建設ITガイド

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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

タブレットはホントに建設現場で使えるのか?

2015年4月27日

 

あっとクリエーション株式会社
代表取締役 黒木 紀男

 

ノートパソコンとタブレットの違いとは?

「タブレットを導入してみたけど、何に使ったらいいのか?よく分からないなぁ」
 
「プレゼンに使うか、動画を見るか、メールする以外に使い方が思いつかないよ」
 
 
タブレットを導入してみたものの、結局あまり使われることなく、机の引き出しに入れっぱなし…というケースをよく耳にします。
実際にそうなってしまった方のお話を聞いてみると、冒頭のような言葉が返ってくることが多いんです。
 
なぜこうなってしまったのか?
その人たちの話を聞いてみると、とても納得できます。
 
 
「プレゼンや動画、メールなら、ノートパソコンでもできるのに、わざわざタブレットを使う必要が見当たらないんだよね」
 
「メールを書くとしても、キーボードがある方が効率がいいので、どちらを使おうか?っ て考えたら、ノートパソコンだよね」
 
「ノートパソコンとタブレット両方を一緒に持ち歩くのは重いから、結局タブレットを持ち歩かなくなった」
 
 
どの意見もごもっともで、その通りだと思います。
 
しかし、タブレットが世間で注目されていることは事実です。
では、タブレットは、なぜこれほどまでに注目されているのでしょうか?
タブレットは、本当に仕事に役に立つのでしょうか?
役に立つのだとしたら、何に使えるのでしょうか?
 
また、もうひとつ、よく言われること。
 
 
「わたしらみたいな歳になると、こんな新しいモンはもう使われへんわ」
 
 
これも本当でしょうか?
これについては、実際に使われている事例を見ながら、確認してみたいと思います。
 
これらの点に注目して、実際に使われている事例から、
タブレットやスマートフォンをうまく業務に生かす方法を考えてみたいと思います。
 
 

タブレット・スマートフォン活用の成功事例

タブレットやスマートフォンが業務でうまく使われている事例をいくつか見てみましょう。
 

現地調査支援アプリ「カンタンマップ for iPad・iPhone」

「カンタンマップ」は、あっとクリエーション株式会社が開発した、
タブレットやスマートフォンを使って現地調査を効率化しようというアプリです。
 

図-1 カンタンマップ

図-1 カンタンマップ


 
現地調査に行く際には、地図や図面、デジカメ、手帳、携帯電話、過去の調査資料など、とても荷物が多くなります。
建設現場によっては、道なき道を入っていくような現場も多く、タダでさえ荷物を減らしたいものです。
 
以前に比べITは進化し、カメラはフィルムカメラがデジカメになり、GPSも搭載されたり、どんどん進化しました。
携帯電話もガラケーからスマートフォンになり、もの凄い勢いで進化しています。
 
にも関わらず、現地調査を考えた時、使うツールひとつひとつは進化したものの、
現地調査そのものの効率化や高度化はあまり進んでいないのが現状です。
現場から戻ったら、現場で撮影した何百枚もの写真は手作業で整理する必要があり、
いざ作業をしてみると、この写真はどこで撮影したものだったっけ?ということもしばしばあります。
 
この現地調査のIT化を推進すべく、現地調査に必要なITツールをひとつにまとめようと考えたものが「カンタンマップ」です。
 
図-2 必要なITツールをひとつに

図-2 必要なITツールをひとつに


 
ここで、具体的にどのように使われているのか?を見てみましょう。
河川維持工事業務で利用されている例です。
 
河川維持工事では、堤防に陥没ができていないか?堤防にある階段などが壊れていたりしないか?など、日々点検を行っています。
点検の結果、何か事象を見つけたら、どこで何が起こっているのか?をメモを取り、写真を撮り、
Excelベースの報告書として河川管理者に報告する必要があります。
 
ここで、現状で生じている課題として、現場から戻ってからパソコンを起動し、Excelに 生じている現象を書き込み、
その写真と場所が分かるように、地図を貼り付ける作業を行わなければなりません。
 
これをタブレットを使って、現地で全ての作業ができてしまえばどうでしょうか?
タブレットに表示された地図上に、起こっている事象の場所を記録し、その内容をメモ書きします。
また、タブレットに付いているカメラで写真を撮影して、その写真にスケッチを描き込めたら便利です。
メモ書きもタブレットの音声入力が使えれば、キーボードを打つ必要もありません。
 
さらに、河川維持では、堤防の形状なども重要になるのですが、
GoogleマップやAppleマップでは、堤防のような細かい形状は表現されていません。
このような地図では河川維持をはじめ、建設現場での利用では役に立たないため、
カンタンマップでは業務に必要な精度の地図を重ね合わせて表示できる機能があります。
 
これにより、例えば堤防のどこに亀裂が発見されたのか?といった詳しい情報をきちんと記録することができ、
次回の点検の際にもそれを見逃すことがなくなります。
 
また、現地調査では、山の中など災害時などで通信環境が使えないところでも使える必要があるため、
全ての機能がオフラインでも使えるようになっていることも特長のひとつです。
 
加えて、オプションで指定の帳票様式に印刷するためのカスタマイズなども可能であり、
これまでの現地調査のやり方を変えてしまう可能性のあるアプリです。
 
「カンタンマップ」は、河川維持の他、下水道などの地下埋設管管理やマンホール・電柱管理、林業における林班表示、
農地管理における施設管理、固定資産調査、道路附属物点検、道路やトンネル計画地の現地調査など、
さまざまな分野で利用されています。
 
中には、河川の現況調査で、図-3のような使われ方をしているユーザーもいます。
iPadだけで作業ができるからこそ実現しうる調査手法ですね。
 
図-3 河川での現況調査にて

図-3 河川での現況調査にて


 

位置情報付き写真管理システム「キロふぉと」

「キロふぉと」は、JR西日本およびジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社が開発した、
線路や架線、付帯設備を点検する作業を効率化するためのアプリです(図-4)
 

図-4 キロふぉと

図-4 キロふぉと


 
鉄道運行には、人命に関わることもあり、非常に高いレベルの日常点検が求められます。
そのため、線路や架線などに異常がないか、日々の点検作業がとても重要になります。
 
その点検作業では、何かが発見されたら場所を記録し、写真を撮影して、
事務所に戻ったら、その結果報告を所定の形式による報告書を作成し、実施するという作業を行います。
 
「キロふぉと」はこの点検、報告作業において、スマートフォンを使用することによる業務の効率化を目指したアプリです。
 
このアプリを使った作業では、事象があった箇所の写真を撮影し、写真にメモを書き込め、どのようなことがあったのか、
事前に登録しておいた項目から選択するだけで登録が完了します。
文字入力の必要はありませんが、必要な場合、キーボードによる入力もできるようになっています。
 
