーチリブの形状、吊材の配置なども3DCADや模型を利用して最適化を行った(図-2)。
 
図-2 複弦と単弦の比較

図-2 複弦と単弦の比較


 
②構造的課題の解決
アーチリブが単弦構造から橋脚に向かい二股構造に変更する複雑な構造であり、
従来の2次元図面では把握が困難な構造的課題に対してCIM(3DCAD、全体模型、部分模型)を活用して解決した(図-3、4)。
 
図-3 3DFEMによる隅角部の応力

図-3 3DFEMによる隅角部の応力


 
図-4 隅角部の応力の当初案と改善案の比較

図-4 隅角部の応力の当初案と改善案の比較


 
(配慮事項)
●煩雑な板組の製作性の確認
●溶接困難箇所の回避
 
③関係機関との合意形成
CIMを活用した3次元モデルによる施工ステップを関係機関や地域住民との協議に利用することで、
漁業や船舶航行などの河川利用者への施工方法の理解を促すことができ、円滑に合意形成を図ることができた。
 

(2)赤松谷川11号床固工工事

本工事は、水無川砂防基本計画に基づき、周辺地域を土石流等による災害から守ることを目的に、床固工を設置したものである。
 
施工箇所が災害対策法上の警戒区域に該当し、原則人の立入が禁止されているため、
無人化施工機械による情報化施工を実施した(写真-2)。
 

写真-2 赤松谷川11号床固工工事箇所

写真-2 赤松谷川11号床固工工事箇所


 
工事に際し、情報共有および作業の効率化の観点からCIMの活用を実施した。
 
本工事におけるCIM活用効果は次の通りである。
 
①工事前
工事着手前には施工計画の立案が必要となる。
この基礎情報となるのが地形図と構造図であるが、本工事では無人化施工に向けてこれらのデータの3次元化を行った。
 
これを活用したことにより、工事数量の算出や、施工方法検討における施工図およびステップ図の作成が迅速化できた。
 
②施工中
無人化施工では、重機を遠隔操作しながら施工管理を行う必要がある(写真-3)。
 
写真-3 無人化施工状況

写真-3 無人化施工状況


 
このため、3次元化したデータと無人化施工におけるICTや計測機器からのデータを組み合わせた
施工状況モニタリングシステムを導入することで、情報の共有化(見える化)と施工管理の効率化が図られた。
 
③完了時
3次元化したデータに対し、施工記録(品質、出来形、写真)を付加したCIMモデルを作成した(図-5)。
 
図-5 施工データの表示例

図-5 施工データの表示例


 
これを用いることにより、床固工の維持管理において、完成時の記録閲覧や、補修履歴の更新など、データの一元管理が可能となった。
 
 

おわりに

これまでに調査・計画・施工段階でのCIM活用の有効性・必要性を確認することができた。
しかし、CIMを導入するためのハード・ソフト整備の必要性やCIM導入効果の定量的評価、
施工から維持管理へのCIMの活用について課題が挙げられた。
 
今後は、確認された課題について解決を図るとともに、
『防災』など新たな局面でCIMを活用するなど、着実にCIMが展開・浸透するよう取り組んでいきたい。
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2016
特集1「本格化するCIM」
建設ITガイド 2016
 
 



四国地方整備局におけるCIMの取り組み

 

国土交通省 四国地方整備局 企画部 技術管理課
係長 太田 芳宏

 

はじめに

今回、四国地方整備局では自動車専用道路である四国横断自動車道阿南四万十線(阿南〜徳島東)のランプ橋設計において
CIM導入の試行を行い、その効果を検証したので報告する。
 
 

CIM試行項目の選定

今回、設定した箇所は、徳島県小松島市前原町の国道55号と都市計画道路 江田小松島港線の交差点付近に施工する
小松島IC部Eランプ橋の設計業務(平成25-26年度 小松島IC部Eランプ橋詳細設計業務)で、
歩道橋設置があることから立体的に複雑な構造となる(図-1)。
 

図-1 位置図

図-1 位置図


 
そこで、検討項目としてCIMの特性を考慮して
 
(1)交差点内の橋脚位置および視認性の検討
(2)地下埋設物と構造物との干渉照査
(3)歩道橋建築限界の検討
(4)橋脚・杭の配筋とフーチング配筋との干渉照査
(5)施工計画の検討
(6)景観検討
 
