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書籍版「建設ITガイド」に掲載した特集記事のバックナンバーです。

コンサル目線のCIM「設計からのアプローチ」《後編》

2014年2月6日

 

一般社団法人 建設コンサルタンツ協会 情報部会
CALS/EC委員会 データ連携専門委員会 委員長
八千代エンジニヤリング株式会社 技術推進本部 情報技術部 部長
藤澤 泰雄

《前編》を読む
 

解析へのアプローチ

設計に3次元モデルを利用する際に、最も問題となるのは、対象構造物をどのように解析し、応力を求め、これに見合う耐力を算定するかという点である。従来の設計は、2次元が中心で、3次元は橋梁の耐震解析等で用いられている。従って現状では3次元モデルを設計で利用するためには、3次元モデルから2次元解析データを作成しなければならない。
 
Autodesk社のRevit Structureには、独自の拡張が可能なように、Software Development Ki(t SDK)が存在している。この機能を用いて、鉄道高架橋の3次元モデルから2次元解析用のツール(JRSNAP)と3次元解析ソフト(DARS)への変換ソフトを作成した。
 
DARSは、JRSNAPの3次元版であるため、その入力データはほぼ同じとなっている。作成に利用した3次元モデルを図-4に示す。
 

図-4 高架橋の3次元モデル
図-4 高架橋の3次元モデル
図-5 Familyと属性
 図-5 Familyと属性

 
Revit Structureでは、図-4に示すようにFamilyと呼ばれる部品を事前に作成しておき、これを組み合わせることにより、モデルを作成していく。
 
Revit SDKを用いて、Microsoft Visual Studio で、RevitのAdd onプログラムを作成し、Revitの部材情報などにアクセスして変換を実行する。JRSNAP,DARSでは、配筋情報も必要であり当初モデルの中に配筋を入れて、このデータを読み取ろうとしたが、モデルが重くなる上に、処理も複雑になるため、モデル内の属性情報として設定することとした。
 
Revitでは、自由にFamily内に必要な情報を属性として設定することが可能であり、この機能を利用している(図-5)。3次元モデルを2次元モデルに変換するためには、モデルの考え方など、プログラム側で考慮することが多く、非常に手間がかかるが、他の3次元モデルに変換する場合は、考え方が似ていると非常に簡単に変換することができる。図-6にDARSでの変換結果を示す。
 

図-6 DARS変換の出力結果

図-6 DARS変換の出力結果


 
全ての設計で3次元解析ソフトが利用できれば、3次元モデルからこうしたソフトへの連携を考えればよいが、しばらくの間は、従来の2次元解析ソフトを利用する必要がある。このため、3次元モデルツールと2次元解析ソフトを連携するための手法が重要となる。
 
3次元解析ソフトとの連携については、IAI日本からSTBRIDGEという規格が提案されている(図-7)。詳細については、IAI日本のHPを確認いただきたい。
 
図-7 ST-BRIDGE

図-7 ST-BRIDGE


 
先ほどの変換ツールをもとに、ST-BRIDGEでの出力機能も作成した。図-8にST-BRIDGEの出力例を示す。福井コンピュータの建築用のソフトであるGLOOBEが、このSTBRIDGEに対応しているため、これで検証した結果を図-9に示す。図-9では、スラブ部分がうまく変換されていない。これは、土木構造物では、T型梁として梁構造と考えるが、建築構造物では、梁とスラブという考え方を行い、ST-BRIDGEにはT型梁という考え方がないためである(図-10)。土木・建築分野はほとんど同じであるが、こうした細かな考え方の違いを調整していく必要があり、今後のCIMの進展で問題となる可能性が高い。
 

図-8 ST-BRIDGEの出力例
図-8 ST-BRIDGEの出力例
図-9 ST-BRIDGEによる交換結果(GLOOBEでの表示)
 図-9 ST-BRIDGEによる交換結果(GLOOBEでの表示)

 
図-10 T型梁の考え方
 図-10 T型梁の考え方
 
 

積算・施工へのアプローチ

3次元モデルを利用する最も大きな理由は、数量が正確に算定されることと、施工手順をうまく表現できる点である。従来は、2次元モデルであるためこうした3次元化は施工会社が独自に行っていた。設計側で3次元モデルを作成しておけば、施工手順を検討した上での積算が可能となり、従来以上に実際の工事に近い工費を計算できる。これを検証するために、2次元での設計結果を基に、3次元モデルを作成し施工計画を考えた数量の比較を行った。
 