このアプリは、さらに鉄道の点検にとって必要かつ重要な機能があります。
写真を撮影する際に、現在地のGPS情報をサーバに送ることで、「キロ程」に自動的に変換されるようになっています(図-5)
 
図-5 GPSの緯度経度から「キロ程」を算出する

図-5 GPSの緯度経度から「キロ程」を算出する


 
これにより、日常業務で使い慣れているキロ程で管理できるため、その写真がどこで撮影されたかがすぐに分かります。
 
例えば、撮影された場所が、GPSの経緯度ではなく、「東海道本線のキロ程500キロ+580m地点の右側に10m離れた場所」のように、
鉄道管理者であればすぐに分かるような言葉に置き換えて、位置情報を伝えていることにあります。
 
スマートフォンにて各所から送られてくる報告は、事務所にあるパソコンで一覧表示され、
管理者/担当責任者はすぐに状況を確認することができます。
 
また、パソコンから所定のExcel帳票(ユーザーが普段使用している報告書形式で生成)も印刷することができるため、
点検者は現場から写真を送った後、事務所に戻ってから作業日報のようなものを作成する必要もありません。
 
実際にこのアプリを導入した現場では、設備のちょっとした故障や破損の報告、定期交換時の記録等、
あらゆる場面で活用されています。
また、緊急時や災害時に大きな威力を発揮することも分かりました。
これまでは線路の管理は土木担当者、架線の管理は電気担当者と縦割りであったのですが、
緊急時や災害時に現場に入った作業者が撮影した写真を部門横断的に共有することにより、
適切で迅速な対応が取れるようになったそうです。
今後、指令と現場をつなぐツールとしての活用も期待されています。
 
そのような成果が評価され、
このアプリはJR西日本において、「現場の技術開発制度」で最優秀として社長表彰という結果につながりました。
 

図面管理システム「CheX(チェクロス)」

「CheX」は、株式会社YSLソリューションが開発した、図面管理を目的とした情報共有アプリです。
 
ビルなどの工事中などでは、設計変更が頻繁に行われます。
その際、変更された図面と現場との確認が発生します。
施工後の現場と図面との照合も必要です。
 
紙に印刷した複数の図面を、現場に持って確認する作業は大変な作業です。
またそのチェックで発覚した問題箇所を、設計担当者や業者に伝えるのも手間がかかります。
図面上にメモを書き込んだり、手持ちのカメラで写真を撮ったりしてなど、天候が悪い時などは特に面倒です。
 
現場担当者は、持ち運びに便利なタブレット端末(iPad)を、現場に持って行くだけで、 図面の参照が簡単に行えます。
 
CheXは、図面の拡大縮小や参照箇所の移動もカンタンな操作でスピーディです。
タブレット端末には、複数の図面を入れることができるため、複数のフロアやいくつもの建物の確認も可能です。
 
直前に変更された図面や忘れてきた図面も、ボタン一つでクラウドと通信して、簡単に呼び出すことができます。
 
ボタン一つでクラウドと通信
 
現場でチェックした箇所には、タブレット端末に表示された図面に、手書きでマークや文字を書き込むことができます。
またタブレット端末のカメラで撮ったチェック箇所の写真を、その図面に張り付けたりすることも可能です。
 
1つの図面にたくさんのチェック個所がある場合は、図面上にピンを立てて、
そのピンに メモと写真を添付する機能もあります(図-6)
 

図-6 Chex(チェクロス) ピンを立てて、メモや写真を貼付できる

図-6 Chex(チェクロス) ピンを立てて、メモや写真を貼付できる


 
それらのメモや写真入りの図面を、メールを使って関係部門へ送り、情報共有することで、
関係者間の情報共有のツールとなっています。
 
事務所などでは、現場で入力された情報などが、パソコンでも見ることができ、そこから印刷することなども可能です。
 
現在では、大手ゼネコンをはじめ、多くの現場で活用されています。
 
 

なぜタブレットは使えるのか?~成功事例の共通点~

上記の事例を見てきて、なぜこれらのアプリはうまく活用され、また実際に仕事に役立っているのか?
これには、いくつかの共通点があります。
 
 
そのひとつは、「現場で使うことを想定」していること。
 
 
タブレットを使いたい場所とはどこでしょうか?やはり、現地調査であったり、建設現場であったり、屋外であることが多いです。
 
では、なぜ屋外で使われることが多いのか?と言えば、そこにノートパソコンを持って行くわけにはいかないからです。
現地調査にカンタンマップやキロフォトの代わりにノートパソコンであればもっと便利になるか?現場で図面を見るのに、
CheXよりノートパソコンが良いか?と言われると、そうではないことは誰もが想像できるところです。
 
冒頭で書いたように、タブレットはノートパソコンの代わりではありません。
タブレットとは、これまでノートパソコンではできなかったことを実現することができる、新しいITツールなのです。
 
よって、タブレットの能力を最大限に生かすのは、プレゼンや動画を見せることではなく、
これまでパソコンでは実現しにくかったことをタブレットだからこそできることに利用することこそ、
タブレット導入に必要な考え方であることが分かります。
 
 
もうひとつは、「カンタン」であること。
 
 
日常的に使っているスマートフォンやタブレットのアプリには、マニュアルのようなものはありません。
ダウンロードして何となく使ってみて、使えそうだったら使い続ける。
そんな感じのものが多いです。
 
紹介したアプリも一度使い方の説明を聞けば、マニュアルが要らないくらいカンタンに使えます。
それは、それぞれの目的に特化して、必要な機能しか付けられていないためです。
 
先に成功事例として紹介したアプリも全て、使う目的もシチュエーションも、そこで必要な機能も明確にしています。
 
こんなこともできます、あんなこともできますということで、他のアプリより多機能高機能であることで差別化するのとは、
全く逆のアプローチです。
むしろ、「これだけしかできません。」というのが特長となっています。
 
その結果、初めて使おうとする人でも、すぐに使いこなせてしまうわけです。
このようなアプリであれば、使い続けてもらえるわけですね。
 
いかに要らない機能を省くか?いかにシンプルなアプリとするか?これはタブレットやスマートフォンを業務で利用する際に、
とても大事な考え方です。
 

業務アプリ以外でもタブレットやスマートフォンを仕事に使い倒そう

ここまで紹介してきたアプリは、いずれも業務向けに開発されたアプリであり、導入には相応のコストがかかります。
しかし、タブレットを業務で活用するには、
このような業務用アプリを導入する以外にもアイデア次第でもっと気軽に活用することも可能です。
 
 
例えば、タブレットをデュアルディスプレイとして使ってみたり、車で出張に行く際のカーナビとして使ったり、
ドライブレコーダーとして使うことも可能です。
 

図-7 タブレットをカーナビとして

図-7 タブレットをカーナビとして


 
さらに、電車で移動中に打合せ資料や論文などを読んだり、プレゼンの予行演習をしてみたり、
緊急時にはポータブルテレビとして情報収集することにも使えるでしょう。
 
タブレットもスマートフォンも、マニュアルがなくても使えるようなカンタンな道具です。
 
難しく考えることなく、ちょっとしたアイデアで便利に使えるものです。
業務を楽にすることに加えて、仕事を少し楽しくするために使ってみてもよいのではないでしょうか?
 