を選定し、定量化するための指標として各項目における作業時間で比較検証することとした。
 
 

CIM試行項目の検討結果

(1)交差点内の橋脚位置および視認性の検討

運転者や歩行者からの見通し(安全性)が確保できているかの判断が確実にでき、
関係機関協議等の説明資料としての分かりやすさが向上した(図-5)。
 

図-5 交差点内の橋脚位置および視認性の検討

図-5 交差点内の橋脚位置および視認性の検討


 

(2)地下埋設物と構造物との干渉照査

地下埋設物や支持層線を3次元モデルで表現したが、
地下埋設物の干渉、支持層への根入れ確認は、2次元図面での確認と比較し、
特に効率性・確実性の向上は認められなかった(図-6)。
 

図-6 地下埋設物と構造物との干渉照査

図-6 地下埋設物と構造物との干渉照査


 

(3)歩道橋建築限界の検討

3次元モデルの場合、上部工の桁と歩道橋の建築限界間の最小離隔となる位置や距離が自動算出されるため、
建築限界の検討は容易である。
また、既設計歩道橋階段の修正に当たり、階段を複雑で狭い地形の中に収める必要があったが、
3次元モデルにより、2次元図面では把握が困難な空間の立体的把握ができることで
効率性・正確性において効果が大きかった(図-4)。
 

図-4 歩道橋建築限界の検討

図-4 歩道橋建築限界の検討


 

(4)橋脚・杭の配筋とフーチング配筋との干渉照査

橋脚、杭頭、フーチングの配筋は、3次元空間を考えないと把握困難な3方向配筋ではなかったため、
特に3次元モデルの有効性は認められなかった(図-7)。
 

図-7 橋脚・杭の配筋とフーチング配筋との干渉照査

図-7 橋脚・杭の配筋とフーチング配筋との干渉照査


 

(5)施工計画の検討

立体的に交差する高圧線や歩道橋の3次元的な位置関係、施工上のコントロールポイントのデータを3次元モデル化することで、
高圧電線等支障物件との離隔を確認しつつ、クレーン配置等の計画ができ、
より安全で、確実な施工計画ができた(図-3、写真-1)。
 

図-3 施工計画の検討

図-3 施工計画の検討


 
写真-1 施工計画の検討状況

写真-1 施工計画の検討状況


 

(6)景観検討

形状のイメージが容易に把握・共有できるとともに、見た目のイメージ(景観性)だけでなく、3次元モデルで提示することで、
点検作業時の平面道路への影響や鳥害対策の必要性など維持管理性の議論も深めることができ、効果があった(図-2)。
 

図-2 景観検討

図-2 景観検討


 
 

CIM試行による課題

CIMでは、2次元図面では表すことが困難な部分の確認が容易になるという効果がある一方で、下記の課題が抽出された。
 
①必要な3次元モデルを一から作成する必要がある。
②必要以上に精緻な3次元モデルを作成すると手間が膨大になり非効率となる。
③複雑な3次元モデルは、作成する技術者に一定レベルの技術を必要とする。
④図面がない占用物件などは、3次元レーザースキャナー(MMS)等を使用した想定の作り込みが必要となるため、
 3次元モデルの作成に手間がかかる。
 
以上のような課題に対し、作成時間を調べ、CIM導入の効果を従来手法と比較した。
 
 

従来手法との作業量比較

CIMモデルごとの作業時間および従来手法との設計作業量の比較を表-1、表-2に示す。
 

表-1 3次元モデル作成時間表

表-1 3次元モデル作成時間表


 
表-2 設計作業量比較表

表-2 設計作業量比較表


 
なお、3次元モデルの作成時間は、CIMモデル作成者の技術レベルによって大きく異なる。
表-1、2に示す時間は、CIMの経験が豊富な技術者が作成に要した時間であり、
従来手法の時間はこれまでの経験による想定の時間である。
 
3次元モデルを活用した場合、各項目の確認・検討に費やす時間は、
従来手法より少ないか同等だが3次元モデル作成時間を考慮すると従来手法より13時間多い。
 
ただし、本業務では、「橋梁配筋」、「地下埋設物」、「地層」については、3次元モデル導入による有効性は認められなかったため、
そのモデル作成時間を差し引くとその時間は26時間となり、設計作業量比較では6時間減少させることができることが分かった。
 