表-4 3次元モデルから算出した数量

表-4 3次元モデルから算出した数量


 
表-5 数量の比較

表-5 数量の比較


 
表-6 施工を考慮した数量の比較結果

表-6 施工を考慮した数量の比較結果


 
表-5、6で分かるように、3次元モデルを用いても十分数量も算出できる。表-5の鉄筋の数量が5%違うのは、Revit Structure 2012では、ラップがうまく表現できなかったためである。
 
これらの結果は、2次元の結果を受けて3次元モデルを作成して検証しているもので、3次元モデルだけを用いる場合は、その照査をどのように行うかがこれからの課題である。
 
また、Revit Structureでは、図-11のように構造物の本体モデルばかりでなく、支保、足場などのモデルも作成している。これらは、先に示したように一つ一つをFamilyと呼ばれる部品を事前に作成しておき、これを組み合わせることでモデルを作成する。
 
図-11 積算のための三次モデル

図-11 積算のための三次モデル


 
したがって、こうした部品が流通するようになれば、3次元モデルの作成は簡単になる。応用技術(株)では、図-12に示すような部品の販売を開始するなど、部品の流通も進むと思われる。
 
図-12 山留パーツの例 (応用技術(株)パンフレットより)

図-12 山留パーツの例 (応用技術(株)パンフレットより)


 
 

これからに向けて

設計で3次元モデルを作成して、解析、積算、施工との連携例を示した。このように使い方を考えればいろいろなことが可能となる。設計側で問題とされているのは、2次元図面が整合していない点であり、3次元モデルを用いるとこうした不整合は基本的には生じない。
 
こういったメリットは、いろいろ考えられているが、実際にはクロソイド曲線が設定できないなど現在行っていることがそのまま全て3次元でできるツールがあるわけではない。現在の2次元設計で行っているさまざまなツール、制度、規準、規格などもこの30年ほどかけて、いろいろな形で整備・開発が進められてきたもので、3次元ではまだこうした環境が整っていないだけである。国土交通省が新しくCIMとして3次元モデルの利用を開始したのは、こうした2次元モデルでの限界を最新のICTを用いて解決するためである。
 
また、「CIM=3次元」と捉えるのは間違いで、CIMは3次元モデルを中心とするが、3次元に固執する必要はなく、今まで発注者-設計者、発注者-施工者のように個別に行っていたものを、図-2に示したように事業全体にわたって関会社間で情報共有を行い、高度化していこうとする活動である。こうした活動はBIMの中でIPD(Integrated ProjectDelivery)として考えられている。AutodeskのHPでは、「IPDとは、建築家、エンジニア、請負業者、施主など、建築プロジェクトにかかわるチームが初期の段階から協力し、最適な建物を建てるという共有目的の下、最も有効な決定を共同で下すことを可能にする協業形態です」と説明されている。
 
国内では、制度上の問題もあるためすぐには難しいかもしれないが、こうした考え方を取り入れていくことも必要である。このためには、図-13に示すようなプロジェクト全体を取りまとめるCIMマネージャのような制度を検討していくことも必要である。
 

図-13 CIMマネージャ

図-13 CIMマネージャ


 
これからは、その時点の技術・ツールを最大限に利用して今できることをどんどんCIMの成果として取り入れ、次の年にはさらに新しくなっている技術を取りいれていくなど、どんどんCIMの形をスパイラルアップしていくことが必要で、その時のデファクト技術で交換していくことが重要である。当然、そこでできないことは、次の段階で技術的・制度的に改善していくことが必要である。
 
今できることをみんなで進めていく姿勢が一番重要である。一緒にCIMを進めましょう。
 
 
 
 
コンサル目線のCIM「設計からのアプローチ」《前編》
 
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2013
特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」
建設ITガイド2013
 
 



コンサル目線のCIM「設計からのアプローチ」《前編》

 

一般社団法人 建設コンサルタンツ協会 情報部会
CALS/EC委員会 データ連携専門委員会 委員長
八千代エンジニヤリング株式会社 技術推進本部 情報技術部 部長
藤澤 泰雄

 

3次元モデル設計

2005年Autodesk社Civil 3D 2005が登場した。このコンセプトは、従来の2次元の考え方で設計していたものを3次元で行おうとするものであった。それ以前にも3次元CADで設計を行うツールは登場していたが、高価なワークステーションを用いたシステムであり、Civil 3Dは一般のパソコンで利用できるソフトであり、そのインパクトは強かった。当時の設計者が行っている作業の多くは、図面作成とその修正であり、これでは設計者=Designerではなく、製図者=Drafterであり、Civil 3Dを用いて、設計=Designを行うことを考えた。
しかし、設計システムは2次元であり、直接、3次元で設計を行うことは難しい。このため、3次元モデルを作成して、2次元の設計システムで利用する3次元モデル設計を提唱した。
 