現在、筆者は自治体やCPDSセミナーにおいて、本文で紹介した以外にも、タブレットの有効活用などの講師をしています。
また、紹介したアプリなどの導入支援コンサルタントも行っているので、興味がありましたらお気軽にお問い合わせ下さいませ。
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2015
特集3「建設ITの最新動向」
建設ITガイド 2015
 
 



BIMデータ連携を支えるIFC検定の概要《後編》

2015年4月26日

 

一般社団法人 IAI日本
IFC検定委員会委員長 足達 嘉信

 

IFCデータ連携の仕組み

ここでは、IFC検定においてどのような検証が行われるかの理解を深めるために、
BIMソフトウェア間で行われるIFCデータ連携の基本的な仕組みを確認してみたい。
 

図-4 IFCによるBIMデータ連携の基本構造

図-4 IFCによるBIMデータ連携の基本構造


 
図-4は、BIMソフトウェア間でIFCデータがどのようにデータ連携するかを示した模式図である。
 
●IFC出力:IFCデータを出力する
 BIMソフトウェア上で作成された内部モデルは、パラメトリックな3D幾何形状、
 および属性情報から構成されるオブジェクトの集合として存在する。
 パラメトリックな3D幾何形状とは、そのオブジェクトの属性情報を制御することにより、
 幾何形状やその性質が変化する仕組みで、モデリング作業の効率を高くすることができる。
 例えば、ドアオブジェクトの高さ属性を変化させると、ドアの3次元形状の高さも連動して変化することが挙げられる。
 MVD-Aに対応したBIMソフトウェアであれば、その内部モデルをMVD-Aに沿った内容で3D幾何形状、
 および属性情報が含まれるIFCデータへ変換する。
 
●IFC入力:IFCデータを入力する
 BIMソフトウェアは、IFCデータを内部モデルへ取り込む。
 その際、IFCデータが含む3D幾何形状と属性情報が、パラメトリックな3D幾何形状、
 およびオブジェクトの属性情報へと変換される。
 またこの変換の際、IFCのオブジェクトが持つ3D幾何形状および属性情報からパラメトリックな3D幾何形状を生成される。
 または、IFCの3D幾何形状をそのまま、参照モデルとして取り込むこともある。
 
 
さらに、IFCデータを入力するBIMソフトウェアの種類によって、BIMデータ連携の内容が変化するが、
その基本的なパターンを図-5に示す。
 
図-5 IFCによるBIMデータ連携の基本パターン

図-5 IFCによるBIMデータ連携の基本パターン


 
(1)設計BIMソフトウェアからビューワ系BIMソフトウェア:
 IFCデータに含まれている3D幾何形状・属性情報を、
 ビューワ系BIMソフトウェアでは編集する必要のない参照モデルとして3D幾何形状をそのまま変換することができるので、
 比較的データ変換品質が高い。
 
(2)設計BIMソフトウェアから解析系ソフトウェア:
 IFCデータに含まれている3D幾何形状・属性情報を、解析モデルへ変換する。
 設計BIMモデルと解析モデル間にはさまざまな差異が存在するため、
 3D幾何形状の補正・簡素化、不足している属性情報の追加、名称・コード番号などの属性値の補正などが必要となる。
 
(3)設計BIMソフトウェアから設計BIMソフトウェア:
 IFCデータに含まれている3D幾何形状・属性情報を、
 受け取り側の設計BIMソフトウェアの編集可能な内部設計モデル形式へ変換する。
 設計モデルを構成するオブジェクト
 (壁・柱、梁などのソフトウェア特有のオブジェクトや、パーツライブラリのオブジェクトなど)には、
 2つの設計BIMソフトウェア間に差異があるため、データ変換品質の向上が課題となる。
 同様の理由で、設計BIMソフトウェアに対するIFC入力認証は難易度が高くなる。
 

IFC検定の構成要素

IFC検定において、その対象となるBIMデータ連携仕様を記述するために必要な構成要素を以下に示す。
 
●BIMデータ連携シナリオ:
 目的に合わせたBIMデータ連携仕様の記述。
 誰から誰へ、どのような情報を含むBIMモデルがやり取りさせるか、実務上の効果、
 BIMソフトウェアへの実装可能性なども考慮して作成することが求められる、IFC検定の基礎的な出発点となる。
 
●IDM(Information Delivery Manual):
 BIMデータ連携シナリオで設定されたユースケース、プロセスおよび情報を体系的に定義するドキュメント。
 データ連携に関する要求分析、データフロー分析等をプロセスマップ、Exchange Requirements(ER)などの表現で定義する。
 プロセスマップにより、誰から誰へどのような情報が伝達されるかが表現され、ERにより情報の中身に関する内容が定義される。
 
●MVD(Model View Definition):
 データ連携仕様をIFCに基づいて記述するドキュメント。
 通常はIDMで定義されたデータ連携要求に基づいて作成される。
 MVDコンセプトという単位でIFCのデータ連携仕様が記述されている。
 ソフトウェア開発者がIFCデータ入出力を組み込む際のデータ連携仕様の主要な情報となる。
 
●IAI日本編纂MVD:
 IAI日本技術調査委員会が編纂したMVDコンセプト集。
 buildingSMART InternationalのMVD CV2.0のサブセットとして編纂されたMVDコンセプト集。
 IAI日本のWEBサイトでデータ共有サービス内にて公開される。
 
●検定の対象となるMVD:
 BIMデータ連携シナリオに基づくIDM、またはIDMに準ずるBIMデータ連携仕様を基に、
 IAI日本編纂MVDから必要なMVDコンセプトを選択したものとなる。
 検定対象MVDには、どのIFCクラスが対象か、必要な属性、
 3D幾何形状の表現パターン(ソリッドモデル・サーフェースモデルなどの形式)などの情報が体系的に記述されることになる。
 

IFC検定の対象となるMVD例

2014年度にIFC検定の対象となるMVDは、「設備モデルビュー定義2014」と呼ばれるもので、
設備分野のオブジェクト(制気口、ダクト、配管、電気ケーブルラックなど)についての、
IFCの3D幾何形状表現、属性、プロパティセットなどのBIMデータ連携を目的としている(図- 6、7)
 