●結果
一度3次元モデルを作成することで設計照査などは、
従来手法より短い時間で実施することが可能となり、設計の効率化が図られることが期待できる。
 
なお、3次元モデル作成時間を短縮するためには、
目的に応じて、作成すべき項目と不要な項目および作り込みレベルを事前に検討し、適切に設定する必要がある。
 
また、CIMを活用することで作業時間の短縮のみならず
、関係機関等との協議や施工計画の打合せ等において効率化を図ることが期待できる。
 
 

おわりに

今回は、CIM導入の効果を作業時間のみで比較したが、
成果としての今後の活用方法を考えれば、今後続くであろう工事の施工管理を行っていく上で、
3次元データがどう活用されていくか等、さまざまな検証が必要と思われる。
 
今回の試行においては、設計業務における作業に着目した試行としての一つの指標となると思われる。
今後さまざまな分野でのCIMの活用促進を期待したい。
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2016
特集1「本格化するCIM」
建設ITガイド 2016
 
 



近畿地方整備局におけるCIMの取り組みについて−国道161号溝橋・青柳高架橋下部工事等(滋賀国道事務所の事例)−

2016年5月3日

 

国土交通省 近畿地方整備局 滋賀国道事務所
建設監督官 森 光正

 

はじめに

国土交通省における土木分野でのICTの活用としては、
事業の効率化などを目指して平成8年度(1996)に「建設CALS整備基本構想」を策定し取り組んできました。
 
これまでの間、一定の成果は得られましたが、
調査〜計画〜設計〜施工〜維持管理まで、一貫した情報化システムは未だ構築されていません。
 
平成24年度に国土交通省では、今後の建設生産システム全般において、
既に導入されている建築におけるBIM(Building Information Modeling)の思想とツールを取り入れて、
建設分野全般に適用すべくCIM(Construction Information Modeling)の構築と導入を進めることになりました。
 
CIMの導入に当たっては、現行制度や要領・基準類の見直しが必要になることから制度の検討を進めることになりました。
また、並行して実際の事業の中でその効果について検証する必要があり、CIMを導入したモデル事業も実施することになりました。
 
滋賀国道事務所におけるCIMの取り組みは、
平成24年度の「国道161号安曇川地区橋梁修正設計(業務)」で
溝橋(RC単純インテグラルアバット橋 橋長14.6m)の構造物外形・配筋の構造物モデル、
溝橋を中心にした全体モデルの試行から始まりました。  
 
平成25年度には、「国道161号安曇川地区道路詳細設計他設計(業務)」で地形測量を実施し、
そのデータを平成24年度作成の全体モデルのデータに入力し地形の精度を向上させる試行を実施しました。
また、情報化施工でのCIMデータの活用を確認するため、溝橋両側の土工モデルの試行も併せて実施しました。
 
この取り組みが、平成25年度の「国道161号溝橋・青柳高架橋下部工事」(指定工事)の試行へとつながり、
平成26年度には、「国道161号青柳北地区改良工事」(指定工事)の試行へと続きました。 
 
また、「国道161号青柳第1高架橋PC上部工事」(希望工事)と
「国道161号青柳第2高架橋PC上部工事」(希望工事)も試行工事に参加していただき、
これらを含めて設計から施工までのCIMの試行を行いました。
 
これらの設計・施工で作成したCIM試行の3次元モデルデータを統合し、国道161号安曇川地区青柳工区の3次元モデルができました。
 
対象橋梁概要
●橋梁名:溝橋
●道路規格:第3種第1級V=60km/hr(暫定時)
●橋梁形式:RCインテグラルアバット構造 橋長:14.600m
●有効幅員:10.240m(暫定時)
●径間長:14.600m
●橋台:2基(単列場所打ち杭φ1500)
 

橋梁全体一般図

橋梁全体一般図


 
確認ビュー(溝橋)

確認ビュー(溝橋)


 
 

施工段階でのCIMデータの作成

今回「国道161号溝橋・青柳高架橋下部工事」および「国道161号青柳北地区改良工事」(A社)、
「国道161号青柳第2高架橋PC上部工事」(B社)および「国道161号青柳第1高架橋PC上部工事」(C社)における取り組みでは、
設計で作成していない3次元モデルを施工段階で作成しました。
 
