![]() |
2014年2月6日
一般社団法人 建設コンサルタンツ協会 情報部会
CALS/EC委員会 データ連携専門委員会 委員長 八千代エンジニヤリング株式会社 技術推進本部 情報技術部 部長 藤澤 泰雄 解析へのアプローチ設計に3次元モデルを利用する際に、最も問題となるのは、対象構造物をどのように解析し、応力を求め、これに見合う耐力を算定するかという点である。従来の設計は、2次元が中心で、3次元は橋梁の耐震解析等で用いられている。従って現状では3次元モデルを設計で利用するためには、3次元モデルから2次元解析データを作成しなければならない。 全ての設計で3次元解析ソフトが利用できれば、3次元モデルからこうしたソフトへの連携を考えればよいが、しばらくの間は、従来の2次元解析ソフトを利用する必要がある。このため、3次元モデルツールと2次元解析ソフトを連携するための手法が重要となる。 3次元解析ソフトとの連携については、IAI日本からSTBRIDGEという規格が提案されている(図-7)。詳細については、IAI日本のHPを確認いただきたい。 先ほどの変換ツールをもとに、ST-BRIDGEでの出力機能も作成した。図-8にST-BRIDGEの出力例を示す。福井コンピュータの建築用のソフトであるGLOOBEが、このSTBRIDGEに対応しているため、これで検証した結果を図-9に示す。図-9では、スラブ部分がうまく変換されていない。これは、土木構造物では、T型梁として梁構造と考えるが、建築構造物では、梁とスラブという考え方を行い、ST-BRIDGEにはT型梁という考え方がないためである(図-10)。土木・建築分野はほとんど同じであるが、こうした細かな考え方の違いを調整していく必要があり、今後のCIMの進展で問題となる可能性が高い。 積算・施工へのアプローチ3次元モデルを利用する最も大きな理由は、数量が正確に算定されることと、施工手順をうまく表現できる点である。従来は、2次元モデルであるためこうした3次元化は施工会社が独自に行っていた。設計側で3次元モデルを作成しておけば、施工手順を検討した上での積算が可能となり、従来以上に実際の工事に近い工費を計算できる。これを検証するために、2次元での設計結果を基に、3次元モデルを作成し施工計画を考えた数量の比較を行った。 表-5、6で分かるように、3次元モデルを用いても十分数量も算出できる。表-5の鉄筋の数量が5%違うのは、Revit Structure 2012では、ラップがうまく表現できなかったためである。 これらの結果は、2次元の結果を受けて3次元モデルを作成して検証しているもので、3次元モデルだけを用いる場合は、その照査をどのように行うかがこれからの課題である。 また、Revit Structureでは、図-11のように構造物の本体モデルばかりでなく、支保、足場などのモデルも作成している。これらは、先に示したように一つ一つをFamilyと呼ばれる部品を事前に作成しておき、これを組み合わせることでモデルを作成する。 したがって、こうした部品が流通するようになれば、3次元モデルの作成は簡単になる。応用技術(株)では、図-12に示すような部品の販売を開始するなど、部品の流通も進むと思われる。 これからに向けて設計で3次元モデルを作成して、解析、積算、施工との連携例を示した。このように使い方を考えればいろいろなことが可能となる。設計側で問題とされているのは、2次元図面が整合していない点であり、3次元モデルを用いるとこうした不整合は基本的には生じない。 これからは、その時点の技術・ツールを最大限に利用して今できることをどんどんCIMの成果として取り入れ、次の年にはさらに新しくなっている技術を取りいれていくなど、どんどんCIMの形をスパイラルアップしていくことが必要で、その時のデファクト技術で交換していくことが重要である。当然、そこでできないことは、次の段階で技術的・制度的に改善していくことが必要である。 今できることをみんなで進めていく姿勢が一番重要である。一緒にCIMを進めましょう。 コンサル目線のCIM「設計からのアプローチ」《前編》 【出典】 建設ITガイド 2013 特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」 ![]() |
![]() |
![]() |
一般社団法人 建設コンサルタンツ協会 情報部会
CALS/EC委員会 データ連携専門委員会 委員長 八千代エンジニヤリング株式会社 技術推進本部 情報技術部 部長 藤澤 泰雄
