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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

分譲マンションを科学する プロ集団 ~建築企画BIM活用術~

2014年3月26日

部長 井上 文孝 氏

取締役 執行役員 商品企画設計部
部長 井上 文孝 氏


株式会社 トータルブレイン
所在地:東京都港区
設立:1999年10月
資本金:3,100万円
主な事業内容:共同住宅設計監理、分譲マンション事業のアドバイザー業
http://www.totalbrain.co.jp/
 
 
株式会社 トータルブレインは代表の久光龍彦氏がゼネコン、デベロッパー、
マンション販社、管理会社のトップを歴任して得た経験と知識を生かすべく
設立されたマンション設計・コンサルタント会社。
優れたマンション市場への洞察力に加え消費者、価格動向など
販売現場単位での徹底した調査分析力は定評がある。
レポートは、新聞、TV、週刊誌等でも発表され業界のみならず
マンション購買層の耳目に触れることも多い。
そのためトータルブレインをマーケッターと勘違いされる方も多いようだが商品企画を含む企画・設計のプロ集団である。
設計部門の責任者 井上氏に伺った。
 
 

事業用地情報から始まるマンション事業のトータルコンサルティング

トータルブレインでは入手した土地情報に対してマーケットを意識したボリュームチェックおよびプラン設計を行うなど
ユニークな手法で計画を進める。
市場調査に基づいたボリュームは最適な企画設計案を提示するのみならず用地取得時、商品企画時、価格検証時と
さまざまな局面において事業リスクを低減することを可能にする。
以下トータルブレイン社の企画設計時における基本的な考え方をまとめてみた。
 
①クオリティ(土地利用率の最大化・コスト・スピード・商品性)を最大限追求したボリュームチェック
 1)土地利用率を最大限高める
 2)建築コストを抑える
 3)短時間で仕上げて提案する
 4)マーケットのニーズ・体力に添う商品性で提案する
 
②マーケティングから商品企画までを含む総合的な企画・設計
商品企画から、実施設計、監理までの全てをトータルで扱える体制を整備し、
企画段階での細かな意図を確実に実施設計に反映させる等の、マーケティングから商品企画までを含む総合的な企画・設計。
 
③「売れる商品」にポイントを置いたデザイン、提案
デザイン性(外観・エントランス等の共用スペース)においても、
販売ツールとしてパース栄え等、販売を意識してデザイン提案、併せて経験・実績にマーケットのトレンドを組み入れた提案を行う。
 
事業用地情報から始まるマンション事業のトータルコンサルティング
 
 

TP-PLANNERの利用は?

「当社では、年間150物件程のボリュームチェック図を作成しております。
 そのため、日影、天空率ソフトには精度とスピードが要求されます。
 
 ボリューム作成のツールは、創業時より(株)コミュニケーションシステム製のTP-PLANNERを使用しています。
 
 理由は、他の日影、逆日影ソフトと異なり、
 土地情報入力からプラン、パース、面積表に至るまでマンション設計に必要なツールが用意されていることです。
 とりわけ天空率の使い勝手の良さには重宝しております。
 
 各ツールは、企画設計のフェイズに適した資料が連動処理され無駄がありません。
 またTP-PLANNERは敷地の内外の高低差、変形敷地、屈曲道路など
 あらゆる土地情報に法的対応が可能な事も使い続ける大きな要因です。
 
 平成15年の基準法改正においては、他社に先駆けて天空率に対応するなど対応の早さ、
 さらにサポートセンターの的確な技術助言で安心して使用しています。
 
 BIM対応ですが、ゼネコン等で利用されている生産設計用BIMに対してTP-PLANNERは
 企画設計時のいわゆる「企画BIM」の位置付けです。
 設計の最上流CADとして有効活用しています」
(井上氏)
 
TP-PLANNERの利用は?
 