図-6 MVD設備モデルビュー定義2014の概要書

図-6 MVD設備モデルビュー定義2014の概要書


 
基本的な部分は、国際IFC認証のMVDであるCV2.0をベースとしており、その部分は互換性が保たれるようになっている。
 
図-7 MVD設備モデルビュー定義2014のMVDダイアグラム(上)・コンセプト(下)の例(流動端末オブジェクトIfcFlowTerminal)

図-7 MVD設備モデルビュー定義2014のMVDダイアグラム(上)・
コンセプト(下)の例(流動端末オブジェクトIfcFlowTerminal)


 
「設備モデルビュー定義2014」は、59のMVDコンセプトから構成されており、そのうちの5つが、
IAI日本設備FM分科会が策定した設備IFC利用標準で定義されているプロパティセット定義のコンセプトとなっている。
 
 

IFC検定の将来像

2014年度は、MVD設備モデルビュー定義2014を対象としたIFC検定が実施される。
2015年以降のIFC検定対象となるBIMデータ連携シナリオについては、IAI日本の各分科会で検討が進められている。
以下に、今後IFC検定対象となる可能性のある分野を示す。
 
●意匠分科会:
 ・確認申請分野:申請者から確認機関へのBIMデータ連携
 ・仕上げ積算:設計者から積算技術者へのBIMデータ連携
●構造分科会:
 ・通芯、部材断面などのBIMデータ連携
 ・ST-BridgeからIFCへの変換
●設備分科会:
 ・エネルギー計算へのBIMデータ連携
 ・CFD(熱流体シミュレーション)へのBIMデータ連携
●土木分科会:
 ・道路中心線形モデル
 
BIMによるコラボレーション活性化には、設計・施工・維持管理などのエンドユーザ、BIMコンサルタント、
BIMソフトウェアベンダーなどさまざまな立場の関係者が参加して、
BIMデータ連携シナリオの策定や実務でのBIMデータの活用を担うBIM人材の育成を共に進めることが必要である。
IFC検定のプロセス全体を通して、IDMやMVDなど、BIMデータ連携仕様を体系的に定義する手法を、
BIM人材共通の知識として共有していきたいと考えている。
また、その延長線上に、日本発のBIMプロセスを海外へ発信するとともに、
現在海外で行われている国際IFC認証を日本国内でも行えるような体制を築いていく予定である。
 
 

おわりに

本稿では、IAI日本が今年度から開始したIFC検定について、
過去に日本で行われた初期のIFC R2.0認証から現在行われている国際IFC認証までの流れ、
そしてBIMデータ連携仕様の定義に用いられているIDMやMVDなどの仕組みについて触れ、IFC検定の概要を紹介した。
 
IFC検定が開始される2014年度は、MVD設備モデルビュー定義2014のみがIFC検定の対象であるが、
IAI日本の各分科会ではさまざまなBIMデータ連携シナリオの可能性を今後も検討して行く予定である。
日本のBIMを活性化させるため、より多くの皆様のIAI日本への参加、IFC検定に関わる活動への参加をお待ちしている。
 
 

参考文献

●IFC検定ガイドライン, 一般社団法人 IAI日本, 2014年11月
●IAI日本編纂MVDコンセプト集, 一般社団法人 IAI日本, 2014年11月
●設備モデルビュー定義2014, 一般社団法人IAI日本, 2014年11月
●IFC認証:IAI日本News Letter, Vol.8, 2002年10月
●IFC R2.0 認証ワークショップ:IAI日本 News Letter, Vol.9, 2003年1月
●IFC Certification 2.0, buildingSMART Technical WEB site:http://www.buildingsmart-tech.org/certification/ifc-certification-2.0
 
 
 

BIMデータ連携を支えるIFC検定の概要《前編》
BIMデータ連携を支えるIFC検定の概要《後編》

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2015
特集2「進化するBIM」
建設ITガイド 2015
 
 



BIMデータ連携を支えるIFC検定の概要《前編》

 

一般社団法人 IAI日本
IFC検定委員会委員長 足達 嘉信

 

はじめに

わが国では2009年がBIM元年と呼ばれ、数多くのBIM活用事例が世の中に紹介されてきた。
BIMの初期段階の効果として、分わかりやすい3次元表現により、
さまざまなプロジェクト関係者とのコミュニケーションの質とスピードが向上し、
設計段階の合意形成における有効性が明らかとなった。
BIMの次の段階として、意匠設計・構造設計・設備設計各分野のBIMモデルを統合し、
干渉チェックによる各設計分野間の調整や総合図の作成などにより設計情報の整合性を向上させ、
風環境解析・エネルギー解析など各種シミュレーションなどの技術的検討も行われるようになってきた。
この段階のBIM活用ではコラボレーションが活性化し、BIMの効果もより多く得ることが可能になるが、
同時に、どのようなBIMデータをやり取りするかのルールを明確に定義し、
BIMデータ連携に関わる人々の間でその共通ルールを運用することが求められる。
 
本稿では、BIMデータ連携の精度向上や効率化を図る仕組みとして発展してきたIFC認証(IFC Certification)、
および2014年度からIAI日本(buildingSMART Japan)が開始するIFC検定の概要を解説する。
 
 

IFC検定の目的

buildingSMARTが策定をしてきた3次元建物情報モデルIFC(Industry Foundation Classes)は
2013年に国際標準(ISO 16739:2013)として発行され、
オープンなBIMデータ連携の手段として世界各地での活用が増加してきている。
また、各国のBIMガイドラインにおいてもBIMデータ連携手段としてIFCの活用が指針として明記されてきている。
実務におけるIFC活用が広がる状況となり、さまざまな目的に応じたIFCデータ連携の精度や効率における課題を解決するため、
buildingSMARTは国際IFC認証を以前から取り組んできている。
国際IFC認証は、主にヨーロッパにおいて会議やワークショップが行われているため、
欧米のBIMソフトウェアに関してはIFC認証を取得数が増加しているが、国内のBIMソフトウェアに関しては、
現時点で国際IFC認証を取得したものがない状態である。
 
一般社団法人IAI日本(buildingSMART Japan)が行うIFC検定は、
IFCデータ連携の精度向上と国内の実務におけるIFC普及を推進するために、
国際IFC認証の枠組みをベースにしてIFCデータ連携の技術的仕様を明文化し、
ソフトウェアの利用者および開発者両者がIFCデータ連携の技術的内容を客観的に確認できる仕組みの構築を
国内において目指すものである。
IFC検定の対象とするBIMデータ連携仕様の範囲は、国際IFC認証と互換性のある部分の他、
日本国内で必要となるBIMデータ連携仕様を含めたものとなる。
IFC検定では、そのBIMデータ連携仕様に基づき、IFCデータが含む3D幾何形状や属性情報の伝達に関する過不足を検証し、
その結果を第三者が検証できる形で公開し可視化する。
 