3次元モデル設計2005年Autodesk社Civil 3D 2005が登場した。このコンセプトは、従来の2次元の考え方で設計していたものを3次元で行おうとするものであった。それ以前にも3次元CADで設計を行うツールは登場していたが、高価なワークステーションを用いたシステムであり、Civil 3Dは一般のパソコンで利用できるソフトであり、そのインパクトは強かった。当時の設計者が行っている作業の多くは、図面作成とその修正であり、これでは設計者=Designerではなく、製図者=Drafterであり、Civil 3Dを用いて、設計=Designを行うことを考えた。 CIM(Construction Information Modeling)はじめに、国土交通省の資料からCIMとはどういうものかを考えてみる。 CIMの考え方CIMとは、Construction Information Modelingの略称であり、これは建築分野のBIM(Building Information Modeling)を土木分野でも行おうとするものである。国土交通省によるCIMの定義は以下のようになっている。 CIMで求めようとしているもの先の国土交通省の資料によれば、CIMの狙いは以下の3点であり、現在およびこれから開発されるさまざまな技術を用いて新しい建設生産システムと新しい維持管理手法を行おうとするものである。 忘れられがちであるが、ここで重要なことは、既設の土木構造物の方が、新設の土木構造物よりもはるかに多く、新設だけでなく既設の土木構造物の維持管理手法もより質の高いものとしていかなければならないということである(表-2)。 設計におけるCIMでの作業項目では、実際にはどのような作業を行っていくことになるのだろうか。現状で考えられるCIMの作業項目と作業内容を示すと表-3のようになる。表の中には、こうした作業を行う際に必要となるデータ(←)、作成されるデータ(⇒)、課題も示してある。 これらの作業を行うためには、3次元モデル作成ツールが必要であり、Autodesk社のCivil 3DやRevit Structureや、福井コンピュータのGLOOBE 、フォーラムエイトのAllPlanなどがある。これらのモデル作成ツールでは、モデルにさまざまな情報を属性として追加することが可能となる。 図-3に、Revit Structureで作成したモデルと属性を表示した例を示す。 この他にも、3次元モデルを作成するためのツールはいろいろ発表されている。おもしろいのは、五大開発(株)がフリーで提供しているGODAI 3D Readerで、国土地理院の10mメッシュデータから地形モデルを簡易に作成し、確認することが可能である。残念なのは、変換した地形モデルが五大開発の製品以外に利用できない点である。 続いて、設計側として3次元モデルを用いて、解析と積算・施工計画に適用した結果を示す。 コンサル目線のCIM「設計からのアプローチ」《後編》へ 【出典】 建設ITガイド 2013 特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」 ![]() |
![]() |
![]() |
国土交通省 大臣官房技術調査課
工事監視官 石川 雄一 土木分野におけるICT活用の現状について土木分野におけるICTの活用については、情報化施工技術の活用が挙げられる。代表的な情報化施工技術にはTS(トータルステーション)を用いた出来形管理技術、MC(マシンコントロール)/MG(マシンガイダンス)技術などがあり、これらの技術は直轄工事を中心に普及が図られている(図-6) また、情報共有システムの導入も進められており、各現場の生産性の向上や品質確保に寄与している(図-7)。 一方、設計成果や工事完成記録についても電子納品保管管理システムにより電子化が進められている(図-8) このように、個々の段階での電子化・情報化はある程度進んではいるが、土木分野においては、いまだ建築分野でのBIMのように建設生産システムのあらゆる工程でモデルを共有したシステムは構築されていない。 国土交通省では、今後の建設生産システム全般において、建築におけるBIMの思想とツールを取り入れて、建設分野全般に適用すべくCIM(Construction Information Modeling)の構築と導入の検討を進めることとしている。 CIMの概要CIMは、調査・計画~設計~施工~維持管理の各段階において、3次元モデルを一元的に共有・活用、発展させることにより建設生産プロセスの過程において、より上流におけるリスク管理を実現するとともに、各段階での業務の効率化を図るものである。 3次元モデルの構築CIMにおける3次元モデルとは、単にコンピューター上に精緻な仮想構造物の形状を表現するだけでなく、材料・部材の仕様・性能・数量、コスト情報等、実構造物としての属性情報をも併せ持った情報の集合体を設計段階から構築することであり、この点が2次元設計との決定的な違いである。(図-9・10) 従って、構築された3次元モデルは、変更の容易さ(コンピューター上の画面操作により可能)に加え、モデルの変更に連動して数量等の属性情報も変更されるため、比較・解析という各種シミュレーションの場面において、その容易さ、速さおよび正確さにおいて最大の効果を発揮すると考えられる。 CIMの効果(建設生産段階)(図-11)CIMにおいては、この3次元モデルの構築・活用を柱としているが、それは3次元モデルを構築・活用することにより、次の効果が期待できると考えられるからである。 CIMの検討における課題(BIMとの相違)CIMの検討に当たっては、次の点に留意する必要があると考えられる。 