社内で、Civil 3Dによる3次元設計導入会を立ち上げ、社内の有志で3次元モデルの実用化の検討を行った。しかし、実際にはCivil 3Dの機能不足やパソコンの能力不足などが重なり、十分な成果を残せたとは言い難い。当時の最も手間のかかった作業は、地形の3次元化であった。紙地図の等高線をスキャンしてベクトル化し、これに高さ情報を与えてから、Civil 3Dで3D地形モデルを作成していた。その後、国土地理院が数値地図や10mメッシュ、5mメッシュ標高データを公開したことにより、こうした作業から解放され、パソコンの64bit化、ソフトウェアの進化も加わり、要領・基準などが完全に3次元に対応していないが、現状では十分に3次元モデルによる設計が可能な状況となっている。そして、2012年に入り国土交通省がCIMとして3次元モデルを用いた活動が始まったことは既にご存知の通りである。
 

図-1 2次元モデル連携

図-1 2次元モデル連携


 
 

CIM(Construction Information Modeling)

はじめに、国土交通省の資料からCIMとはどういうものかを考えてみる。
 

CIMの考え方

CIMとは、Construction Information Modelingの略称であり、これは建築分野のBIM(Building Information Modeling)を土木分野でも行おうとするものである。国土交通省によるCIMの定義は以下のようになっている。
 
「CIMとは、調査・設計段階からの3次元モデルを導入し、施工、維持管理の各段階での3次元モデルに連携・発展させることにより、設計段階でのさまざまな検討を可能にするとともに、一連の建設生産システムの効率化を図るものである。3次元モデルは、各段階で追加、充実化され、維持管理での効果的な活用を図る。」
(2012年10月10日 土木学会CIMセミナー資料より)
 
一方、従来から行ってきたCALS/ECの定義は以下のようになっている。
 
「CALS/ECは、「公共事業支援統合情報システム」の略称であり、従来は紙で交換されていた情報を電子化するとともに、ネットワークを活用して各業務プロセスをまたぐ情報の共有・有効活用を図ることにより公共事業の生産性向上やコスト縮減を実現するための取り組みです。」
(公共事業のITによる革新 CALS/EC 国土交通省パンフレットより)
 
よく「CALS/ECとCIMは何が違うのですか」と聞かれるが、上記のようにほとんどその考え方に違いはない。CIMには、明確に3次元モデルという記述があり、CALS/ECにはこうした記述がないが、CALS/ECも将来的に3次元モデルの活用を検討していた。したがって、この二つの考え方、方向性には大きな違いはないと考えている。違いといえば、CALS/ECは2次元モデルで開始されたため、従来の手法の標準化が中心となっていったが、CIMでは、3次元モデルに関してはまだまだいろいろな環境が整っていないため、新たに手法をみんなで探しながら、手探りで開始しなければならないことである。モデルの連携という観点から考えれば、2次元モデルでは図-1のような連携が今までのCALS/ECの考え方であり、図-2がCIMの考え方である。
 
建築分野ではBIMとして3次元モデルの活用が始まっているし、自動車や電機分野では、既に3次元モデルでの設計が中心となっており、初めに述べたように土木分野でも十分その環境は整っているといえる。
 

図-2 3次元モデル連携

図-2 3次元モデル連携


 

CIMで求めようとしているもの

先の国土交通省の資料によれば、CIMの狙いは以下の3点であり、現在およびこれから開発されるさまざまな技術を用いて新しい建設生産システムと新しい維持管理手法を行おうとするものである。
 

表-1 CIMの狙い

表-1 CIMの狙い


 
忘れられがちであるが、ここで重要なことは、既設の土木構造物の方が、新設の土木構造物よりもはるかに多く、新設だけでなく既設の土木構造物の維持管理手法もより質の高いものとしていかなければならないということである(表-2)。
 
表-2 建設後50年以上経過したインフラの割合 (平成23年度国土交通白書)

表-2 建設後50年以上経過したインフラの割合(平成23年度国土交通白書)


 

設計におけるCIMでの作業項目

では、実際にはどのような作業を行っていくことになるのだろうか。現状で考えられるCIMの作業項目と作業内容を示すと表-3のようになる。表の中には、こうした作業を行う際に必要となるデータ(←)、作成されるデータ(⇒)、課題も示してある。
 

表-3 CIMでの作業項目

表-3 CIMでの作業項目


 
これらの作業を行うためには、3次元モデル作成ツールが必要であり、Autodesk社のCivil 3DやRevit Structureや、福井コンピュータのGLOOBE 、フォーラムエイトのAllPlanなどがある。これらのモデル作成ツールでは、モデルにさまざまな情報を属性として追加することが可能となる。
 