施工業者としての取り組み体制は、以下の通りです。
 
A社:土木部長を中心に、施工チーム(属性データ、出来形データ収集)、CIMチーム(CIMモデル作成)、
   CIM支援チーム(設計事務所、ソフトベンダー)の3チーム体制で取り組みました。
B社:工事担当者による施工チーム:(属性データ収集)、
   CIMデータ作成チーム:(CIMモデル・成果品作成)の2チーム体制で取り組みました。
C社:CIM導入に向けた取り組みを実施中であり、今回の案件については、CIM対応部署との連携により実施しました。
 
 

CIMデータの閲覧について

滋賀国道事務所の試行におけるCIMデータは、下記の方法で閲覧できます。
●ナビスワークスフリーダム(NAvisworks Freedom)による閲覧
●映像による閲覧
●3次元PDFによる閲覧
 

溝橋基礎杭の属性情報(NAvisworks Freedom)

溝橋基礎杭の属性情報(NAvisworks Freedom)


 
青柳第1高架橋(映像)

青柳第1高架橋(映像)


 
青柳第2高架橋下部(3D PDF)

青柳第2高架橋下部(3D PDF)


 
CIMデータの閲覧等により施工業者としての試行の効果、負担および施工管理上のメリット・デメリットについて、
以下の通り示します。
 
●試行の効果
A社:施工時の効果としては、工事打合せ時にCIMモデルを利用することで、非常に理解度が高まり、手戻りの削減に効果があった。
B社:工事完成後の維持管理において、既存の台帳や電子納品データに加え、CIMデータを利用することで効果が期待できる。
C社:施工時にCIMモデルを活用すれば、作業工程の確認や安全管理、出来形管理など作業の効率化が期待できるが、
   完成時の納品資料としての役割では施工業者としての効果は限定的に感じる。
   スケッチアップなどの比較的安価なCIM対応ソフトやビューアを利用して
   CIMモデルから得られる情報が簡単に取り出せるようになれば活用の幅が広がっていくと思います。
 
●施工業者としての負担
A社:現場施工管理担当者だけでは、日常業務以外にCIMを導入すると負担が大きく、
   CIM担当として新たに教育を受けた者を配置する必要があった。
   また、導入について、ハード・ソフトのコストに加え、教育訓練等の2次的な費用が発生した。
B社:弊社においては、今回が初の試みであったため初期投資に負担がかかったが、
   CIMの今後における汎用性を考慮すると実際のCIMデータ作成に要した労力のみと考えるため、負担について問題ない。
   ただし、設計段階からデータがない場合は、最初からのデータ作成となるため負担は非常に大きくなる。
C社:現状ではCIM対応のソフトを導入するための費用負担が大きく、
   また操作についても慣れが必要で専門部署やチーム編成ができない場合においては施工業者だけでの導入は困難です。
   今後は、CIMに関する要領や基準などが整備されることで、導入に向けた取り組みが業界全体で進むと思います。
   CIMモデルを工事発注時に発注図面と一緒に提供していただけると
   CIMデータ作成についての施工業者の負担は最小限に抑えられます。
 
●施工管理上のメリット・デメリット
【メリット】
●鉄筋加工において現場での組み立てが不可能である箇所が確認できた
●埋設管との近接施工において、試掘で得られたデータを基に非常に理解度の高い危険予知活動に結びつき、安全な施工が実施できた
●作業員に対して作業手順周知会を開催することで、桁架設の順序が分かりやすく手戻りの削減につながる
 
【デメリット】
●CIM実施のため、ハードやソフトに費用がかかり、操作する担当者確保と教育費用がかかる
●通常のパソコンでは操作ができず、高性能のパソコンが必要
 
青柳第2高架橋P2橋脚下部と地下埋設物件との位置確認

青柳第2高架橋P2橋脚下部と地下埋設物件との位置確認


 
 