 

逆日影:天空率のボリューム算出

平成15年に施行された高さ制限の天空率による緩和は、建物可能空間算出法がドラスティックに変わった。
逆日影規制においてもそれを考慮し可能空間を算出しなければならない。
ここでは2の用途地域にまたがる事例で解説する。
 
TP-PLANNER逆日影計算の特長は、逆日影チャート図をドラッグしながら設計者のイメージを可能空間に反映することだ。
 
低層方式は、逆日影計算方式「低層型」を選択解析することでも問題ない。
逆日影チャートをドラッグし仮想建物領域で8時方位線を東端、
16時方位線を西端に設定することにより低層建物が可能な空間に加えて時間幅でクリアする空間も確認することが可能になる。
逆斜線結果と複合により道路斜線にも適合する6階までの可能空間が算出された。
 
高層建物をイメージする際には、TP-PLANNER独特の設定法がある。
仮想建物に希望高さをあらかじめ設定することでそのことを考慮した逆日影可能空間が算出される。
南東側道路中心10m区域を天空率で緩和することで高層域がどの程度可能になるのか算出したい。
 
8時と16時の方位線をドラッグし囲われた高層域が日影規制を建物幅でクリアする空間となる。
算出された結果は、天空率でチェックし不可の場合、逆天空率で可能空間に収める。
今回は10階が可能になった。逆日影計算の結果で日影計算を行うことにより精度チェックされる。
いずれの方式も可能空間が限界まで算出されていることが分かる。
 

低層方式による逆日影計算

低層方式による逆日影計算


 
高層方式による逆日影計算

高層方式による逆日影計算


 
 

プランニング

プランニングは、TP-PLANNER独自の企画設計用ツールが満載され、他の3次元CADと趣が異なる。
 
階数設定から始まり指定階高による等高線で可能空間を参照しながらプラン作成を行う。
入力するブロックは任意階で行い、「専有」「共有」「外部」「駐車場」等の部屋種を選択後、ブロック配置する。
配置されたブロックは面積が表示され容積参入の可否が判断される。
 
キープランを「階複写」で上下階に配置するとブロックパース作成され「建蔽・容積率」「住戸数」が随時確認可能となる。
 
容積率計算では駐車場の1/5緩和、地階の1/3緩和なども自動処理される。
 
プランニングにおいては、容積率を限界まで消化することが目的だが、
日影チェック、斜線断面、天空率計算もプランニングから直接解析が可能となる。
また有効採光距離の逆算出機能などプランニングにおいて煩わしい計算機機能が用意されている。
 
プランニングの結果からExcelマクロで出力される面積表は営業的フェイズで利用される。
 
プラン入力時に選択した部屋種ごとに壁厚および仕上げ厚を有し、日影規制、天空率は壁面で処理される。
さらに屋根伏せ状に包洛したブロックに変換し確認申請図が作成される。 
 

  • プランニング

    プランニング

  • 面積表

    面積表

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

この記事に登場した製品

統合型建築企画CADシステム「TP-PLANNER」
 
 
 
 
【この記事は…】
建設ITガイドWEB
建設ITガイドWEB「成功事例集」(2014年2月掲載記事)より転載しています
※掲載データや人物の肩書など、いずれも掲載当時のものです
 
 



BIMとの効率的な連携で設計者がCFDを十分に活用できる設備工事会社

主務 深田 賢 氏

技術統括本部 中央研究所
CFDソリューショングループ
主務 深田 賢 氏


新菱冷熱工業株式会社
所在地:東京都新宿区
設立:1956年2月
資本金:35億円
従業員数:1955名
http://www.shinryo.com/
 
 
エネルギー問題の解決が叫ばれる中、
建築物のライフサイクルにおいて消費されるエネルギーの低減は
避けては通れない問題だ。
そのためには建築物の空調設計が大きなカギとなる。
建築設備の設計・施工において高い実績を持つ新菱冷熱工業株式会社は、
BIMシステムを構築してCFDを組み込むことにより、
設計者自らが解析を行って最適な空調設備を設計できる環境を整えている。
この取り組みの詳細について、
入社時からCFD活用環境の構築に取り組む
技術統括本部 中央研究所 CFDソリューショングループ 主務の深田賢氏に話を伺った。
 
 

30年前から3DCADに取り組み、BIMを自社で独自開発

新菱冷熱工業は、さまざまな建築設備の設計・施工を行う、空調設備業界のリーディングカンパニーである。
一般建築にとどまらず、工場やプラント、都市全体の空調を管理する地域冷暖房設備などにおいて高い実績を持つ。
さらに同社は人と環境の共生をテーマに掲げ、
顧客のニーズの一歩先を提案する総合環境エンジニアリング企業を目指している。
 