図-3に、Revit Structureで作成したモデルと属性を表示した例を示す。
 
図-3 3次元モデルと属性の表示

図-3 3次元モデルと属性の表示


 
この他にも、3次元モデルを作成するためのツールはいろいろ発表されている。おもしろいのは、五大開発(株)がフリーで提供しているGODAI 3D Readerで、国土地理院の10mメッシュデータから地形モデルを簡易に作成し、確認することが可能である。残念なのは、変換した地形モデルが五大開発の製品以外に利用できない点である。
 
続いて、設計側として3次元モデルを用いて、解析と積算・施工計画に適用した結果を示す。
 
 
 
コンサル目線のCIM「設計からのアプローチ」《後編》へ
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2013
特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」
建設ITガイド2013
 
 



CALSからCIMへ進化する建設生産システム《後編》

 

国土交通省 大臣官房技術調査課
工事監視官 石川 雄一

《前編》を読む
 

土木分野におけるICT活用の現状について

図-6

図-6


土木分野におけるICTの活用については、情報化施工技術の活用が挙げられる。代表的な情報化施工技術にはTS(トータルステーション)を用いた出来形管理技術、MC(マシンコントロール)/MG(マシンガイダンス)技術などがあり、これらの技術は直轄工事を中心に普及が図られている(図-6)
 
また、情報共有システムの導入も進められており、各現場の生産性の向上や品質確保に寄与している(図-7)。
 
一方、設計成果や工事完成記録についても電子納品保管管理システムにより電子化が進められている(図-8)
 
このように、個々の段階での電子化・情報化はある程度進んではいるが、土木分野においては、いまだ建築分野でのBIMのように建設生産システムのあらゆる工程でモデルを共有したシステムは構築されていない。
 
国土交通省では、今後の建設生産システム全般において、建築におけるBIMの思想とツールを取り入れて、建設分野全般に適用すべくCIM(Construction Information Modeling)の構築と導入の検討を進めることとしている。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
図-7

図-7


 
図-8 電子納品保管理システム

図-8 電子納品保管理システム


 

CIMの概要

CIMは、調査・計画~設計~施工~維持管理の各段階において、3次元モデルを一元的に共有・活用、発展させることにより建設生産プロセスの過程において、より上流におけるリスク管理を実現するとともに、各段階での業務の効率化を図るものである。
 

3次元モデルの構築

CIMにおける3次元モデルとは、単にコンピューター上に精緻な仮想構造物の形状を表現するだけでなく、材料・部材の仕様・性能・数量、コスト情報等、実構造物としての属性情報をも併せ持った情報の集合体を設計段階から構築することであり、この点が2次元設計との決定的な違いである。(図-9・10)
 

図-9 3次元設計のイメージ

図-9 3次元設計のイメージ


 
図-10 設計・施工のミスの減少

図-10 設計・施工のミスの減少


 
従って、構築された3次元モデルは、変更の容易さ(コンピューター上の画面操作により可能)に加え、モデルの変更に連動して数量等の属性情報も変更されるため、比較・解析という各種シミュレーションの場面において、その容易さ、速さおよび正確さにおいて最大の効果を発揮すると考えられる。
 

CIMの効果(建設生産段階)(図-11)

CIMにおいては、この3次元モデルの構築・活用を柱としているが、それは3次元モデルを構築・活用することにより、次の効果が期待できると考えられるからである。 
 
・設計段階においては、効率的、かつ幅広い比較検討等が可能となる他、構造物の干渉チェックによる設計ミスの削減、数量の自動算出、構造物の可視化等
 
・設計から施工に移行する際に、3次元モデルによる円滑なデータ連携が図られる
 
・施工時のデータを順次モデルに追加することにより、出来高確認等の施工管理の効率化が図られるとともに、維持管理に活用する3次元モデルが構築される
 
・施工時に時間軸を追加(4次元モデル)するなどの応用により、施工計画の最適化、効率的な施工管理、安全の向上等が可能となる
 
・維持管理において必要なデータ(属性データ等)を連携させることにより、維持管理での3次元モデルが構築され、管理の効率化・高度化が可能となる
 
・発注者においては、発注業務(設計書作成、積算など)、監督・検査業務の効率化が図られる
 

図-11 CIMの概念(案)

図-11 CIMの概念(案)


 

CIMの検討における課題(BIMとの相違)