CIMデータの活用に対する課題

コンサルタントと施工業者の協力で青柳工区全体の3次元モデルができてきましたが、今後活用するための課題について考えました。
 
●道路管理への活用
 現行制度や要領・基準等が見直しされ、実際現場で施工した状況がデータに反映出来れば、
 道路台帳や施設台帳を補完するデータとなる。
 
●工事の出来形管理や数量算出
 実際現場で施工したデータがCIMモデルに反映・修正ができれば、
 数量の自動算出による省力化が図れるが、照査や確認方法がない。
 
●ソフトおよびハードの汎用性
 操作や閲覧を行うには、相当ハイスペックなパソコンや特定のソフトが必要となり、
 それを扱える人員も含めて多大な費用が必要となる。
 CIM導入の取り組みは実施されましたが、建設産業における生産性の向上の実現を目途としている中で、
 CIMを活用していくためには、運用面、技術面、制度面に対する課題を解決していく必要があります。
 
 

おわりに

滋賀国道事務所で行ったCIMの試行は、小規模な試行でした。
 
しかし、コンサルタント業者や施工業者の協力による取り組みにより、
橋梁を3橋、溝橋の両側盛土部と青柳工区全体の3次元モデルのデータができました。
今後も引き続き、舗装、ガードレール、標識、照明等の3次元モデルデータを作成し、
3次元モデルデータを統合したバーチャル青柳工区を完成できればと考えています。
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2016
特集1「本格化するCIM」
建設ITガイド 2016
 
 



中部地方整備局における産・学・官CIMの取り組み

2016年5月2日

 

国土交通省 中部地方整備局 企画部 満仲 滋夫
同 企画部 技術管理課 下野 裕徳・有田 博宣

 

はじめに(産・学・官CIMについて)

国土交通省では、平成24年度より建設生産システムの効率化・高度化を図るため、CIM導入についての検討を進めています。
 
検討体制は、制度・基準等についての検討を行うCIM制度検討会と、
3次元モデルの構築・利活用の検討を行うCIM技術検討会の2つの検討会となります。
 
平成26年12月4日「産学官によるCIMの構築」についての記者発表がなされました。
平成28年度の「CIM導入ガイドラインの策定」に向け、産(CIM技術検討会)、学(土木学会)、官(国土交通省)が連携して、
実モデル構築を通じた課題の抽出・対応を検討する取り組みが始まりました。
 
4分野(橋梁、トンネル、ダム、河川)を対象に、全国5カ所の実モデル構築を通じて、課題抽出や対応検討を行っています。
 
産・学・官CIM検討会
 
中部地方整備局では、浜松河川国道事務所の「平成24年度 佐久間道路浦川地区第1トンネル新設工事」において、
トンネル分野の検討が進められています。
 
この工事のCIMの活用は、受注者の希望により行う、CIM試行事業の希望型工事として行われています。
 
現在進められているトンネル3Dモデルの作成と、
産・学・官CIM検討会(トンネル分野)の検討状況について、紹介させていただきます。
 
 

佐久間道路浦川第1トンネルの概要

三遠南信自動車道(国道474号)は、
長野県飯田市から静岡県浜松市を結ぶ延長約100kmの高規格幹線道路であり、
中央自動車道、新東名高速道路と連結し地域間の連携強化や、
沿線地域の秩序ある開発、発展等を目的に建設が進められています。
 
佐久間道路浦川第1トンネルは、
三遠南信自動車道の一部を構成する佐久間道路・三遠道路の東栄ICと佐久間ICの間(佐久間道路)延長6.9kmの間に位置します。
 
【工事概要】
(工期) 平成25年2月15日〜平成28年3月21日 
(受注者) (株)大林組 名古屋支店
(工事数量) 本坑L=1,555m 避難坑L=1,575m ほか坑門工、附帯工事
 
佐久間道路浦川第1トンネル 工事概要
 
 

トンネル3Dモデル(統合モデル)の作成

さまざまな利活用を想定し、得られる情報について1つに統合するかたちで、
トンネルの計画段階で作成する地層モデル、トンネルモデル、坑口地形点群モデルに、
施工中に得られる属性管理情報、計測結果情報、地質情報等を重ね合わせて作成します。
 
①地層モデルは、国土地理院で提供されている「基盤地図情報」による
 10mメッシュの標高データを利用して地形のモデルを作成します。
 それに調査段階で得られたボーリングデータ、地質縦断図の情報をもとに地層種別ごとに色分けを行っています。
 