CIM導入に向けた取り組み(図-12・13)CIMの導入に向けては、上述した以外にも3次元設計ソフトの開発などの技術面においてさまざまな検討項目があると思われる。それら技術面の課題については、JACIC(一般財団法人 日本建設情報総合センター)を中心としたCIM技術検討会において、各関係機関・業界からの参画を得て議論・検討がなされているところである。 一方、CIMの導入に当たっては、現行制度や要領・基準類の見直しが必要となることから、国土交通省では導入に向けて、CIM制度検討会を立ち上げて検討を進めているところである。 また、各検討と並行して、実際の建設生産プロセスの中でその効果・課題について検証する必要があるため、国土交通省の直轄事業において、CIMを導入したモデル事業(表-1参照)を実施することとし、H24年度より3次元による設計業務を全国10ヵ所の直轄事業において試行的に実施しているところである。 CIMの導入がもたらすものは、まだまだ未知数の部分も多いが建設生産システムそのものを変革し、建設イノベーションを実現する可能性を秘めたものであり、他産業並みの労働生産性の向上を図るためにも、重要な意味があるものと考えている。 CALSからCIMへ進化する建設生産システム《前編》 【出典】 建設ITガイド 2013 特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」 ![]() |
![]() |
![]() |
国土交通省 大臣官房技術調査課
工事監視官 石川 雄一
はじめに国土交通省における土木分野でのICTの活用としては、事業執行の効率化などを目指して1996年度に「建設CALS整備基本構想」を策定し、以来、アクションプログラムに基づきCALS/ECとして取り組みがなされてきたところである(図-1)。 この間、電子納品、情報化施工、情報共有システムなど一定の成果が得られ、実現場において活用されている技術はあるものの、CALS/ECが目指してきた調査~計画~設計~施工~維持管理までを一貫した情報化のシステムはいまだ構築されていない(図-2)。 今後は、これまで取り組んできた情報化技術を要素技術として、それらを統合・発展させて建設生産プロセス全体として情報化を推進し、業務の効率化をはじめ建設事業全体での生産性の向上を図る必要がある。 建築分野でのBIM(Building Information Modeling)についてBIMとは、コンピューター上に作成した3次元の形状情報に加え、材料・部材の仕様・性能、コスト情報等、建物の属性情報を併せ持つ建物情報モデル(BIMモデル)を構築することで、設計から施工、維持管理に至る建築ライフサイクルのあらゆる工程でBIMモデルを活用することにより、建築生産や維持管理の効率化につなげるものである(図-3) BIMは世界的に見ると、国際組織(IAI)により1996年から標準化に着手し、現在ではBIMモデルデータ国際標準化規格(IFC)が整備されている(図-4) 国内においては、2009年が日本のBIM元年と言われ、主に民間の建築を中心に導入が図られている。東京スカイツリーの工事においてもBIMが導入されている。また、公共建築物においても国土交通省において、平成22年度よりBIM導入の試行を開始している。 BIMの最大の特徴としては、以下の2つの情報を併せ持つ3次元モデルにより、高度なシミュレーションを行うことが可能となるところにある。 ①3次元の形状情報 ②属性情報(材料・部材の仕様・性能、コスト、その他の情報) BIMにより構築された3次元モデルを活用することで、建設プロセスにおけるさまざまなリスクをより上流で管理(フロントローディング)することが可能となり、事業の効率化、コストの低減、安全の向上などBIM導入による効果は多岐にわたり期待されている(図-5)。 《後編》へ 【出典】 建設ITガイド 2013 特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」 ![]() |
![]() |
![]() |
2014年2月5日
建設ITジャーナリスト 家入 龍太
解析・シミュレーションソフト一覧オートデスクのRevitシリーズ、グラフィソフトジャパンのArchiCAD、福井コンピュータのGLOOBE、そしてエーアンドエーのVectorworksにおける主な解析・シミュレーションソフトを紹介します。 日影/逆日影/斜線/天空率計算ADS-BT 熱流体解析(CDF)/通風シミュレーションなどFlow Designer エネルギー解析・シミュレーションPAL for ArchiCAD 照明・採光シミュレーションINSPIRER 火災・避難シミュレーションPyroSim 構造解析・シミュレーション/構造モデル変換Robot Structural Analysis Professional クラウドシミュレーションSimulation 360 建設ITガイド 2013 特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」 ![]() |
![]() |