CIMの検討に当たっては、次の点に留意する必要があると考えられる。
 
①土木分野では、現地の地形・地質に依存または左右される要素が建築分野に比べて格段に大きく、地形・地質の詳細で精緻な情報が最も重要であること
 
②土木分野では、建築分野に比べて設計の自由度は小さく、施工においては、いわゆる設備関係も限定的であること
また、維持管理においては、各構造物に特有な管理項目があり、さらに地域や周辺環境との関係が建築に比べてより密接であること
 
③現行の公共土木の契約形態は、設計と施工を分離して発注することが基本であることから、事業の上流(設計)段階での施工上のリスク管理の実施(フロントローディング)は限定的なものにならざるを得ないこと
 
これらの留意点のうち、①の地形については、現状で国土地理院から提供されている基盤地図情報(数値標高モデル)の活用や「地理空間情報活用推進基本計画」(H20閣議決定)に基づく「地理空間情報高度活用社会(G空間社会)の実現」に向けた検討に期待するところである。
 
②については、まさにCIMの主要部分であり、必要な属性情報をどう選択し、どの程度の情報を付加するべきかなど、CIM構築にかかるコストとその効果については、今後の検討の柱となる部分である。
 
また、③については、各段階での役割・責任に関わる現行の建設生産システムの制度としての課題であり、各関係方面での議論が必要と考えられる。
 

CIM導入に向けた取り組み(図-12・13)

CIMの導入に向けては、上述した以外にも3次元設計ソフトの開発などの技術面においてさまざまな検討項目があると思われる。それら技術面の課題については、JACIC(一般財団法人 日本建設情報総合センター)を中心としたCIM技術検討会において、各関係機関・業界からの参画を得て議論・検討がなされているところである。
 

図-12 産官学が一体となったCIMの検討体制

図-12 産官学が一体となったCIMの検討体制


 
一方、CIMの導入に当たっては、現行制度や要領・基準類の見直しが必要となることから、国土交通省では導入に向けて、CIM制度検討会を立ち上げて検討を進めているところである。
 
図-13

図-13


 
また、各検討と並行して、実際の建設生産プロセスの中でその効果・課題について検証する必要があるため、国土交通省の直轄事業において、CIMを導入したモデル事業(表-1参照)を実施することとし、H24年度より3次元による設計業務を全国10ヵ所の直轄事業において試行的に実施しているところである。
 
表-1 モデル事業での試行項目と検証事項等(案)

表-1 モデル事業での試行項目と検証事項等(案)


 
CIMの導入がもたらすものは、まだまだ未知数の部分も多いが建設生産システムそのものを変革し、建設イノベーションを実現する可能性を秘めたものであり、他産業並みの労働生産性の向上を図るためにも、重要な意味があるものと考えている。
 
 
 
CALSからCIMへ進化する建設生産システム《前編》
 
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2013
特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」
建設ITガイド2013
 
 



CALSからCIMへ進化する建設生産システム《前編》

 

国土交通省 大臣官房技術調査課
工事監視官 石川 雄一

 

はじめに

国土交通省における土木分野でのICTの活用としては、事業執行の効率化などを目指して1996年度に「建設CALS整備基本構想」を策定し、以来、アクションプログラムに基づきCALS/ECとして取り組みがなされてきたところである(図-1)。
 

図-1 CALS/ECの取り組み

図-1 CALS/ECの取り組み
(出典) 国土交通省CALS/ECアクションプログラム2008


 
この間、電子納品、情報化施工、情報共有システムなど一定の成果が得られ、実現場において活用されている技術はあるものの、CALS/ECが目指してきた調査~計画~設計~施工~維持管理までを一貫した情報化のシステムはいまだ構築されていない(図-2)。
 
図-2 目指してきたCALS/ECのイメージ

図-2 目指してきたCALS/ECのイメージ
(出典) 国土交通省CALS/ECアクションプログラム2008


 
今後は、これまで取り組んできた情報化技術を要素技術として、それらを統合・発展させて建設生産プロセス全体として情報化を推進し、業務の効率化をはじめ建設事業全体での生産性の向上を図る必要がある。
 
 

建築分野でのBIM(Building Information Modeling)について

BIMとは、コンピューター上に作成した3次元の形状情報に加え、材料・部材の仕様・性能、コスト情報等、建物の属性情報を併せ持つ建物情報モデル(BIMモデル)を構築することで、設計から施工、維持管理に至る建築ライフサイクルのあらゆる工程でBIMモデルを活用することにより、建築生産や維持管理の効率化につなげるものである(図-3)
 