地層モデル
 
②トンネルモデルは、設計時の線形、座標、断面形状をもとに、トンネル支保構造の違いにより色分けを行っています。
 浦川第1トンネルでは、本線トンネルと避難坑を併設(太い線が本線トンネル、細い線が避難坑)しますが、
 3Dモデル化することにより、トンネルの大きさの違いや、双方のトンネル位置関係などが一目瞭然になります。
 
トンネルモデル
 
③トンネルの入り口部分(坑口)は、LP測量を実施して、得られた点群データから、より詳細なモデルを作成しています。
 トンネルと地表面との位置関係などの詳細検討に活用しています。
 
坑口詳細モデル
 
④作成したトンネルモデルに、施工の品質管理記録(施工日時やコンクリートの品質などのデータ)を属性情報として関連付けます。
 関連付けとは、その対象部位のトンネルモデルと属性情報がつながること(リンクすること)を言います。
 その結果、簡単に対象部位のモデルから施工時の記録をフィードバックすることが可能になります。
 またその逆に、施工時の記録から対象部位の3Dモデルを検索することも可能となります。
 
属性情報関連付け
 
⑤トンネルの変位を計測し、変位データを属性情報として3Dモデルに関連付けます。
 可視化することにより状況判断するときの資料となります。
 施工中の変位データを蓄積するとともに、引き渡し時には、覆工の初期点検の情報なども関連付けする予定です。
 
計測結果情報
 
 また、切羽の観察記録から、施工時に判明した地層をトンネルモデルに反映します。
 
地質情報
 
 

産・学・官CIM検討会(トンネル分野)の取り組み

産・学・官CIM検討会では、調査から維持管理までの一連の建設生産システムにおいて次の段階につながり、
そして有効に活用するため、各段階(調査・設計・施工・維持管理)のモデルにおいて、付与する属性情報の選定、
次の段階へのデータ受け渡しの方法、受発注者間のデータ共有方法等についての検討が進められています。
 
検討会の下には、発注者側を中部地方整備局のみとしたWG(ワーキンググループ)を設置し、
(株)大林組名古屋支店のご協力を得て、施工段階からの提案を中心に、
より現場に近い形で意見交換を行い検討会への提案を行っています。
 
各段階のモデルと検討状況
 
①設計段階の「CIMトンネルモデル作成ガイドライン」の検討状況
施工者側で効果的に利用することを目的に、調査・設計側でトンネルモデルを作成するための考え方や手法等を取りまとめています。
現在以下のような観点で議論が進められています。
 
●ベースとなる地形モデルの作成方法について、国土地理院で提供されている「基盤地図情報」の活用や、
 部分的なレーザープロファイルデータなどを用いた詳細な地形データの活用について
●地質調査結果のモデル化において、モデルの種類とそれぞれの特性と妥当性について
●構造体モデルにおいては、施工で利用することを念頭においてモデルの種類や、その作り込みの程度について
 
②施工段階におけるCIMモデルの効果的な活用方法の検討状況
設計側で作成されたトンネル構造物のモデルデータを、
施工時および次工程に対して活用することを目的に、考え方や手法等を取りまとめています。
現在以下のような観点で議論が進められています。
 
●設計段階から受領した設計モデルの確認方法について
●施工管理情報(切羽・地質情報)の累積・共有方法について
●出来形確認への活用について
 
③維持管理段階へのトンネルCIMモデルの利活用の検討状況
維持管理(点検→健全性の診断→措置→記録)で必要となるモデルについて、
現在行われている方法をもとに、以下のような観点で議論が進められています。
 
●維持管理に適したトンネルモデルについて
●施工から維持管理段階へ受け渡す属性情報について
●施工段階で活用したトンネルモデルの保管方法について
 
 

おわりに

平成27年12月にはWGを開催し試行モデルを題材とした意見交換を行い、
ガイドラインの骨子の素案を作成し、平成28年2月頃に予定する検討会に提案する予定です。
来年度はこの骨子をもとにガイドラインの策定が行われる予定です。
 
ガイドラインが整備されることにより諸要件が整理され、将来的に官・民協力してCIMを活用することにより、
生産性・品質の向上や工期短縮がなされ、担い手不足の解消へとつながっていくことを期待しています。
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2016
特集1「本格化するCIM」
建設ITガイド 2016
 