同社では高品質かつ低コストのサービスを顧客に提供するために、約30年前から3D CADの研究・活用に取り組んできた。
現在活用しているのは、同社が独自開発した「S-CAD」というBIM環境である。
 
S-CADはシスプロ製の建築設備向けBIM対応3D CADであるDesignDraftをベースにして開発したものだ。
S-CADには、3Dの施工図作成の他に、3Dレビューや施工シミュレーション、配管などの干渉チェック、
静圧・揚程計算や材料集計機能などが用意されている。
また3Dレーザースキャナを利用した既存設備の3Dモデル化を行う機能も開発中である。
 
S-CADは10年前に社内で活用を始めた。
業務の中心となるS-CADについては教育体制を整えており、
新入社員は半年間、現場研修を行った後に、S-CADの操作や設備設計の基本などについて学ぶ。
また社内試験なども用意してレベルアップするための環境も整えている。
 
 

CFDを活用しやすくするとともにBIM上に解析環境を構築

このS-CADは、空調の比較検討をはじめとする各種の気流解析のために、
ソフトウェアクレイドル社のCFDツール「STREAM」と連携している。
同社では年間150件以上のCFD解析を行っている。
そのうち約7割を設計者が手がけているという。
また設計段階だけでなく、施工や営業の際にも活用されている。
近年の傾向としては省エネルギーに関する要望が増えているという。
 

新菱冷熱工業のCFD解析体制

新菱冷熱工業のCFD解析体制


 
20年以上前からSTREAMを使用してきた同社では、CFDを活用しやすい環境を整え、
各拠点の設計者がSTREAMを使用して解析を実施している。
STREAMは単体でも使い勝手が良いソフトだったという。
だが一方、CFDを導入したことによる問題も生じていた。
基本的に設計者が解析するため、以前より業務が増えて負担が大きくなる。
また、解析者の習熟度により、解析結果に差異が出る可能性も高まる。
そこで解析環境の向上や教育システムの整備などCFDツールを習熟するための環境を整えるとともに、
STREAMとS-CADとの連携を進めてきた。
 
2008年には解析作業をサポートするための流体シミュレーション(CFD)推進センターを設立。
処理能力を上げるために、2010年には中央研究所にHPCサーバーを導入した。
そして各拠点からネットワークでライセンスを取得することで、各拠点の設計者がHPCサーバーを通じて解析を行えるようにした。
また高度な解析や新規のプログラム作成などについては、中央研究所のCFDソリューショングループが対応しているという。
 
STREAMとS-CADとの連携については、S-CAD上にSTREAMのアドインソフト「S-Pre」を開発した。
建築設備の設計データおよび関連情報のうち、
CFDで必要となる部分だけを取り出して、VBインターフェースを介してSTREAMに受け渡す。
S-CAD上の画面にはCFDに必要な条件を入力するためのツールボタンが用意され、
同社の業務に便利なようにカスタマイズされているため解析の準備をスムーズに行える環境を用意している。
 
このシステムの開発が始まったのは約5年前の深田氏が入社したころだった。
以前から3D CADで作成したモデルをSTREAMで読み込みたいという要望があったことから、
モデル形状をアドインを利用して転用するための取り組みが始まったという。
それまでは設計モデルを解析用に改めてSTREAM上でモデリングし直す必要があった。
これでは元の図面から数値を拾ってもう一度入力しなければならないので手間がかかる。
また設計と解析の担当者が異なる場合、作業はさらに大変になり、情報伝達のミスによる手戻りを生じることもあった。
 
だがS-Preで解析に対応できる環境を整えておけば、必要なデータはあらかじめS-CADに格納されているため、
設計者から受け渡されたデータを解析者は連係ミスなくそのまま解析に利用することができる。
またSTREAMを使えない人でも解析条件を参照することもできる。
 
BIMソフトのS-CADとSTREAMをシームレスに連携

BIMソフトのS-CADとSTREAMをシームレスに連携


 
 

