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成功事例集

建設ソフトやハードウェアなどのITツールを導入して成功した事例を紹介します。

点群データに基づくBIMモデルを使用した電車線路設備の工事設計業務を効率化

東日本旅客鉄道株式会社

点群処理ソフトウエア「Galaxy-Eye」

中山 正博 氏

東日本旅客鉄道株式会社
所在地:東京都渋谷区
設立:1987年4月
資本金:2,000億円
従業員数:49,780人
主な事業内容:旅客鉄道事業ほか
http://www.jreast.co.jp/


東京電気システム 開発工事事務所       
電力基準審査室 副課長            
中山 正博 氏                

 

東日本旅客鉄道株式会社では、スマートプロジェクトマネジメントの一環として、点群データを活用した電車線路設備の工事設計業務効率化を目指した取り組みを進めている。
電車線路設備においては、既存の設備に対しての改良が求められることから、膨大な量の点群データを現地で取得し、それを高速に処理してBIMモデル化することが必要となる。
今回は、この高速処理が可能な「Galaxy-Eye」を活用しての工事設計業務の変革についてお話を伺った。

 
 

はじめに

 
東日本旅客鉄道株式会社では、鉄道事業における運行やサービスなどのさまざまな側面から鉄道を質的に変革するスマートトレインを実現するための一環として、BIM・ICT技術を活用する「スマートプロジェクトマネジメント」の取り組みを進めている。
この取り組みの一つとして、電気関係の工事設計・設計監理を実施している東京電気システム開発工事事務所(以下、東電所)では、点群データの活用を検討している。
点群データとは、3次元空間上に存在する点の座標データを複数集めたデータのことである。
そして、点群データを基に、物体の形を3DCAD上で再現した「3Dモデル」を作成することができる。
さらには、作成した3Dモデルに対して、そのモデルで表現した物体の名称や素材、重量といった情報を付与した「BIMモデル」を作成すると、さまざまな場面で活用できるデータとなる。
 
今回は、東電所の「電車線路設備」の工事設計における点群データの活用について、3D計測データ処理ソフトウエア「Galaxy-Eye」を用いた事例を紹介する。

 
 

工事設計における問題点

 
電気鉄道では、列車は架線からパンタグラフを介して電気の供給を受けることで走行している。
この架線とそれを支持する電化柱などを総称した設備が「電車線路設備」である。
東電所では、この電車線路設備の各種改良工事の設計を行っている。
この設計においては、
 
①現場調査
②最適かつ安価な条件の設備となるよう設備図面の作成・電化柱の強度検討・各種の技術計算を繰り返し実施
③工事費の積算
 
といった手順により業務を行い、請負工事契約を締結し工事を進めている。
 
一方で、設計で検討する条件は、現場調査時の見落としや、状況の変化によっては変更が必要となる場合がある。
この場合、あらためて設備図面の作成・電化柱の強度検討・各種の技術計算を行う必要があるが、それぞれ個別に検討を行っており、多大な労力を要している。
このような状況の中、今後の5年先、10年先を見据えると、当社には老朽取替時期を迎える電車線路設備がこれまで以上に多くある。
そのため、従来の工事設計手法のままでは多大な労力がかかることから、工事発注が必要な時期にできないことが想定され、業務の変革が急務となっている。

 
 

点群データの活用

 
現場調査時の見落としや状況の変化に対しては、図面や検討データを一元的に取り扱うことができれば効率的に対応可能となる。
そこで、現場調査で点群データを取得してBIMモデルを作成し、全ての設計をBIMモデルで行えば、効率的な設計が実現できると考えた。
 
電車線路設備のBIMモデル化を行うにあたり、その主要構成部品である電化柱については、直径250~400mm・地上高さ10m程度が一般的であり、それほど点群データの密度を高くしなくても判別できる。
一方で、架線については、その電線の直径が約10~30mmと非常に細いため、点群データの密度を高くしないと判別できない。
また、電車線路設備の工事に当たっては、2~3km延長の工事を設計することがあり、このような場合には電車線路設備のBIMモデル化には膨大な量の点群データを取得する必要がある。
図-1に、線路付近における点群データの取得例を示す。
このように、線路付近の設備だけでなく、周辺のビルなどさまざまなモノの点群が取得される。
そのため、点群データを高速に処理できるソフトウエアが必須となる。
 
そこで、東電所では、このような膨大な量の点群データを高速に処理できる「Galaxy-Eye」に着目し、その活用の可能性を開発メーカーとともに検討している。

線路付近における点群データの一例
図-1 線路付近における点群データの一例


Galaxy-Eyeによる工事設計

 
点群データをBIMモデル化するに当たり、できる限り人の手を介さず自動的に3Dモデルを作成することが重要となる。
そこで東電所では、開発メーカーとGalaxy-Eyeの新機能の開発を行った。
その機能としては、
・架線および電化柱等の自動モデリング
・架線の断面図作成
である。
 
 
架線および電化柱等の自動モデリング
図-2、3に、架線および電化柱等の自動モデリングを行った際のイメージを示す。
図-2が点群データを示しており、線路沿線では数多くの設備が存在し、さまざまな点がデータとして取得されているのが分かる。
一方で、図-3はGalaxy-Eyeで自動モデリングを行った結果であり、電車線路設備として必要な架線・電化柱など、そして各設備の設置基準となるレールが3Dモデルとして認識されていることが分かる。
なお、本機能により、3Dモデル上で架線の高さなどを測定することも可能となっている。
なお、3Dモデルに属性を付与してBIMモデル化する作業については、設計者が個々の設備を確認して手動で実施する。
 
 
架線の断面図作成
図-4に、Galaxy-Eyeで架線を表示させた一例を示す。
架線は、パンタグラフと直接接するトロリ線、そしてトロリ線を水平に保つためのちょう架線、ちょう架線からトロリ線を吊るためのハンガで構成されている。
トロリ線は、パンタグラフが滑らかに接することができるよう高さや勾配などが厳密に定められており、また気温や風などで変動するため、綿密な設計が求められる。
今回、この架線を正確に描画するとともに、気温などのパラメータを任意に設定した場合の変化も自動的にモデリングできるようになっている。

元となる点群データ
図-2 元となる点群データ


自動モデリングの結果
図-3 自動モデリングの結果


架線の表示の一例
図-4 架線の表示の一例


まとめと今後の展望

 
今回、東電所では開発メーカーとの協力により、Galaxy-Eyeを用いて電車線路設備を3Dモデル化することができるようになった。
さらに、モデル上で架線の高さなどが測定可能となるとともに、架線の断面図を任意のパラメータで描くことができるようになった。
これらの機能により、現場調査時の見落としや状況の変化による設計の見直し時においても、スピーディーに対応することが可能となる。
今後は、これらの開発した機能をベースに、電化柱の強度検討などができる機能を追加し、さらなる工事設計業務の効率化を図り、スマートプロジェクトマネジメントの実現に向けた取り組みを進める計画である。

 
 


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