図-3 BIMの概要

図-3 BIMの概要 (出典) 一般社団法人IAI日本


 
BIMは世界的に見ると、国際組織(IAI)により1996年から標準化に着手し、現在ではBIMモデルデータ国際標準化規格(IFC)が整備されている(図-4)
 
図-4 IFC

図-4 IFC (出典) 一般社団法人IAI日本


 
国内においては、2009年が日本のBIM元年と言われ、主に民間の建築を中心に導入が図られている。東京スカイツリーの工事においてもBIMが導入されている。また、公共建築物においても国土交通省において、平成22年度よりBIM導入の試行を開始している。
 
BIMの最大の特徴としては、以下の2つの情報を併せ持つ3次元モデルにより、高度なシミュレーションを行うことが可能となるところにある。
 
①3次元の形状情報
②属性情報(材料・部材の仕様・性能、コスト、その他の情報)
 
BIMにより構築された3次元モデルを活用することで、建設プロセスにおけるさまざまなリスクをより上流で管理(フロントローディング)することが可能となり、事業の効率化、コストの低減、安全の向上などBIM導入による効果は多岐にわたり期待されている(図-5)。
 
図-5 フロントローディング

図-5 フロントローディング


 
 
 
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【出典】


建設ITガイド 2013
特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」
建設ITガイド2013
 
 



BIMモデルを有効活用する解析・シミュレーションソフトガイド《後編》

2014年2月5日

 

建設ITジャーナリスト 家入 龍太

《前編》を読む
 

解析・シミュレーションソフト一覧

オートデスクのRevitシリーズ、グラフィソフトジャパンのArchiCAD、福井コンピュータのGLOOBE、そしてエーアンドエーのVectorworksにおける主な解析・シミュレーションソフトを紹介します。
 

日影/逆日影/斜線/天空率計算

ADS-BT
斜線制限や日影規制、天空率、そして用途地域などを考慮して高精度に建物の高さ制限を解析するシステム「ADS-win」をBIMツール化したもの。Revit Architecture用のプラグインシステム「ADS-BTfor Revit」と、ArchiCAD(含むSolo)用のプラグインシステム「ADS-BT for ArchiCAD」がある。
 
生活産業研究所株式会社
TEL 03-5723-6460
http://www.tokyo.epcot.co.jp/
 
 
Shadow Planner for ArchiCAD
ArchiCAD(含むSolo)上で建物の計画時に日影規制チェックを行うアドオンソフト。日影規制に対する判定の色分け表示や、日照定規による日影影響範囲の確認、時刻日影計算、等時間日影計算、日影規制ライン作成を行う。複数の日影規制条件にまたがる建物も領域ごとに設定できる。
 
生活産業研究所株式会社
TEL 03-5723-6460
http://www.tokyo.epcot.co.jp/
 
 
TP-PLANNER
プロジェクトを管理する「TP-MENU」、日影規制(逆日影)、斜線、採光斜線、天空率など建築可能空間を検証、確保するための解析を中心とした「TP-LAND」、建築可能空間から容積チェック、プランニング企画図作成を行う「TP-LIGHT」の3つのシステムから構成される。
 
株式会社 コミュニケーションシステム
TEL 03-3207-8211
http://www.com-sys.co.jp/
 
 
A&A SHADOW
日影計算機能を付加するVectorworks用のプラグインソフト。傾斜面の日影や複合日影(島日影)、高さの異なる複数の評価面での日影測定も可能だ。日影図を3次元で表示する3D日影図も作成できる。
Vectorworks2012対応版には新たに「平均地盤面計算」などを新搭載。
 
エーアンドエー株式会社
TEL 03-3518-0121
http://www.aanda.co.jp/
 
 
A&A VOLUME
逆日影計算機能を付加するVectorworks用のプラグインソフト。日影規制や斜線制限の下で最大限の容積を計算する基本機能のほか、「決まった日時の決まった場所に太陽が当たる」シミュレーションなど、画期的な機能を搭載している。Vectorworks2012対応版では新たに「みなし境界線を作成」、「計算範囲を作成」、「建物を作成」などの機能を新搭載。
 
エーアンドエー株式会社
TEL 03-3518-0121
http://www.aanda.co.jp/
 
 
A&A 天空定規
天空率計算機能を付加するVectorworks用のプラグインソフト。天空率による緩和制度に対応した設計や申請に必要な各種図面の計算や作成を支援する。計算建物、適合建物それぞれを天空率計算し、ワークシート上に結果を表示することができ、1つの天空図に計算建物、適合建物両方を表示することもできる。
 
エーアンドエー株式会社
TEL 03-3518-0121
http://www.aanda.co.jp/
 
 