CFDの準備時間を最大半分に、若手の積極的な検討も促進

STREAMをBIMと連携することによって、形状を把握する時間を大幅に短縮できているという。
複雑なデザインの建築物であると、STREAMで空間をどのようにモデル化するかに多くの検討時間を必要とするが、
S-CADでは3Dモデルデータをそのまま解析に使うことができるため、
最大で50%程度、解析準備時間を削減できると深田氏は言う。
 
一方STREAMを利用することによって、設計者が解析できるようになり、
経験の少ない若手でもどのような空調の状態になるかCFDにより検討し、自信を持って提案できることがメリットだという。
 
「自分で入力して試せるとなれば、いろいろ検討してみようと考え始めます。
 結果も視覚的に捉えられるので効果的です」
と深田氏。
 
建ててみなければ分からないことが、傾向だけでも間違いなく捉えられるようになる。
計算条件や結果については熟練者が確認できるようになっているため、状況に応じて指導することも可能だ。
またCFDソリューショングループでは、新しい解析に関する機能を、
ユーザ関数を使ったプログラミングによって追加することが多かったが、
STREAMのバージョンアップによって同等の機能がプリ上で追加できるようになったため、
より複雑な空調条件も設計者が設定できるようになり便利だという。
 
もうすでに十分CFDを業務に活用している感のある同社だが、
今後もさらなる解析環境の整備や個人の解析能力の向上を目指そうと動いているようだ。
 
例えば現在はCAD上でモデリングしたデータをCFDに使用するため、
どうしてもモデルが詳細になり、それに伴ってメッシュが細かくなり解析に時間がかかってしまう。
これを解消するために、モデリングのガイドラインもしくはCFD用のモデルに変換するアルゴリズムを作成したいということだ。
 
また、解析結果の妥当性についても確認していきたいところだ。
設計者個人の判断力の向上は引き続き目指していきたいという。
さらに解析の教育については現在はマンツーマンで行っているが、
同時に教育を受ける人数が増えると教育の質も落ちてくる可能性がある。
そういった状況への対応も必要になってくるという。
 
現在は設計者による解析が中心となっているが、将来的には施工現場でも行いたいという声もあるそうだ。
現場状況で設計が変わることもあるからだ。
ネットワーク環境を整え解析結果のダウンロード時間の短縮などで可能にできればとのことだ。
 
あくなき探究心でITツールの活用を進める新菱冷熱工業。
建築のエネルギー消費の低減への取り組みが活発になる中、STREAMがより効率的な空調の設備の設計、施工に貢献するに違いない。
 

CFD解析結果例:サーバールームの気流解析[Build Live Kobe 2011]

CFD解析結果例:サーバールームの気流解析[Build Live Kobe 2011]


 
 
 

この記事に登場した製品

熱流体解析ソフトウェア「STREAM」
 
 
 
 
【この記事は…】
建設ITガイドWEB
建設ITガイドWEB「成功事例集」(2014年2月掲載記事)より転載しています
※掲載データや人物の肩書など、いずれも掲載当時のものです
 
 



くり返し検討が苦にならない砂防堰堤設計・製図

左から 近藤 氏、鈴木 氏、井上 氏

設計課
左から 近藤 氏、鈴木 氏、井上 氏


アサヒコンサルタント株式会社
所在地:鳥取県鳥取市
資本金:3,000万円
従業員数:93名
http://www.asahic.co.jp/
 
 
アサヒコンサルタント株式会社は、鳥取県に本社を置く、
地域密着型の建設コンサルタントである。
昭和49年の創業以来、幅広い分野の測量、設計、調査、補償などの業務に従事している。
今回は、設計部の中でも主に河川・砂防分野の設計業務を担当する鈴木氏、近藤氏、井上氏に話を伺った。
 
 

システム導入の背景

アサヒコンサルタントでは、
入札制度の改革や砂防堰堤設計業務の増加傾向にあった2008年に、川田テクノシステムの「SABO」シリーズを導入した。
砂防堰堤の設計計算ソフト、砂防堰堤計画CAD「V-SABO/Plan」、砂防堰堤自動製図「V-SABO/Draw」の3製品だ。
 
「砂防業務の設計分担額の低下により、価格競争の激化に耐える即戦力が必要でした。
 これまでの作業方法での効率化では限界があり、抜本的な改革が求められたのです」
(鈴木氏)
 