 

IFC検定の目的

IFC R2.0認証

IFCの初期バージョンであるRelease2.0(以下IFC R2.0)は、1999年春に公開された。
その当時、国際的な有志メンバーが設立したIFCデータ互換ソフトウェア普及コンソーシアムBLIS
(Building Lifecycle Interoperable Software)によって2001年から2002年にかけて行われたIFC認証活動が
IFC R2.0認証と呼ばれるものである。
2002年10月に開催されたBLISおよびIAI日本支部主催のIFC R2.0認証ワークショップに、国内から4社のソフトウェアが参加し、
全てのソフトウェアがIFC R2.0対応アプリケーションとして国際的に認証された。
審査委員として、IAI(現buildingSMART)の国際メンバーより代表者5名から参加し、
認証ワークショップの運営と審査が行われた(図-1)
 

図- 1 日本で行われたIFC R2.0認証の概要(IAI日本News Letter Vol.9, 2003年)

図- 1 日本で行われたIFC R2.0認証の概要(IAI日本News Letter Vol.9, 2003年)


 

国際IFC認証(IFC Certification 2.0)

2000年にIFC R2.0の次のIFC 2xバージョンが公開された後、
BLIS主導によるIFC R2.0認証は2002年からbuildingSMARTが行うIFC2x認証の仕組みに移行し、
2007年のIFC2x3TC1バージョン(以下IFC2x3)公開を経て、IFC2x認証によるIFC2x3に対する認証が2009年まで続いた。
その際、BLISにより考案されたIFCデータ連携仕様の記述方式であるMVD(Model View Definition)の仕組みが継承されている。
MVDを定義するために、BIMデータ連携のシナリオやプロセスをエンドユーザの立場で記述するドキュメントとして
IDM(Information Delivery Manual)もbuildingSMARTから提案され、
そのフォーマットやフレームワークが国際標準化(ISO 29481)された。
それまでのIFC認証やIFCデータ連携の事例から得られた知見から、
意匠・構造・設備設計のBIMモデル間の調整を行うことを主目的としたMVDであるCoordination View 2.0(以下CV2.0)が定義され、
CV2.0に基づき、改良された認証ワークショッププロセス、テストデータ、自動チェックシステムの導入などを取り入れ、
2010年にIFC Certification2.0(以下国際IFC認証)と呼ばれる新しいIFC認証の仕組みが開始された。
buildingSMART公式サイトには、最新の国際IFC認証取得済みのBIMソフトウェア一覧が掲載されおり、
ベンダー名、ソフトウェア名称、MVD名称、IFCデータ出力か入力の認証の認証種別、取得年月日、
認証ワークショップレポートなどを確認することができる。
 
 
現時点において、国際IFC認証はIFC2x3のMVD CV2.0に基づいて、下記のような種別に分けて行われている。
 
●IFC出力(Export):
 ・CV2.0-Arch:CV2.0に準拠し、意匠BIMモデルの範囲を出力可能
 ・CV2.0-Struct:CV2.0に準拠し、構造BIMモデルの範囲を出力可能
 ・CV2.0-MEP:CV2.0に準拠し、設備BIMモデルの範囲を出力可能
 
●IFC入力(Import):CV2.0の範囲のIFCデータを取り込むことが可能
 
 
図-2に示すのは、国際IFC認証を取得した場合に、
buildingSMART Internationalから使用許諾されるIFC認証ロゴである。
このロゴは、当該BIMソフトウェアは、IFC2x3のMVDであるCV2.0に関して、意匠モデル分野のIFCデータ出力に関するIFC認証、
およびCV2.0のIFCデータ入力に関して認証されたということを意味する。
 

図- 2 国際IFC認証ロゴ(IFC2x3 CV2.0の入力および意匠モデル分野出力)

図- 2 国際IFC認証ロゴ(IFC2x3 CV2.0の入力および意匠モデル分野出力)


 
 

IFC検定の概要

IFC検定は、実務におけるIFCによるBIMデータ連携の精度向上、
エンドユーザおよびソフトウェアベンダー双方のIFCデータ連携の目的、仕組みなどの共通理解を高めることを促進するため、
IAI日本の各組織が連携して全体的な活動を構成している(図-3)
 

図-3 IFC検定の全体像

図-3 IFC検定の全体像


 
検定対象となるBIMデータ連携シナリオやIDMは、
エンドユーザーとソフトウェアベンダーから構成されているIAI日本の各分科会活動の中で検討される。
検定対象となるMVDは、IDMを基にIAI日本技術調査委員会によって策定され、
BIMソフトウェアへのIFCデータ入出力機能の開発において活用される。
IFC検定は、そのようにして策定されたMVDを対象に実施されることになる。
IFC検定では、出力されたIFCデータの内容が、MVDと一致しているか、
幾何形状に関しては複数のIFCビューワによって正しく出力されているかなどが、
IFC検定委員会が設置するIFC検定WGによって検証される。
検定結果は、IAI日本の管理台帳に 記録されるとともに、WEBサイト上などで公開される。
IFC検定から得られた知見は、MVD改善、BIMデータ連携シナリオ改定作業や国際IFC認証などへフィードバックされる。
 
 
 

BIMデータ連携を支えるIFC検定の概要《前編》
BIMデータ連携を支えるIFC検定の概要《後編》

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2015
特集2「進化するBIM」
建設ITガイド 2015
 
 



JRC 3D Reconstructorによる研究対象の拡大

准教授 山本 義幸 氏

工学部 都市環境学科
准教授 山本 義幸 氏


愛知工業大学 工学部
所在地:愛知県豊田市
 
 
愛知工業大学 工学部 都市環境学科では、3Dレーザースキャナで3次元計測を行い、
点群データを使った解析処理を行っていた。
しかし、計測を重ねていくうち、スキャンしたデータを結合するための参照点設置など、
想定外に多くの事前準備やそのノウハウが必要なことが分かってきた。
そんな時、白球の設置を必要としない計測ソフト「JRC 3D Reconstructor」
と出会ったことで、一気に作業が効率化されたという。
 
 

3Dレーザースキャナとの出会い

10年ほど前から3Dレーザースキャナに興味を持っていましたが、なかなか利用できずにいたところ、
本学の情報科学科の中村栄治教授から3DレーザースキャナFAROを使用させていただけるという幸運に恵まれました。
そして、自分で3Dレーザースキャナで計測し表示して、
明瞭でリアルな空間を再現する美しい点群をいかようにも俯瞰できる再現力に興奮したことを今でも覚えています。
それ以来、自分たちで計測した3Dレーザースキャンデータを使用して解析処理を行う研究スタイルに変貌し、
さまざまな対象を計測してきました。
 
 