熱流体解析(CDF)/通風シミュレーションなど

Flow Designer
簡単、シンプルな操作で流体・温熱・環境の3次元シミュレーションを行うソフト。オプションモジュールで輻射・日射・SET(米国の快適性指標)、音響解析、64bit無制限メッシュ、結果表示専用モジュール「FdViewer」が用意されている。上記の機能を持つ「プロフェッショナル版」のほか、逆解析機能を搭載した「エンタープライズ版」がある。
 
株式会社アドバンスドナレッジ研究所
TEL 03-3225-9800
http://www.akl.co.jp/
 
 
Wind Perfect DX/e-flowDX
建築・土木業界向けの3次元熱流体解析プログラム。風環境や風荷重のほか 空調・換気、港湾・橋梁など構造物周辺の気流解析の得意とする。インターフェースはマウス操作を主体としており、直感的で分かりやすい。姉妹ソフトのe-flowDXには津波の動的解析を行える津波荷重解析バージョンがある。
 
株式会社環境シミュレーション
03-5823-3561~3
http://www.env-simulation.com/
 
 
STREAM
汎用の3次元熱流体解析ソフトウエア。構造格子(直角・円筒座標系)を採用し、高速演算と高い安定性、簡便な操作性が特徴。室内の温熱環境や部材変更による省エネルギー効果の把握から、屋外の風環境、ヒートアイランド予測、洪水やダム放水などの土木分野まで、広い範囲で利用されている。Revit用のアドオンソフト「Revit2STREAM」を使うとRevitのBIMモデルデータをSTREAM用に変換することができる。
 
株式会社ソフトウェアクレイドル
TEL 06-6343-5641(本社)
http://www.cradle.co.jp/
 
 
Simulation CFD
流体の定常/非定常の流れ、熱の伝導・伝達・ふく射や対流など、包括的なCFD (数値流体力学)ツールを搭載したソフト。Autodesk Simulation CFD 2013では、Revitとのデータ交換機能が強化されているため、モデルの関連付けを維持したままシミュレーション用のBIMデータをやり取りすることができる。
 
オートデスク株式会社
オートデスク認定販売パートナー
www.autodesk.co.jp/reseller
 
 

エネルギー解析・シミュレーション

PAL for ArchiCAD
非住宅の省エネルギー計算(PAL計算)が可能なArchiCAD用のプラグインソフト。プラグインソフトのため、設計者がすぐに利用でき、プランニング時からPAL値を考慮した設計が可能。 PAL値のほか、ペリメーターゾーンの面積算出 、外皮の熱貫流率・日射侵入率、日除けによるη値の補正、外皮各部位の熱貫流率・面積計算、日射侵入率の計算も可能。
 
生活産業研究所株式会社
TEL 03-5723-6460
http://www.tokyo.epcot.co.jp/
 
 
SAVE-建築
住宅以外の建築物について省エネルギー性能をシミュレーションするソフト。「外壁・窓を通しての熱の損失の防止」、「設備機器の効率的利用」について計算を行い、必要書類の作成を支援する。評価項目ごとに性能基準(PAL/CEC)や仕様基準(ポイント法、簡易ポイント法)を切り替え、それらを組み合わせた書類を作成する。
 
株式会社建築ピボット
03-6821-1641
http://www.pivot.co.jp/
 
 
サーモレンダー4 Pro
屋外熱環境と屋内熱負荷計算を持つVectorworks用の屋内外統合熱環境シミュレーションツール。戸建て住宅から街区規模までの屋内外統合熱環境シミュレーションが可能だ。ヒートアイランド現象や生活環境に影響を与える、建物や地表面の表面温度を算出し、ビジュアルに表現。さらに「MRT(平均放射温度)やHIP(ヒートアイランドポテンシャル)の算出」「建物の熱負荷計算」「CO2排出量の計算」も行える。
 
エーアンドエー株式会社
TEL 03-3518-0121
http://www.aanda.co.jp
 
 

照明・採光シミュレーション

INSPIRER
さまざまな空間内における照明の設計や解析ができる3次元照明シミュレーション用ソフトウェア。建物内の照度分布や室内の照明器具からの光による視覚的効果の検討、自然光を採り入れて照明設備を最適化した建築構造の設計などが行える。照明の効果は光の物理的な挙動に基づいて再現しているため、設計者にデータとしての裏付けを提供する
 
株式会社インテグラ
TEL 03-6712-8886
http://www.integra.jp/
 
 

火災・避難シミュレーション

PyroSim
計算エンジンに米国標準局(NIST)の「Fire Dynamics Simulator」を使用し、計算流体力学(CFD)による火災シミュレーションを行うソフト。ストーブから石油備蓄タンクにいたる規模の火災に適用できるほか、建物の換気のような、火災を含まない気流解析などにも適用できる。
 