それまで、砂防業務に当たっては自社開発のソフトを利用していたが、適用範囲がごく一部で手作業も多かったことと、
ソフトのメンテナンスに費やす労力が肥大化しており、指針の改訂等への迅速な対応も難しくなっていたことから、
市販ソフトの導入に踏み切ったと言う。
 
 

コスト削減に即効効果

試験導入した「V-SABO/Draw」を使っての予備設計および詳細設計で、
約30万円の原価削減と9.6日の実施工期短縮が図れたのも大きかった。
 
「初めて見た瞬間に『これは使える』と思いました。
 砂防堰堤の形状をすぐに視覚化できるので、発注者と早い段階で形状を確認しながら打合せができますし、
 最近では、若い世代や経験の浅い人に、
 自分たちがどういった形状のものを作っているのかを理解してもらうために活用しています」
(鈴木氏)
 
 

もう手放せない砂防堰堤ならではの導入メリット

さらに、「V-SABO/Plan」の導入でさらなる効率化を実現した。
この背景には、砂防堰堤設計業務ならではの特徴がある。位置選定のトライアルだ。
 
「例えば三箇所で比較検討しようとした場合、その三箇所に絞るのもひと苦労なのですが、
 システムの導入により、くり返し検討がいくらでもできる。
 比較する箇所を絞らずに全部比較してみることができます。
 例えば、五箇所で比較検討を実施しても、三箇所に絞っていた従来の作業量の1/3くらいで済んでしまいます。
 さらに濃密な検討ができるようになりました」
(鈴木氏)
 
しかも、砂防堰堤は用地条件等に応じて堰堤位置の変更や比較検討の見直しを求められることが多く、
位置が少しずれただけでもすべてやり直しになってしまうため、2~3週間かけた作業が台無しになることもある。
トライアル計算が自動化できるようになったのは、まさに画期的であった。
 
「建設コストの低減、地球温暖化対策(CO2削減)などで、
 現場の発生土を堤体の材料に流用する『砂防ソイルセメント』を使うケースも増えています。
 材料を変えた場合に堤体の形状にどう影響するかを踏まえて比較の仕方が多様化していますが、
 このような場合も実に便利です」
(鈴木氏)
 

システム導入による作業フロー

システム導入による作業フロー


 
 

自動トライアルで新たな発見も

システム化による効果は工期の短縮だけでなく、一歩進んだ検討が可能となり提案力が増したことだと言う。
 
「手作業だった時代には比較検討不要と判断せざるを得なかった箇所も、
 システムを使ってチェックしてみると、実は堰堤の位置を少し上げるだけで経済性がぐっとアップする等、
 新たな発見がありました」
(鈴木氏)
 
「システムを使ってみて、感覚と実際の値にズレがあることに気付きました。
 当たりを付けてみて、それが正しいかどうかがすぐ検証できるので、自分の経験値の裏づけにもなりますし、
 トライアルを数多くこなすことで、それが自分の経験値にもなります」
(井上氏)
 

「V-SABO/Plan」を使って、砂防堰堤の配置検討を行った例

「V-SABO/Plan」を使って、砂防堰堤の配置検討を行った例


 
「V-SABO/Road」を使って、砂防堰堤の工事用道路の横断図と断面数量を自動作図した例

「V-SABO/Road」を使って、砂防堰堤の工事用道路の横断図と断面数量を自動作図した例


 
「V-SABO/Road」を使って、砂防堰堤の管理用道路と付替道路の平面図を自動作図した例

「V-SABO/Road」を使って、砂防堰堤の管理用道路と付替道路の平面図を自動作図した例


 
 

オプションの導入でさらなる効率化

こうした中、2011年に工事用道路オプション「V-SABO/Road」と渓流保全工オプション「V-SABO/Stream」がリリースされ、
翌年、導入に至った。
砂防堰堤に付帯する道路(管理用道路と工事用道路)の線形検討において多様な検討の依頼が多くなったり、
単価の安い流路工にコストをかけずに対応する必要が生じるなど、さらなる効率化を余儀なくされた背景がある。
 
