建設現場におけるカメラは、施工状況の記録や、使用材料などの証明写真の撮影用に使用されるため、「簡単にきれいな写真が撮影できる」、これが昔から変わらずに要求されている機能だ。一言でいってしまうと簡単だが、ここにたどり着くには以下に挙げる条件をクリアする必要がある。
今回検証する3機種は、これらの条件に対してどのような性能を持っているのだろうか。
外観から特徴の比較をすると、3機種を並べて比較すると非常に特徴的なのがオリンパスイメージングのμ720SWだ。非常にサイズが小さくてコンパクト、外装もステンレスでメタリック。とても工事用カメラとは想像がつかない。それに対して、リコーのCaplio500GとフジフィルムのBIGJOB HD-3Wは、大きくて外装もプラスチックのプロテクター調でいかにも工事用という存在感がある。

この外観の違いは、操作性に大きく関係してくる。Caplio
500GとBIGJOBHD-3Wは、手袋をはめた状態でも全く機能に問題はない。操作性に関しても、作業用の手袋をはめて操作することを前提に設計されているので、ボタン類が大きくてそれぞれの間隔も離れており、確実な操作が行える。
ところが、μ720SWはコンパクトな外観に加えて表面に突起物がないので手袋をはめてかまえた場合、写真のように手袋でフラッシュを隠してしまうこともある。
さらにμ720SWは、素手で操作するには何の問題もないのだが、手袋をはめた状態で操作してみると、小さなボタンが少し押しにくい感じを受ける。ステンレスの外装も手が滑る要因になっている。
ではこの3機種を携帯することを想定した場合はどうだろう、μ720SWはポケットにすっぽり納まるので、常時携帯しても全く気にならない。
これに対してCaplio 500GとBIGJOBHD-3Wは、大きなストラップが付いていることからもわかるが、首や肩から吊るして持ち歩くことを前提にしている。これは意外と負担がかかるものだ。いざ撮影という意気込みで持ち歩く場合はいいが、常時持ち歩いて気が付いたときに撮影するという用途には向いていない。
防水、防塵、耐衝撃性は壊れにくさの指標として工事用カメラの基本機能とされており代名詞といっても過言では まずJIS等級での比較をすると防塵の機能は3機種ともに「JIS保護等級6」に該当する。これは蓋を開けない限り粉塵が内部に入らないことを意味している。防塵に関して3機種の差はないと考えていい。
では防水はどうだろうか。μ720SWは「JIS保護等級8」をクリアしている。JIS保護等級8とは指定圧力の水中に常時没して使用できることが条件である。実際オリンパスイメージングも3mまでの水中撮影をセールスポイントにして製品を作っている。
これに対してCaplio500GとBIGJOBHD-3Wは「JIS保護等級7」に相当する、JIS保護等級7とは水深1mに30分沈めても水が浸水しないという条件である。
実際に工事現場で水中撮影をすることはまずないと思われるが、「水洗いができる」という意味では、3機種とも問題ないだろう。
次に耐衝撃性はどうだろう。JISにはカメラの耐衝撃性の規定がないので、各社独自の基準を採用している。何の規格を採用しているかはあまり判断基準にならないので、今回は落下試験の条件で比較してみた。
まずμ720SWは1.5mからの落下試験(各面、辺、角の合計26回)、Caplio5 0 0 Gは1mからの落下試験、B I GJOB HD-3Wは0.7mからの落下試験と各社各様だが、試験内容だけで見ると華奢な外観に似合わずμ720SWが一番衝撃には強そうだ。
![]()
建設現場特有の撮影条件として「暗い場所での撮影が多い」ことが挙げられる。これは仮設の照明を使用して撮影する場合が多く、その照明自体も十分な明るさを確保できない場合がほとんどであるために起こる。