 



国土交通省におけるCIM(Construction Informatin Modeling/Management)

2016年5月1日

 

国土交通省 大臣官房 技術調査課
工事監視官 山下 眞治

 

はじめに

わが国の建設業は近年、就業者数の減少とともに高齢化の進行が著しい(図-1)。
 

図-1 建設就労者の高齢化の進行

図-1 建設就労者の高齢化の進行


 
また、建設投資額はピーク時の平成4年度の約84兆円に対し平成26年度は約48兆円となっています。
このような厳しい環境の中において、今後建設業が飛躍・発展し、良質な社会資本の整備・管理をしていくためには、
一連の建設生産システムの生産性の向上が求められています。
その鍵となるのが情報通信技術であります。
国土交通省では、平成24年度から、土木事業において調査・設計段階から3次元モデルを導入し、
施工・維持管理の各段階においても活用し、あわせて事業全体にわたる関係者間で情報を共有することにより、
一連の建設生産システムの効率化・高度化を図るCIM(図-2)の試行に取り組んでいます。
 
図-2 CIM概念

図-2 CIM概念


 
 

CIM試行から見えてきた効果と課題

(1)試行状況

国土交通省直轄事業のCIMの試行は、
平成24年度においては11件の詳細設計業務について実施し、
平成25年度は概略・予備設計、詳細設計業務で19件、工事で21件、
平成26年度は設計業務で10件、工事で28件実施しました(図-3、4)。
 

図-3 試行業務の推移

図-3 試行業務の推移


 
図-4 試行工事の推移

図-4 試行工事の推移


 

(2)CIM導入による効果

CIMにおける一つの大きな効果としては、可視化による業務の効率化が挙げられます。
 
設計業務においては、3次元モデルで俯瞰できるために、
2次元図面では分かりにくい設計ミスであっても容易に発見することができます。
また、修正に当たっては、一つのモデルを修正すれば足りることから、
図面間の不整合が生じることがないため、迅速かつ正確に修正することができます(図-5)。
 

図-5 鉄筋干渉の確認

図-5 鉄筋干渉の確認


 
さらに、組織内外部の協議や地元住民への説明会等において、
ビジュアルに訴えることができる3次元モデルを利用することで合意形成を円滑に行うことができます(図-6)。
 
図-6 地元説明

図-6 地元説明


 
また、さまざまな数量(例えば、土量や鉄筋量、コンクリートの量等)を自動で算出できることにより、
概算事費が容易に算出でき、発注業務の効率化に貢献しています(図-7)。
 
図-7 数量自動算出

図-7 数量自動算出


 
工事においては、3次元モデルに時間軸を組み合わせることで施工手順等を共有化し、
施工計画に関わる所要時間を短縮することができます。
また、重機の動線や可動範囲等を3次元で把握することで、施工現場の安全管理に役立っています。
その他にも、3次元モデルを用いて干渉箇所を確認・修正することによる手戻りの削減や関係者協議の効率化に寄与しています。
 
CIMの特徴の一つに3次元モデルに付随した属性情報があります。
属性情報はさまざまなものが考えられ、
契約の情報であれば、設計会社や担当技術者、施工会社や請負金額、工期、設計変更の経緯等があり、
現場条件や材料であれば、地質、断層、コンクリート(強度やスランプ試験値等)、鉄筋等があり、
維持管理においては、点検・診断結果等があります。
属性情報を付与することで設計・施工段階の詳細なデータが後世まで残ることになり、
維持管理の効率化や事故発生時の原因究明および対応策の検討等に生かすことができます。
 

(3)CIM導入による課題

一方、課題も見えてきました。
例えば、3次元モデルの作成に要する時間と費用です。
CIMは新たな取り組みということもあり、現状はモデルを作成できる技術者やCIMに精通している人材が少ない。
そのため、一部の技術者に業務が集中し、作成時間も多く要しています。
また、現行の建設生産システムは2次元図面を契約図書とすることが前提となっているため、
3次元モデルを契約図書とする場合の取り扱いを決定しなければなリません。
そのほか、設計・施工一括契約はCIMの効果がより発揮できるとも言われており、入札・契約制度のあり方も検討しなければなりません。
機器ソフトの面では、ソフトウェアの改良(機能の追加や操作性の向上等)も求められています(図-8)。
 