「V-SABO/Road」について、鈴木氏はこう語る。
 
「工事用道路の設計は必要ではありますが、規格の低い道路なので簡単に設計できるだろうと、
 当初、専用のオプションまでは不要だと考えていました」

 
しかし、多機能な道路CADだと高規格道路前提の複雑な機能を装備しているため、
大量にデータを入力しないと次のステップに進めないなど、簡易的な道路設計では操作性が悪くなる。
 
「どの程度の機能を装備すべきかについては、ソフトの開発段階からベンダーに意見し、
 工事用道路にフィットしたソフトになっています。
 操作性の統一感など、SABOシリーズとして一連で使用するメリットもあって、かなり活用しています」
(近藤氏)
 

V-SABO/Draw 「床固工や帯工、治山堰堤の作図にも使っており、大変助かっています」

V-SABO/Draw 「床固工や帯工、治山堰堤の作図にも使っており、大変助かっています」


 
V-SABO/Stream 「落差と流量により水たたきの計算ができるので、縦断線形に反映できます」

V-SABO/Stream 「落差と流量により水たたきの計算ができるので、縦断線形に反映できます」


 
V-SABO/Road 「線形を動かした場合に法面、掘削の影響がどう出るのかなどが即座にわかるのが便利です」

V-SABO/Road 「線形を動かした場合に法面、掘削の影響がどう出るのかなどが即座にわかるのが便利です」


 
 

ITで徹底的な効率化

アサヒコンサルタントは、時間・手間をかけずにいいものを作るためのIT投資は厭わない社風であり、
ルーチンワークを徹底的に効率化することで集中すべきところに集中する方針だ。
 
「よりきめの細かい、技術に詳しくない人でも直感的にわかるような成果品を目指しています。
 今後ベンダーには、機能や効率化だけでなく、インターフェイスのとっつきやすさやアウトプットの美しさなど、
 見た目にも力を入れてもらいたいと思います」
(鈴木氏)
 

ライブでアルトサックスを披露する鈴木氏。

「今はワーク・ライフ・バランスが大切な時代。システム導入による工期の短縮で、趣味や家庭の時間がとれるようになりました」
ライブでアルトサックスを披露する鈴木氏。


 
 
 

この記事に登場した製品

砂防堰堤計画・設計・製図SABOシリーズ
 
 
 
 
【この記事は…】
建設ITガイドWEB
建設ITガイドWEB「成功事例集」(2014年2月掲載記事)より転載しています
※掲載データや人物の肩書など、いずれも掲載当時のものです
 
 



営業が鉛筆のように使える建築CADが欲しかった

店長 杉山 光一 氏

シュガーホーム盛岡西店
店長 杉山 光一 氏


株式会社 シリウス
所在地:岩手県盛岡市
設立:1994年12月
資本金:1億円
従業員数:正社員40名
事業内容:オリジナルブランドによる住宅建築、住宅リフォームの販売・施工
http://www.kk-sirius.co.jp/
 
 
住宅建築から介護事業まで手がける株式会社 シリウス。
2007年にはオリジナルブランドの「シュガーホーム」を立ち上げた。
今では年間着工棟数が約260棟にまで伸び、
8年連続で岩手県住宅着工数No.1を継続している。
今回は、住宅営業スタイルの改革を目的に導入したコンピュータシステム研究所の住宅プレゼンシステム「ALTA(アルタ)」について、シュガーホーム盛岡西店の杉山店長に話を伺った。
 
 

CAD担当者の作業負荷が増大していた

ALTAを導入する前、お施主様への提案時に使うプレゼン資料は、建築CADで図面やパース等を作成し、
ドローソフト(イメージ編集ソフト)で仕上げ材や住宅設備機器、インテリア等を記載したプレゼンボードを作成していました。
 
しかし、忙しい営業にとって建築CADを使うのは非常に難易度が高く、
CADを使える一部の人間に作業が集中し、負担が偏っていました。
 
また、導入していた建築CADは高額のため、1人に1セットを導入するというわけにはいかず、
1店舗(営業3~4名)で1セットを利用している状況でした。
 
このままでは消費税増税の駆け込み需要、また増税後の落ち込んだマーケットに対して打つ手がなくなる。
そうなる前に先手を打って「営業スタイルを改革する」必要がありました。
 