この条件に対して、3機種のコンセプトの違いが大きく現れた。従来と大きく違うコンセプトを持つのがμ720SWである。このカメラはISO感度を2500相当に上げることでフラッシュなしでもかなり暗い場所まで撮影することを可能にした。
この機能は「ブライトキャプチャー機能」と呼ばれており、カメラ自体のISO感度を上げることでモニターも明るくなり、かなり暗い場所でもピント合わせやフレーミングがしやすくなるものである。
実際に撮影してみても、肉眼で確認できる程度の明るさがあればピント合わせから撮影まで行うことが可能だ。
これに対して従来通りフラッシュで撮影対象を照らすのがC a p l i o 5 0 0 GとBIGJOB HD-3Wだ。照明がない、もしくは薄暗い状況下でも対象物をくっきりと撮影できることに重点を置いている。
Caplio 500Gは常時10mまで到達するフラッシュを使用しており、BIGJOBHD-3Wは通常の5m程度のフラッシュと10mまで到達するフラッシュを選択して使用できる。
さらにCaplio 500Gには「プレ発光機能」が搭載されている。これは薄暗くてピントが合わない場所や全く光源のない場所で、ピント合わせの時点で発光して被写体にピントを合わせる機能だ。
実際に撮影してみると通常ではピントが合わない場所でもCaplio 500Gは簡単にピントを合わせることができる。強力なフラッシュとの相乗効果であらためて照明を設置して撮影しなくて良いので非常に使い勝手が良い。
「暗いところで撮影する」、それだけのことだがこの対照的な撮影コンセプトの違いは建設現場で実際に撮影する時点で非常に大きな差になってくる。
実際に稼動している建設現場は非常にホコリが多く、写真撮影の際にフラッシュを使うと空気中に舞っているホコリが光って写真に写り込んでしまうのだ。
これは意外と深刻な問題で、写真を見てわかるとおりフラッシュを使わないで撮影されたものは状況が判別できるのだが、フラッシュを使用して撮影した写真では何を撮影したのか全くわからない状態になってしまうことがある。 この例はかなり極端な写真だが、この3分の1でもホコリが写り込んでしまえば提出用の写真としてはかなり見苦しい出来栄えになってしまう。

実際の業務で写真が使えない理由の多くはホコリが光って写り込んで対象物が判定しにくい場合と、黒板にフラッシュの光が反射して文字が読めなくなってしまう場合だ、フラッシュを使わないで撮影することができればこの問題はたちまちすべて解決してしまう。
実際に撮影した写真を見ると一目瞭然だが、フラッシュを使用すると周囲が暗くなってしまい余計に対象物が見えにくくなる。ISO感度を上げて撮影すると実際に肉眼で見た感覚に近い撮影結果が得られることが多く、直感的に撮影ができるので有利だ。
Caplio 500GとBIGJOB HD-3WにもISO感度の調整機能は搭載されており、この2機種ではISO1600までとなっている。実際にフラッシュなしで撮影することも可能だが、完全にフラッシュを使わないで撮影できる明るさにはμ720SWに比べて限度がある。
最後に挙げる建設現場の特徴として、「狭い場所での撮影が多い」ことだ。
これに対してCaplio 500Gは28mm〜85mm、BIGJOB HD-3Wは28mm〜84mm相当の広角レンズを搭載している(35mmフィルム換算)。特にCaplio
500Gは別売りでワイドコンバージョンレンズが装備できる。これを取り付けると21mm相当の広角の撮影が可能だ。しかしμ7 2 0 S Wは3 8 m
m〜1 1 4 m m(35mmフィルム換算)とやや望遠よりのレンズを搭載している。
これは特に建築の工事現場で多く見られる室内での撮影で大きく差が出てくる。実際に使ってみるとわかるがCaplio 500GとBIGJOB HD-3Wはまったく同じ場所から撮影してもフレーミングできる範囲が大きいので1枚の写真に多くの情報を取り込むことができる。たとえば工事報告用の写真などは、現場がどのような進捗状況であるのかを説明するために撮影するが、部屋ができるだけ広く撮影できた方が実際の状況を説明しやすい。