計測時の問題:白球の設置の問題

しかしながら、計測を重ねていくうちに、3Dレーザースキャン計測での大きな課題にぶつかりました。
レーザースキャンデータを結合するための参照点(白球)の設置に関わる問題です。
ある程度の広さの空間を3Dレーザースキャナで計測するには1回の計測では全範囲を計測しきれないことがほとんどです。
3Dレーザースキャン計測では計測方向に障害物があったら障害物の裏側は死角となり、レーザーが届かず計測ができません。
結果的に3Dレーザースキャナを移動して新たな位置から計測をして、後処理でそれらの計測データを結合する必要があります。
 
私が使用している3DレーザースキャナFAROでは、付属の処理ソフトウェアSCENEで計測データを結合することが可能ですが、
そのためには基本的に参照点として白球を設置しておいて計測し、後処理でSCENEで白球を使用して結合する手法となっています。
この白球の利用は計測時の手間と時間を要するもので、よって計測計画に制限をつけてしまうものです。
例えば、風で転がらないようにや通行人にとって邪魔にならない箇所に白球を設置しなければなりません。
万一、白球が倒れたり動いてしまうと再測になってしまいます。
また、白球の位置が点群を結合する際の計算の係数を決定し後の精度を左右するため、
空間内において互い違いになるように配置するような工夫が必要となります。
さらにSCENEでの処理においては、白球に充分なレーザースキャン点群の密度がないと自動的に白球の選定ができないときがあります。
よって、ある程度の点群密度を確保するために3Dレーザースキャナはあまり長い間隔をとって計測することはできません。
そのため計測回数は増えてしまい時間がかかってしまいます。
計測中も白球が倒れると計測がやり直しとなるため注視し続ける必要があり、計測中は神経がすり減るものでした。
計測がスタートしたら後は待っているだけと高を括っていましたが、前準備等が大変なのは予想外でした。
 
 

JRC 3D Reconstructorとの出会い:白球の設置の問題の解決

このような計測における白球設置の課題を抱えている時、
参加していたSPAR2014J 3次元計測フォーラムにて(株)エス・ジー・エスの久松秀雄氏と出会って
JRC 3D Reconstructorを紹介していただき、3Dレーザースキャン計測の課題が一気に解決いたしました。
たった3点の同一箇所を選定するだけで結合できる簡易さや操作の手軽さは大変衝撃でした。
ソフトによっては処理過程がブラックボックス的で処理結果に疑問が起きることが多いのですが、
JRC 3D Reconstructorは処理過程で精度に関わる情報が明示され結果に対して納得できる仕組みとなっています。
このJRC 3D Reconstructorの存在が計測の制限をなくし、あらゆる計測を具現化でき私の研究領域を広げてくれました。
 

橋梁の3Dレーザースキャンデータ。

橋梁の3Dレーザースキャンデータ。計測の当日は風が強く、従来通り白球を設置していたら白球が転倒するなど再測の可能性がありましたが、JRC 3D Reconstructorのおかげで白球なしで計測ができ予定通りに終えることができました。


 
 

3Dレーザースキャナ計測における効率化:実作業の短縮から制限なしの計測計画

前述の中村教授とともに地下街の3Dレーザースキャンデータの構築と利活用の研究に取り組んでいます。
(株)エスカの多大なるご支援のもと、JR名古屋駅の新幹線口に広がるエスカ地下街の計測を継続して行っております。
人通りが少ない夜間に計測は行いますが、先に述べましたように白球の設置に関して通行の方に気を付ける必要があります。
また、幾何学的な精度を担保するために白球を空間的にずらして配置するなどの計測準備は意外と時間をとるものでした。
JRC 3DReconstructorの使用が前提となれば白球を設置する必要がなくなり計測時間の大幅な短縮が可能となります。
 

エスカ地下街の3Dレーザースキャンデータ。

エスカ地下街の3Dレーザースキャンデータ。参照用の白球を設置している様子が分かると思います。
JRC 3D Reconstructorを使用すれば、白球の設置は必要でなくなる。


 
さらに、絵的に白球が気になることもあり、データ上から白球を削除をするにしても手間がかかるものですが、
そのような懸念もなくなりました。
また、地下街はJRC 3D Reconstructorで必要な特徴点が多く、JRC 3D Reconstructorを利用しやすい対象でもあります。
 
CGが道路建設に関わる合意形成へ利用可能かどうかを調べるために道路空間の3Dレーザースキャナ計測を行っています。
道路での観測においては車やバイク、自転車、通行人に気を付けなければならず、
白球設置などにおいては大変危険を伴う計測対象の一つです。
この道路空間に対してもJRC 3D Reconstructorでガードレール上の3点でデータの結合が可能で白球を設置することなく
現地計測での危険を回避することができました。
 
ガードレールの柱頭を共通点として結合した道路の3Dレーザースキャンデータ。

ガードレールの柱頭を共通点として結合した道路の3Dレーザースキャンデータ。JRC 3D Reconstructorのおかげで道路付近に白球を置く必要がなくなり安全な計測ができるようになりました。


 
昨今では、橋梁においては長寿命化計画のもと橋梁の一斉点検が行われております。
今でこそ図面がCADで作成され補修設計においても既存のCADデータを使用することが可能ですが、
補修が必要な古い橋梁では十分な図面が残されていない場合があります。
このようなケースを想定して3Dレーザースキャナ計測によって橋梁の寸法計測への応用研究を行っております。
先だっても橋梁観測に行ってきましたがあいにくの強風でした。
JRC 3D Reconstructorがなければ、このような日では白球が転んでしまうなどで再測が必要になっていたと思いますが、
それでも現地計測ができたのはJRC 3D Reconstructorのおかげです。
予定通り計測が行え、制限なしで計測計画を立てられるところが大変助かるところです。
 
 

JRC 3D Reconstructorへの期待

今後も、3Dレーザースキャナに関する研究は続けていく予定ですが、
3Dレーザースキャン計測はさらに利用が拡大し、計測対象の大規模化が進むものと思われます。
これに対して、JRC 3D Reconstructorは
3Dレーザースキャンデータ処理におけるキラーツールとして存在感を増していくものと思いますし、
さらに進化を続けて3Dレーザースキャナの研究において研究計画を制限なしで想像できる支援をしてもらえることを期待する次第です。
 
 
 

この記事に登場した製品

JRC 3D Reconstructor
 
 
 
 
【この記事は…】
建設ITガイドWEB
建設ITガイドWEB「成功事例集」(2015年2月掲載記事)より転載しています
※掲載データや人物の肩書など、いずれも掲載当時のものです
 
 



今すぐ使える、実践BIMテクニック~シェルパブログから~《後編》

 

株式会社 シェルパ

 

③設定、テンプレート(準備)