 

営業全員分の12セットを導入

「営業が鉛筆のように簡単に使えて、コストも高くない建築CAD」を探していた中で、ALTAのデモを見る機会がありました。
 
デモを見た感想は、ALTAはプランの入力がとても簡単だと思いました。
特に屋根の入力が今まで使っていたCADと比べて簡単で、
「これなら分厚い操作マニュアルを読まずに、営業でもすぐに使える」と感じました。
 
ALTAは、プラン入力の簡単さだけでなく、積算・見積までできる機能も付いていたこと。
また、リースを利用すれば月々の負担が軽かったことも導入の決め手となり、
約3ヶ月前に3店舗の営業全員分である12セットを導入しました。
 

営業と設計の打合せ風景

営業と設計の打合せ風景


 
 

1プランを約20分で入力

現在、ALTAは平面図・立面図等の図面や外観・内観パースの作成、そして積算業務に利用しています。
 
今までCADを触ったことのない営業も難なく使えており、導入してからまだ約3ヶ月ですが、
既に600プランを作成済みで、1プランは約20分で入力できるぐらいになっています。
 
以前に利用していた建築CADは、使うたびに操作が分からず壁に当たっていましたが、ALTAは特に問題もなくスムーズで、
操作が分からない場合は、専任のオペレーターによるリモート(遠隔操作)サポートがあるので安心して使えています。
 
課題であったCAD担当者の作業の偏りは、大きく軽減しました。
また、営業が自分でプランを入力するようになったので、設計部・工務部への伝達ミスが少なくなりました。
 
 

お施主様の反応が変わった!

ALTAは操作が簡単であり、動作も軽快ですので、
お施主様との打合せ時にノートパソコンを使って、プランの入力や変更を行ったりすることもあります。
 
お施主様が思い描いている住宅のイメージをその場で形にでき、3Dで分かりやすくお見せすることができるので、
図面やパースだけの提案と比べるとお施主様の食い付き方が全然違います。
 
スキップフロアのあるプランや階段下の収納、小屋裏等は、図面やパースだけではイメージが伝わりにくいのですが、
ALTAであればワンタッチで外壁を半透明にして表示するスケルトン機能があるので、
空間イメージを分かりやすく提案でき、お施主様に喜ばれています。
 
長年にわたりいろいろなCADを見てきましたが、このスケルトン表示機能は初めて見ました。
 
ALTAの導入によって、提案資料作成業務の効率化だけでなく、レベルの高いプレゼンも実現できるようになりました。
 

  • パース表示画面

    パース表示画面

  • 外壁透過表示画面

    外壁透過表示画面

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

拾い出しが正確に

今まで手入力で行っていた積算作業に関しても、
ALTAの自動積算機能を使うことによって、拾い出しにミスがでず正確に行えるようになりました。
 
また、メーカー資材の単価が改訂された際に、売価に反映するまでにどうしても時間がかかってしまっていたのですが、
時間をかけずに売価へ反映できるようになりました。
 
 

営業力のさらなる強化

今後は、積算機能だけでなく見積機能までフルに活用し、
現在ドローソフトで作成しているプレゼンボード作成業務の効率化を図っていきます。
 
また、お施主様の記憶に残るようなインパクトのある提案をするために、
手書きの間取り図を自動で3D化する「デジタルペン入力機能」や
ALTAで作成したプランを3Dプリンターで石膏製の模型に出力してくれる「住宅模型出力サービス」を活用して、
さらなる営業力の強化に取り組んでいきたいです。
 

シュガーホーム 盛岡西店

シュガーホーム 盛岡西店


 
 
 

この記事に登場した製品

住宅プレゼンシステム「ALTA」
 
 
 
 
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建設ITガイドWEB「成功事例集」(2014年2月掲載記事)より転載しています
※掲載データや人物の肩書など、いずれも掲載当時のものです
 
 



一貫構造計算プログラムの導入と効果

中田 捷夫

中田 捷夫


株式会社 中田捷夫研究室
所在地:岩手県盛岡市
所在地:東京都豊島区
従業員数:6名
主な業務:建築構造設計および監理
 
 
東京都豊島区の株式会社 中田捷夫研究室では、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、
さまざまな構造形式の建物の構造計算を行っている。
一貫構造計算プログラム「ASCAL」を導入し、最初は入力方法戸惑ったものの、
今では業務に欠かせないツールになったという。
今回は「ASCAL」の導入経緯と効果について伺った。
 