それに対し、μ720SWの38mm〜114mm相当のレンズは、室内での近距離撮影の際にフレーミングできる範囲が非常に狭い。上のエスカレーターの写真を見れば、フレーミングできる範囲が大きく違うことがわかる。
次頁は同じ場所からCaplio 500G、BIGJOB HD-3W、μ720SWで撮影したものだ。特にCaplio 500Gには別売りのワイドコンバージョンレンズを取り付けて撮影している。まったく同じ場所から撮影してもレンズ1つでこれだけの差が出る。実務レベルで使うなら広角レンズを搭載したCaplio
500G、BIGJOB HD-3Wがより使いやすい。

ただここで1つ注意することがあるのはCaplio 500G+ワイドコンバージョンレンズの組み合わせである。これは非常に有効だが、フラッシュ撮影の際に後付けのレンズの影響で画像の1部に影ができてしまう。状況次第で使い分ける必要がありそうだ。
ここまでは現場の実務での必須項目を検証してきたが、ここからは3機種それぞれに特徴的な機能があるので紹介したい。
Caplio 500G wide
まずCaplio 500Gでは、「音声付き撮影機能」が便利だ。これは写真に音声でメモをつける機能で、この機能自体は他の2機種にもあるのだが、Caplio500Gの場合、一度設定すれば撮影するたびに「8秒」の音声録音を行ってくれる。これを使えば現場で気がついた内容を撮影し、メモ代わりに録音して内容を残すことが簡単にできる。
μ720SWにもほぼ同じ機能があり、1度設定すれば毎回録音できる。しかし時間的に「4秒」と若干短い。実際に使ってみると少し短いと感じる。
BIGJOB HD-3Wの場合は、後で画像を呼び出して改めて録音する方式で「30秒」録音できるが、気軽にメモを取る感覚ではない。
μ720SW 工事キット
次にμ720SWだが、これには2年間のカメラ保険が付いている、これは機能というより特典といった方が良いかもしれない。
従来壊れたカメラは販売店に持っていって見積もりを行い、直す方が安いと判断したら修理に出す…という手順を追っていた。しかし今回の「工事現場トータルサポート保険」は故障・盗難・破損・水損・火災などのトラブルをカバーする保険だ。これは電話1本でカメラの回収から修理後の配達まで保険でカバーしてくれるという優れものだ。従来の保証も2年になり、さらにこの保険があるので実費で修理する可能性はほとんどない。これならカメラ自体の耐久性に関係なく2年間は間違いなく使うことができる。それに手配がとても迅速にできることも魅力だ。
FinePix BIGJOB HD-3W
最後のBIGJOB HD-3Wには世界初という画像加工検出機能がある。この機能はCALS/ECの電子納品などデータ提出に効果を発揮する。「CALS/ECで提出する写真は加工しない」が原則であるが、本当に加工されていないか簡単に検出することは難しい。そのため、特に受注者側はどうやってデータの信頼性を保証するか、頭を悩ませてきた部分であった。
だが、この機能を使えば一目瞭然、データの信頼性が増すのである。電子納品現場では、特に有効だろう。ただし、開発されたばかりのこの機能は、BIGJOB
HD-3Wもしくは同梱のソフトFinePixViewer For HD-3W以外では検出ができない。今後の外部ソフトへの展開を期待したい。
これまで実務重視のポイントから3機種を比較してきた。3機種ともに特徴的な機能があるので、どれが最高の機種かは用途や、活躍の場によって違ってくる。またリコーと富士フイルムが従来コンセプトの延長線上にあるのに対して、オリンパスイメージングが新しいコンセプトを工事用カメラに持ち込んだことでユーザーの選択の幅も広がったようだ。今後それぞれの機種のどの機能がユーザーに支持されていくのか楽しみである。