Revit 2Dオブジェクトを作る シェルパブログ 2014.5.9掲載

BIMでモデルを作っても、全て3Dで表現しなくても良い場合もありますよね。
そういう場合に2Dのオブジェクトを用意しておくと便利だと思います。
 
例として、ユニットバスの2Dオブジェクトを作ってみましょう。
 
「新規作成」から「ファミリ」を選択します。

 
Revit 2Dオブジェクトを作る
 
 
この事例の目標は、「備品などの部品形状を無理に作るのではなく、
2D図を貼り付けることで平面だけでなく効率よくモデル上でも表現をする」ことである。
 
この事例ではユニットバスを取り上げ、ユニットバスの細かい部品まで3D形状で作成するのではなく、
2D図を利用して3Dモデルでは線で表現する手法をRevitのファミリを用いて紹介している。
 
モデルを作成する時に、いかに忠実に部品を再現できるかと考えてしまいがちであるが、このモデルでの確認事項は、
ユニットバスの細かな部品ではなくユニットバスを取り囲む壁の位置確認である。
その壁が部屋のどの位置にあるかの確認であるから、ユニットバスの平面的な大きさが分かり、
平面図でユニットバスの存在が分かれば十分である。
他の図面を読み込むという考えから、この手法を利用すれば、
Revitのファミリで大きさやタイプなどをパラメトリックに作成することで利用範囲はさらに広がる。
 

ArchiCAD 部品倉庫を作ろう! シェルパブログ 2014.12.22掲載

ArchiCADで作図するときに、モデルに目的があるか、無いかで、
出来上がったモデルは、3Dで見える外見は同じでも全く異なったものになってしまいます。
 
また、複数の人で作図する場合は、統一したルールのもとに作らなければ十人十色のモデルになってしまいますよね。
 
そして、CADの設定は自由自在、ルールを決めてもそのルールに現れない部分も出て来ますし…。
 
さらに、作図者が考えながら作図していてはどんどん時間ばかり過ぎてしまいますよね。
 
そこで、あらかじめテンプレートファイルを作成して、その中に作図する部位の部品を置いておき、
作図する人はその部品をコピーして使うことにすれば、誰が作図しても部品に含まれる情報は同じものになります。
 
これが、物件毎の部品倉庫です。

 
ArchiCAD 部品倉庫を作ろう!
 
 
この事例の目標は、「属性を仕込んだ部品をテンプレートファイルに置き、作図者によらずモデルの質を確保する」ことである。
 
ここでは、物件ごとにあらかじめ属性が仕込まれた部品を
実際に配置する高さに置いたテンプレートファイルを作成することの利点を説明している。
このテンプレートファイルがプロジェクトごとの「部品倉庫」である。
 
①作図者によらない、②把握したい正しい属性を持ったモデルを、③効率よく作成する、ことが可能となる。
この部品倉庫のテンプレートファイルを蓄積していくことで、次期プロジェクトのテンプレートを早く作成することができ、
品質が良いモデルを効率よく作図することができるのである。
 
 

シェルパの「技術相談」

シェルパでは社内総力でプロジェクトを支えていくために、技術的な疑問を相談する社風となっている。
3年前まではASPを利用していたが現在は「サイボウズ」を活用している。
そこに挙げた技術的な相談は発信するとすぐにメールでメンバーに送られるので、
時間ができたときに皆の経験などを基にアドバイスを受けることができる。
そこでもより良い知識、ノウハウが選定され、また記録を残すことで改善が図られていく。
シェルパの「技術相談」
 
シェルパの「技術相談」
 
 

④作図ノウハウ

ArchiCAD 屋根伏図の作図方法 シェルパブログ 2014.7.17掲載

3Dドキュメントを使って屋根伏図を作成する方法をご紹介します。
 
①モデルを平行投影の設定で、上面図にします

 
ArchiCAD 屋根伏図の作図方法
 
 
この事例の目標は、「モデルから屋根伏図を切出し作成する」ことである。
 
伏図というと通常は平面ビュー上から作成しているが、上部に他の構築物がある場合は、建物全てを表現することが難しい。
そこで3D表示画面で、モデルを平行投影の設定にして上面図表示にすると、上空から見下ろした伏図を作成することができる。
 
上空から見下ろした伏図を作成することができる
 
ArchiCADのバージョン17からは「平面図から新規3Dドキュメントを作成」でもこの配置図作成が可能となった。
しかしこの事例を応用すると、斜め面などの複雑形状を正対視してから3Dドキュメントを作成し、
それをワークシートに貼り付けることで、縮尺対応した図面作成につなぐことができる。
 

ArchiCAD 防火区画ラインを描く シェルパブログ 2014.11.17掲載

防火防煙区画の線を描く時に、壁を塗りつぶしで色を付けて表示しても、建具があると、
そこだけ色が抜けてしまって区画の線が途切れ途切れになってしまうことがあると思います。
 
ArchiCAD 防火区画ラインを描く
 
そうならないようにするには、もう一つビューを作ってモデル表示オプションで建具を非表示にしたビューを作ります。

 
 
この事例の目標は、「防火区画壁の色分け平面図を作成する」ことである。
 
通常ArchiCADの平面図では、壁に色を付けても建具の部分には色が塗られない。
そこで、モデル表示オプションで建具を非表示としたビューを作成し、レイアウト上でビューを重ねることでその問題を解消している。
あくまでモデルは一つであるので、一度このレイアウトを作成してしまえば後の変更などにも確実に追従する。
 
この手法を用いることで、平面ビュー上で図面表現のために無駄な作業を省くことができる。
 
 
二つのビューをレイアウトブックに配置
 
二つのビューをレイアウトブックに配置
 
二つのビューをレイアウトブックに配置して、その二つのビューを重ねます。
 
これで区画ラインの通った区画図ができます。完成

 
 

シェルパの「改善提案」

シェルパでは毎月社内会議を行っており、そこで一人最低一件の改善提案資料を作成し社内評価と水平展開を行っている。
内容は豊富で、作図での効率化、現場での工夫、モノ決めのための手法の工夫、建築技術での注意ポイント、失敗事例、
などさまざまである。
また、その事例、提案を実際に他の人がやってみて再評価し、さらなる改善を図っている。
 
BIMを使うようになってからBIMに関する改善提案も多くなっており、その多くがシェルパブログに掲載されている。
 
10年近くやっている改善提案資料をさらに活用していくために、カテゴリ分けして知りたい情報を早く探せるように工夫している。
 
シェルパの「改善提案」
 
 

⑤モデルチェック(検索、一覧表)

J-BIM スラブと梁の高さチェック方法 シェルパブログ 2014.10.2掲載

施工図の床伏躯体図でS造の場合は、鉄骨
大梁や小梁にレベル表記がしてあると間違いが少なくなりますよね。
できれば表記したいものです。が、
 
J-BIMで、S造・RC造の混構造の躯体図を描く場合は、RC躯体図として描かなければなりません。
 
しかしながらRC躯体図では、鉄骨躯体図の床伏図では可能な「鉄骨梁の高さを表示する」設定が出きないのです・・・
(福井コンピューターさま!是非ご一考下さいm(_ _)m)
 
それでもそんな中、スラブと梁の高さ関係をチェックする場合簡単・正確に出来る方法があります!
 