 

ASCAL導入の理由について

ASCALを導入した最大の理由は、壁式鉄筋コンクリート造の計算ができる点でした。
それまで、壁式鉄筋コンクリート造の一貫計算プログラムは少なく、解析の際には壁柱や壁エレメント置換していました。
しかし解析モデルと実状の建築物の形状に違いが生じることで、指摘を受けることがありました。
ASCALでは実状の建物形状をそのままモデル入力することができるため、
補正するための別途計算などが不要になると思い、ASCALの導入を決定しました。
 
 

ASCALを使ってみて

初めは入力方法が他の構造解析ソフトとは異なるため、慣れるまで時間がかかりました。
一貫計算プログラムでありながら、任意形状の入力を可能としているため、このような入力方法になったのだと思います。
 
しかし、新しいプログラムを使用する際には、入力時間がかかるのは当然なことで、
特別ASCALの入力が難しいというわけではありません。
ちゃんとモデル化されているのか不安がありましたが、3Dのグラフィック表示が分かりやすく、
入力の確認や設計者とのやりとりの際にも大変役立っています。
 
現在弊社では、木造建物+地下階WRCの混構造物件について、
地下階のみの計算業務も行っており、ASCALが必要不可欠となっています。
その場合、上部構造の支点反力を節点荷重としてひたすら配置しています。
この作業は単純作業でありますが、時間を要するのと入力ミスも起こるので、
テキストデータとしてコピーペーストして配置できると良いなと常々考えています。
 

建物グラフィック

建物グラフィック


 
木造軸組工法の計算にもASCALから独立したASTIM/立体フレームを使用しています。
木造は小さな規模の建物でも部材数、フレーム数が多くなります。
以前は汎用解析プログラムで応力解析を行い、断面算定やモデル図・応力図の出力は手作業で行っていたため、
大変な労力を必要としました。
 
万が一出力後に変更があった場合は、別途検討や説明を加えて対応することもありました。
その点、一貫計算プログラムであるASCALでは、ボタン一つで出力作業を行なってくれるため、
計算書作成の時間短縮につながります。
また、変更があった場合の対応もスムーズに行えます。
 
3D骨組

3D骨組


 
またASCALでは中間階の設定ができるため、スキップフロアのような建物も、実状に合った地震力の設定が可能です。
斜面定義も大変便利で、勾配屋根をそのままモデル化できます。
 
以前は接合金物の検討まではASCALでは行わず、別途計算としていましたが、
最近は材端に接合金物を入力し、接合金物の検討もASCAL内で行っています。
今後、一般的な接合金物や木材の材料強度が選択できるようになれば、より入力が楽になるので希望しています。
 
ASCALの機能を全て使いこなしているわけではありません。
基礎も現在は別途計算ですし、まだまだ知らないASCALの便利さがあると思います。
プログラムの中でどのような計算が行われているのか理解した上で、
少しずつASCALで検討する範囲を増やしていきたいと考えています。
 
解析モデル

解析モデル


 
 

終わりに

一貫計算プログラムでは何かしらモデル形状を入力すれば計算書が出力されます。
プログラムの中でどのような計算が行われているのか理解し、その中身が妥当であるかどうか判断するのは設計者であり、
決して機械任せにできる作業ではありません。
 
またASCALではどのような形状もモデル化できるからといって、
むやみやたらにモデル化するのではなく、建物形状の構造システムを理解した上で、
どのような計算手法、あるいは解析ソフトを使うことが適正なのか判断することが大切であると考えています。
 
以上のことを踏まえて、ASCALを構造計算ツールの一つとして、今後も使いたいと思っています。
 
 
 

この記事に登場した製品

一貫構造計算プログラム「ASCAL」
 
 
 
 
【この記事は…】
建設ITガイドWEB
建設ITガイドWEB「成功事例集」(2014年2月掲載記事)より転載しています
※掲載データや人物の肩書など、いずれも掲載当時のものです
 
 



 


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