図-8 試行工事の検証状況

図-8 試行工事の検証状況


 
このように、CIMの普及を推進していくには、制度検討、技術開発、人材育成と総合的な取り組みが必要となります。
 
 

産学官が連携したCIMの構築

これまで直轄事業において、さまざまな工種の設計業務、工事において試行を実施し、
各フェーズ(設計、工事)における効果や課題を整理してきました。
そして、平成27年1月には産(民間団体)、学(学識経験者)、官(国土交通省)が
より一層連携してCIM推進に向けた検討を進めるため、産学官CIM検討会を立ち上げました。
産学官が連携したCIMの構築では、
CIM制度検討の中期目標(H24-H28)である「CIM導入ガイドラインの策定」に向けて、
平成26年度および平成27年度の2年間で検討し、CIMの導入効果がより発揮されると考えられる、
橋梁、トンネル、ダム、河川の4分野を選定し、直轄事業におけるCIM試行事業の中から5つの案件を選定し、
維持管理までを踏まえたCIMモデルを構築し、課題の抽出や課題への対応を検討しているところです(図-9、10、11)。
 

図-9 導入ガイドライン策定スケジュール

図-9 導入ガイドライン策定スケジュール


 
図-10 産学官が連携したCIMの構築

図-10 産学官が連携したCIMの構築


 
図-11 産学CIMの検討体制

図-11 産学CIMの検討体制


 
産(民間団体)として、CIM技術検討会等、学(学識経験者)として土木学会、
官(国土交通省)は本省、地方整備局、事務所、国土技術政策総合研究所が関わっており、連携を密にして検討を進めています。
各案件に共通する検討内容として、
建設生産プロセスの各段階(調査、設計、施工、維持管理)に必要なモデルの精度、
各段階で付与すべき属性情報、各段階間のデータ受渡しに関する課題と対応、
受発注者間のデータ共有に関する課題と対応等を検討しています。
 
各案件においては個別に目標を設定しており、以下に示します。
(1)橋梁
●関東地方整備局:横浜環状南線 栄IC・JCT(仮称)
 ●個別目標:輻輳する都市インフラにおける事業計画全体の可視化(効果的な事業実施)
●関東地方整備局:国道4号東埼玉道路 大落古利根川側道橋
 ●個別目標:設計〜維持管理に至る3次元モデルの利活用(モデルの遷移と授受)
 
(2)トンネル
●中部地方整備局:佐久間道路 浦川地区第一トンネル
 ●個別目標:施工から設計へのフィードバック
 
(3)ダム
●東北地方整備局:胆沢ダム
 ●個別目標:新たな情報管理手法の構築と既存維持管理方法の高度化
 
(4)河川
●北陸地方整備局:荻原築堤護岸他工事等
 ●個別目標:新たな河川管理(築堤事業)の方向性
 
 

おわりに

CIMの検討体制は、平成24年度より、
CIMを導入するための制度、基準等についての課題を整理・検討するCIM制度検討会と
CIMを実現するために3次元モデルの構築・利活用に当たっての技術的な検討を行うCIM技術検討会において
検討を進めてきています。
 
CIM制度検討会およびCIM技術検討会での検討成果、試行事業での成果、
そして、平成26年度からの産学官が連携したCIMの構築の検討成果、これらの成果をとりまとめて、
平成28年度にCIM導入ガイドラインを策定することを予定しています。
ガイドラインの策定により、発注仕様や納品仕様等が明らかになり、
関係者間の情報共有が図られることで、スムーズにCIMの導入が進むことを期待しています。
なお、ガイドラインについては、平成29年度以降、運用検証を行い、
適宜拡充を行うなどより使いやすいものへとしていく予定です(図-12)。
 

図-12 CIMガイドライン策定の検討体制

図-12 CIMガイドライン策定の検討体制


 
CIMの推進による建設生産システムの生産性向上の実現には未だ多くの課題が残されています。
関係者各位のこれまでのご尽力に感謝申し上げるとともに、引き続き、CIM推進に当たってのご協力をお願いいたします。
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2016
特集1「本格化するCIM」
建設ITガイド 2016
 
 



 

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