スラブ高さは、レベルチェック機能で色分けができますよね。
ここで、レベルチェックでスラブの高さ別の色を表示し、
「属性」-「部材レベル確認」をクリックすると一時的に各部位のレベルを表示することができます。
 
「部材レベル確認」はデフォルトではずべて部材がONになっていて、
画面では逆に分かり辛くなってしまうので必要な部材のみ選択して表示すると見やすいと思います。
 
そうすれば、スラブ厚を確認してからスラブの色を見ながら梁の天端レベルを楽~に確認できます。

 
J-BIM スラブと梁の高さチェック方法
 
 
この事例の目標は、J-BIMを利用して「作図した各部位のチェックを早く、正確に行う」ことである。
 
J-BIMでは、RC梁は梁符号内に梁部材の梁幅・梁成が表示されるため符号で確認することができるが、
S梁はデフォルトの状態では梁符号しか表示されないためスラブと梁の高さの整合を読み取ることはできない。
そこで、梁の天端高さを表示させることで、
スラブの高さに対して梁の天端レベルが正しいかを確認することが容易にできるようになる。
 
また、基準となるスラブ高さもレベルに応じて色分けがされる。
「部材レベルチェック」の機能を使用すると、ひと目でレベルの確認をすることができる。
この機能は、スラブだけではなく、RC梁や増し打ち躯体の天端レベルなど、表示する部材を選定することが可能である。
 
BIMをツールとして使う場合の利点を最大限に生かし、ちょっとした工夫で図面自体の品質を確保することができる。
 

ArchiCAD 数量一覧表でモデル整合チェック シェルパブログ 2014.10.10掲載

ArchiCADの一覧表の設定のフィールドリストで「数量」を選択すると、
 
ArchiCAD 数量一覧表でモデル整合チェック
 
 
この事例の目標は、ArchiCADの数量一覧表を利用して「部材数量の確認や部材の配置を、
平面ビューや3Dモデルで早く正確に確認する」ことである。
 
数量一覧表は、その名の通り、部材ごとの名前や、項目、ID番号を一覧表として表示させるものであるが、
表示方法をちょっと変えることで、項目別の総数量を出すことが可能となる。
 
また、数量一覧表で選択した部材が瞬時に平面図や3Dモデル上で選択された状態で反映することも可能である。
 
この事例を応用し、柱部材の配置チェックをするツールとして利用した手法では、
数量一覧表で、ある符号の柱を選択しそれを平面ビューに反映させると、平面ビューでは柱が選択された状態の画面となるので、
それとモデル入力前に作成した柱符号別色分図の配置を見比べることで、
各符号の柱が正確に配置されているかを確認することが素早くできる。
 
 

シェルパブログでの記事検索方法

①シェルパブログの各記事には「ラベル」というカテゴリを付けており、ページ途中の左側にそのカテゴリ名一覧が表示される。
 これをクリックすることでそのカテゴリの記事が表示される。
 
②ラベルの上の「このブログを検索」で文字検索すると関連記事の一覧が表示される。
 
③ページ最上部の左にある検索で文字検索すると、関連記事に絞られて表示される。
 
シェルパブログでの記事検索方法
 
 

⑥成果物

GLOOBE 概算積算機能 シェルパブログ 2014.10.6掲載

福井コンピュータさんのGLOOBEを使ってみました。
 
GLOOBEには概算積算の機能がありますがこれが、なかなか使い易いんです!
 
入力手順もとてもシンプルですよ。
 
まず基本ツールを使ってモデルを作成します。

 
GLOOBE 概算積算機能
 
 
この事例の目標は、GLOOBEの概算積算機能を使って、「モデルから概算数量を算出し、数量確認を行う」ことである。
 
GLOOBEには「自動配置」という機能があり、その機能を以下に簡単に説明する。
 
●仕上げ情報をGLOOBE上の仕上げ表に入力をする。
 (仕上げ表のパターンも予め用途別の基本となる仕上げ表が用意されているため、それを利用すると容易に入力ができる)
●壁などの要素とスペースを入力する。
 (ここでは壁などの要素には仕上げ属性は入力しない)
●「自動配置」機能のワンクリックで各仕上げが配置される。
 
ここまでを自動的に行ってしまうのである。
そして積算機能から出された数量表では部材単価の設定ができるため、概算金額を簡単に算出することが可能である。
また、数量の確認は、オブジェクトリストから個別数量の確認ができるため、積算根拠が明確である。
 
積算根拠が明確
 

ArchiCAD 色分け図の活用 シェルパブログ 2014.9.18掲載

 外壁色分け図は打合せの時に、みんなのイメージを共有するのに非常に便利です。
 
今回は、せっかくの3Dモデルなので一歩踏み込んでみました。
 
色分け図の右上に数量表・下部にパースをレイアウトしてみます!
 
ArchiCAD 色分け図の活用
 
数量表をつけることにより外壁の全体のコストや仕様が過剰になっていないか確認したり

 
 
この事例の目標は、「外壁種別を立面、パース、数量表で表現して分かりやすくする」ことである。
 
この事例では、外壁のモデル材質の設定と、立面図の設定のポイントを説明している。
数量表はその外壁のモデル材質をキーにして外壁種別の面積を算出している。
立面、パース、数量表は連動しているので変更に追従するのと、3D表現特有の分かりやすさで関係者でのイメージ共有に効果がある。
 
 

おわりに

BIMが普及してきているのを感じるが、まだまだ過渡期であり、効率よく使うのは難しいところもある。
 
日々ソフトウェアが改善され機能が増えて便利になり、データ連携などもやりやすくなってきている。
 
しかし、あくまでもBIMはツールであるから何も考えずに何でも問題解決できるような魔法のような万能なものにはなり得ない。
 
だからBIMを使っていて、ある一つのことがうまくいかないからといってBIMを全てバッサリと切り捨てたり、
または逆にBIMを無理に使おうとしたりすることは、ツールに操られてしまうことである。
 
いかにBIMを、建築技術を表現するツールとして使い、それを建築技術ナレッジの蓄積へとつなげ、
活用していくことができるかということを、シェルパはとても重要であると考えている。
 
 
 

今すぐ使える、実践BIMテクニック~シェルパブログから~《前編》
今すぐ使える、実践BIMテクニック~シェルパブログから~《後編》

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2015
特集2「進化するBIM」
建設ITガイド 2015
 
 



 


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