株式会社CAEソリューションズ
TEL 03-3514-1506
http://www.cae-sc.jp/
 
 
building EXODUS
非常時・常時の人々の動き・行動をシミュレーションするソフト。単なる避難モデルではなく、人と人、人と火災、人と構造物の相互作用も再現する。英国グリニッジ大学における先駆的研究開発を通して火災安全工学グループ(FSEG)で開発された。熱、煙、有毒ガス等の影響を受け室内から避難する各個人の経路を追跡、評価できる。
 
株式会社フォーラムエイト
TEL 03-5773-1888
http://www.forum8.co.jp/
 
 
SimTread
人の流れや群集の波を「見える化」するVectorworks用の歩行者シミュレーションソフト。建築物や構造物、大型イベントなどにおける空間計画や誘導計画から、商業地における季節催事計画、船舶,旅客機などの避難シミュレーションなど、「人の歩み」が存在する用途であれば、幅広く活用できる。
 
エーアンドエー株式会社
TEL 03-3518-0121
http://www.aanda.co.jp
 
 

構造解析・シミュレーション/構造モデル変換

Robot Structural Analysis Professional
大規模で複雑な構造物向けの高度な建築解析機能を持つ構造設計者向けのソフト。Revit Structureとの双方向
リンク機能があり、BIMで実施設計図書の整合性が図られるため、精度の高い構造解析や設計の結果をモデル全体に反映できる。40以上の国際鋼構造規格と30以上の鉄筋コンクリート規格に準拠した、鉄筋コンクリート設計モジュールと鋼構造設計モジュールが搭載されている。
 オートデスク株式会社
オートデスク認定販売パートナー
www.autodesk.co.jp/reseller
 
 
SSCシリーズ
各種一貫構造計算データやSIRCADで作成した躯体情報をBIMモデルに変換する構造躯体変換ソフト。アドインソフトとして提供されており、Revit用(ArchitectureおよびStructure)とArchiCAD用がある。BIMソフト上ではじめから躯体情報を入力、配置する場合に比べてモデル化の手間が省ける。変換可能な部材は杭、基礎、RC柱、RC柱鉄筋、S柱、RC梁、RC梁鉄筋、S梁、RCスラブ、ブレース、壁(開口含む)。
 
株式会社ソフトウェアセンター
TEL 03-3866-2095
http://www.scinc.co.jp/
 
 
SuperBuild SS3 Data link for Autodesk Revit Structure
ユニオンシステムの一貫構造計算ソフト「Super Build/SS3」から、建物形状データや柱部材・梁部材の定義/配置情報を抽出しRevit Structure に取り込むソフト。逆にRevit StructureのデータをSuper Build/SS3 に取り込むこともできる双方向のデータ連携も可能。オートデスクのサブスクリプションユーザー向けに無償提供されている。
 
オートデスク株式会社
http://www.autodesk.co.jp/
 
 
SIRCAD
BUS(構造システム)、SEIN La CREA(NTTデータ)、Build.一貫(構造ソフト)、Super Build/SS3(ユニオンシステム)、BRAIN(TIS)、ADAM(TIS)、BUILD-1(NTTデータ)などの一貫構造計算プログラムの入力データを読み込み、SSCシリーズを経由してBIMソフトにデータを受け渡すことができる。
 
株式会社ソフトウェアセンター
TEL 03-3866-2095
http://www.scinc.co.jp/
 
 
ASCAL
入力の容易性と自由形状入力の両方の利点を兼ね備えた一貫構造設計プログラム。荷重伝達のできるスラブや小梁があればどんな任意形状でも、自動的に荷重計算を行う。ビル建物からプラント構造物、橋梁といったあらゆる構造種別について一貫計算が可能。Revitで生成したBIMモデルをアドオンソフトで取り込むことができる。
 
株式会社アークデータ研究所
TEL 03-5901-9450
http://www.archdata.co.jp/
 
 

クラウドシミュレーション

Simulation 360
高性能のコンピューターとさまざまな解析ソフトを利用できるクラウドサービス。大きな設備投資をしなくても高度なシミュレーション機能を使用できる。複数種類の解析作業を同時並行で実行することも可能。提供される機能は流体解析、伝熱解析、強度解析、空調の気流解析、熱解析など。
 
オートデスク株式会社
http://www.autodesk.co.jp/
 
 
 
BIMモデルを有効活用する解析・シミュレーションソフトガイド《前編》
 
 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2013
特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」
建設ITガイド2013
 
 



 


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